ニトリホールディングスの2025年3月期決算を解説|増収減益も21期連続の増配に!株価はどうなる?

2025年5月13日に株式会社ニトリホールディングスの2025年3月期決算説明資料、および6月25日に決算短信が発表されました。

ニトリホールディングスは、家具・インテリア業界のリーディングカンパニーとして「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで知られています。
近年は国内だけでなく、アジアを中心に海外展開を加速させており、その動向は多くの投資家から注目されています。

当記事では、2025年3月期の連結決算の概要からセグメント別の詳細、財務状況、株主還元策、そして来期の見通しまでを網羅的に分析します。

決算内容が今後の株価にどのような影響を与えうるか、ポジティブ・ネガティブ両側面から考察し、ニトリホールディングスの現状と将来性を探っていきましょう。

目次

ニトリホールディングスの2025年3月期における連結決算の振り返り

2025年3月期の連結経営成績は、売上収益は前期を上回ったものの、円安による輸入コストの上昇や、人件費・物流関連コストの増加が影響し、各利益段階で前期比減益となりました。

同社は2025年3月期より国際財務報告基準(IFRS)を任意適用しており、以下の表はIFRSに基づいた数値です。

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項目2025年3月期実績
(億円)
2024年3月期実績
(億円)
前期比
売上収益9,2888,967+3.6%
営業利益1,1771,243▲5.3%
税引前利益1,1741,248▲5.9%
親会社の所有者に帰属する
当期利益
825902▲8.4%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

売上収益は、国内でのTVCM強化やヒット商品の創出、海外での積極的な店舗展開が功を奏し、前期比3.6%増の9,288億円となりました。

一方で、営業利益は前期比5.3%減の1,177億円でした。
これは、円安進行による輸入コストの上昇に加え、積極的な人材採用や賃金改定による人件費の増加、そして将来の成長に向けた新たな物流拠点(DC)の稼働に伴うコスト増が主な要因です。

ニトリホールディングスの2025年3月期セグメント別の業績

ニトリホールディングスは、「ニトリ事業」と「島忠事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

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セグメント名項目2025年3月期実績
(億円)
2024年3月期実績
(億円)
前期比
ニトリ事業売上収益8,2097,863+4.4%
セグメント利益1,1901,286▲7.5%
島忠事業売上収益1,1961,193+0.3%
セグメント利益1344▲70.6%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

ニトリ事業

ニトリ事業の売上収益は、前期比4.4%増の8,209億円となりました。

国内ではTVCMを前期の58本から65本に増やすなど販促を強化し、ドラム式洗濯乾燥機やチェストベッド「ジオ」などのヒット商品が生まれました。
海外でもフィリピン、インドネシア、インドに初出店するなど、合計54店舗を新たに出店し、成長を牽引しました。

一方、セグメント利益は前期比7.5%減の1,190億円でした。
円安による輸入コストの上昇や、人件費、幸手DC・名古屋DCなどの新物流拠点稼働に伴うコストが増加したことが減益の要因です。

島忠事業

島忠事業の売上収益は、前期比0.3%増の1,196億円とほぼ横ばいでした。
プライベートブランド(PB)商品の開発・販売を強化し、特に自転車や新規の衣料品「Neasy」などが好調に推移しました。

セグメント利益は前期比70.6%減の13億円と大幅な減益になりました。
これは賃金改定による人件費や、TVCM・デジタル広告の増加に伴う広告宣伝費が増加したことが響きました。

ニトリホールディングスの2025年3月期末財務状況について

2025年3月期末の財務状況は以下の通りです。
総資産は、有形固定資産の増加などにより前期末から1,181億円増加し、1兆5,294億円となりました。

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項目2025年3月期末
(億円)
2024年3月期末
(億円)
資産合計15,29414,113
流動資産3,6473,459
非流動資産11,64710,654
負債合計6,2375,706
流動負債3,5373,146
非流動負債2,7002,560
資本合計9,0578,407
親会社所有者帰属持分9,0578,407
親会社所有者帰属持分比率59.2%59.6%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

