アドバンテストの最新決算はどうだった?市場予想超え・上方修正の理由を解説

アドバンテストの決算が発表されると、「前年同期からどれだけ伸びたのか」だけでなく、なぜその業績になったのか、市場の期待をどの程度上回ったのかが気になる人も多いのではないでしょうか。

2026年7月29日に発表された2027年3月期第1四半期決算は、AI・HPC関連半導体向けのテスタ需要を背景に、売上高と各利益が四半期ベースで過去最高を更新しました。通期業績予想も大幅に上方修正されています。

一方で、純利益の伸びには金融商品の評価益も含まれています。この記事では、決算数値を並べるだけでなく、市場予想との差、製品別の需要、利益率改善の理由、上方修正の中身と注意点まで分かりやすく解説します。

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アドバンテストの最新決算はどうだった?

アドバンテストの最新決算はどうだった?

結論からいえば、2027年3月期第1四半期は、本業の売上高と営業利益が市場予想を上回り、通期予想も大幅に引き上げられた強い決算です。売上高の伸び以上に営業利益が増えており、販売数量の増加だけでなく、製品構成の改善によって収益性も高まりました。

ただし、税引前利益と純利益の大幅な増加には、戦略投資に関連する金融商品の評価益が含まれます。本業の成長力を判断するときは、営業利益と利益率を中心に確認することが重要です。

項目2027年3月期1Q前年同期前年同期比修正後通期予想通期進捗率
売上高3,674億7,300万円2,637億7,600万円39.3%増1兆7,140億円約21.4%
営業利益1,899億9,000万円1,239億5,200万円53.3%増8,460億円約22.5%
税引前利益2,340億8,200万円1,213億5,700万円92.9%増8,910億円約26.3%
純利益1,747億8,000万円901億8,000万円93.8%増6,600億円約26.5%
営業利益率51.7%47.0%4.7ポイント上昇49.4%

注:純利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益。通期進捗率は第1四半期実績を修正後通期予想で割って計算。

売上高は前年同期比39.3%増でしたが、営業利益は53.3%増となりました。増収率を営業増益率が上回っているため、売上規模だけでなく採算も改善した決算と評価できます。

市場予想(コンセンサス)をどれだけ上回った?

第1四半期実績は、売上高が市場予想を約8.1%、営業利益が約16.8%上回りました。特に営業利益の上振れが大きく、市場が見込んでいた以上に売上が伸びただけでなく、利益率も想定を上回ったことが重要です。

2026年7月24日付のIG証券の記事に掲載されたブルームバーグ集計では、売上高に相当する総収入の市場予想は3,400億円、営業利益は1,626億円でした。

項目実績市場予想上振れ額市場予想比
売上高3,674億7,300万円3,400億円274億7,300万円約8.1%上振れ
営業利益1,899億9,000万円1,626億円273億9,000万円約16.8%上振れ
営業利益率51.7%約47.8%約3.9ポイント

注:市場予想はブルームバーグ集計。市場予想の営業利益率は営業利益1,626億円÷売上高3,400億円で計算。

上振れは売上高だけでなく利益率にも表れた

売上高の上振れ率が約8.1%だったのに対し、営業利益は約16.8%上振れました。市場予想から計算した営業利益率は約47.8%ですが、実績は51.7%です。

市場予想との差の中心は、販売数量だけではなく、売上ミックスと採算性にあったと考えられます。会社は営業増益の理由として「増収および売上ミックスの良化」を挙げています。ただし、製品別の利益率は開示されていないため、どの製品が何ポイント利益率を押し上げたかまでは分かりません。

上方修正後の通期予想も発表前コンセンサスを上回った

決算前の通期コンセンサスは、売上高1兆5,128億円、営業利益7,017億円でした。これに対し、会社は売上高を1兆7,140億円、営業利益を8,460億円へ上方修正しました。

項目修正後会社予想発表前コンセンサス差額コンセンサス比
売上高1兆7,140億円1兆5,128億円2,012億円約13.3%上回る
営業利益8,460億円7,017億円1,443億円約20.6%上回る

