銀行株は、日銀の金融政策正常化を背景に収益環境が大きく変わっています。2026年6月には政策金利が1.0%程度まで引き上げられ、7月末時点でも同水準が維持されています。一方で、金利上昇を材料に銀行株の評価が切り上がってきたため、「まだ上がるのか」「利上げが止まったら売りなのか」と判断が難しくなっている局面です。
2026年8月時点では、銀行の基礎的な収益力は改善が続き、貸出残高も増加しています。ただし、今後の株価は政策金利だけでは決まりません。貸出金利と預金金利の差、貸出数量、信用コスト、保有債券の損益、株主還元、ROEとPBRのバランスまで確認する必要があります。
銀行株の先行きを考えるうえでは、「金利が上がるか」から一歩進み、「高くなった金利を利益成長につなげられるか」が重要になります。
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銀行株は今後どうなる?2026年の見通し

2026年の銀行株は、収益環境そのものは引き続き良好ですが、株価の上昇余地は以前より選別されやすいと考えられます。日銀の政策金利は1.0%程度まで上昇し、銀行が貸出から得る金利も上がっています。全国銀行協会によると、2026年6月末の全国銀行の貸出金は前年同月末比4.7%増となり、58か月連続で増加しました。金利の上昇だけでなく、貸出数量も増えている点は銀行収益にとってプラスです。
日本銀行の「2025年度の銀行・信用金庫決算」でも、大手行と地域銀行の当期純利益は増益となり、円金利上昇などを背景にコア業務純益が改善したとされています。つまり、金利正常化は期待だけではなく、実際の業績にも反映され始めています。
ただし、金利が上がるほど無条件に銀行株が上がるわけではありません。預金金利の引き上げで調達コストも上がるほか、景気が悪化すれば貸し倒れが増えます。長期金利が急上昇すれば、保有する国債などの評価損も拡大します。2026年後半は、利上げの有無だけではなく、金利上昇による利益の増加と副作用のどちらが強いかを見極める局面です。
| 確認項目 | 2026年8月時点の状況 | 銀行株への意味 |
|---|---|---|
| 日銀の政策金利 | 1.0%程度 | 追加利上げ余地は追い風だが、最終到達点が近づくほど期待先行の上昇は弱まりやすい |
| 全国銀行の貸出金 | 2026年6月末で前年同月比4.7%増 | 金利上昇に数量増加が加われば資金利益が伸びやすい |
| 国内銀行の貸出約定平均金利(ストック・総合) | 2026年1月1.235% → 6月1.452% | 既存貸出にも金利上昇が徐々に浸透 |
| 銀行の基礎収益力 | コア業務純益は改善 | 金利正常化が実際の利益成長につながっている |
| 主なリスク | 預金コスト・信用コスト・円債評価損 | 金利上昇のメリットを相殺する可能性がある |
銀行株は「利上げ期待」から「利益成長」を見る局面へ
2024年のマイナス金利解除以降、銀行株は「金利のある世界」に戻ること自体が評価材料になってきました。超低金利下では貸出利ざやを確保しにくく、国内銀行の収益力には構造的な下押し圧力がかかっていました。その状況が変わり、政策金利や市場金利が上昇したことで、預貸金収益の改善期待が銀行株の再評価につながりました。
しかし、2026年は金利正常化の初期段階ではありません。政策金利はすでに1.0%程度まで上昇しており、銀行の貸出金利も上がっています。今後の株価上昇には、「さらに金利が上がりそう」という期待だけではなく、資金利益や純利益、ROEが実際に伸び続けることが必要です。
そのため、銀行株を見る軸は、政策金利から業績へ徐々に移ります。追加利上げがなくても高い金利水準が維持され、貸出金利の上昇が既存貸出に浸透していけば利益は伸びる可能性があります。反対に、追加利上げがあっても預金金利の上昇や信用コストの増加が大きければ、期待ほど利益が増えないことがあります。
銀行株が今後も上がる可能性がある理由
