INPEX(1605)は、株式市場では原油価格に反応しやすい資源株として知られています。一方で、社名だけを見ても「具体的に何をしている会社なのか」「ENEOSなどの石油会社と何が違うのか」が分かりにくい企業でもあります。
INPEXの中心事業は、石油・天然ガスが存在する場所を探し、油田・ガス田を開発し、生産した原油や天然ガスを販売する資源開発です。特に豪州のイクシスLNG、アブダビの油田権益は現在の事業基盤を支える重要資産で、将来はインドネシアのアバディLNGやイクシス拡張も成長候補になっています。
この記事では、INPEXの事業内容を「何をしている会社か」から順番に整理し、原油・天然ガス・LNGでどのように利益を稼ぐのか、代表的なプロジェクトや企業としての強み、今後育てようとしている低炭素事業まで解説します。

INPEXは何の会社?

INPEXは、石油・天然ガスなどの資源を調査・探鉱し、発見した資源を開発・生産・販売する日本最大規模のエネルギー開発企業です。2025年12月末時点の連結従業員数は3,720人で、豪州、アブダビ、東南アジア、日本、欧州などを中心に世界各地で資源・エネルギー事業を展開しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社INPEX(INPEX CORPORATION) |
| 証券コード | 1605 |
| 設立 | 2006年4月3日 |
| 主な事業 | 石油・天然ガスなどの調査、探鉱、開発、生産、販売 |
| 主な地域 | 豪州、アブダビ、東南アジア、日本、欧州など |
| 代表的な案件 | イクシスLNG、アブダビ油田、アバディLNG、南長岡ガス田 |
| 将来の成長分野 | 天然ガス/LNG拡大、CCS、水素、電力・再エネなど |
現在の利益基盤は原油・天然ガス/LNGですが、INPEX Vision 2035では天然ガス/LNGの拡大を第一の成長軸に据え、CCS・水素を使った低炭素ソリューション、電力関連などにも収益源を広げる方針を示しています。したがって、現在のINPEXは「石油だけの会社」というより、石油・天然ガスを基盤としながら事業領域を広げる総合エネルギー開発会社と捉える方が実態に近いです。
INPEXはガソリンスタンドの会社ではない
「石油会社」と聞くと、ガソリンスタンドや製油所を持ち、ガソリン・灯油などを販売する会社を思い浮かべるかもしれません。しかし、INPEXの主力はそこではありません。INPEXは、石油・天然ガスが埋まっている可能性のある地域を調べ、井戸を掘り、商業化できる資源を見つけて開発・生産する側の企業です。
石油・ガス産業は、大きく見ると「上流」「中流」「下流」に分けられます。INPEXが特に強いのは上流であり、資源そのものを見つけて生産することが収益の出発点です。
| 区分 | 主な役割 | INPEXとの関係 |
|---|---|---|
| 上流 | 探鉱、掘削、評価、開発、生産 | 中核事業 |
| 中流 | パイプライン、LNG輸送、受入・気化など | LNG・国内ガス供給で関与 |
| 下流 | 精製、石油製品販売、都市ガス・小売など | 一部事業はあるが主力ではない |
INPEXの中心は石油・天然ガスの「上流事業」
上流事業は、地下に眠る石油・天然ガスを実際に見つけ、商業生産につなげるまでの仕事です。まず地質調査や地震探査などで有望な場所を絞り込み、試掘井を掘って資源の存在を確認します。石油・天然ガスが見つかっても、十分な埋蔵量があるとは限らないため、評価井の掘削や各種データ分析を行い、事業として採算が取れるかを確認します。
経済性が確認できれば、開発計画を作り、最終投資決定(FID)を経て、生産井、海洋設備、処理プラント、パイプライン、LNG設備などを建設します。探鉱から生産開始まで10年以上かかる大型案件も珍しくありません。失敗すれば投資を回収できない一方、長期間にわたって安定生産できる大型資産を確保できれば、長期の利益・キャッシュフロー源になります。
INPEXはどのように利益を稼いでいる?
