INPEXの2026年12月期2Q決算はどうだった?原油・イクシスLNG・増配・自社株買いを解説

INPEX(1605)は2026年8月7日、2026年12月期第2四半期(中間期)決算を発表しました。上期の売上収益は前年同期比で減少した一方、親会社の所有者に帰属する中間利益は2,631億円と17.7%増加しました。さらに、通期の当期利益予想を4,500億円から5,100億円へ引き上げ、年間配当112円への増配と最大1,400億円の自社株買いも決定しています。

今回の決算で重要なのは、単純に「原油高で利益が増えた」と見るだけでは不十分な点です。中東情勢を背景に原油販売量は大きく減少しており、売上面では明確な逆風が出ています。その一方で、販売単価の上昇、円安、豪州イクシスLNGの堅調な生産、税負担の減少などが利益を押し上げました。

最新決算の数値だけでなく、なぜ減収でも増益になったのか、通期予想は市場予想と比べて強いのか、イクシスLNGや株主還元をどう評価すべきかまで整理します。

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目次

INPEXの最新決算はどうだった?

INPEXの最新決算はどうだった?

INPEXの2026年12月期上期決算は、売上収益が減少したものの最終利益が大きく伸び、通期利益予想の上方修正と株主還元の強化まで伴ったため、全体としては強い内容でした。ただし、原油販売量の減少や売上の弱さも確認されており、すべての事業指標が好調だったわけではありません。

項目2025年上期2026年上期前年同期比
売上収益1兆488億円1兆4億円-4.6%
営業利益6,168億円6,187億円+0.3%
税引前利益6,449億円6,443億円-0.1%
親会社帰属中間利益2,235億円2,631億円+17.7%
基本的1株当たり中間利益(EPS)186.65円226.33円+21.3%
イクシス利益貢献額1,390億円1,730億円約24%増

売上は減ったが最終利益は17.7%増

売上収益は前年同期の1兆488億円から1兆4億円へ4.6%減少しました。原油販売量の減少が大きく響き、増収決算ではありません。一方、営業利益は6,187億円と0.3%増、親会社の所有者に帰属する中間利益は2,631億円と17.7%増加しました。EPSも186.65円から226.33円へ21.3%伸びています。

売上の減少に対して最終利益の伸びが大きい点が、今回の決算の特徴です。販売単価上昇や円安に加え、持分法損益、法人税等、その他損益など複数の要因が利益を支えました。このため、「売上が減ったから悪い決算」「最終利益が増えたから本業が全面的に好調」とどちらか一方に決めつけず、増減要因を分けて見る必要があります。

会社予想と比べても純利益は大幅に上振れ

5月時点でINPEXは、2026年上期の親会社帰属利益を2,140億円と見込んでいました。実績は2,631億円となり、会社予想を491億円、22.9%上回っています。一方、売上収益は会社予想1兆870億円に対して1兆4億円、営業利益は6,280億円に対して6,187億円となり、売上・営業利益は予想を下回りました。

項目5月時点の上期予想上期実績予想比
売上収益1兆870億円1兆4億円-866億円
営業利益6,280億円6,187億円-93億円
税引前利益6,540億円6,443億円-97億円
親会社帰属利益2,140億円2,631億円+491億円

つまり、今回の決算は「トップラインは予想より弱いが、最終利益は大幅に上振れた」という内容です。上期の利益上振れについて会社は、油価や為替に加えて、イクシスなど各プロジェクトの数量増、販売コストの期ずれなども寄与したと説明しています。

INPEXの通期業績予想は5,100億円へ上方修正

今回の決算で最も大きな材料の一つが、2026年12月期の親会社帰属当期利益予想を4,500億円から5,100億円へ引き上げたことです。中東情勢には不透明感が残るものの、販売単価の上昇とイクシスLNGの堅調な生産などを踏まえ、5月時点予想から600億円増額しました。

項目5月予想8月予想修正幅
売上収益2兆2,910億円1兆9,730億円-3,180億円
営業利益1兆3,680億円1兆2,230億円-1,450億円
税引前利益1兆4,160億円1兆2,780億円-1,380億円
親会社帰属当期利益4,500億円5,100億円+600億円
ROE9.3%10.5%+1.2pt
ROIC8.0%8.2%+0.2pt

市場予想4,704億円も上回る見通し

ReutersがLSEGのIBESデータを基に報じたアナリスト11人の通期利益予想平均は4,704億円でした。INPEXが今回示した5,100億円は、この市場予想を約396億円、8%強上回る水準です。単に会社が従来予想を引き上げただけでなく、公表時点の市場予想よりも強い利益見通しを示した点は、決算評価で重要です。