注:発表前コンセンサスはブルームバーグ集計。

今回の上方修正は、従来の会社予想を引き上げただけではありません。市場がすでに織り込んでいた強気予想も上回る水準です。特に営業利益の差が大きく、会社が市場よりも強い需要と採算性を見込んでいることが分かります。

なお、コンセンサスは集計時点や対象アナリストによって変わります。そのため、本記事では「2026年7月24日時点のブルームバーグ集計」と基準を明記し、会社の従来予想とは分けて比較しています。

売上高が前年同期比39.3%増えた理由

売上高が増えた最大の理由は、AI・HPC向けSoC半導体と高性能メモリの生産拡大により、テスタ本体から周辺機器、保守サービスまで需要が広がったことです。円安も業績を押し上げましたが、製品別売上を見ると実需の拡大が幅広く確認できます。

AI・HPC向けSoCテスタの販売が大幅に増加

SoCとは、演算処理や通信など複数の機能を1つの半導体に集積した製品です。AIアクセラレーター、CPU、ASICなどの高性能半導体が代表例で、アドバンテストはこれらが設計どおり動くかを量産工程で検査するテスタを提供しています。

AI関連半導体では、生産数量が増えるほど検査する個数が増えます。それだけでなく、回路の複雑化、高速化、消費電力の増加、先端パッケージの採用によって、確認すべき項目や検査時間も増えます。つまり、「半導体の数量増加」と「1個当たりのテスト負荷上昇」の両方がテスタ需要を押し上げる構造です。

第1四半期のSoCテストシステム売上高は約2,596億円となり、前年同期の約1,913億円から約35.7%増えました。会社は、複雑化するAI・HPC関連半導体の生産数量拡大により、顧客の積極的な設備投資が続いたと説明しています。

高性能DRAMに加えて不揮発性メモリ向けも伸長

AIサーバーでは、計算を担うGPUやASICだけでなく、大量のデータを高速に受け渡す高性能メモリも必要です。このため、データセンター投資が拡大すると、SoCテスタとメモリテスタの双方に需要が波及します。

メモリテストシステムの第1四半期売上高は約480億円で、前年同期の約335億円から約43.3%増えました。高性能DRAM向けを中心に製品販売が伸び、不揮発性メモリ向けも増収となっています。成長がSoCだけに偏らず、メモリ分野にも広がっている点は今回の決算の強さを示します。

製品・サービス2027年3月期1Q前年同期増減率主な増収要因
SoCテストシステム約2,596億円約1,913億円約35.7%増AI・HPC向け高性能SoCの数量増加と複雑化
メモリテストシステム約480億円約335億円約43.3%増高性能DRAM、不揮発性メモリ向け販売
その他システム約260億円約158億円約64.6%増テストハンドラ、デバイスインタフェースなど
サポート・サービス約203億円約139億円約46.0%増設置台数増加に伴う保守需要
サービス他のその他約136億円約93億円約46.2%増テスト用インタフェースボードなど

注:決算説明資料の10億円単位の数値から作成しているため、決算短信のセグメント合計と端数が一致しない場合があります。

テスタ本体の増加が周辺機器とサービスにも波及

半導体テストでは、テスタ本体だけでなく、半導体を搬送するテストハンドラや、テスタと被測定物をつなぐデバイスインタフェースが必要です。テスタの稼働台数が増えると、消耗品、交換部品、保守サービスの需要も増えます。

サービス他部門の売上高は前年同期比46.0%増の339億1,100万円、セグメント利益は同216.4%増の85億6,300万円でした。前年同期の利益には事業の一部譲渡益約25億円が含まれていたにもかかわらず大幅増益となっており、設置台数の拡大が継続収益につながり始めていると見られます。

海外売上比率99.1%のため円安も押し上げ要因

第1四半期の平均為替レートは1ドル159円で、前年同期の146円から13円の円安でした。ユーロも162円から185円へ円安が進みました。海外売上比率は99.1%に達しているため、外貨建て売上を円換算する際の押し上げ効果も大きかったと考えられます。

