スーパーゼネコン4社(鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設)の2025年3月期決算を比較

スーパーゼネコン4社の決算比較

日本のインフラを支えるスーパーゼネコン(鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設)の2025年3月期決算が出揃いました。

建設資材の高騰や労務費の上昇といった課題が残る一方、国内の旺盛な建設需要や各社の採算改善努力により、好調な業績を記録した企業が多く見られます。

本記事では、スーパーゼネコン4社の2025年3月期決算内容を徹底比較し、ランキング形式で各社の強みや財務状況、株主還元策を分析します。

さらに、2026年3月期の業績見通しや、株式投資の観点から見た各社の魅力についても解説します。

目次

スーパーゼネコン4社の業績・各指標ランキング形式で比較

まずは、各社の主要な経営指標をランキング形式で見ていきましょう。

2025年3月期 売上ランキング

順位企業名売上高
1位鹿島建設2兆9,118億円
2位大林組2兆6,201億円
3位大成建設2兆1,542億円
4位清水建設1兆9,443億円

売上高では鹿島建設がトップとなりました。各社とも国内の大型工事などが寄与し、高い水準を維持しています。

2025年3月期 経常利益ランキング

順位企業名経常利益
1位鹿島建設1,606億円
2位大林組1,533億円
3位大成建設1,345億円
4位清水建設716億円

経常利益でも鹿島建設が1位となりました。大林組、大成建設も1,000億円を超える高い利益を確保しています。

自己資本比率ランキング

順位企業名自己資本比率
1位大林組38.1%
2位鹿島建設36.4%
3位大成建設35.7%
4位清水建設34.1%

財務の健全性を示す自己資本比率では、大林組がトップでした。各社とも30%台を維持しており、安定した財務基盤を築いています。

ROE(自己資本利益率)ランキング

順位企業名ROE
1位大成建設13.8%
2位大林組12.6%
3位鹿島建設10.2%
4位清水建設7.6%

資本効率を示すROEでは、大成建設が13.8%と最も高い数値を示しました。大林組、鹿島建設も10%を超えており、株主資本を効率的に活用して利益を上げていることが分かります。

営業利益率ランキング

順位企業名営業利益率
1位大成建設5.6%
2位大林組5.5%
3位鹿島建設5.2%
4位清水建設3.7%

本業の儲けを示す営業利益率では、大成建設が僅差でトップとなりました。

株価の割安性ランキング(2025年7月17日終値基準)

順位企業名PER(株価収益率)
1位大林組10.85倍
2位大成建設12.58倍
3位鹿島建設13.86倍
4位清水建設17.55倍

株価の割安さを示すPERでは、大林組が最も低い数値となりました。

今期業績見通しランキング(経常利益)

順位企業名2026年3月期
経常利益見通し
1位鹿島建設1,660億円
(+3.3%)
2位大林組1,260億円
(-17.9%)
3位大成建設1,050億円
(-21.9%)
4位清水建設730億円
(+1.9%)

今期の経常利益見通しでは鹿島建設がトップ。増益を見込むのは鹿島建設と清水建設の2社となっています。

今期配当利回りランキング(2025年7月17日終値基準)

順位企業名今期配当利回り
1位大林組3.71%
2位鹿島建設3.03%
3位清水建設2.64%
4位大成建設1.75%

今期予想配当から算出した配当利回りでは、大林組が3.71%と最も高くなっています。

スーパーゼネコン4社の2025年3月期業績を比較

2025年3月期の各社の業績は、全体的に好調でした。特に利益面での回復・伸長が目立ちます。

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項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
売上高2兆9,118億円2兆6,201億円1兆9,443億円2兆1,542億円
経常利益1,606億円1,533億円716億円1,345億円
親会社株主帰属
当期純利益
1,258億円1,460億円660億円1,238億円

売上高では鹿島建設が2.9兆円と他社をリードしました。

利益面では、経常利益は鹿島建設がトップでしたが、親会社株主に帰属する当期純利益では、政策保有株式の売却益などが寄与した大林組が1,460億円でトップとなりました。

