自動運転関連の銘柄として名前を見かけるようになったティアフォー(593A)について、「結局どんな会社なのか」「無料のソフトを配っていて、どこで稼いでいるのか」と疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
ティアフォーは、自動運転用のオープンソースソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発を主導し、Autowareを基盤とした自動運転システムの開発・導入・量産化を支援する企業です。2026年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、日本株で自動運転を中心事業とする数少ない企業として注目されています。
ただし、「Autowareを作っている会社」とだけ捉えると事業が見えにくくなります。Autowareは誰でも利用・改良できるオープンソースで、権利は国際業界団体のThe Autoware Foundationが持っているためです。Autowareの仕組みから3つの製品とサービス、具体的な収益源、手掛けている自動運転の用途まで順番に整理し、「無料のAutowareで、ティアフォーは何で稼ぐのか」という点を解説します。
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ティアフォーとはどんな会社?

ティアフォーを一言で表すと、オープンソースを起点に、自動運転を実際の車両やサービスへ実装する会社です。公式の事業内容は「自動運転システムおよびプラットフォーム開発」とされています。自動運転ソフトウェアを研究するだけの会社ではなく、自治体や交通事業者への車両導入、自動車メーカーとの量産開発、センサーや車載コンピューターを含む開発環境の提供まで、事業範囲が広い点が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社ティアフォー(TIER IV, Inc.) |
| 証券コード | 593A |
| 上場市場 | 東京証券取引所グロース市場 |
| 上場日 | 2026年7月22日 |
| 設立 | 2015年12月 |
| 代表者 | 代表取締役 執行役員 CEO 加藤真平 |
| 本社 | 東京都品川区北品川1-12-10 |
| 事業内容 | 自動運転システムおよびプラットフォーム開発 |
| 従業員数 | 404名(臨時雇用者174名を外数表記、2026年5月31日時点) |
| ビジョン | 自動運転の民主化 |
名古屋大学発の自動運転スタートアップ
ティアフォーの原点は、CEOの加藤真平氏が名古屋大学准教授時代に開発したAutowareです。加藤氏は2015年8月にAutowareをオープンソースとして公開し、その約4カ月後の2015年12月にティアフォーを設立しました。会社を作ってから製品を開発したのではなく、先にオープンソースのプロジェクトがあり、その技術を社会実装へ広げるために会社が生まれたという順序です。
この成り立ちは現在のビジネスにも表れています。自動運転技術を自社製品だけに囲い込むのではなく、自動車メーカー、部品メーカー、研究機関、自治体などが共通の技術基盤を使えるエコシステムを広げることを重視しています。掲げているビジョン「自動運転の民主化」は、このオープンソース戦略をそのまま表した言葉です。
2026年7月に東証グロース市場へ上場
ティアフォーは2026年7月22日、東京証券取引所グロース市場へ上場しました。上場時の会社説明では、Autowareを基盤とした自動運転車両の開発・販売と実証・導入支援を展開し、トヨタ自動車、いすゞ自動車、ヤマハ発動機、スズキ、コマツなどのOEMパートナーと量産化・商用化に取り組んでいると説明しています。OEMは、ここでは自動車メーカーを指します。
2025年9月期の売上高は64億1,000万円でした。自動運転市場そのものが本格的な量産普及の前にあるため、現在の売上は実証実験、導入支援、共同開発、ハードウェア販売などの比重が大きい段階です。会社は、事業が開発から量産・運用へ進むにつれて、量産時に車両ごとに発生するソフトウェア・ハードウェアなどの収益と、運用開始後の保守やWebサービスによる継続収益を積み上げる構造を示しています。
Autoware(オートウェア)とは?