銀行株に追い風となる材料は、追加利上げだけではありません。2026年後半は、金利水準、貸出単価、貸出数量、株主還元が同時に改善するかが重要です。複数の要因が重なれば、金利正常化をきっかけに始まった利益成長が続き、株価にも上昇余地が生まれます。
日銀の追加利上げで金利上昇が続く可能性
日銀が追加利上げを進めれば、銀行株には引き続き追い風となる可能性があります。銀行の貸出金利は、短期プライムレートや市場金利などを通じて政策金利の影響を受けます。政策金利が上がると、新規貸出だけでなく、変動金利型や金利更改を迎えた既存貸出にも高い金利が反映されやすくなります。
2026年6月に政策金利は1.0%程度へ引き上げられました。追加利上げが実施されれば、貸出金利の上昇余地がさらに広がります。特に、預金を低コストで安定的に集められる銀行ほど、貸出金利の上昇を資金利益につなげやすくなります。
一方で、政策金利が高くなるほど「あと何回利上げできるのか」という最終到達点も意識されます。銀行株にとって最も強い局面は、金利が上がること自体よりも、追加利上げ余地が残り、かつ景気が崩れない状態です。利上げの終盤では、政策期待による株価上昇より、実際の業績成長が重要になります。
貸出金利の上昇で利ざや改善が続く
銀行の本業収益を見るうえで重要なのが、貸出金利と資金調達コストの差です。日銀の統計では、国内銀行の貸出約定平均金利(ストック・総合)は2026年1月の1.235%から6月には1.452%へ上昇しました。都市銀行も1.250%から1.500%、地方銀行も1.178%から1.373%へ上昇しています。
貸出金利はすべての融資で一斉に上がるわけではありません。固定金利の貸出は契約期間中の金利が変わらず、変動金利や金利更改を迎えた融資から徐々に上昇が反映されます。そのため、政策金利の引き上げから実際の貸出金利上昇、さらに銀行の利益改善までには時間差があります。
この時間差は、追加利上げが止まった後でも銀行利益が一定期間改善する可能性を意味します。政策金利が据え置かれても、既存貸出の金利更改が進み、貸出ポートフォリオ全体の利回りが上がれば、資金利益は伸びる余地があります。
貸出残高が増えれば金利上昇×数量増加になる
銀行の収益は金利だけでなく、どれだけ貸し出しているかにも左右されます。貸出金利が上がっても貸出残高が大きく減れば、収益改善は限定的です。反対に、貸出金利と貸出残高が同時に増えれば、「単価上昇×数量増加」の効果が期待できます。
全国銀行協会によると、2026年6月末の全国銀行の貸出金は前年同月末比4.7%増でした。都市銀行は5.2%増、地方銀行は4.2%増、地方銀行IIも4.2%増となっています。日本銀行の金融システムレポートでも、企業の資金需要が増加するなか、国内・海外向け貸出が増加しているとされています。
設備投資、M&A、不動産投資、運転資金などの資金需要が維持されれば、銀行は高くなった貸出金利をより大きな貸出残高に適用できます。今後の銀行株では、政策金利だけを見るのではなく、貸出残高が伸び続けているかを確認することが重要です。
増配・自社株買いなど株主還元も株価を支える
利益成長に加えて、増配や自社株買いも銀行株を支える材料です。銀行は規制上必要な自己資本を確保する必要がありますが、利益が増えて資本余力が拡大すれば、成長投資と株主還元の両立がしやすくなります。
三菱UFJフィナンシャル・グループは2025年度に親会社株主純利益2兆4,272億円、ROE11.3%を記録し、2026年度の年間配当を96円と予想しています。さらに上期に上限1,000億円の自己株式取得を決議しています。三井住友フィナンシャルグループも累進的配当と配当性向40%を掲げ、2026年度の配当予想を180円とし、2026年5月には1,800億円の自己株式取得を公表しました。みずほフィナンシャルグループも2026年度に合計2,000億円の自己株式取得を決議しています。
自社株買いはEPS算定上の株式数を減らし、1株当たり利益の押し上げにつながります。取得した自己株式を消却すれば、発行済株式総数も減少します。銀行株の上昇余地を判断するときは、利益が増えているかだけでなく、その利益をどの程度株主へ還元しているかも確認したいポイントです。