自己資本比率にあたる親会社所有者帰属持分比率は59.2%と、引き続き高い水準を維持しており、財務の健全性がうかがえます。

キャッシュフローの状況

当期のキャッシュフローの状況は以下の通りです。

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項目2025年3月期
(億円)
2024年3月期
(億円)
営業活動による
キャッシュ・フロー
1,4441,812
投資活動による
キャッシュ・フロー
▲1,279▲1,331
財務活動による
キャッシュ・フロー
13▲554
現金及び現金同等物
期末残高
1,3601,180
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益1,174億円の計上などにより、1,444億円のプラスとなりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び投資不動産の取得による支出が1,214億円あったことなどから、1,279億円のマイナスとなりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加(827億円)が、長期借入金の返済(▲273億円)や配当金の支払い(▲167億円)などを上回り、13億円のプラスとなりました。

主要財務指標(ROEなど)

当期の主要な経営効率指標は以下の通りです。

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指標2025年3月期2024年3月期
ROE
(親会社所有者帰属持分当期利益率)
9.5%11.3%
ROA
(資産合計税引前利益率)
8.0%9.1%
売上収益
営業利益率
12.7%13.9%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

当期は減益となったため、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などの収益性指標は前期に比べて低下しました。

ニトリホールディングスの株主還元について

ニトリホールディングスは、株主への利益還元を重要な経営課題と位置付けており、安定した配当を継続しています。

配当金の状況

2025年3月期の年間配当金は、前期から5円増配の1株当たり152円(中間76円、期末76円)となり、21期連続の増配を達成しました。

さらに、2026年3月期の配当予想は、年間154円(中間77円、期末77円)と、22期連続の増配を見込んでいます。

2025年3月期の実績に基づく配当性向(連結)は20.8%でした。

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第2四半期末
(円)
期末
(円)
年間合計
(円)
配当性向
(連結)
2024年3月期実績75.0072.00147.0018.4%
2025年3月期実績76.0076.00152.0020.8%
2026年3月期予想77.0077.00154.0018.5%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

自社株買いの発表はあった?

今回の決算発表時点(2025年5月13日の決算説明会および6月25日の決算短信)で、新たな大規模な自己株式取得(自社株買い)に関する発表はありませんでした。

ニトリホールディングスの今期の見通しと戦略について

2026年3月期の連結業績は、増収増益を見込んでいます。
売上収益は前期比6.4%増の9,880億円、営業利益は15.4%増の1,358億円を予想しています。

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項目2026年3月期予想
(億円)
2025年3月期実績
(億円)
前期比
売上収益9,8809,288+6.4%
営業利益1,3581,177+15.4%
親会社の所有者に帰属する
当期利益
940825+13.9%
出典:株式会社ニトリホールディングス「2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

この業績予想を達成するため、各事業で以下の重点課題に取り組む方針です。

全事業共通の戦略

全事業に共通する重点課題として「荒利対策」を掲げています。

具体的には、商品の仕様や原材料の見直し、生産拠点の最適化、サプライチェーン全体での輸送方法の見直しなどを通じて、コスト削減と利益率の改善を図ります。
また、島忠事業においてはプライベートブランド(PB)の拡充を進めます。

事業別の戦略

  • ニトリ国内事業
    売上対策として、TVCMの強化、5月にリニューアルしたEC・アプリとリアル店舗との連携強化、そして「第4の柱」と位置づける家電商品の開発強化と売場拡大を進めます。
    経費対策では、物流拠点の自社化による生産性向上や、本部業務のデジタル化によるコスト削減を推進します。
  • ニトリ海外事業
    収益性を重視し、出店エリアの絞り込みや小型店モデルの開発を進めます。
    経費面では、現地調達品の店舗直送化や配送業者との契約見直しによる物流コストの低減、現地スタッフの教育を通じた人件費の最適化に取り組みます。
  • 島忠事業
    アプリ会員の増加(2025年度目標70万人)やSNSを強化して売上向上を図ります。
    また、ニトリとの家具配送統合による物流コスト削減など、グループシナジーを活かした経費削減を進めます。

2026年3月期の出店計画

2026年3月期は、グループ全体で101店舗の純増を計画しており、期末の総店舗数は1,149店舗となる見込みです。
国内では55店舗、海外では東南アジアを中心に46店舗の純増を計画しています。

決算内容や今期の見通しで、ニトリホールディングスの株価はどうなる?