Autowareは、自動運転システムを構築するためのオープンソースソフトウェアです。LinuxとROS(Robot Operating System。ロボット開発で広く使われる共通のソフトウェア基盤)をベースに、自動運転に必要な認知、自己位置推定、経路計画、車両制御などの機能を組み合わせて利用できます。研究開発用として始まりましたが、現在は商用の自動運転システムを開発する土台としても使われています。
自動運転に必要な「認知・判断・制御」を担う
自動運転車は、AIがハンドルを動かしているだけではありません。カメラやLiDAR(レーザーで周囲の距離や形状を測るセンサー)、レーダーなどから周囲の情報を取得し、車両や歩行者、信号、道路形状を認識します。同時に自分の車が地図上のどこにいるかを推定し、目的地や交通状況に応じて走る経路を決めたうえで、ステアリング、アクセル、ブレーキへ制御指令を出します。
Autowareは、この一連の処理を構成するソフトウェア群を提供します。「自動運転のOS」と表現されることもありますが、WindowsやLinuxのようなOSそのものではありません。LinuxやROSの上で動き、自動運転に必要な機能をまとめたソフトウェアスタックと考えると実態に近くなります。
Autoware最大の特徴はオープンソース
Autowareの最大の特徴は、ソースコードが公開され、企業や研究者が利用・改良・開発に参加できることです。自動運転システムをゼロから作る場合、認知、経路計画、制御、シミュレーションなど膨大な機能を自社で用意しなければなりません。共通部分をAutowareで共有できれば、各企業は自社が差別化したい車両やサービスへ開発資源を集中できます。
Autoware Foundationによれば、Autowareは500社を超える企業・組織に利用され、30種類を超える車両、20カ国以上での利用実績があります。ティアフォーにとっては、利用者が増えるほどエコシステムが広がり、Autowareを商用システムへ導入したい企業に自社製品や開発支援を提供する機会も増える構造です。
Autowareは現在、ティアフォーだけのソフトウェアではない
Autowareはティアフォーが開発を主導してきましたが、その権利をティアフォーが独占的に持っているわけではありません。ティアフォーは2018年12月に設立された国際業界団体The Autoware Foundation(AWF)へ、Autowareの権利を譲渡しています。
AWFには自動運転、半導体、ソフトウェア、研究機関など多様な組織が参加し、Autowareの戦略や技術開発に関わっています。ティアフォーは創設メンバーとして技術委員会やワーキンググループに加わり、現在も開発を主導する立場です。Autoware=ティアフォーが販売する有料ソフトではなく、Autowareというオープンな共通基盤を広げ、その上で商用化に必要な製品とサービスを提供する会社、という関係になります。
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Autowareが無料なのにティアフォーは何で稼いでいる?
Autowareが無料で公開されているなら、ティアフォーは何を売っているのか。答えは、Autowareのソースコードではなく、Autowareを実際の車両に安全に載せ、開発し、運行し、量産するために必要な付加価値の部分です。
オープンソースのLinux自体は無償で使えても、企業向けの導入支援、クラウド、セキュリティ、運用保守には大きな市場があります。ティアフォーのビジネスも考え方は近く、オープンソースを入り口に利用者を増やし、商用化に必要な製品、エンジニアリング、ハードウェア、ライセンス、運用を提供して収益を得ます。収益機会は、事業の段階ごとに次のように分かれます。
| 段階 | 主な収益 | 収益の増え方 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 開発 | 共同開発・エンジニアリング収益 | プロジェクト数・開発規模に応じて増加 | OEM等との自動運転システム共同開発 |
| 量産 | ソフトウェア・ハードウェア等のワンタイム収益 | 新たに量産・導入される車両台数に連動 | 車両へ搭載するソフト・車載機器等 |
| 運用 | 保守・Webサービス等のリカーリング収益 | 累計の車両運用台数に応じて積み上がる | 運用保守、Webサービス、ライセンス等 |
ワンタイム収益は車両1台ごとに一度発生する収益、リカーリング収益は稼働が続く限り積み上がる継続収益を指します。同じ案件が開発から量産、運用へ進めば、それぞれの段階で異なる収益機会が生まれます。単純な1台ごとのライセンス販売とは、収益の作り方が違います。
開発段階では共同開発・エンジニアリングで稼ぐ
自動車メーカーや特殊用途車両メーカーが自動運転車を開発する段階では、ティアフォーがPilot.Autoなどの製品を提供し、各社の車両や用途に合わせたカスタマイズ、システム統合、検証、技術協力を行います。この段階の収益は、共同開発や受託開発に対するエンジニアリング収入が中心です。