地銀では再編・M&Aも株価材料になる
地方銀行では、金利上昇に加えて再編やM&Aも株価材料になることがあります。地域によって人口や企業数が減少するなか、同じ営業地域で複数の銀行が競争を続けると、長期的には貸出量や手数料収入の確保が難しくなる場合があります。
経営統合や持株会社化が進めば、店舗・システムなどの重複コストを削減し、営業基盤を広げられる可能性があります。また、資本効率や株主還元を改善するきっかけになることもあります。国内預貸金の比重が高い地方銀行では、メガバンクと比べて国内金利上昇の影響が業績に表れやすいケースがある一方、再編期待という独自の株価材料を持つ点も特徴です。
ただし、再編が行われれば必ず企業価値が上がるわけではありません。統合コストやシステム移行、地域経済の弱さなどもあるため、再編期待だけではなく、統合後にROEや収益性を改善できるかを見る必要があります。
銀行株が今後下がる可能性・上昇が止まるリスク
銀行株の追い風となってきた金利上昇には、副作用もあります。利上げが終われば期待による評価拡大が止まりやすく、利上げが進みすぎれば借り手の負担増や債券評価損につながります。銀行株を保有するうえでは、金利上昇のメリットだけでなく、どこからデメリットが大きくなるかを確認することが重要です。
日銀の利上げが打ち止めになる
銀行株の上昇が鈍化するきっかけの一つが、日銀の利上げ打ち止めです。追加利上げ期待が強い間は、将来の貸出金利上昇や利ざや改善を先回りして株価に織り込む動きが起こりやすくなります。ところが、市場が「政策金利はこの水準が上限」と判断すると、金利上昇を理由にPBRが切り上がる余地は小さくなります。
ただし、利上げが止まったからといって、銀行の利益がすぐに減るわけではありません。政策金利が高い水準で維持されれば、貸出金利の高止まりや既存貸出の金利更改によって収益改善が続く可能性があります。重要なのは、利上げの回数ではなく、最終的な金利水準と、その水準でどれだけ利益を稼げるかです。
そのため、利上げ打ち止めは「即売り」のサインではなく、銀行株の評価軸が政策期待から実績へ完全に移るタイミングと考えた方が分かりやすいでしょう。
預金金利が上がり利ざや改善が鈍化する
銀行は貸出金利が上がる一方で、預金金利も引き上げる必要があります。預金は銀行にとって主要な資金調達手段であり、他行が普通預金や定期預金の金利を引き上げれば、預金流出を防ぐために追随する圧力が強まります。
金利上昇の初期は、貸出金利の上昇が預金金利の上昇を上回りやすく、利ざやが拡大しやすい局面です。しかし、預金獲得競争が強まり、調達コストの上昇が追いつくと、利ざや改善のペースは鈍化します。特に、金利に敏感な顧客が多い銀行や、高い預金金利を武器に残高を増やしている銀行では注意が必要です。
決算では貸出金利だけでなく、預金利回りや資金調達コスト、国内預貸金利ざやの推移を確認すると、金利上昇の恩恵がまだ続いているか判断しやすくなります。
景気悪化で信用コストが増加する
銀行にとって大きなリスクが信用コストの増加です。金利上昇は銀行の利息収入を増やす一方、企業や個人の返済負担も増やします。景気が弱い状態で金利だけが上がると、資金繰りが厳しい企業の倒産や債務不履行が増え、銀行は貸倒引当金などの費用を計上する必要があります。
日本銀行の2026年4月の金融システムレポートでは、企業の倒産・デフォルトや住宅ローン延滞率、金融機関の金利耐性に現時点で大きな変化はみられないとされています。また、金融システム全体としては安定性を維持しているとの評価です。現状では、信用コストが銀行の利益改善を大きく打ち消している状況ではありません。
ただし、利上げが進んだ後ほど借り手への負担は蓄積します。銀行株の弱気シナリオを考えるときは、「利下げに転じるか」だけでなく、企業倒産、貸倒引当金、与信費用が増えていないかを早めに確認することが重要です。
金利の急上昇で保有債券の含み損が増える
銀行は貸出だけでなく、国債や社債などの有価証券も保有しています。市場金利が上昇すると既発債券の価格は下落するため、保有債券の評価損・含み損が拡大しやすくなります。金利上昇は貸出収益にはプラスでも、債券ポートフォリオにはマイナスとなる場合があるため、銀行全体では両方を見る必要があります。