INPEXの収益構造を理解するうえで重要なのは、「工事を請け負って代金をもらう会社」ではなく、油田・ガス田やLNGプロジェクトの権益を保有し、そこから得られる原油・天然ガスなどを販売して収益を得る会社だという点です。資源価格、生産量、為替、プロジェクトの持分などが利益に大きく影響します。
油田・ガス田の「権益」を持って原油・天然ガスを販売する
資源開発では、一つの巨大プロジェクトを複数企業や国営石油会社が共同で進めることが一般的です。各社は一定割合の権益を持ち、その持分に応じて投資負担や経済的な取り分を持ちます。INPEXもアブダビ、豪州、インドネシアなどでさまざまな権益を保有しています。
例えばイクシスLNGでは、INPEX子会社が67.82%の権益を持つ最大株主であり、同時にプロジェクト全体の操業を主導するオペレーターです。一方、アブダビの一部油田ではADNOCなどと共同で権益を持ち、安定した原油生産に参加しています。こうした大型資源の権益がINPEXの企業価値の土台です。
利益は「価格×為替×生産・販売量」で動きやすい
INPEXの業績は、一般的な製造業とは異なり、原油・天然ガスの国際価格に大きく左右されます。同じ量を生産しても原油価格が高ければ販売単価が上がりやすく、利益・キャッシュフローには追い風になります。反対に原油安が長引けば、売上単価や資産価値が下がりやすくなります。
海外事業の多くはドル建てで収益を得るため、円換算では為替も重要です。また、価格が高くても設備トラブルや輸送制約によって販売量が減れば、価格上昇のメリットを十分に受けられません。
そのため、INPEXを見るときは「価格×為替×生産・販売量」の組み合わせを考えると収益構造を理解しやすくなります。
LNGでは天然ガスを液化して遠隔地へ届ける
天然ガスは気体のままでは体積が大きく、海を越えて大量輸送するのが難しいため、約マイナス162℃まで冷却して液体にしたLNG(液化天然ガス)として運ぶ方法が広く使われています。LNGにすると体積を大幅に小さくでき、専用船で日本やアジアなどの需要地へ輸送できます。
INPEXは天然ガスを生産するだけでなく、イクシスLNGではガス田開発から海上生産設備、パイプライン、豪州ダーウィンの液化プラント、販売まで一連のサプライチェーンに関与しています。天然ガス/LNGを上流から下流までオペレーターとして一気通貫で手掛けられることは、INPEXが自社で掲げる重要な強みです。
INPEXの主な事業内容
INPEXの現在の事業は、原油・天然ガス/LNGが中心です。ただし、海外の油田・ガス田だけではなく、日本国内のガス田、LNG受入基地、パイプライン、さらにCCS・水素や電力・再エネなどにも領域を広げています。ここでは事業を役割別に整理します。
原油の探鉱・開発・生産
原油事業では、アブダビをはじめ世界各地の油田開発・生産に参画しています。特にアブダビでは1973年から海上油田の開発・生産に関わっており、現在も世界有数の大型油田である上部ザクム油田を含む複数の海上油田に権益を持っています。陸上油田権益にも参画しており、長期契約のもとで原油生産を続けています。
原油事業は国際油価の影響を強く受けますが、すでに開発済みの大型油田が安定生産できれば、大きなキャッシュフローを生み出す基盤になります。INPEXにとってアブダビは、豪州と並ぶ重要な収益地域です。
天然ガス・LNG事業
天然ガス/LNGは、INPEXが2035年に向けて最も重視している成長領域です。現在の中心は豪州イクシスLNGで、将来はアバディLNGとイクシスの液化能力拡張を加え、LNG供給力をさらに高める方針です。
天然ガスは石炭や石油に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少なく、電力の安定供給を支える燃料としても使われます。INPEXは天然ガスを「現実的な移行期の燃料」と位置づけ、再エネ拡大と低炭素化が進む中でも一定の需要が続くとみて事業を拡大しています。
日本国内の天然ガス事業
INPEXは海外資源だけを扱う企業ではありません。新潟県には南長岡ガス田を持ち、国内で天然ガスを生産しています。南長岡ガス田は埋蔵量ベースで国内最大級の陸上ガス田で、地下4,000~5,000メートル付近の火山岩中に天然ガスが存在します。