もっとも、市場予想は今後の原油価格や為替、販売量の変化を受けて更新されます。5,100億円という会社予想そのものだけでなく、次回決算までに市場予想がどこまで追いつくのか、あるいは会社予想を上回る期待が形成されるのかも確認したいところです。

売上・営業利益予想はむしろ引き下げられた

注意したいのは、当期利益だけが上方修正された一方、売上収益と営業利益の予想は大きく引き下げられていることです。売上収益は2兆2,910億円から1兆9,730億円へ、営業利益は1兆3,680億円から1兆2,230億円へ修正されました。

原油販売量の減少などでトップラインには逆風がある一方、油価・為替やプロジェクト要因、税負担などが最終利益を支える構造になっています。そのため、5,100億円という利益予想を評価する際には、売上や数量の弱さも同時に見る必要があります。

下期はブレント75ドル・ドル円160円を前提

8月時点の会社予想では、2026年通期のブレント原油価格を1バレル81.4ドル、ドル円を159.2円と置いています。上期実績はブレント87.60ドル、ドル円158.29円だったため、下期だけを見るとブレント75ドル、ドル円160円が前提です。

下期の原油価格については上期より低い水準を想定しており、5,100億円予想は「原油価格が高騰し続ける」ことだけを前提にした数字ではありません。一方、円相場は5月予想より円安へ修正されており、為替面では利益を支える前提が置かれています。

原油販売量は減ったのになぜ利益が増えた?

2026年上期は、原油販売量が22.8%減少する一方、海外原油の平均販売単価は8.2%上昇し、為替も約10円の円安となりました。販売数量の落ち込みが売上を大きく押し下げましたが、価格と為替がその一部を吸収しています。さらに、税負担の減少やその他損益も最終利益を押し上げました。

項目2025年上期2026年上期変化
原油販売量71,501千バレル55,170千バレル-22.8%
海外原油平均単価73.51ドル/バレル79.51ドル/バレル+8.2%
原油平均為替148.43円/ドル158.40円/ドル9円97銭の円安
原油売上収益7,801億円6,949億円-10.9%

原油販売量の減少で売上収益を1,695億円押し下げ

会社の要因分析では、原油・天然ガスの販売量変化による売上収益への影響は合計でマイナス1,695億円でした。内訳では原油がマイナス1,781億円、天然ガスがプラス85億円です。特に中東紛争を背景とする原油販売量の減少が大きな下押し要因になりました。

原油の販売量は前年同期の7,150万1千バレルから5,517万バレルへ22.8%減少しています。原油価格が高いだけでは業績が決まらず、「価格×数量」で見る必要があることが分かる決算です。

原油販売単価上昇と円安が減収を一部吸収

一方、海外原油の平均販売単価は1バレル73.51ドルから79.51ドルへ上昇しました。販売単価の上昇による売上収益へのプラス効果は493億円です。また、原油の平均為替は1ドル148.43円から158.40円へ円安となり、為替による原油売上へのプラス寄与は436億円でした。

天然ガスも含めると為替のプラス寄与は合計556億円です。数量減によるマイナスをすべて埋めるには至らなかったものの、高い販売単価と円安が売上の落ち込みを和らげました。

法人税等の減少やその他損益も最終利益を押し上げた

最終利益が17.7%増えた背景には、本業の価格・為替だけでなく会計上の利益要因もあります。前年同期比の中間利益増減分析では、法人税等が約400億円、その他損益が約456億円の増益要因となりました。その他損益にはイクシス減資に伴う為替差益などが含まれています。

このため、2,631億円という中間利益をそのまま「原油・LNGの数量成長だけで稼いだ利益」と見るのは適切ではありません。持続的な収益力を判断するには、販売量、イクシスの稼働、原油・ガスの販売単価など、本業側の指標も継続して確認することが重要です。

イクシスLNGの好調が今回の決算を支えた

豪州のイクシスLNGは、今回のINPEX決算を支えた重要なプロジェクトです。2026年上期のイクシスによる利益貢献額は1,730億円となり、前年同期の1,390億円から約340億円増加しました。中東の原油販売に逆風が出るなか、豪州LNGの安定生産が収益ポートフォリオを支えています。

イクシスの上期利益貢献額は1,730億円

イクシスはINPEXがオペレーターとして主導する大型LNGプロジェクトで、原油だけに依存しない収益源として重要です。2026年上期の利益貢献額1,730億円は前年同期比で約24%増加しました。会社は通期のイクシス利益貢献額を約3,800億円と見込んでいます。