日本銀行は2026年4月の金融システムレポートで、円金利上昇により円債の評価損が拡大していると指摘しています。一方で、金融機関は円債残高の削減やデュレーションの短期化を進めており、銀行勘定全体の円貨金利リスクは自己資本対比で低位に抑制されているとも評価しています。
したがって、現時点で銀行システム全体の問題とみる必要はありませんが、個別銀行では保有債券の構成や金利感応度に差があります。特に地銀を比較するときは、貸出利ざやだけでなく、有価証券評価損益や債券のデュレーションも確認したいポイントです。
銀行株の割安感が薄れる
業績が良くても、株価がそれ以上の速さで上昇すれば投資余地は小さくなります。銀行株は長くPBR1倍割れの銘柄が多く、「割安株」として見られてきました。しかし、金利正常化と利益成長を織り込んでPBRが上昇すれば、単純な割安修正だけで買われる局面は終わります。
ここから重要なのは、PBRの水準そのものではなく、ROE改善と見合っているかです。ROEが5%から10%へ改善する銀行と、ROEがほとんど変わらない銀行では、同じPBRでも評価の意味が異なります。利益成長を伴わずに株価だけが上がるほど、決算で期待に届かなかったときの下落リスクも大きくなります。
銀行株はどこまで上がる?
銀行株がどこまで上がるかを一律の株価で示すことはできません。メガバンク、地方銀行、ネット銀行では収益構造も成長率も異なり、同じ金利環境でも利益への影響が違うためです。上昇余地を判断するには、PBRだけでなくROEや利益成長との関係を見る必要があります。
「PBR1倍」が銀行株の上限とは限らない
銀行株では「PBR1倍」が一つの目安として意識されやすいですが、1倍に到達したら必ず割高というわけではありません。PBRは、企業が保有する純資産に対して株式市場がどの程度の価値を付けているかを示す指標です。
継続的に高いROEを稼ぎ、資本コストを上回る収益性を維持できる企業であれば、純資産以上の企業価値が認められ、PBR1倍を超える評価も合理的です。反対に、PBRが1倍未満でもROEが低下し続け、利益成長が期待できなければ、必ずしも割安とはいえません。
銀行株の上昇余地を考えるときは、「PBR1倍まであと何%あるか」ではなく、その銀行がどこまでROEを高め、そのROEを持続できるかを確認する方が重要です。
銀行株はROEとPBRをセットで見る
ROEは自己資本を使ってどれだけ利益を稼いだかを示す指標です。銀行は預金や貸出を中心に大きなバランスシートを持つため、資本効率の改善が株価評価に直結しやすい業種です。
金利上昇によって資金利益が増え、手数料収入や海外事業も伸び、同時に余剰資本を自社株買いで圧縮できれば、ROEは高まりやすくなります。実際、MUFGは2025年度にROE11.3%を記録しており、過去の低金利期と比べて銀行の収益構造が変わっていることを示す一例です。
今後の銀行株では、PBR上昇をROE改善が追いかけているかが重要です。ROEの改善が続く間は評価切り上げの余地がありますが、ROEが頭打ちなのにPBRだけが上昇する局面では、期待先行になっている可能性があります。
株価上昇と利益成長のどちらが速いかを確認する
銀行株の割高・割安を判断するときは、株価と利益の伸びを比較すると分かりやすくなります。株価が大きく上昇していても、1株当たり利益やROEが同じように伸びていれば、バリュエーションの割高感は必ずしも強まりません。
反対に、利益が10%程度しか伸びていないのに株価が大幅に上昇していれば、将来の追加利上げや利益成長を先に織り込んでいる可能性があります。その状態で利上げ打ち止めや決算下振れが起きると、期待が剥落して株価が調整しやすくなります。
「銀行株はまだ上がるか」を判断するときは、株価チャートだけではなく、純利益、EPS、ROE、PBRの変化を並べて確認すると、利益成長による上昇なのか、期待による評価拡大なのかを見分けやすくなります。
銀行株の買い時はいつ?