決算内容と今期の見通しから、今後の株価に影響を与えうるポジティブな要因とネガティブな要因を整理します。

株価にポジティブな影響を与える要因

  • 来期の増収増益予想
    2026年3月期は、売上収益6.4%増、営業利益15.4%増と力強い回復を見込んでおり、市場の期待を高める可能性があります。
  • 安定した株主還元
    22期連続の増配を計画しており、株主還元への積極的な姿勢は、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的です。
  • 積極的な海外展開
    東南アジアやインドなど成長著しい市場への出店を加速させており、将来の成長ドライバーとして期待されます。
  • 国内事業の成長戦略
    EC・アプリの刷新によるデジタル戦略の強化や、新たな収益源としての家電事業の育成は、国内市場での持続的成長につながる可能性があります。
  • 物流改革によるコスト削減
    新しい物流拠点の稼働は短期的にはコスト増となりますが、中長期的には物流の効率化とコスト削減に寄与し、利益率の改善が期待されます。

株価にネガティブな影響を与える要因

  • 前期(2025年3月期)の減益実績
    営業利益が前期比5.3%減となるなど、収益性が低下した実績は、投資家心理に慎重な見方をもたらす可能性があります。
  • 為替リスク
    円安の進行は、輸入品の多い同社にとって仕入価格を押し上げ、利益を圧迫する大きなリスク要因です。
    来期は1ドル148円の社内レートを想定していますが、想定以上の円安が進む場合は業績下振れのリスクがあります。
  • コスト上昇圧力
    人件費の上昇や、積極的な広告宣伝、新規物流拠点に関連する費用など、販売費及び一般管理費の増加傾向は、利益を圧迫する要因となります。
  • 海外事業の不確実性
    特に中国大陸事業においては、不採算店舗の撤退など収益性改善を進めているものの、不動産市場の停滞など外部環境の不確実性が高く、計画通りに進まないリスクも考えられます。

決算から分かるニトリホールディングスの強みは?

今回の決算資料からは、ニトリホールディングスの揺るぎない強みが改めて浮き彫りになりました。

製造物流IT小売業(SPAモデル)の深化

商品の企画・開発から製造、物流、販売までを一貫して自社でコントロールする独自のビジネスモデルは最大の強みです。
これにより、円安などの厳しい環境下でも、原材料や生産拠点の見直しといった対策を迅速に講じることができ、コスト競争力を維持しています。

家電や家具における高機能・低価格なPB商品の開発力もこのモデルに支えられています。

圧倒的な国内基盤とブランド力

国内外に1,048店舗(2025年3月末時点)を展開する広範な店舗網と、「お、ねだん以上。」で確立された高いブランド力は、安定した顧客基盤を築いています。

大学生の就職人気ランキングで3年連続文系首位を獲得していることからも、その企業ブランドの強さがうかがえます。

積極的な海外展開による成長性

国内市場が成熟する中、アジア地域を中心に年間50店舗以上のペースで海外出店を進め、新たな成長機会を積極的に捉えようとしています。

各国で現地のニーズに合わせた販売促進を行うなど、日本で培ったノウハウを海外でも展開しています。

健全な財務体質と安定した株主還元

59.2%という高い親会社所有者帰属持分比率が示す通り、財務基盤は非常に安定しています。

この健全な財務を背景に、21期連続の増配を達成し、今後も増配を計画していることは、株主を重視する経営姿勢の表れであり、企業の信頼性を高めています。

まとめ

ニトリホールディングスの2025年3月期決算は、円安やコスト増という逆風を受け減益となったものの、国内外での事業拡大により増収は確保しました。

来期(2026年3月期)は、これらのコスト増を吸収し、増収増益への回帰と22期連続となる増配を見込む強気の計画を打ち出しています。

海外展開の加速、国内でのEC・家電事業の強化、そして物流改革といった成長戦略が計画通りに進むかどうかが、目標達成の鍵を握るでしょう。

為替の動向や海外経済の不確実性といったリスクは依然として存在するものの、独自のビジネスモデルと強固な財務基盤を武器に、ニトリホールディングスが「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンに向けてどのように挑戦を続けていくか、今後の展開から目が離せません。

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