生産したガスは越路原プラントなどで処理した後、INPEXの幹線パイプラインを通じて都市ガス会社や工業需要家へ供給されます。さらに直江津LNG基地では海外から輸入したLNGを受け入れて再ガス化し、南長岡ガス田などの国産天然ガスと組み合わせて供給しています。
CCS・水素・電力などの低炭素事業
INPEXは石油・天然ガスの収益基盤を維持しながら、CCS、水素、電力・再生可能エネルギーなども次の収益源として育てようとしています。CCSは、工場やガス生産などで発生した二酸化炭素を回収し、地下深くに貯留する技術です。
資源開発会社は、地下構造の評価、井戸の掘削、貯留層の管理といった技術を長年蓄積しています。CCSはこうした既存技術との共通点が大きく、INPEXが石油・天然ガス開発で培った能力を活用しやすい分野です。Vision 2035では、天然ガス/LNGとCCSを組み合わせて自社の排出量を削減するとともに、将来的には第三者向けの低炭素化サービスとして収益化することも目指しています。
INPEXの代表的なプロジェクト
INPEXを理解するには、事業名だけでなく、どの大型資産が現在の収益を支え、どの案件が将来の成長を担うのかを見ることが重要です。代表的なのが、豪州イクシスLNG、アブダビ油田、インドネシアのアバディLNG、国内の南長岡ガス田です。
イクシスLNG:現在の主力LNG資産
イクシスLNGは豪州で2018年に生産を開始した大型LNGプロジェクトです。INPEXは67.82%の権益を持つオペレーターで、日本企業として初めて世界規模の大型LNGプロジェクトを操業主体として立ち上げました。現在のLNG生産能力は年約930万トンで、LPGは年約165万トン、コンデンセートはピーク時日量約10万バレルの生産能力があります。
年間LNG販売契約は840万トンをカバーし、その約70%が日本の買い手向けです。年間930万トンという生産能力は日本の年間LNG輸入量の1割超に相当する規模で、INPEXの利益だけでなく、日本へのエネルギー供給という意味でも存在感があります。
今後は周辺鉱区のガス資源を活用しながら、2030年前後の稼働を視野に液化トレインの拡張も検討しています。既存の大型LNG基地をさらに成長させられるかは、2030年代のINPEXの収益規模を左右する重要テーマです。
アブダビ:原油事業の重要拠点
アブダビはINPEXが半世紀以上にわたって関係を築いてきた重要な産油地域です。海上では上部ザクム、下部ザクム、サター、ウムアダルクなど複数油田の開発・生産に参画し、陸上でも大型油田権益を保有しています。
上部ザクム油田は世界最大級の油田の一つで、INPEXはJODCOを通じ12%の権益を持っています。陸上権益でも11の油田で原油生産が続いており、長期的な原油供給源を確保しています。イクシスLNGが天然ガス/LNGの柱であるのに対し、アブダビは原油側の収益基盤として重要です。
アバディLNG:次の大型成長プロジェクト
インドネシアのアバディLNGは、INPEXがオペレーターを務める次の大型LNG案件です。計画ではLNGを年約950万トン、コンデンセートを最大日量約3.5万バレル、生産地周辺向けの天然ガスも供給する想定で、完成すればイクシスLNGに匹敵する規模の新たな収益源になる可能性があります。
2025年8月に基本設計(FEED)を開始し、2026年2月にはインドネシア政府から環境承認を取得しました。INPEX Vision 2035では2030年代初頭の生産開始を目標としており、最終投資決定(FID)へ向けた準備が進められています。
アバディでは天然ガス生産時に発生するCO2をCCSで処理する計画も組み込まれています。従来型のLNG拡大だけでなく、低炭素化を組み合わせた次世代の大型資源開発という位置づけです。
南長岡ガス田:国内最大級の天然ガス田
南長岡ガス田は新潟県長岡市の南西約10キロメートルに位置する国内最大級の陸上天然ガス田です。1976年に有望なガス層が確認され、1984年から本格生産が始まりました。
海外大型案件に比べれば事業規模は小さいものの、国内で天然ガスを生産し、直江津LNG基地で受け入れた海外LNGと組み合わせ、パイプラインで需要家へ供給できる仕組みを持っていることはINPEXの特徴です。資源開発から国内供給までをつなぐ実物インフラを持つことで、国内のエネルギー安定供給にも直接関わっています。
INPEXの強みは?