銀行株の買い時は、単純に「日銀が利上げした日」ではありません。金融政策は事前に市場へ織り込まれるため、発表時点ではすでに株価が上昇していることもあります。買い時を考えるなら、業績の改善余地と株価に織り込まれた期待の差を見る必要があります。
利益成長に対して株価が調整した局面
比較的狙いやすいのは、銀行の業績見通しが悪化していないにもかかわらず、相場全体の下落や短期的な利益確定で銀行株が調整した局面です。貸出金利、貸出残高、信用コスト、株主還元などの前提が維持されているなら、株価下落によってバリュエーションだけが低下します。
一方、金利低下や信用コスト増加など、銀行の利益前提そのものが崩れている下落は、単純な押し目とはいえません。株価が下がった理由と、利益見通しが変化したかを分けて考えることが重要です。
追加利上げ期待が再び高まった局面
物価や賃金が強く、日銀の追加利上げ余地が再び意識される局面も銀行株の追い風です。特に、政策金利の予想だけでなく、短期金利や長期金利が上昇し、銀行の貸出金利にも反映される環境なら、利益改善期待が高まりやすくなります。
ただし、利上げ観測だけで急騰した局面では、高値を追うほど期待剥落のリスクが高まります。追加利上げが実際に資金利益をどの程度押し上げるのか、預金コストの上昇を上回れるかを確認したいところです。
決算で利ざや・貸出・利益見通しが上振れした局面
銀行株では、決算で利益成長が確認できた後も上昇余地が残る場合があります。重要なのは、最終利益だけではなく、国内預貸金収益、貸出残高、預貸金利ざや、信用コストなど本業の指標が改善しているかです。
さらに、通期利益予想の上方修正、増配、自社株買いが同時に発表されれば、利益成長と株主還元の両方が評価されやすくなります。決算をきっかけに銀行の収益力に対する市場評価が変わる局面は、単なる金利テーマより持続性のある上昇につながりやすいと考えられます。
銀行株の売り時はいつ?
銀行株の売り時は、株価が上がったかどうかだけで決めるより、上昇を支えてきた前提が崩れたかで判断する方が合理的です。特に、利上げ余地、利ざや、信用コスト、ROEとバリュエーションの4点は、銀行株の利益成長と評価を直接左右します。
利上げ余地が小さくなったとき
日銀の利上げ余地が小さくなると、将来の金利上昇を先取りした買いは入りにくくなります。政策金利が最終到達点に近づき、市場がそれ以上の利上げをほぼ織り込まなくなると、銀行株は「金利が上がるから買う」局面から「利益が増えるから持つ」局面へ移ります。
この変化だけで直ちに売る必要はありませんが、利益成長率が鈍る一方で株価が高値圏にある場合は、期待リターンが低下している可能性があります。追加利上げの余地が減ったときは、保有理由を金利テーマから業績へ置き換えられるかを確認したいところです。
利ざやの改善がピークアウトしたとき
銀行株にとってより重要な売りシグナルは、政策金利の据え置きそのものより、利ざや改善のピークアウトです。貸出金利の上昇が止まり、預金金利や市場調達コストの上昇だけが続けば、資金利益の伸びは鈍化します。
決算で国内預貸金利ざやや資金利益の伸びが明確に鈍り、会社側も先行きの改善余地が小さいと説明するようになれば、金利正常化による利益成長が一巡した可能性があります。株価がまだ高い評価を維持している場合は、利益確定を検討する材料になります。
信用コストが想定以上に増えたとき
貸し倒れや引当金の増加で信用コストが想定を超えて増え始めた場合は、銀行株の強気シナリオを見直す必要があります。利ざやが改善していても、その利益を信用コストが打ち消せば、最終利益やROEは伸びません。
特に複数四半期にわたって信用コストが増加し、特定企業の一過性要因ではなく、景気悪化や企業倒産の増加が背景にある場合は注意が必要です。銀行株は景気敏感株でもあるため、金利だけ強くても信用環境が悪化すれば株価は下落しやすくなります。
ROE改善以上にPBRが上昇したとき
銀行株が大きく上昇した後は、ROE改善以上にPBRが上昇していないかを確認します。ROEが上がっている間はPBRの切り上がりを説明しやすいですが、収益性が横ばいになった後も評価だけが上がり続けると、将来の成長を先取りしすぎた状態になりやすくなります。