また、8月時点の業績予想では、海外O&Gのイクシス部門について調整後当期利益予想を5月時点の3,735億円から4,190億円へ455億円引き上げています。高稼働が続けば、下期も全社利益の大きな支えになります。

LNGは上期64カーゴ、7月までで76カーゴを出荷

イクシスLNGは2026年に入ってから安定生産を継続しています。LNG出荷カーゴ数は1~6月の上期で64カーゴ、7月までの累計では76カーゴとなりました。会社は従来、年間平均で月10カーゴ程度を見込んでいましたが、上期の好調な生産を受け、年間合計では従来見通しを数カーゴ上回ると見込んでいます。

資源会社では、埋蔵量や設備能力だけでなく、実際に安定稼働し、計画どおり販売できるかが利益に直結します。イクシスの安定操業は、原油販売量の減少や中東情勢の不透明感を分散する意味でも重要です。

年間配当は112円へ増配

INPEXは好調な業績見通しを受け、2026年12月期の普通株式1株当たり年間配当予想を108円から112円へ引き上げました。中間配当は54円予想から56円へ増額され、期末配当予想も54円から56円へ修正されています。前期の年間100円からは12円の増配です。

累進配当方針に沿って株主還元を強化

INPEXは2025~2027年度の中期経営計画で、1株当たり年間90円を起点とする累進配当を掲げています。累進配当では、原則として配当水準を維持または引き上げていくため、資源価格の変動が大きい企業であっても株主還元の安定性を意識した運営となります。

2025年の年間配当100円に続き、2026年予想は112円まで増えています。今回の増配は、単に配当利回りを高める施策ではなく、業績の成長にあわせて還元を強化するという中期経営計画の方針に沿ったものです。

最大1,400億円の自社株買いを発表

INPEXは決算と同時に、最大5,000万株、取得価額総額1,400億円を上限とする自社株買いを決定しました。取得上限株数は自己株式を除く発行済株式総数の4.3%に相当し、取得期間は2026年8月10日から12月31日までです。取得方法は東京証券取引所での市場買付としています。

項目内容
取得株式数5,000万株(上限)
取得総額1,400億円(上限)
発行済株式に対する割合4.3%
取得期間2026年8月10日~12月31日
取得方法東京証券取引所での市場買付

総還元性向は約53%を見込む

中間配当56円、年間配当112円と1,400億円の自己株取得を組み合わせ、2026年12月期の総還元性向は約53%となる見込みです。INPEXは中計期間中に総還元性向50%以上を目指す方針を掲げており、今回の還元策はその基準を満たす水準です。

資源価格が高い局面で得たキャッシュを成長投資だけでなく、配当と自社株買いを通じて株主へ還元する姿勢が明確になっています。自社株買いは市場での買い需要を生み、取得後の株式数減少を通じて1株当たり指標の改善にもつながり得るため、決算の利益成長とは別の株価評価材料になります。

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今回のINPEX決算で良かった点

今回の決算で評価しやすいのは、単に上期利益が増えただけでなく、通期利益予想、市場予想との比較、イクシスの操業、株主還元まで複数の強い材料が同時に確認できたことです。

最終利益が前年同期比17.7%増加

原油販売量の減少という明確な逆風がありながら、親会社帰属中間利益は2,631億円へ増加しました。価格・為替・LNG・税負担など複数の要因で数量減を吸収しており、収益源が一つの地域や一つの指標だけに依存していないことが表れています。

通期5,100億円は市場予想を上回る

会社が示した通期利益予想5,100億円は、Reutersが報じた市場予想4,704億円を上回ります。業績上方修正がすでに市場で期待されていたとしても、コンセンサスを上回る会社予想を出したことは、決算の強さを判断する材料になります。

イクシスLNGの安定生産が利益を下支え

中東では販売量減少が発生した一方、豪州イクシスでは安定生産が続きました。イクシス利益貢献額は前年同期から増え、年間カーゴ数も従来見通しを上回る見込みです。地域分散とLNG事業の存在が、原油販売量の弱さを補う役割を果たしています。

増配と大型自社株買いを同時に発表

年間配当112円への増配と最大1,400億円の自社株買いを同時に示したことで、利益成長を株主価値へ還元する姿勢も明確になりました。資源価格が上昇して利益が増えても、還元が弱ければ株主のメリットは限定されます。今回は業績と還元の両方が強化された点が評価材料です。

INPEXの最新決算で気になる点・リスク

決算全体は強い内容でしたが、今後の業績を考えるうえで注意したい点もあります。特に、原油販売量の減少、売上予想の引き下げ、最終利益を押し上げた一部要因の持続性は確認が必要です。

