INPEXの2025年12月期第1四半期決算を解説|株価に影響はある?

株式会社INPEXの2025年12月期第1四半期の連結決算が2025年5月13日に発表されました。

内容としては、原油・天然ガス販売数量の減少や販売価格の下落により減収となったものの、コスト削減効果や為替差益などにより親会社の所有者に帰属する四半期利益は増益を確保しました。国際的なエネルギー価格の変動や為替市場の動向が業績に影響を与える中、同社は安定操業の維持と将来の成長に向けた取り組みを進めています。

この記事では、INPEXの2025年12月期第1四半期について、詳しく解説していきます。

目次

INPEXの2025年12月期第1四半期における連結決算の振り返り

当第1四半期の連結経営成績は、売上収益が前年同期比10.0%減の5,368億99百万円となりました。

これは主に、原油の販売数量減少および販売単価の下落によるものです。一方で、営業利益は3,238億73百万円(前年同期比14.8%減)、税引前四半期利益は3,353億59百万円(同10.1%減)となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、1,262億93百万円と前年同期比3.7%の増益を達成しました。

主要な経営成績は以下の通りです。

スクロールできます
項目2025年12月期
第1四半期
2024年12月期
第1四半期
増減額増減率
売上収益
(百万円)
536,899596,800△59,901△10.0%
営業利益
(百万円)
323,873380,102△56,229△14.8%
税引前四半期利益
(百万円)
335,359372,923△37,564△10.1%
親会社の所有者に帰属する
四半期利益(百万円)
126,293121,8294,4643.7%
基本的1株当たり
四半期利益(円)
105.4696.828.648.9%
出典:株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」, 株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算 補足説明資料」

売上収益の減少は、主に原油の販売数量が前年同期比8.3%減の34,223千バレル、天然ガス(LPG除く)の販売数量が同4.1%減の125,583百万立方フィートとなったこと、加えて海外原油の平均販売価格が1バレル当たり75.49米ドルと前年同期比6.9%下落、海外天然ガスの平均販売価格が千立方フィート当たり5.16米ドルと同3.7%下落したことなどが要因です。

一方、売上原価の減少や探鉱費の減少、金融費用の大幅な減少などが利益を押し上げました。

INPEXのセグメント別の業績(2025年12月期第1四半期)

2024年10月1日付の組織改編に伴い報告セグメントが変更されており、前第1四半期連結累計期間との比較分析にあたっては、変更後の区分に基づく数値で比較しています。

スクロールできます
セグメント名称売上収益(百万円)
(2025年12月期1Q)
売上収益(百万円)
(2024年12月期1Q)
増減率セグメント利益(百万円)
(2025年12月期1Q)
セグメント利益
(百万円) (2024年12月期1Q)
増減率
国内石油
天然ガス事業
(国内O&G)
65,09962,2934.5%11,3365,79395.7%
海外石油
天然ガス事業
(海外O&G)
イクシスプロジェクト
91,522103,361△11.5%74,17090,813△18.3%
海外石油
天然ガス事業(海外O&G)
その他プロジェクト
376,798427,008△11.8%35,57125,52339.4%
その他3,4784,136△15.9%△173551
合計536,899596,800△10.0%120,904122,681△1.4%
調整額5,389△851
連結536,899596,800△10.0%126,293121,8293.7%
出典:株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)
(注) セグメント利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益で表示しています。

国内石油・天然ガス事業(国内O&G)

売上収益は、天然ガス販売価格の上昇により前年同期比28億円(4.5%)増の650億円となりました。売上原価の減少等により、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比55億円(95.7%)増の113億円と大幅な増益を達成しました。

海外石油・天然ガス事業(海外O&G) – イクシスプロジェクト

イクシスプロジェクトの売上収益は、販売数量の減少及び販売価格の下落により、前年同期比118億円(11.5%)減の915億円となりました。これに伴い、親会社の所有者に帰属する四半期利益も前年同期比166億円(18.3%)減の741億円となりました。イクシスからの利益貢献額(セグメント利益)は741億円でした。

海外石油・天然ガス事業(海外O&G) – その他のプロジェクト

その他の海外プロジェクトでは、販売数量の減少及び原油販売価格の下落により、売上収益は前年同期比502億円(11.8%)減の3,767億円となりましたが、法人所得税費用の減少等により、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比100億円(39.4%)増の355億円と増益を確保しました。

その他

「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、再生可能エネルギー・電力関連事業及びCCS・水素事業等を含んでいます。売上収益は34億78百万円(前年同期比15.9%減)、セグメント損失(親会社の所有者に帰属する四半期利益)は1億73百万円となりました。