自動運転は、同じソフトウェアを別の車両へそのまま載せれば動くというものではありません。車体の大きさ、ブレーキ特性、センサー構成、運行場所、求める自動運転レベルに合わせた調整が必要になるため、量産前の開発フェーズだけでも専門的な技術支援の需要が生まれます。
導入段階では車両販売・地図・認可・保守まで収益化する
自治体や交通事業者へ自動運転バスなどを導入するMobility Serviceでは、自動運転システムを搭載した完成車両の販売に加えて、高精度3次元地図の作成、走行前の調整、運行支援、レベル4の認可取得支援、保守・アフターサービスからも収益を得ます。
この事業で売っているのはソフトウェアの納品ではなく、自動運転サービスを実際に地域で運行できる状態にすることです。自動運転は法規制、安全審査、地図整備、運行管理まで含めて初めて社会実装できるため、国内各地の実証で蓄積してきたノウハウ自体がサービスの価値になります。
量産・運用が進むほど車両台数に連動する収益が増える
2026年8月19日の第3四半期決算説明会では、共同開発中はプロジェクト数や開発規模に応じた開発収益、量産開始後は車両に搭載するソフトウェアやハードウェアからのワンタイム収益、運用開始後はソフト・ハードの運用保守やWebサービスからのリカーリング収益を得る構造が説明されました。
量産車が増えれば搭載時点の収益機会が増え、累計の運用台数が増えるほど稼働後の継続収益も積み上がります。開発フェーズから量産・運用フェーズへ進むほど、車両台数の拡大がそのまま売上成長につながりやすくなる構造です。
すでに「稼働台数×ライセンス料」の事例もある
量産後のライセンスモデルは将来構想だけではありません。ティアフォーとヤマハ発動機が設立したeve autonomyでは、工場内の無人搬送サービス「eve auto」を展開し、ティアフォーは自動運転システムを組み込んだ車両の稼働台数に応じたライセンス料を受け取っています。
有価証券届出書によると、2026年3月時点で93台が国内各地の工場内で無人運行していました。公道を走る乗用車やバスとは用途が違いますが、自動運転システムを量産・導入し、稼働台数が増えるほどライセンス収益が積み上がるという将来像を、実際の商用サービスで示している事例です。
ティアフォーの3つの製品|Pilot.Auto・Web.Auto・Edge.Auto
ティアフォーはAutowareをそのまま顧客へ渡すのではなく、商用開発で使いやすい形にした3つの製品プラットフォームを展開しています。公式には、Pilot.Auto、Web.Auto、Edge.Autoの3製品で自動運転システムの設計、検証、開発、運用をフルスタックで支援すると説明しています。
| 製品 | 役割 | 簡単にいうと |
|---|---|---|
| Pilot.Auto | Autowareを基盤とする自動運転ソフトウェアプラットフォーム | 自動運転の頭脳 |
| Web.Auto | クラウドを使った開発・検証・データ管理・運行支援 | 開発・運用の基盤 |
| Edge.Auto | センサー、車載コンピューター、ソフトウェアツールを組み合わせた基盤 | 車両側のハードウェア基盤 |
Pilot.Auto|Autowareを商用開発へつなぐ自動運転ソフトウェア
Pilot.Autoは、Autowareを基盤とした自動運転ソフトウェアプラットフォームです。工場内物流、トラック、建設・鉱山向け車両、高速道路トラック、バス・シャトル、ロボタクシー、自家用車など、用途別のリファレンスデザイン(標準的な設計の見本)とカスタマイズ可能な機能を組み合わせて提供します。
技術解説では、Pilot.AutoにはオープンソースのAutowareには含まれない追加アプリケーションを組み合わせ、車種やODD(運行設計領域。自動運転を使える条件の範囲)に応じてパッケージ化すると説明されています。無料の共通基盤であるAutowareと、顧客が製品開発で使う商用パッケージのPilot.Autoは同じものではありません。
Web.Auto|自動運転を開発・運用するクラウド基盤
Web.Autoは、自動運転車両の開発と運用をクラウドから支援するプラットフォームです。開発者向けにはシミュレーション、CI/CDパイプライン(変更したソフトを自動で検証・反映する仕組み)、走行データ管理などを提供し、ソフトの変更後に大量のシナリオで安全性を検証したり、車両から集めたデータを次の開発へ生かしたりできます。
サービス運営側では、複数台の自動運転車をまとめて管理するフリート管理や遠隔操作も利用できます。自動運転は車両を完成させて終わりではなく、運行後もデータ収集、ソフト更新、異常対応が続きます。Web.Autoは、この「作った後」を支える役割です。
Edge.Auto|センサー・車載コンピューターまで含む基盤
Edge.Autoは、カメラやLiDARなどのセンサー、車載コンピューター、ソフトウェアツールを組み合わせたリファレンスプラットフォームです。自動運転AIを動かすには、どのセンサーを使い、どのコンピューターで処理し、どう車両制御へ接続するかを設計する必要があります。
