中外鉱業の2025年3月期決算を解説|貴金属事業とコンテンツ事業が好調で株価は上がる?

中外鉱業2025年3月期決算

中外鉱業株式会社が2025年5月15日に発表した2025年3月期の連結決算について、内容が気になる人もいるでしょう。

当期は貴金属事業やコンテンツ事業が好調に推移し、前期から大幅な増収増益を達成しました。一方で、来期は減益を見込むなど、今後の動向が注目されます。

本記事では、連結決算の概要からセグメント別の詳細、財務状況、そして今後の見通しに至るまで、決算短信の情報を基に詳しく解説していきます。

鬼滅関連銘柄として注目を集める中外鉱業の株価が今後どうなるのかについて、以下の動画でも解説しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

目次

中外鉱業の2025年3月期における連結決算の振り返り

2025年3月期の連結経営成績は、売上高が前期比42.7%増の1,623億4,500万円、営業利益が同290.4%増の14億1,700万円となり、大幅な増収増益を達成しました。

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項目2025年3月期2024年3月期前期比
売上高162,345百万円113,758百万円+42.7%
営業利益1,417百万円363百万円+290.4%
経常利益1,238百万円251百万円+393.2%
親会社株主に帰属する
当期純利益
1,218百万円218百万円+458.7%
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

当期の日本経済は、社会・経済活動の正常化を背景に景気が緩やかに回復したものの、不安定な世界情勢や物価高など、先行き不透明な状況が続きました。

このような状況下で、同社グループは、主力である貴金属事業において金価格が歴史的高値圏で推移したことや、コンテンツ事業で人気タイトルや海外向けグッズ販売が好調だったことなどが業績を押し上げる要因となりました。

中外鉱業の2025年3月期セグメント別の業績

中外鉱業は「貴金属事業」「機械事業」「コンテンツ事業」の3つのセグメントで事業を展開しています。
当期は、特に貴金属事業とコンテンツ事業が業績を大きく牽引しました。

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セグメント名売上高営業利益
貴金属事業157,631百万円1,043百万円
機械事業796百万円25百万円
コンテンツ事業3,856百万円864百万円
合計162,284百万円1,933百万円
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

貴金属事業

貴金属事業の売上高は1,576億3,100万円(前期比44.5%増)、営業利益は10億4,300万円(前期比51.4%増)となりました。

為替や金利の動向、地政学リスクなどを背景に金価格が歴史的な高値圏で推移したことに加え、原料の集荷量が堅調で工場の稼働率が高水準を維持したことが増収増益に寄与しました。

機械事業

機械事業の売上高は7億9,600万円(前期比4.1%増)、営業利益は2,500万円(前期は5,300万円の損失)となり、黒字転換を果たしました。

中国向けの受注が底堅く推移した一方、国内では中小企業を中心に設備投資を抑制する動きが継続し、厳しい事業環境でした。

コンテンツ事業

コンテンツ事業の売上高は38億5,600万円(前期比17.3%増)、営業利益は8億6,400万円(前期比192.9%増)と大幅な増益を達成しました。

アニメやコミックなどのキャラクター関連商品を企画・製作・販売する当事業では、人気タイトルや海外向けのグッズ販売が好調だったことが業績を牽引しました。

中外鉱業の2025年3月期末財務状況について

2025年3月期末の総資産は165億2,500万円となり、前期末から43億9,000万円増加しました。
自己資本比率は前期末から9.1ポイント低下し、49.5%となっています。

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項目2025年3月期末2024年3月期末
総資産16,525百万円12,135百万円
純資産8,182百万円7,107百万円
自己資本比率49.5%58.6%
1株当たり純資産28.39円24.66円
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

主な変動要因として、資産の部では現金及び預金が8億6,100万円、原材料及び貯蔵品が25億7,400万円増加しました。

負債の部では、前受金が24億6,200万円、長期借入金が4億4,700万円増加しています。

純資産は、利益剰余金が10億7,400万円増加したことなどにより、前期末から10億7,400万円増加しました。

キャッシュフローの状況

当期末の現金及び現金同等物は、前期末から8億6,100万円増加し、41億4,100万円となりました。

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項目2025年3月期2024年3月期
営業活動による
キャッシュ・フロー
840百万円491百万円
投資活動による
キャッシュ・フロー
△543百万円△576百万円
財務活動による
キャッシュ・フロー
564百万円△53百万円
現金及び現金同等物
期末残高
4,141百万円3,279百万円
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
  • 営業活動によるキャッシュ・フローは8億4,000万円の収入となりました。
    これは主に、税金等調整前当期純利益12億3,800万円や前受金の増加額24億6,200万円などがあった一方、棚卸資産が28億1,300万円増加したことによります。
  • 投資活動によるキャッシュ・フローは5億4,300万円の支出となりました。
    主な要因は、有形固定資産の取得による支出5億900万円です。
  • 財務活動によるキャッシュ・フローは5億6,400万円の収入となりました。
    これは主に、短期及び長期の借入れによる収入があったことによります。

収益性に関する指標(ROEなど)

当期の収益性に関する指標は以下の通りです。
親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加したことに伴い、各指標は前期から大きく改善しました。

  • 自己資本当期純利益率(ROE): 15.9%(前期 3.1%)
  • 総資産経常利益率(ROA): 8.6%(前期 2.2%)
  • 売上高営業利益率: 0.9%(前期 0.3%)

中外鉱業の株主還元について

中外鉱業は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけています。
当期は増配を実施しました。

配当金の状況

2025年3月期の配当金は、期末配当を1株当たり1.00円とし、第2四半期末の0.50円と合わせて年間で1.50円となりました。
これは前期の0.50円から1.00円の増配となります。

配当性向(連結)は35.5%でした。
なお、2026年3月期の配当予想については、現時点では未定となっています。

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2024年3月期
(実績)
2025年3月期
(実績)
2026年3月期
(予想)
年間配当金0.50円1.50円未定
配当性向(連結)65.9%35.5%
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

自社株買いの発表はあった?