銀行株は高配当や自社株買いを理由に長期保有されることもありますが、株主還元を含めても期待リターンが小さくなった場合は、全部を持ち続ける必要はありません。利益成長とバリュエーションのバランスが崩れたときは、一部利益確定を含めて保有比率を見直す局面になります。
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2026年以降の銀行株を3つのシナリオで予想
銀行株の先行きは、追加利上げの有無だけで決まるわけではありません。政策金利、貸出需要、預金コスト、信用コストの組み合わせによって、同じ金利水準でも銀行の利益は大きく変わります。2026年以降は、強気・中立・弱気の3つのシナリオで考えると整理しやすくなります。
| シナリオ | 金利・景気 | 銀行収益 | 株価の見方 |
|---|---|---|---|
| 強気 | 追加利上げが続き、景気も大きく崩れない | 貸出金利上昇+貸出増加。信用コストは低位 | ROE改善が続けば上値を追う余地 |
| 中立 | 政策金利は1.0%前後で高止まりし、景気は緩やか | 利ざや改善は鈍化するが高い収益水準を維持 | 業績に沿った上昇・もみ合い。銘柄選別が強まる |
| 弱気 | 景気後退や金融緩和への転換 | 信用コスト増加、利ざや縮小。利益下振れ | バリュエーション調整を伴う下落リスク |
強気シナリオ:追加利上げと利益成長が続く
強気シナリオは、日銀が追加利上げを行っても国内景気が大きく崩れず、企業の資金需要が維持されるケースです。貸出金利がさらに上がり、貸出残高も増えれば、銀行の資金利益は「単価」と「数量」の両面から伸びます。
さらに、信用コストが低位にとどまり、増配や自社株買いが続けば、純利益と1株当たり利益の両方が伸びやすくなります。ROE改善が続くなら、PBRが上昇しても利益成長で正当化できるため、銀行株には追加の上昇余地があります。
このシナリオで重要なのは、単に政策金利が上がることではなく、金利上昇に銀行と借り手の双方が耐えられることです。利上げと景気拡大が両立する状態が、銀行株にとって最も強い環境です。
中立シナリオ:利上げは止まるが高金利環境が続く
中立シナリオは、政策金利が1.0%前後でいったん打ち止めになっても、利下げには転じず、高くなった金利水準が維持されるケースです。この場合、追加利上げ期待による株価上昇は弱まりやすいものの、銀行の利益がすぐに悪化するとは限りません。
既存貸出の金利更改が進めば、貸出ポートフォリオ全体の利回りはしばらく上昇する可能性があります。一方で、預金金利も徐々に上がるため、利ざや改善は次第に落ち着きます。結果として、銀行株はセクター全体が一斉に上がる相場から、貸出成長、手数料収入、株主還元、資本効率の差で選別される相場へ移りやすくなります。
2026年後半を考えるうえでは、この中立シナリオが重要です。「利上げが止まる=銀行株終了」と決めつけず、高い金利水準がどの程度利益に残るかを確認する必要があります。
弱気シナリオ:景気後退や利下げに転じる
弱気シナリオは、金利上昇の負担や外部ショックによって景気が悪化し、企業倒産や貸し倒れが増えるケースです。信用コストが増加すると、貸出金利上昇で得た利益が相殺され、純利益やROEが低下します。
景気悪化への対応で日銀が利下げに転じれば、貸出金利も低下方向に向かいます。債券価格の上昇は有価証券ポートフォリオにはプラスですが、銀行の本業である預貸金利ざやには下押しとなりやすく、利益成長シナリオは弱まります。
この局面では、PBRが高くなった銀行ほど評価調整が大きくなる可能性があります。銀行株の弱気シナリオでは、金利の方向だけでなく、信用コストと景気悪化の程度を重視する必要があります。
銀行株の今後を見る7つのポイント
銀行株の見通しを継続的に確認するなら、次の7項目を追うと収益環境の変化を把握しやすくなります。政策金利だけを追うより、銀行の利益にどう伝わっているかまで確認することが重要です。