Edge.AutoはPilot.AutoやWeb.Autoと組み合わせて使える構成をあらかじめ用意し、顧客がハードウェアの選定・評価・検証を一から行う負担を減らします。ティアフォーがソフトウェア会社にとどまらず、車両へ載せるところまで支援できる理由の一つです。
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ティアフォーの事業は3つのサービスに分かれる
製品が「自動運転を作るための技術基盤」だとすれば、サービスは「その技術を誰に、どの段階で提供するか」を示します。事業はMobility Service、Development Service、Solution Serviceの3つに分かれ、顧客の自動運転導入フェーズごとに役割が分かれています。
| サービス | 主な顧客 | 主な内容 | 2025年9月期の売上構成比 |
|---|---|---|---|
| Mobility Service | 自治体、交通事業者、MaaS事業者 | 車両提供、導入、運行、認可、保守 | 35.4%(約22億7,000万円) |
| Development Service | 自動車OEM、特殊用途車両メーカー | 量産車向け共同開発、ADK、ライセンス | 20.8%(約13億3,000万円) |
| Solution Service | 研究・教育機関、企業、政府・団体 | ハードウェア、ライセンス、技術支援、コンサル、政府委託事業等 | 43.9%(28億1,200万円) |
※MaaSは複数の交通手段をまとめて利用できるようにするサービスを指します。Mobility ServiceとDevelopment Serviceの金額は、売上高64億1,000万円と構成比からの計算値です。
2025年9月期はSolution Serviceが売上の43.9%で最大でした。ただし会社は、自動運転市場が拡大しOEMの量産プロジェクトが進むにつれて、Development Serviceが中心的な役割を担うことを想定しています。現在の売上構成は、将来の事業構造をそのまま表したものではありません。
Mobility Service|自治体や交通事業者へ自動運転を導入
Mobility Serviceは、自動運転を実際の地域交通として導入する事業です。ティアフォーが自動車メーカーからベース車両を調達し、自動運転システムを搭載して、自治体、交通事業者、MaaS事業者などへ提供します。
提供範囲は車両にとどまりません。運行ルート設計、リスクアセスメント、高精度3次元地図の作成、走行可能性の検証、実証実験、運行管理、保守、ソフトウェア更新、レベル4認可の取得支援まで一気通貫で対応します。公式のL4 RIDEサービスでは、国内127市区町村の公道で実証実験を実施した実績を掲げています。
Development Service|自動車メーカーの量産開発を支援
Development Serviceは、自動車OEMや特殊用途車両メーカーが自社製品として自動運転車を量産するための共同開発事業です。顧客の要求に合わせて製品を提供し、ソフトウェア開発、車両統合、検証を進めます。2026年5月時点で、協業先のOEM・Tier1サプライヤーは18社とされています。Tier1は自動車メーカーへ部品やシステムを直接納入する一次取引先です。
この18社には、直接的な顧客だけでなく、ビジネスフローに間接的に関与する企業やエンドユーザーも含まれます。18社すべてと直接契約している、18件の量産案件が進んでいる、という意味ではない点は読み違えやすいところです。
このサービスの特徴は、開発案件が量産・運用へ進んだ後も収益機会が続くことです。開発中はプロジェクト単位のエンジニアリング収入、量産開始後は車両ごとのワンタイム収益、運用開始後はリカーリング収益と、同じ案件が段階を進むほど収益の形が変わっていきます。
Solution Service|Autowareを使いたい企業・研究機関を支援
Solution Serviceは、Autowareを利用した研究開発や自動運転技術の導入を支援する事業です。研究機関、教育機関、企業、政府機関、団体などに対して、ソフトウェアライセンス、ハードウェア販売、コンサルティング、教育・技術支援などを提供します。
Mobility Serviceが自動運転を地域へ導入する事業、Development Serviceが量産車を作る事業だとすると、Solution ServiceはAutowareの利用者を増やし、技術エコシステム自体を広げる基盤的な事業です。2025年9月期は売上28億1,200万円、構成比43.9%で3サービス中最大でした。
なお、有価証券届出書では、政府からの委託事業もSolution Serviceに含まれるとされています。最大の構成比を占めるこのサービスには、商用のソフトウェア・ハードウェア販売だけでなく公的プロジェクトの収入も含まれるため、売上の質を見るときは内訳を意識したいところです。
ティアフォーはどんな自動運転を手掛けている?