清水建設は、国内建築工事の採算改善が寄与し、前期の損失から大幅な増益を達成しました。
大成建設も、土木・建築事業の利益率好転により、大幅な増益を記録しています。

各社とも、建設コストの上昇という課題に対応しつつ、着実に利益を確保する体質が強化されていることがうかがえます。

スーパーゼネコン4社の財務状況の比較

次に、企業の安定性を示す財務状況を見ていきましょう。

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項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
総資産3兆4,545億円3兆427億円2兆5,237億円2兆4,288億円
純資産1兆2,779億円1兆2,102億円9,238億円9,006億円
自己資本比率36.4%38.1%34.1%35.7%

総資産・純資産の規模では鹿島建設が最も大きくなっています。企業の財務健全性を示す自己資本比率では、大林組が38.1%と最も高く、安定した財務基盤を誇ります。

他3社も30%台半ばを維持しており、各社とも健全な財務運営を行っていると言えるでしょう。

スーパーゼネコン4社の収益性の比較

企業の稼ぐ力を示す収益性の指標を比較します。

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項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
ROE
(自己資本利益率)
10.2%12.6%7.6%13.8%
ROA
(総資産経常利益率)
4.9%5.1%2.8%5.4%
営業利益率5.2%5.5%3.7%5.6%
EPS
(1株当たり当期純利益)
266.49円203.88円94.80円682.78円

資本効率を示すROE(自己資本利益率)では、大成建設が13.8%と4社の中で最も高い数値となりました。
ROA(総資産経常利益率)や営業利益率でも大成建設がトップであり、効率的に利益を生み出す力が強いことが分かります。

1株当たりの利益を示すEPSでも、大成建設が682.78円と突出しています。
これは、同社が発行済株式総数を他の3社より少なく抑えていることが一因です。

スーパーゼネコン4社の株価の割安性の比較

2025年7月17日の終値を基準に、株価の割安さを示す指標を比較します。

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項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
株価
(7/17終値)
3,695.0円2,212.0円1,663.5円8,591円
PER
(株価収益率)
13.86倍10.85倍17.55倍12.58倍
PBR
(株価純資産倍率)
1.38倍1.36倍1.32倍1.70倍

株価が1株当たり利益の何倍かを示すPERでは、大林組が10.85倍と最も低く、株価に割安感があると言えます。

株価が1株当たり純資産の何倍かを示すPBRでは、清水建設が1.32倍と最も低くなっています。
一般的にPBRは1倍が解散価値とされ、それを上回る水準は市場からの成長期待を示していると解釈できます。

スーパーゼネコン4社の株主還元の比較

各社の株主還元策として、配当金と自社株買いの状況を見ていきます。

配当金の比較

2025年3月期の配当金(実績)は以下の通りです。

項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
年間配当金(実績)104.00円81.00円38.00円210.00円
配当性向39.0%39.7%40.1%30.8%

配当金の絶対額では大成建設が210円と最も高くなっています。

配当性向(当期純利益のうち、配当に回した割合)は各社30%~40%台で、清水建設が40.1%と最も高くなっています。

鹿島建設、清水建設は配当性向40%を目安としており、利益成長に合わせて安定的に株主へ還元する方針を示しています。

自社株買いの比較

2025年5月の決算発表時点で公表されている自己株式取得(自社株買い)の計画は以下の通りです。

項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
取得上限金額200億円200億円100億円1,500億円
取得上限株式数900万株1,500万株900万株3,000万株
発行済株式総数に対する割合(概算)約1.9%約2.1%約1.3%約17.5%
注:大林組は2025年2月10日決議分(上限300億円)とは別に、2025年5月13日に上限200億円の自己株式取得を決議しています。ここでは5月決議分を記載。

自社株買いは、1株当たりの価値を高める効果があり、株主還策として重視されます。
金額・株数ともに大成建設が他社を圧倒しており、非常に積極的な株主還元姿勢を示しています。

スーパーゼネコン4社の今期(2026年3月期)見通しの業績について比較

今期の業績見通しには各社で濃淡が見られます。

業績の比較

項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
売上高2兆9,500億円
(+1.3%)
2兆5,600億円
(-2.3%)
1兆9,100億円
(-1.8%)
1兆9,600億円
(-9.0%)
経常利益1,660億円
(+3.3%)
1,260億円
(-17.9%)
730億円
(+1.9%)
1,050億円
(-21.9%)
親会社株主帰属
当期純利益
1,300億円
(+3.3%)
1,000億円
(-31.5%)
750億円
(+13.6%)
800億円
(-35.4%)

