タマホーム株式会社(証券コード:1419)が2025年7月11日に発表した2025年5月期の通期決算は、売上高・利益ともに前期を大きく下回る結果となりました。
中核である住宅事業の工期遅延などが響き、厳しい決算内容であったと言えます。
しかし、同時に発表された2026年5月期の業績予想では、V字回復を見込む強気な数字が示され、増配計画も発表されました。
本記事では、タマホームの2025年5月期決算の内容をセグメントごとに詳しく解説するとともに、来期の見通しや株価に与える影響、そして決算から見えてくる同社の強みについて深掘りしていきます。
タマホームの2025年5月期における連結決算の振り返り
2025年5月期の連結経営成績は、前期と比較して大幅な減収減益となりました。
項目 | 2025年5月期 実績 | 2024年5月期 実績 | 前期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 200,817百万円 | 247,733百万円 | △18.9% |
営業利益 | 4,113百万円 | 12,586百万円 | △67.3% |
経常利益 | 3,789百万円 | 12,877百万円 | △70.6% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 1,478百万円 | 8,752百万円 | △83.1% |
決算の概要として、売上高は前期比18.9%減の2,008億円、営業利益は同67.3%減の41億円で着地しました。
一方で、この厳しい結果の中にもポジティブな側面も見られます。
この業績は、修正後の計画値を上回って着地しており、会社の業績管理がある程度機能していることを示唆しています。
タマホームの2025年5月期セグメント別の業績
セグメント別の業績を見ると、エネルギー事業を除く全てのセグメントで減益となり、特に主力の住宅事業の落ち込みが顕著でした。
セグメント | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
住宅事業 | 146,130百万円 | 330百万円 |
不動産事業 | 47,816百万円 | 2,418百万円 |
金融事業 | 916百万円 | 153百万円 |
エネルギー事業 | 833百万円 | 266百万円 |
その他事業 | 5,120百万円 | 909百万円 |
住宅事業
住宅事業の売上高は146,130百万円(前期比21.1%減)、営業利益は330百万円(同95.8%減)と、極めて厳しい結果となりました。
ただし、現在は工期のスケジュール管理体制を見直し、改善傾向にあるとされています。
一方で、リフォーム事業は堅調に推移しました。
保証延長工事の提案などが功を奏し、売上高は111億円と前期比で0.9%の微増を確保しています。
不動産事業
不動産事業の売上高は47,816百万円(前期比12.7%減)、営業利益は2,418百万円(同27.6%減)でした。
減収減益の主な要因は、戸建分譲事業の不振です。
優良な土地の仕入れ競争の激化や他社との価格競争が影響し、引渡棟数が1,348棟(前期比11.8%減)に留まりました。
一方で、マンション事業では「グレンドール五反田」の全36戸の販売・引渡が完了したほか、サブリース事業では管理物件が99%以上の高稼働率で推移し、賃料収入が増加するなど、事業ポートフォリオ内での下支えも見られました。
金融事業
金融事業の売上高は916百万円(前期比10.7%減)、営業利益は153百万円(同26.0%減)となりました。
エネルギー事業
唯一増収増益を達成したのがエネルギー事業です。
売上高は833百万円(前期比7.9%増)、営業利益は266百万円(同29.3%増)となりました。
福岡県大牟田市で運営するメガソーラー発電所において、九州電力による出力制御の仕組み導入や天候の影響がプラスに働き、売電実績が向上しました。
その他事業
家具・インテリア事業や広告代理業などを含むその他事業は、売上高5,120百万円(前期比14.9%減)、営業利益909百万円(同7.7%減)と、住宅周辺事業を中心に減収減益でした。
タマホームの2025年5月期末財務状況について
2025年5月期末の財務状況は以下の通りです。
項目 | 2025年5月期末 | 2024年5月期末 |
---|---|---|
総資産 | 92,302百万円 | 89,587百万円 |
純資産 | 34,275百万円 | 38,327百万円 |
自己資本比率 | 37.1% | 42.7% |
1株当たり純資産 | 1,181.40円 | 1,321.11円 |
総資産は、現金及び預金の増加などにより前期末から27億円増加しました。
一方で、負債も長期借入金の増加などにより68億円増加しています。
純資産は、当期純利益の計上があったものの、配当金の支払い(55億円)が大きく影響し40億円減少し、結果として自己資本比率は前期末の42.7%から37.1%へと5.6ポイント低下しました。
キャッシュフローの状況
当期のキャッシュフロー(CF)の状況は以下の通りです。
項目 | 2025年5月期 | 2024年5月期 |
---|---|---|
営業活動によるCF | 2,248百万円 | 8,284百万円 |
投資活動によるCF | △1,741百万円 | △2,010百万円 |
財務活動によるCF | 4,390百万円 | △14,553百万円 |
現金及び現金同等物 期末残高 | 31,001百万円 | 26,105百万円 |
営業活動によるキャッシュフローは22億円のプラスでしたが、前期の82億円からは大幅に減少しました。
これは主に、棚卸資産の減少額が前期よりも小さかったことなどが影響しています。
投資活動によるキャッシュフローは、新規支店の開設など有形固定資産の取得により17億円のマイナスとなりました。
特筆すべきは財務活動によるキャッシュフローです。
前期は借入金の返済等で145億円の大幅なマイナスでしたが、当期は長期借入れによる収入(109億円)が返済を上回り、43億円のプラスに転じています。
これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末から49億円増加し、310億円となりました。
収益性に関する指標(ROEなど)
当期の収益性指標は、減益に伴い前期から大きく悪化しました。
- 自己資本当期純利益率(ROE): 4.1% (前期 23.9%)
- 総資産経常利益率(ROA): 4.2% (前期 12.8%)
- 売上高営業利益率: 2.0% (前期 5.1%)
タマホームの株主還元について
タマホームは株主への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、経営成績に応じた継続的な利益還元を基本方針としています。
配当金の状況
2025年5月期の年間配当金は、期初予想通り1株あたり195円で着地しました。
当期純利益が大幅に減少したため、配当性向は382.4%と極めて高い水準になっています。
さらに、来期(2026年5月期)の配当予想は、1円増配の1株あたり196円としており、株主還元への強い姿勢を示しています。
来期の予想配当性向は94.7%となる見込みです。
自社株買いの発表はあった?