もっとも、会社は製品数量、製品構成、為替の寄与額を個別には開示していません。したがって、増収のすべてをAI需要だけで説明することも、円安だけで説明することも適切ではありません。製品別売上の増加と為替の両方が寄与したと見るのが妥当です。

営業利益が前年同期比53.3%増えた理由

営業利益が売上高以上に伸びた主因は、売上ミックスの良化で粗利率が上昇し、増加した売上総利益が販売管理費の増加を大きく上回ったことです。円安も利益を押し上げました。

項目2027年3月期1Q前年同期増減
売上総利益2,555億5,300万円1,716億3,800万円839億1,500万円増
売上総利益率69.5%65.1%4.4ポイント上昇
販売費及び一般管理費662億4,700万円505億1,400万円157億3,300万円増
営業利益1,899億9,000万円1,239億5,200万円660億3,800万円増
営業利益率51.7%47.0%4.7ポイント上昇

売上ミックスの良化で売上総利益率が69.5%へ上昇

会社は増益理由として、増収に加えて「売上ミックスの良化」を挙げています。第1四半期はAI・HPC向けの高性能SoCテスタや高性能DRAM向け製品が増えました。これらの高付加価値製品の構成比上昇が、粗利率改善に寄与したと考えられます。

売上総利益率は前年同期の65.1%から69.5%へ4.4ポイント上昇しました。売上高が1,036億9,700万円増えたうえに、売上1円当たりに残る粗利益も増えたことが、営業利益の大幅増加につながっています。

ただし、アドバンテストは製品別の利益率を開示していません。そのため、「AI向け製品の利益率が何%だったか」まで断定することはできません。公式資料で確認できるのは、全社の売上ミックスが良化したという点です。

販売管理費は増えたが、売上総利益の増加が上回った

販売費及び一般管理費は前年同期から157億3,300万円増えました。研究開発費、人件費、生産能力拡大に伴う費用などが増えていると考えられますが、売上総利益は839億1,500万円増えています。

事業規模が拡大すると、研究開発や管理部門などの固定的な費用を、より大きな売上で吸収しやすくなります。今回の決算では、費用を増やしながらも、それ以上の粗利益を生み出したことで営業レバレッジが働いたと整理できます。

第1四半期の研究開発費は215億円で、前年同期の171億円から増えました。それでも売上高に対する比率は6.5%から5.9%へ低下しています。投資を抑えて利益を作ったのではなく、売上の伸びが研究開発費の伸びを上回った形です。

円安は営業利益にも寄与したが、通貨によって影響が異なる

会社は通期の為替感応度について、対ドルで1円の円安が営業利益を約53億円押し上げる一方、対ユーロでは1円の円安が約4億円のマイナス影響になると説明しています。売上通貨と費用通貨の組み合わせが異なるため、すべての通貨で円安が同じ方向に働くわけではありません。

第1四半期はドル、ユーロとも前年同期より円安でしたが、会社は「対米ドルでの円安進行も業績へ寄与した」と説明しています。本業の需要拡大と製品構成改善が中心で、ドル円も追い風になったと見るのが適切です。

税引前利益と純利益が約2倍になった理由

税引前利益と純利益の増加率が営業利益を大きく上回ったのは、戦略投資に関連する金融商品の評価益410億7,500万円が計上されたためです。本業も大幅増益ですが、最終利益の伸びをすべて継続的な収益と考えないことが重要です。

本業の営業利益だけでも660億3,800万円増加

営業利益は前年同期から660億3,800万円増えました。金融収益を含めなくても、AI関連テスタ需要と利益率改善によって本業が大きく成長しています。今回の決算を評価するうえで、まずこの営業増益を確認する必要があります。

金融商品の評価益が税引前利益を押し上げた

金融収益は前年同期の6億9,300万円から446億8,000万円へ急増しました。このうち410億7,500万円が、戦略投資に関連する金融商品の評価益です。会社は対象となる金融商品の詳細を今回の資料で明らかにしていません。