鹿島建設は5期連続の増収増益を見込んでおり、過去最高益の更新を予想しています。
清水建設も増益予想です。

一方、大林組と大成建設は、前期に不動産売却益や大型工事の利益計上があった反動で、減収減益の見通しとなっています。

配当見通しの比較

今期の配当見通しと、7月17日終値で計算した配当利回りは以下の通りです。

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項目鹿島建設大林組清水建設大成建設
年間配当金
(予想)
112.00円82.00円44.00円150.00円
配当利回り
(予想)
3.03%3.71%2.64%1.75%
配当性向
(予想)
40.6%57.7%40.0%30.8%

配当利回りでは大林組が3.7%台と最も魅力的です。
鹿島建設も3%を超えています。

大林組は減益予想ながらも増配を計画しており、株主還元への意識の高さがうかがえます。

株式投資をする上でのポイントは?

ここまでの分析を踏まえ、投資スタイル別に各社の魅力をまとめます。

  • 業績が良い企業に投資するなら?
    鹿島建設清水建設が挙げられます。
    両社とも2026年3月期に増収増益を予想しており、特に鹿島建設は5期連続の増収増益と過去最高益の更新を見込むなど、成長の勢いがあります。
  • 配当利回りで選ぶなら?
    大林組が最も魅力的です。予想配当利回りは3.71%と4社の中で最も高くなっています。
    安定したインカムゲインを狙う投資家にとって有力な選択肢となるでしょう。
  • 株価の割安感を重視するなら?
    大林組がPER10.85倍と最も割安感があります。
    PBRも1.36倍と比較的低い水準にあり、今後の株価上昇余地が期待されます。
  • 資本効率を重視するなら?
    大成建設大林組が優れています。
    2025年3月期実績のROEはそれぞれ13.8%、12.6%と高く、資本を効率的に使って利益を上げていることが評価できます。

決算から分かる各社の強みは?

最後に、投資を検討する上で把握しておきたい各社の強みについて、決算資料から読み取れる情報を解説していきます。

鹿島建設:バランスの取れた事業ポートフォリオと財務戦略

国内の建設・開発事業で安定した収益基盤を築きつつ、海外事業も成長ドライバーとなっています。

財務戦略として、利益成長と政策保有株式の縮減を両立させ、創出した資金を成長投資と株主還元にバランス良く配分する方針を明確に示しています。

大林組:不動産開発と再生可能エネルギーへの注力

建設事業に加え、不動産事業やPFI事業、再生可能エネルギー事業といった「その他事業」も強化しています。

特に再生可能エネルギー分野への投資は、将来の安定収益源として期待されます。

清水建設:建設事業の採算改善と積極的な株主還元

前期の課題であった建設事業の採算が大きく改善し、業績回復を牽引しました。

政策保有株式の縮減にも積極的で、株主還元方針として連結配当性向40%を目安とすることを掲げており、安定した配当が期待できます。

大成建設:高い収益性と積極的な株主還元

ROE13.8%という高い資本効率を誇り、稼ぐ力が強いのが特徴です。

また、1,500億円という大規模な自社株買い計画を発表するなど、株主還元への姿勢は4社の中で最も積極的と言えます。

国内建築事業の収益性改善や海外事業の展開にも力を入れています。

まとめ

2025年3月期決算では、スーパーゼネコン各社が建設コスト上昇の逆風を乗り越え、力強い業績を示しました。

今期(2026年3月期)の見通しは各社で異なりますが、国内の堅調な建設需要を背景に、各社それぞれの強みを活かした戦略を展開しています。

  • 鹿島建設は、安定した業績成長とバランスの取れた経営が魅力です。
  • 大林組は、株価の割安感と高い配当利回りが投資妙味を感じさせます。
  • 清水建設は、業績の回復基調と安定した配当政策が注目されます。
  • 大成建設は、高い収益性と他を圧倒する株主還元策が最大の強みです。

今回の決算内容と各社の戦略を踏まえ、ご自身の投資スタイルに合った企業を見つけてみてはいかがでしょうか。

スーパーゼネコンの個別決算まとめ

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