今回の決算発表において、新たな自己株式取得に関する発表はありませんでした。
決算短信の「重要な後発事象」にも該当事項はないと記載されています。
タマホームの今期見通しと戦略について
2025年5月期の厳しい結果とは対照的に、2026年5月期の連結業績予想は大幅な増収増益、V字回復を見込む強気な内容となっています。
項目 | 2026年5月期 予想 | 2025年5月期 実績 | 前期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 235,000百万円 | 200,817百万円 | +17.0% |
営業利益 | 9,300百万円 | 4,113百万円 | +126.1% |
経常利益 | 9,000百万円 | 3,789百万円 | +137.5% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 6,000百万円 | 1,478百万円 | +305.9% |
この強気な見通しの背景には、同社の成長戦略があります。
引き続き、中核事業である注文住宅のシェア拡大を主軸に据え、既存営業エリアの深耕を図る方針です。
住宅事業においては、より高い付加価値のある商品展開を推進し、非住宅事業では事業機会を的確に捉え収益性を高めることで、売上高の伸長を目指します。
決算説明資料では、実際に戸建分譲事業の受注が回復傾向にあることや、リフォーム事業の受注が堅調に推移していることが示されており、来期の業績回復への期待を裏付けています。
決算内容や今期の見通しで、タマホームの株価はどうなる?
今回の決算発表が株価に与える影響について、資料から読み取れるポジティブな要因とネガティブな要因を考察します。
株価にポジティブな影響を与える要因
- 来期のV字回復予想
2026年5月期に営業利益が倍増以上となる強気な業績予想は、投資家の期待を最も集めるポジティブな材料です。 - 増配計画
厳しい業績の中でも配当を維持し、さらに来期は196円への増配を計画していることは、株主還元への強い姿勢として評価され、株価の下支え要因となり得ます。 - 受注の回復基調
戸建分譲事業の受注が回復傾向にあり、リフォーム事業も堅調であることは、来期の業績予想の達成確度を高める材料と見なされる可能性があります。 - 計画値の上振れ着地
当期の業績は大幅減益でしたが、会社が下方修正した計画値は上回って着地しており、一定の業績管理能力を示したと評価される可能性があります。
株価にネガティブな影響を与える要因
- 当期の大幅な減益実績
2025年5月期の営業利益が67.3%減という事実は、ネガティブに受け止められる可能性があります。
特に、主力の住宅事業の営業利益が95.8%も減少した点は、事業の安定性に対する懸念を生むかもしれません。 - 工期遅延問題の再発リスク
業績悪化の主因となった工期の遅延が、今後も続くリスクを投資家が警戒する可能性があります。
「改善傾向」との説明が市場にどこまで信頼されるかが焦点となります。 - 外部環境の不透明感
物価上昇の長期化に伴う個人消費の節約志向や、依然として先行き不透明な金融市場の動向は、住宅業界全体のリスクとして株価の上値を抑える要因になり得ます。 - 自己資本比率の低下
財務の健全性を示す自己資本比率が前期の42.7%から37.1%に低下したことは、財務安定性の若干の後退と見なされる可能性があります。
決算から分かるタマホームの強みは?
今回の厳しい決算の中でも、タマホームの企業としての強みがいくつか見えてきます。
事業の多角化によるリスク分散
主力の住宅事業が大幅な減益となる中でも、不動産事業は24億円の利益を確保し、エネルギー事業は増収増益を達成しました。
このように、収益源を複数の事業に分散させることで、特定の事業環境の悪化による影響を和らげるポートフォリオを構築している点は、同社の大きな強みと言えるでしょう。
安定した株主還元への強い意志
業績が大幅に落ち込み、配当性向が380%を超える状況でも配当を維持し、さらに来期には増配を計画していることは、同社の株主還元に対する非常に強いコミットメントを示しています。
これは、将来の業績回復への自信の表れとも受け取れ、長期的に株式を保有する投資家にとって大きな安心材料となります。
まとめ
タマホームの2025年5月期決算は、工期遅延を主因とする大幅な減収減益という厳しい結果に終わりました。
しかし、その一方で発表された来期(2026年5月期)の業績予想は、営業利益が倍増以上となるV字回復を見込む非常に力強いものであり、増配計画も示されました。
今後の株価は、当期の実績悪化というネガティブな事実と、来期への強い期待感が綱引きする展開が予想されます。
工期遅延の問題を完全に解決し、回復基調にある受注を確実に売上・利益につなげ、強気な業績予想を達成できるかが最大の焦点となるでしょう。
事業の多角化と、いかなる状況でも株主還元を重視する経営姿勢は、同社の揺るぎない強みです。
この強みを活かし、市場の期待に応える回復を成し遂げられるか、今後の動向が注目されます。
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