評価益は、保有する金融商品の公正価値が上昇したことで会計上認識された利益です。売却して得た利益とは限らず、市場価格が下がれば翌四半期以降に評価損へ反転する可能性もあります。したがって、営業利益53.3%増は本業の成長、純利益93.8%増には一時的な押し上げも含まれると分けて考えます。

営業キャッシュフローは増加し、本業の現金創出力も改善

営業活動によるキャッシュフローは前年同期の468億5,100万円から1,371億5,500万円へ増加しました。税引前利益の増加に加え、営業債権の回収や前受金の増加が寄与しています。利益だけでなく、営業活動から得られる現金も増えています。

一方、投資活動によるキャッシュフローは1,025億4,800万円の支出でした。主な要因は負債性金融商品の取得878億1,700万円です。その結果、会社の定義によるフリーキャッシュフローは約346億円となり、前年同期の約434億円を下回りました。

フリーキャッシュフローの減少は、本業の現金創出力が悪化したためではなく、金融商品の取得による投資支出が増えた影響が大きいと読み取れます。評価益とキャッシュフローを分けて確認すると、利益の質を誤解しにくくなります。

なぜ通期業績予想を大幅に上方修正したのか

通期予想を上方修正した理由は、推論AI向け半導体のテスト需要が4月時点の想定を大きく上回り、テスタ市場の見通し自体を引き上げたためです。第1四半期の好調な実績に加え、生産能力を前倒しで増強し、需要を売上として取り込める見通しが高まったことも背景にあります。

推論AI向けASIC・CPU・DRAMの需要が想定以上

AI半導体の需要は、大規模モデルを作る「学習」向けだけではありません。学習済みのAIを使って文章生成、画像認識、検索、業務処理などを実行する段階を「推論」と呼びます。AIサービスの利用が増えると、推論処理を担うASICやCPU、それらに接続するDRAMの生産数量も増えます。

会社は、推論AI関連のASIC、CPU、DRAM向けテスタ需要が、2026年4月時点の想定を上回ると説明しています。特定の学習用GPUだけではなく、推論用の多様な半導体へ需要が広がったことが、見通し引き上げの中心です。

2026年のテスタ市場予想を中間値で約19%引き上げ

アドバンテストは、2026年のテスタ市場規模予想を、4月時点の109億~122億ドルから130億~145億ドルへ引き上げました。レンジの中間値では約19%の上方修正です。

市場2026年4月時点2026年7月時点中間値の変化
SoCテスタ87億~95億ドル105億~115億ドル約20.9%増
メモリテスタ22億~27億ドル25億~30億ドル約12.2%増
合計109億~122億ドル130億~145億ドル約19.0%増

SoCテスタの引き上げ幅が特に大きく、推論AI向けの需要増が市場見通しを変えたことが分かります。会社は2026年のテスタ市場が過去最大規模になると予想しています。

生産能力の増強を前倒しし、需要を売上へつなげる

半導体テスタは需要が強いだけでは売上になりません。部品調達、組み立て、検査、納入までの供給能力が必要です。第1四半期もサプライチェーン全体で生産能力の拡大を進め、旺盛な需要に対応しました。

会社は市場の急成長を受け、生産能力増強を前倒しするとしています。需要見通しの引き上げに加え、その需要を取り込める供給体制の見通しが立ったことが、売上高1兆7,140億円という大幅な上方修正を可能にしました。

第1四半期の実績で需要の強さを確認できた

上方修正は将来の期待だけに基づくものではありません。第1四半期で売上高3,674億7,300万円、営業利益1,899億9,000万円を計上し、いずれも四半期として過去最高となりました。

会社は、テスタ市場の見通しと第1四半期の業績進捗を踏まえて通期予想を修正しています。すでに受注・出荷として表れた需要と、今後の市場拡大の両方を反映した上方修正です。

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上方修正後の通期予想をどう見る?