INPEXの強みは、単に「原油や天然ガスの権益を持っている」ことだけではありません。大型プロジェクトを自ら運営するオペレーター能力、原油とLNGの両方に大型資産を持つポートフォリオ、長年築いてきた産油国との関係、国内供給網まで含めた事業基盤が組み合わさっています。
大型資源プロジェクトを自ら運営できる「オペレーター能力」
資源開発では、共同事業の参加企業のうち一社がオペレーターとなり、探鉱・開発計画の策定、建設、操業、安全管理、パートナー間の調整などを主導します。オペレーターになるには地質、掘削、生産、プラント、契約、資金調達など幅広い専門能力が必要です。
INPEXは国内外の原油・天然ガス開発で蓄積した経験に加え、イクシスLNGを日本企業初の大型LNGオペレーター案件として立ち上げました。アバディLNGでもオペレーターを担っています。大型案件を「出資先」として保有するだけでなく、自ら開発・操業を主導できる能力は、新たな鉱区取得や産油国との交渉でも強みになり得ます。
原油とLNGの両方に大型資産を持つ
INPEXには、アブダビの原油権益とイクシスLNGという性格の異なる大型資産があります。原油価格とLNG価格は完全に独立しているわけではなく、天然ガス販売価格が原油価格に連動する契約も多いものの、地域・販売先・プロジェクトが複数に分かれることで、単一資産だけに依存するより収益源を分散できます。
さらに将来アバディLNGが加われば、豪州とインドネシアに大型LNG基盤を持つことになります。原油収益を基盤にしながら天然ガス/LNGを拡大する構造は、INPEXの今後の成長戦略そのものです。
世界5つのコアエリアを中心に事業を展開
INPEX Vision 2035では、豪州、アブダビ、東南アジア、日本、欧州をコアエリアとして事業基盤を拡大する方針です。豪州ではイクシスLNGや再エネ、アブダビでは大型油田、東南アジアではアバディLNGなど、地域ごとに異なる資産を持っています。
ただし、地域分散が進んでいるからといってリスクが完全に均等化されているわけではありません。実際にはイクシスやアブダビなど大型案件の収益寄与が大きく、主要資産の操業トラブルや地政学リスクは業績に影響します。分散と大型資産への集中が同時に存在する点は押さえておきたいポイントです。
日本国内にもガス田・LNG基地・パイプラインを持つ
INPEXは海外で生産した資源を売るだけでなく、日本国内に南長岡ガス田、直江津LNG基地、天然ガスパイプライン網を持っています。直江津LNG基地は海外LNGを受け入れて再ガス化し、国内産天然ガスと合わせて供給する拠点です。
上流開発会社でありながら、国内では生産・受入・気化・輸送・販売までをつなぐガス供給基盤を持つことが、INPEXの事業の厚みにつながっています。
エネルギー安全保障で重要な位置にいる
日本は原油・天然ガスの多くを海外に依存しているため、自ら海外の油田・ガス田権益を持ち、LNGを生産できる企業はエネルギー安全保障上も重要です。イクシスLNGの約70%が日本向けであることや、国内の南長岡ガス田・直江津LNG基地を持つことは、単なる海外資源投資とは異なる意味を持ちます。
特に天然ガス/LNGについては、豪州やインドネシアなどアジア・太平洋地域の供給源を強化することで、供給ルートの分散にもつながります。地政学リスクが高まる局面では、資源価格だけでなく「どこから長期間安定して調達できるか」という価値も意識されます。

INPEXとENEOSなどの石油会社は何が違う?