INPEXの2025年12月期第1四半期の財務状況について

当第1四半期連結会計期間末における主な財務状況は以下の通りです。

項目2025年3月31日2024年12月31日増減額
資産合計(百万円)7,118,9727,380,863△261,891
流動資産(百万円)876,479870,2066,273
非流動資産(百万円)6,242,4926,510,656△268,164
(うち石油・ガス資産)3,658,7263,855,226△196,500
負債合計(百万円)2,249,2582,243,0296,229
流動負債(百万円)639,956533,663106,293
非流動負債(百万円)1,609,3011,709,366△100,065
資本合計(百万円)4,869,7145,137,833△268,119
親会社の所有者に帰属する持分(百万円)4,630,3184,821,805△191,487
親会社所有者帰属持分比率65.0%65.3%△0.3ポイント
1株当たり親会社所有者帰属持分(円)3,866.334,026.22△159.89
出典:株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」, 株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算 補足説明資料」

資産合計は、前連結会計年度末と比較して2,618億円減少し、7兆1,189億円となりました。これは主に、石油・ガス資産の減少などによる非流動資産の減少(2,681億円減)が影響しています。

負債合計は、流動負債が増加したものの非流動負債が減少したことなどから、ほぼ横ばいの2兆2,492億円となりました。資本合計は、利益剰余金は増加したものの、在外営業活動体の換算差額の減少などにより2,681億円減少し、4兆8,697億円となりました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は65.0%となりました。

オフバランスのイクシス下流事業会社分を含むネット有利子負債は1兆6,044億円、ネットD/Eレシオ(※)は0.35倍となっています。

キャッシュフローの状況

当第1四半期連結累計期間に係る要約四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。参考情報として、減価償却費及び償却費は892億32百万円(前年同期は920億円)でした。

2025年12月期の通期業績予想におけるキャッシュ・フローの内訳(2025年5月13日発表予想)は以下の通りです。

項目金額(億円)
探鉱前営業キャッシュ・フロー8,000
投資キャッシュ・フロー(探鉱投資含む)△6,290
フリー・キャッシュ・フロー1,710
財務キャッシュ・フロー△2,760
うち株主還元△1,500
現金及び現金同等物の期末残高2,000
出典:株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算 補足説明資料」
(注) キャッシュ・フローは共同支配企業であるイクシス下流事業会社を含みます。

探鉱前営業キャッシュ・フローは、前回予想(2025年2月13日)から760億円減の8,000億円を見込んでいます。投資キャッシュ・フローは、成長投資額の見直しなどにより、前回予想から60億円増の△6,290億円となる見込みです。

主要財務指標(ROEなど)

2025年12月期の通期業績予想における主要な財務指標(2025年5月13日発表予想)は以下の通りです。

  • ROE(自己資本利益率): 6.6%
  • ROIC(投下資本利益率): 6.0%

第1四半期の実績に基づくBPS(1株当たり親会社所有者帰属持分)は3,866.33円でした。

INPEXの株主還元はどう?

INPEXは、株主還元を経営の重要課題の一つと位置づけています。

2025年12月期の配当予想は、中間配当45円、期末配当45円を合わせた年間90円としています。これは前期(2024年12月期)の年間配当金86円(中間43円、期末43円)から増配となる見込みです。

2025年12月期のキャッシュ・フロー計画において、株主還元として1,500億円(2024年12月期期末配当43円及び2025年12月期中間配当45円等)を見込んでいます。

今期の見通しと戦略について

INPEXは、2025年12月期の通期連結業績予想を修正しました。主な要因は、前回発表予想時の想定に対して原油価格の下振れリスクが高まったこと、及び為替が円高基調に変移したこと等を踏まえ、第2四半期以降の原油価格及び為替の前提条件を見直したためです。

修正後の通期業績予想(2025年5月13日発表)は以下の通りです。

項目通期予想
(百万円)
対前期増減率
売上収益1,822,000△19.6%
営業利益916,000△28.0%
税引前利益957,000△26.3%
親会社の所有者に帰属する
当期利益
300,000△29.8%
基本的1株当たり
当期利益(円)
250.50
出典:株式会社INPEX「2025年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

前提となる通期平均の原油価格(ブレント)は65.0ドル/バレル(前回予想75.0ドル/バレル)、通期平均の為替レートは144.0円/ドル(前回予想153.0円/ドル)に見直されました。

親会社の所有者に帰属する当期利益の増減要因分析(2月発表予想3,300億円 vs. 今回発表予想3,000億円)を見ると、油価影響でマイナス691億円、為替影響でマイナス479億円となる一方、事業要因(海外プロジェクトのOPEX等原価減少、探鉱費減少、販管費減少など)でプラス391億円、その他要因(金融収益増・税金減など)でプラス258億円などを見込んでいます。

キャッシュ・フロー計画においては、成長投資として5,680億円を計画しており、内訳は「LNG事業を中心とした石油・天然ガス分野の維持拡大」に5,320億円、「CCS・水素をコアとした低炭素化ソリューション」に40億円、「INPEXならではの強みを活かした再エネ・電力分野での新たな取り組み」に320億円などとなっています。

INPEXの決算を受けて、株価はどうなった?