売上高よりも利益の修正率が大きく、会社は需要拡大だけでなく、高い採算性も従来想定より長く続くと見込んでいます。一方、第1四半期の利益率を年間でそのまま維持する計画ではなく、下期は利益率の低下を織り込んでいます。

項目従来予想修正後予想増減額修正率前期比
売上高1兆4,200億円1兆7,140億円2,940億円20.7%増額51.9%増
営業利益6,275億円8,460億円2,185億円34.8%増額69.5%増
税引前利益6,290億円8,910億円2,620億円41.7%増額72.4%増
純利益4,655億円6,600億円1,945億円41.8%増額75.8%増
基本的EPS641.61円911.64円270.03円77.0%増

売上高より利益の修正幅が大きい

売上高の修正率20.7%に対し、営業利益は34.8%、純利益は41.8%の上方修正です。営業利益率の予想も44.2%から49.4%へ5.2ポイント引き上げられました。

これは会社が、販売数量の増加だけでなく、AI向け高性能テスタを中心とした製品構成の改善も続くと見ていることを示します。ただし、純利益予想には金融収益の見通しも影響するため、継続的な収益力の判断では営業利益予想を重視します。

上方修正の約83%をSoCテスタ의売上引き上げが占める

事業別の予想を見ると、通期売上高の上方修正2,940億円のうち、SoCテストシステムの引き上げ額は2,440億円です。全体の約83%を占めます。今回の修正が、主に推論AI向けSoCテスタ需要を反映したものであることが数字からも確認できます。

事業・製品従来予想修正後予想引き上げ額全社修正額への寄与
SoCテストシステム9,995億円1兆2,435億円2,440億円約83.0%
メモリテストシステム2,010億円2,270億円260億円約8.8%
その他システム965億円1,045億円80億円約2.7%
サービス他1,230億円1,390億円160億円約5.4%
合計1兆4,200億円1兆7,140億円2,940億円100.0%

注:決算説明資料の事業別予想から計算。端数処理により合計が一致しない場合があります。

第2四半期は第1四半期を上回る売上高・営業利益を計画

会社は第2四半期に売上高4,345億円、営業利益2,245億円を見込んでいます。第1四半期の実績を上回る計画で、上方修正は第1四半期の上振れを反映しただけではありません。

期間売上高営業利益営業利益率
第1四半期実績3,674億7,300万円1,899億9,000万円51.7%
第2四半期会社予想4,345億円2,245億円51.7%
上期会社予想8,020億円4,145億円51.7%
下期会社予想9,120億円4,315億円47.3%
通期会社予想1兆7,140億円8,460億円49.4%

第1四半期の通期進捗率は売上高約21.4%、営業利益約22.5%で、単純な4分の1を下回ります。しかし、会社は第2四半期を第1四半期以上と見込んでいるため、進捗率だけを見て弱いと判断するのは適切ではありません。上期会社予想に対する営業利益の進捗率は約45.8%です。

下期は営業利益率47.3%へ低下する計画

上期の営業利益率予想51.7%に対し、下期は47.3%です。通期でも49.4%と高水準ですが、第1四半期の51.7%が年間を通じて続く計画ではありません。

会社は通期の研究開発費を従来予想の1,000億円から1,100億円へ、設備投資を450億円から500億円へ引き上げました。生産能力増強や次世代製品への投資を加速する方針です。短期の利益を最大化するだけでなく、需要取り込みと将来の競争力に費用を振り向ける計画といえます。

ただし、会社は下期の利益率が下がる要因を個別に数値開示していません。研究開発費や能力増強費用、製品構成、為替前提などがどの程度影響するかは、次回以降の決算で確認する必要があります。

今後の業績で注意したい点

需要見通しは強いものの、部材供給、生産能力、為替、金融商品の評価変動など、会社計画を下振れさせる要因もあります。好調な数字だけでなく、成長を実際の売上と利益へ変えられるかを確認することが大切です。

部材・メモリ・先端パッケージの供給制約

会社は、メモリ半導体などの主要部品で需要が供給を上回っていると説明しています。先端パッケージング能力やメモリ供給が不足すると、顧客側の半導体生産が遅れ、テスタ需要の計上時期にも影響する可能性があります。

アドバンテスト自身もサプライチェーン全体で生産能力を増強しています。需要不足よりも、需要に供給が追いつくかが当面の重要課題です。

棚卸資産の増加は成長対応と在庫リスクの両面がある

第1四半期末の棚卸資産は前期末から約419億円増え、2,736億5,400万円となりました。旺盛な需要や生産能力拡大に備えて部材・製品を確保している面があると考えられます。