| ポイント | 強気材料 | 注意したい変化 |
|---|---|---|
| 1. 日銀の政策金利 | 追加利上げ余地が残る | 利下げ転換、または利上げ余地の完全な消失 |
| 2. 長期金利・イールドカーブ | 適度な金利上昇、長短金利差の確保 | 急激な金利上昇による債券評価損 |
| 3. 貸出金利・利ざや | 貸出金利が預金コストを上回って上昇 | 預金金利上昇で利ざや改善が鈍化 |
| 4. 貸出残高 | 企業・個人の資金需要が増加 | 景気悪化で貸出需要が減少 |
| 5. 預金コスト・預金残高 | 低コスト預金を安定確保 | 預金獲得競争で高コスト化・流出 |
| 6. 信用コスト | 貸倒引当金・与信費用が低位 | 倒産増加、信用コストの上振れ |
| 7. ROE・PBR・株主還元 | ROE改善と増配・自社株買い | PBRだけ上昇しROEが頭打ち |
なかでも重要なのは、3番目の利ざやと6番目の信用コストです。金利上昇が利益を増やしている間は銀行株に追い風ですが、預金コストや貸し倒れが増えて効果を打ち消し始めると、金融政策が同じでも銀行株の見通しは変わります。
また、7番目のROEとPBRは株価の織り込み度を確認するために欠かせません。銀行業の環境が良くても、株価が利益成長を先に織り込みすぎていれば上昇余地は限られます。
メガバンク・地銀・ネット銀行で今後の見通しは異なる
銀行株は同じ金利上昇局面でも、業態によって利益への影響が異なります。国内金利への感応度、海外事業、預金の集め方、有価証券運用、成長投資の余地が違うためです。銀行株を一括りにせず、メガバンク、地方銀行、ネット銀行の特徴を分けて見る必要があります。
メガバンク
メガバンクは国内の預貸金収益に加えて、海外融資、投資銀行、証券、決済、資産運用など収益源が分散しています。国内金利上昇は追い風ですが、銀行全体の利益は海外金利、為替、信用市場、手数料ビジネスの影響も受けます。
強みは、利益規模と資本余力が大きく、増配や自社株買いを実施しやすいことです。2025年度は大手行の純利益が増益となり、主要グループでは大型の株主還元も続いています。国内金利の正常化に加えて、非金利収益や海外成長を伸ばせる銀行は、利上げが止まった後も利益成長を続けやすくなります。
一方、海外事業の比重が高い分、世界景気の悪化や海外の信用コスト上昇には注意が必要です。メガバンクを評価するときは、国内金利だけでなく、グループ全体のROEと資本配分を見ることが重要です。
地方銀行
国内預貸金の比重が高い地方銀行では、メガバンクと比べて国内金利上昇の影響が業績に表れやすいケースがあります。2026年6月末の地方銀行の貸出金は前年同月比4.2%増となっており、貸出金利も上昇しています。金利上昇と貸出増加が続けば、資金利益の改善余地があります。
一方で、地域人口や企業数の減少は長期的な課題です。また、国債などの有価証券を多く保有する銀行では、長期金利上昇による評価損も確認する必要があります。金利上昇メリットだけでなく、貸出成長率、債券ポートフォリオ、地域経済、信用コストの差が株価の選別につながります。
さらに、地方銀行では再編や経営統合が企業価値向上のきっかけになる場合があります。金利正常化で収益環境が改善している間に、コスト削減や資本効率改善まで進められる銀行は、中長期で評価されやすくなります。
ネット銀行
ネット銀行は店舗網を持たない、または小規模に抑えることで固定費を低くし、住宅ローンや決済、証券・ECなどとの連携を通じて預金と顧客基盤を拡大するモデルが中心です。貸出残高や預金残高を高い成長率で伸ばせる銀行は、金利上昇と事業成長の両方を利益につなげられます。
一方で、ネット銀行の預金者は金利比較をしやすく、預金金利の競争が強まりやすい点には注意が必要です。高い預金金利で残高を集めても、貸出利回りとの差が縮小すれば利益率は改善しません。住宅ローン比率が高い場合は、金利上昇による借り換え競争や需要の変化も影響します。
預金・貸出残高や顧客基盤を高い成長率で伸ばすネット銀行では、成長期待を織り込んでPBRやPERが高くなることがあります。預金獲得力、貸出成長、調達コスト、BaaSや決済などの非金利収益が、今後の株価を分けるポイントになります。