INPEX社の株価は、2025年5月13日の決算発表を受けて、市場の取引終了後のPTS(私設取引システム)価格でやや下落しました。

これは、第1四半期の親会社株主に帰属する四半期利益こそ前年同期比で増益となったものの、同時に発表された通期業績予想の下方修正が市場にネガティブサプライズとして捉えられた可能性が考えられます。

詳細な解説は以下の通りです。

決算発表前の株価動向(市場取引時間中)

  • 前日終値: 1,861.5円
  • 当日始値 (09:03): 1,910.0円
  • 当日高値 (09:03): 1,910.0円
  • 当日安値 (14:01): 1,863.0円
  • 当日終値 (15:30): 1,891.5円

まず、決算発表(15:00)が行われた当日の市場取引時間中の株価を見ると、終値は1,891.5円と前日終値の1,861.5円から30円上昇しています。この動きだけを見ると、決算への期待感があったか、あるいは同日の地合い(トランプ関税の件)が影響した可能性があります。

決算発表後の株価動向(PTS価格)

PTS現在値 (05/13 16:29時点): 1,874円

注目すべきは、決算発表後のPTS価格です。16:29時点で1,874円となっており、これは当日の終値1,891.5円から17.5円下落しています。この動きが、決算内容に対する市場の初期反応と解釈できます。

決算内容と株価への影響分析

INPEXが発表した2025年12月期第1四半期決算のポイントは以下の通りです。

  • 第1四半期業績
    • 売上収益: 5,368億99百万円(前年同期比10.0%減)
    • 営業利益: 3,238億73百万円(前年同期比14.8%減)
    • 親会社の所有者に帰属する四半期利益: 1262億93百万円(前年同期比3.7%増)
  • 通期業績予想(修正後)
    • 売上収益: 1兆8,220億円(従来予想2兆1,190億円から下方修正、前期比19.6%減)
    • 営業利益: 9,160億円(従来予想1兆1,060億円から下方修正、前期比28.0%減)
    • 親会社の所有者に帰属する当期利益: 3,000億円(従来予想3,300億円から下方修正、前期比29.8%減)
    • 前提となる通期平均原油価格(ブレント)を65.0ドル/バレル(従来75.0ドル)、通期平均為替レートを144.0円/ドル(従来153.0円)に見直し。
  • 株主還元
    • 年間配当予想90円(中間45円、期末45円)を維持(前期は86円)。

市場は、第1四半期の純利益こそ前年同期比でプラスを確保したものの、それ以上に通期業績予想の大幅な下方修正を重く受け止めたと考えられます。特に、売上収益、営業利益、最終利益の全てにおいて従来予想から引き下げられ、かつ前期実績からも大幅な減益を見込んでいる点がネガティブ視された要因でしょう。

この下方修正の背景には、会社側が前提とする原油価格の引き下げ(75ドル→65ドル)と想定為替レートの円高方向への見直し(153円→144円)があります。これは、今後の収益環境が悪化すると想定していることがわかるでしょう。

年間配当予想が維持されたことはポジティブな材料ですが、それを打ち消すほどに通期見通しの悪化が株価に影響を与えたと推測されます。PTSでの下落は、この通期見通しに対する失望売りや警戒感からポジションを調整する動きが出た結果と言えるでしょう。

まとめと今後の注視点

まず、INPEXの決算が株価に与えた影響とその要因についてのまとめです。

  • 決算発表前の株価は堅調でしたが、発表後のPTS価格は下落しました。
  • この動きは、第1四半期の純利益増益というポジティブ材料よりも、通期業績予想の大幅な下方修正というネガティブ材料が市場に強く意識された結果と考えられます。
  • 下方修正の背景にある原油価格や為替の前提条件の変化は、今後のINPEXの収益性を占う上で重要な要素となります。

ただし、PTS取引は市場取引時間外の取引であり、流動性が低い場合があるため、翌営業日の市場全体の反応を引き続き注視する必要があるでしょう。

INPEXに関しては、原油価格などが株価に与える影響が大きいため、引き続き注視が必要な銘柄と言えます。

まとめ

INPEXの2025年12月期第1四半期決算は、外部環境の変動を受けつつも、コスト管理や事業ポートフォリオの最適化を進めることで、増益を確保しました。

通期では原油価格や為替の前提を見直し減収減益予想としましたが、キャッシュ創出力は維持し、株主還元も増配を予定しています。引き続き、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが注目されるでしょう。

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