今回の決算発表において、新たな自己株式取得(自社株買い)の枠設定に関する発表はありませんでした。

なお、2025年3月期においては70百万円の自己株式の取得実績があります。

中外鉱業の今期見通しと戦略について

中外鉱業は2026年3月期の連結業績予想を発表しており、増収減益を見込んでいます。

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項目2026年3月期
(予想)
2025年3月期
(実績)
前期比
売上高181,000百万円162,345百万円+11.5%
営業利益990百万円1,417百万円△30.1%
経常利益800百万円1,238百万円△35.4%
親会社株主に帰属する
当期純利益
790百万円1,218百万円△35.1%
出典:中外鉱業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

今後の見通しとして、賃上げによる個人消費の底上げやインバウンド需要の拡大が期待されるものの、地政学的リスクやサプライチェーンの混乱による物価高騰など、事業を取り巻く環境は依然として先行き不透明な状況が続くと予想しています。

こうした状況下で、引き続き貴金属の需要は見込まれるものの、世界的なインフレや金融政策の動向が業績に与える影響は不透明であるとしています。

また、2025年6月27日開催予定の定時株主総会において、株式併合を付議する予定であることを発表しています。

決算内容や今期の見通しで、中外鉱業の株価はどうなる?

今回の決算内容と今期の見通しが、今後の株価にどのような影響を与える可能性があるか、ポジティブな要因とネガティブな要因に分けて整理します。

株価にポジティブな影響を与える要因

  • 大幅な増収増益の達成: 2025年3月期は売上高で前期比42.7%増、営業利益で同290.4%増と非常に好調な結果でした。
  • コンテンツ事業の急成長: コンテンツ事業は営業利益が前期比で約3倍になるなど、高い成長性を示しており、今後の収益の柱として期待されます。
  • 大幅な増配: 年間配当金を前期の0.50円から1.50円へと3倍に増やしており、株主還元への積極的な姿勢が評価される可能性があります。
  • 株式併合の予定: 株式併合により投資単位が引き上げられることで、株式の管理コストが削減され、株主構成の安定化につながる可能性があります。

株価にネガティブな影響を与える要因

  • 来期の減益予想: 2026年3月期は、営業利益で30.1%減、当期純利益で35.1%減と、大幅な減益を見込んでいます。
  • 自己資本比率の低下: 自己資本比率が前期の58.6%から49.5%へと9.1ポイント低下しており、財務の健全性に注意が必要です。
  • 先行きの不透明感: 会社自身が、世界情勢や金融政策の動向など、事業環境の先行きが不透明であるとの認識を示しています。
  • 棚卸資産の増加: 棚卸資産が前期末比で25億円以上増加しており、これがキャッシュフローを圧迫し、今後の在庫管理が課題となる可能性があります。

決算から分かる中外鉱業の強みは?

今回の決算内容から、中外鉱業の強みとして以下の点が挙げられます。

景気変動に強い貴金属事業

売上高の大部分を占める貴金属事業は、同社の収益基盤となっています。

特に金は「有事の金」とも言われ、地政学リスクの高まりや経済の先行き不安がある際に価格が上昇する傾向があります。 このように、社会情勢の変動を収益機会に変えられる点が強みと言えるでしょう。

高い成長性を持つコンテンツ事業

コンテンツ事業は、売上高が約38億円に対して営業利益が約8.6億円と、非常に高い利益率を誇ります。

前期からの利益成長率も著しく、海外向け販売も好調であることから、貴金属事業に次ぐ新たな収益の柱としての成長が期待されます。

多角的な事業ポートフォリオ

市況に左右されやすい「貴金属事業」、景気動向の影響を受ける「機械事業」、そしてトレンドや企画力が重要となる「コンテンツ事業」という、性質の異なる3つの事業を持つことで、特定のリスクに依存しない事業ポートフォリオを構築している点も強みの一つです。

まとめ

中外鉱業の2025年3月期決算は、金価格の高騰を追い風とした貴金属事業と、人気タイトルのヒットに恵まれたコンテンツ事業が両輪となり、過去最高益に迫る大幅な増収増益を達成しました。
また、株主還元として大幅な増配も実施しました。

一方で、来期(2026年3月期)は一転して減益予想となっており、世界情勢や金融政策の不透明感から、楽観視できない経営環境が続くと見られます。

今後は、安定収益源である貴金属事業の動向に加え、成長ドライバーであるコンテンツ事業が継続してヒットを生み出せるか、そして増加した棚卸資産をいかに効率的に活用していくかが、企業価値向上の鍵となりそうです。

鬼滅関連銘柄として注目を集める中外鉱業の株価が今後どうなるのかについて、以下の動画でも解説しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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