原油販売量は大幅に減少している

2026年上期の原油販売量は前年同期比22.8%減でした。販売単価が上昇しても、販売できる数量が減れば売上収益は伸びません。中東情勢が長期化し、アブダビなどの販売制約が続く場合は、原油高の恩恵を十分に取り込めない可能性があります。

売上・営業利益予想は下方修正

通期の親会社帰属利益は上方修正されましたが、売上収益と営業利益は下方修正されています。とくに売上収益は5月予想から3,180億円引き下げられました。今後も数量面が弱いままの場合、利益上振れを価格や為替だけで補い続けられるかが焦点になります。

最終利益には税負担減少や為替差益なども寄与

上期の最終利益増加には、法人税等の減少やイクシス減資に伴う為替差益など、本業の生産・販売数量とは異なる要因も含まれています。これらの要因が毎期同じ規模で繰り返されるとは限りません。次回以降の決算では、プロジェクトの販売量やセグメント利益がどの程度伸びるかを確認する必要があります。

原油・為替が会社前提から外れるリスク

通期予想はブレント原油81.4ドル、ドル円159.2円を前提としています。原油価格が想定を大きく下回ったり、円高が進んだりすれば業績には下押し圧力がかかります。反対に、市況が会社前提を上回れば、販売量の状況次第で上振れ余地が生まれます。

下期のINPEX決算で確認したいポイント

次回以降の決算では、5,100億円という通期利益予想の達成度だけでなく、その中身を確認することが重要です。とくに原油価格・為替・アブダビ販売量・イクシスLNGの操業状況は、下期業績を左右する主要な確認項目です。

確認項目8月時点の前提・状況確認したい内容
ブレント原油通期81.4ドル、下期75ドル会社前提を上回るか
ドル円通期159.2円、下期160円円安効果が維持されるか
イクシスLNG安定生産、7月まで76カーゴ高稼働と出荷数が続くか
原油販売量上期22.8%減中東の販売制約が緩和するか
通期利益5,100億円下期2,469億円計画の進捗
自社株買い最大1,400億円取得の進捗と追加還元の有無

会社の下期利益予想は2,469億円です。上期2,631億円と合わせて通期5,100億円を見込んでいます。下期は原油価格を75ドルと上期より低く置く一方、ドル円は160円と円安を想定しているため、市況の組み合わせがどのように推移するかがポイントになります。

INPEXの次回決算はいつ?

2026年8月10日時点では、INPEXの公式IRカレンダーに2026年12月期第3四半期決算の発表日は掲載されていません。前年の2025年12月期第3四半期決算は2025年11月13日15時30分に発表されているため、2026年も11月中旬が一つの参考時期になります。正式な日程は会社発表を確認する必要があります。

次回の第3四半期決算では、上期に減少した原油販売量が回復しているか、イクシスの高稼働が継続しているか、5,100億円の通期利益予想に対して進捗がどうなっているかが重要です。

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まとめ:INPEXの最新決算は純利益・LNG・株主還元が強い内容

INPEXの2026年12月期上期決算は、売上収益が4.6%減少した一方、親会社帰属中間利益は17.7%増の2,631億円となりました。原油販売量の減少という逆風を、原油販売単価の上昇、円安、イクシスLNGの安定生産、税負担の減少などが補っています。

通期の親会社帰属利益予想は4,500億円から5,100億円へ引き上げられ、市場予想4,704億円も上回りました。さらに、年間配当は112円へ増配され、最大1,400億円の自社株買いも決定されています。業績と株主還元の両方でポジティブな材料が確認された決算です。

一方で、原油販売量の減少や通期売上・営業利益予想の引き下げには注意が必要です。今後は原油価格だけを見るのではなく、アブダビなどの販売量、イクシスLNGの稼働、ドル円、5,100億円予想の進捗を合わせて確認することが重要です。

出典

INPEX「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算説明会」
https://www.inpex.com/ir/library/upload/result20260807_b.pdf

INPEX「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」
https://www.inpex.com/ir/library/upload/result20260807.pdf

INPEX「剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正に関するお知らせ」
https://www.inpex.com/news/upload/20260807_c.pdf

INPEX「自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ」
https://www.inpex.com/news/upload/20260807_d.pdf

INPEX「IRカレンダー」
https://www.inpex.com/ir/calendar.html

Reuters「Inpex raises full-year guidance on higher oil prices and LNG project」
https://www.reuters.com/business/energy/inpex-raises-full-year-guidance-higher-oil-prices-lng-project-2026-08-07/

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