一方、需要予想が急に変われば在庫負担となる可能性もあります。次回決算では、売上成長と棚卸資産の増加が釣り合っているか、納期や供給制約が改善しているかを確認します。

会社の為替前提と実勢レートの差

第2四半期以降の会社前提は1ドル150円、1ユーロ170円です。第1四半期の実績159円、185円より円高を想定しています。ドル円が会社前提より円高になれば営業利益の下押し要因になり、円安になれば上振れ要因になり得ます。

ただし、ユーロは円安が営業利益にマイナスとなる感応度が示されているため、為替の影響は通貨別に見る必要があります。

金融商品の評価益は継続性が低い

第1四半期の税引前利益と純利益を押し上げた410億7,500万円の評価益は、今後も同額が続くとは限りません。市場価格の変動によって利益にも損失にもなる可能性があります。

次回決算でも、営業利益と金融収益を分けて確認することが重要です。純利益だけを見ると、本業の変化を見誤る可能性があります。

AI投資の拡大が続くか

今回の上方修正は推論AI向け需要の拡大が中心です。AIサービスの普及が続き、ASIC、CPU、DRAMの生産数量が増えればテスタ需要を支えます。一方、データセンター投資の延期、顧客の設備投資計画変更、AI半導体の供給過剰が起きれば成長率が鈍る可能性があります。

現時点では会社は市場拡大を見込んでいますが、市場規模予想が短期間で大きく引き上げられた分、今後の変化も大きくなりやすい点には注意が必要です。

次回決算で確認したいポイント

次回の2027年3月期第2四半期決算は2026年10月に発表される予定です。2026年7月29日時点では具体的な日付と発表時間は公表されていません。次回は、第2四半期の会社計画を達成できるかに加え、上方修正の前提が維持されているかを確認します。

  • 第2四半期の売上高4,345億円、営業利益2,245億円を達成できるか
  • 推論AI向けASIC・CPUのSoCテスタ需要がさらに拡大しているか
  • 高性能DRAMと不揮発性メモリ向け販売が計画どおり伸びているか
  • 生産能力増強によって納期や供給制約が改善しているか
  • 金融商品の評価損益を除いた営業利益がどの程度伸びたか
  • 上期営業利益率51.7%と下期47.3%の見通しに変更がないか
  • 研究開発費・設備投資の増額が、受注・供給能力・将来製品につながっているか
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まとめ

アドバンテストの2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比39.3%増、営業利益が53.3%増となり、市場予想も上回りました。特に営業利益はコンセンサスを約16.8%上回り、売上高だけでなく利益率も市場の想定以上に改善しています。

業績拡大の中心は、推論AI向けを含む高性能SoC半導体の数量増加と複雑化、高性能DRAM向け需要、周辺機器・サービスへの波及です。2026年のテスタ市場予想も中間値で約19%引き上げられ、通期売上高の上方修正額の約83%をSoCテスタが占めています。

一方、純利益の伸びには金融商品の評価益が含まれ、第1四半期の高い利益率を通期でそのまま維持する計画でもありません。今後は、需要の強さに生産能力が追いつくか、第2四半期の会社計画を達成できるか、営業利益と一時的な金融損益を分けて確認することが重要です。

出典

2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.advantest.com/ja/investors/ir-library/result/

2026年度(2027年3月期)第1四半期決算説明会資料
https://www.advantest.com/ja/investors/ir-library/result/

通期連結業績予想の修正に関するお知らせ
https://www.advantest.com/ja/investors/ir-library/result/

IRカレンダー|株式会社アドバンテスト
https://www.advantest.com/ja/investors/ir-calendar/

アドバンテスト、急落株価の回復困難? 29日決算 AIブーム継続に疑念|IG証券(ブルームバーグ集計の市場予想を掲載)
https://www.ig.com/jp/news-and-trade-ideas/Advantest-202604-06-earnings-report-preview-260724

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