INPEXとENEOSなどは、どちらも石油・エネルギーに関わる企業ですが、主な役割が異なります。INPEXは原油・天然ガスを見つけて生産する上流が中心なのに対し、石油元売りは原油を輸入・精製し、ガソリン、軽油、灯油、石化原料などにして販売する下流の比重が大きい企業です。
| 企業・業態 | 主な役割 | 業績を動かしやすい要因 |
|---|---|---|
| INPEX | 油田・ガス田の探鉱、開発、生産、LNG | 原油・ガス価格、為替、生産量、設備稼働 |
| 石油元売り | 原油調達、精製、石油製品・化学品の販売 | 精製マージン、在庫影響、国内需要、原油価格 |
| 電力・ガス会社 | 燃料調達、発電、都市ガス供給、小売 | 燃料費、電力・ガス需要、料金制度など |
つまり「石油価格が上がればどの石油会社も同じように利益が増える」とは限りません。INPEXは原油を生産して売る側なので原油高が追い風になりやすい一方、原油を大量に仕入れて精製する企業では、原油高がコスト増にもつながります。石油・エネルギー企業を見るときは、産業のどこで利益を得ている会社なのかを確認することが重要です。
INPEXは今後どの事業を伸ばす?
INPEXは2035年に向け、現在の石油・天然ガス事業を縮小して別会社のように変わるのではなく、既存の資源開発能力を基盤に天然ガス/LNGを拡大し、その技術をCCS・水素・電力などへ展開する戦略を取っています。Vision 2035では「事業規模を60%拡大」と「GHG排出原単位を60%削減」を掲げています。
天然ガス・LNGを今後の成長軸にする
第一の成長軸は天然ガス/LNGです。既存のイクシスLNGを安全・安定操業しながら液化能力の拡張を目指し、アバディLNGを2030年代初頭の新たな大型供給源として立ち上げる計画です。また、LNGトレーディング機能を強化し、自社生産分だけでなく市場からの調達も組み合わせながら柔軟な供給体制を目指しています。
INPEXにとってLNGは、原油依存を和らげるだけでなく、エネルギー移行期の需要を取り込む成長事業です。イクシスとアバディを予定どおり成長させられるかは、中長期の企業規模を左右する重要なテーマになります。
CCS・水素を新たな収益事業へ
第二の成長軸がCCS・水素です。INPEXは自社の天然ガス/LNGプロジェクトから発生するCO2を地下へ貯留するだけでなく、将来的には他社のCO2を受け入れて削減サービスを提供することも視野に入れています。
地下構造評価や井戸掘削は石油・天然ガス開発と共通する技術が多いため、既存の組織能力を転用しやすいことが特徴です。アバディLNGでもCCSの導入が計画されており、LNG成長と低炭素化を別々の事業ではなく組み合わせて進める戦略が見えます。
電力・再生可能エネルギーにも事業を広げる
第三の成長軸として、電力関連や石油・天然ガス以外の地下資源にも挑戦する方針です。再生可能エネルギーに蓄電池や低炭素な調整電源を組み合わせ、安定性と環境価値の両方を備えた電力供給を目指しています。
ただし、現時点でINPEXの利益の中心が原油・天然ガス/LNGであることに変わりはありません。低炭素・電力分野は「すでに石油事業を置き換えた主力事業」ではなく、2030年代に向けて新たな収益源へ育てようとしている段階と考えるのが適切です。
INPEXの事業を見るうえで注意したいリスク
INPEXは大型資源を持つ一方、資源開発会社ならではのリスクも大きい企業です。原油・天然ガス価格、為替、大型案件の開発遅延、設備トラブル、地政学など、企業努力だけでは完全にコントロールできない要因が業績を左右します。
原油・天然ガス価格に利益が左右される
海外の原油・天然ガス販売価格は国際市況の影響を強く受けます。世界景気、需給、OPECプラスなど産油国の政策、地政学、金融市場などによって資源価格が下落すれば、INPEXの売上・利益にも下押し圧力がかかります。
INPEXは2026年期初時点で、原油価格が1ドル動くと年間損益に約55億円の影響が出ると試算しています。天然ガス価格も原油価格に連動する契約が多いため、資源価格の変動は会社全体の利益に波及します。
為替の影響を受ける
海外事業の収益はドル建てが多いため、円安になると円換算の利益が増えやすく、円高になると減りやすい傾向があります。一方で、海外設備投資や資材調達の円換算コストも為替の影響を受けるため、単純に円安がすべてプラスというわけではありません。