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まとめ:銀行株は「金利上昇」だけでなく利益成長を確認する局面へ
2026年の銀行株は、金利正常化による追い風が続く一方、単純な「利上げ=銀行株上昇」だけでは判断しにくい局面に入っています。政策金利は1.0%程度まで上昇し、貸出金利も上がり、全国銀行の貸出残高も増加しています。銀行の基礎収益力が改善していることから、業績面の追い風は残っています。
今後さらに上昇するためには、追加利上げだけでなく、貸出金利の上昇、貸出残高の増加、低い信用コスト、株主還元、ROE改善が続くことが重要です。反対に、預金コスト上昇、信用コスト増加、債券評価損、利益成長を上回るバリュエーション上昇は株価の重しになります。
銀行株がどこまで上がるかを見るときは、PBR1倍を機械的な上限にせず、ROEとPBRをセットで確認することが重要です。利上げが打ち止めになっても高金利環境が続けば利益が維持される可能性があるため、売買判断は政策金利だけでなく、利ざや・信用コスト・利益成長の変化を基準に考える必要があります。
出典
- 日本銀行「ホーム(金融市場調節方針:無担保コールレート1.0%程度)」:https://www.boj.or.jp/
- 日本銀行「金融政策に関する決定事項等 2026年」:https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/index.htm
- 日本銀行「経済・物価情勢の展望(展望レポート)2026年7月」:https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/
- 日本銀行「金融システムレポート(2026年4月号)」:https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr260421.htm
- 日本銀行「金融システムレポート別冊 2025年度の銀行・信用金庫決算」:https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb260724.htm
- 全国銀行協会「全国銀行 預金・貸出金速報―2026年6月末―」:https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/stats/month1_01/yokashi04391.pdf
- 日本銀行「貸出約定平均金利の推移(2026年6月)」:https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/yaku/yaku2606.pdf
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ「トップメッセージ」:https://www.mufg.jp/profile/message/index.html
- 三井住友フィナンシャルグループ「株主還元方針・配当情報」:https://www.smfg.co.jp/investor/stock/dividend.html
- 三井住友フィナンシャルグループ「個人投資家の皆さまへ」:https://www.smfg.co.jp/investor/individualinvestors/
- みずほフィナンシャルグループ「Stock Information」:https://www.mizuhogroup.com/investors/financial-information/stock-information
- みずほフィナンシャルグループ「Investor Relations」:https://www.mizuhogroup.com/investors

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