大型プロジェクトは巨額投資と長い開発期間が必要
資源開発は、探鉱に成功してから売上を得るまで非常に時間がかかる事業です。INPEX自身も、探鉱・開発投資から生産・販売で資金を回収するまで10年以上を要する場合があると説明しています。大型LNG案件では特に巨額の設備投資が必要です。
資材価格や人件費の上昇、許認可、地質上の問題、販売契約の確保などによって開発費が膨らんだり、生産開始が遅れたりすれば、投資採算が悪化します。アバディLNGやイクシス拡張は成長材料である一方、計画どおりのコスト・スケジュールで進むかを確認する必要があります。
大型鉱区・プロジェクトへの依存も残る
INPEXは世界各地へ事業を分散していますが、実際の収益ではイクシスLNGやアブダビ油田など大型案件の存在感が大きくなります。設備停止、事故、自然災害、政情変化、輸送制約などが主要プロジェクトに発生すれば、会社全体への影響も大きくなる可能性があります。
そのためINPEXの事業を見るときは、「何カ国に進出しているか」だけではなく、どのプロジェクトがどれだけ重要で、現在どの程度安定して生産・販売できているかを見ることが大切です。

まとめ:INPEXは原油・天然ガスを「見つけて開発する」会社
INPEXは、ガソリンスタンドを中心に展開する会社ではなく、石油・天然ガスを探し、油田・ガス田を開発し、生産した資源を販売する日本最大規模のエネルギー開発企業です。現在の事業基盤は、アブダビの原油と豪州イクシスLNGが大きな柱になっています。
INPEXを理解するうえでは、「原油会社」という言葉だけで見るより、油田・ガス田の権益を保有し、大型プロジェクトを自ら操業できる上流企業と考えると分かりやすくなります。イクシスでは日本企業初の大型LNGオペレーターとして実績を積み、次の大型案件としてアバディLNGの開発を進めています。
今後は天然ガス/LNGをさらに拡大するとともに、資源開発で培った地下評価・掘削技術をCCSや水素へ展開し、電力分野にも収益源を広げる方針です。現在の原油・LNG収益を基盤に、どこまで新しいエネルギー事業を育てられるかが、2030年代のINPEXを見るうえで重要になります。
出典
INPEX 会社概要
https://www.inpex.com/company/profile.html
INPEX 石油・天然ガスを知る
https://www.inpex.com/business/energy/oilgas.html
INPEX Vision 2035
https://www.inpex.com/company/midterm.html
INPEX イクシスLNGプロジェクト
https://www.inpex.com/english/business/project/ichthys.html
INPEX アブダビ海上油田
https://www.inpex.com/english/business/project/abudhabi-offshore.html
INPEX アブダビ陸上油田
https://www.inpex.com/english/business/project/abudhabi-onshore.html
INPEX アバディLNGプロジェクト
https://www.inpex.com/english/business/project/abadi.html
INPEX アバディLNGプロジェクト 環境承認の取得について
https://www.inpex.com/news/2026/20260220.html
INPEX 南長岡ガス田
https://www.inpex.com/english/business/project/minami-nagaoka.html
INPEX 直江津LNG基地
https://www.inpex.com/english/business/project/naoetsu.html
INPEX 早わかりINPEX
https://www.inpex.com/english/ir/info/info03.html
INPEX 事業等のリスク
https://www.inpex.com/english/ir/risk.html
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