自動運転と聞くと乗用車やロボタクシーを想像しやすいものの、ティアフォーの対象はそれだけではありません。Pilot.Autoは工場内物流からトラック、建設・鉱山車両、バス、ロボタクシー、自家用車まで複数の用途を想定しています。技術を一つの車種に閉じず、用途ごとに設計の見本を用意して横展開するのが事業戦略の特徴です。
自動運転バス・シャトル
現在の社会実装で特に目立つのが、自動運転バスやシャトルです。人口減少や運転手不足が進む地域では、既存の公共交通を維持する手段としてレベル4自動運転への期待があります。ティアフォーは車両提供だけでなく、実証、地図作成、運行管理、認可、保守まで支援できるため、自治体が単独では対応しにくい導入プロセスをまとめて引き受けられます。
物流・工場内の無人搬送
公道より先に商用化が進みやすいのが、工場や私有地など閉鎖空間での自動運転です。歩行者や一般車両が入り交じる公道と比べて運行条件を限定しやすく、人手不足の解消や物流効率化という明確な経済メリットもあります。
eve autonomyの工場内搬送サービスはその代表例で、ヤマハ発動機の車両とティアフォーの自動運転技術を組み合わせています。ティアフォーにとっては技術実証にとどまらず、稼働車両から継続的なライセンス収入を得る実際の商用モデルになっています。
トラック・建設機械などの特殊用途車両
高速道路を走るトラックや、建設・鉱山現場の大型車両にも取り組んでいます。コマツおよびEARTHBRAINとは、土木・砕石現場で使うダンプトラックの自動運転化を進め、2027年度までの実用化を目標としています。
物流や建設ではドライバー不足、安全性、生産性向上という課題がはっきりしており、導入企業が投資効果を計算しやすい分野です。乗用車だけでなく商用・産業用途へ対象を広げているのは、こうした実需があるためです。
ロボタクシー・自家用車
Pilot.Autoではロボタクシーや自家用車向けの設計見本も用意しています。市場規模が大きい一方、公道の複雑な交通環境で高い安全性を実現し、各国の規制にも対応する必要があるため、技術と制度の両面で難易度が高い領域です。
ティアフォーは一社でロボタクシーサービスを世界展開するというより、Autowareを基盤に自動車メーカーやサービス事業者が自社の自動運転サービスを構築できる技術基盤を提供する立場を取っています。
ティアフォーの強みは?
強みを見るときは、自動運転AIの性能という一点ではなく、Autowareというオープンソース基盤、車両への実装力、外部企業との協業、量産後まで続くビジネスモデルをまとめて捉える必要があります。
① Autowareを中心としたオープンなエコシステム
最大の特徴は、世界中の企業・研究機関が参加できるエコシステムを起点にしていることです。自動運転にはAIだけでなく、半導体、センサー、地図、シミュレーション、車両制御、通信など多数の技術が必要になります。一社ですべてを開発するのではなく、共通基盤を開放して外部企業と組み合わせることで、対応できる用途や地域を広げやすくなります。
② ソフトウェアだけでなく車両への実装まで扱える
ティアフォーはPilot.Autoという自動運転ソフトだけでなく、Web.Autoによるクラウド開発・運用、Edge.Autoによるセンサーと車載コンピューター、Mobility Serviceによる地図・認可・保守まで提供しています。
自動運転では、研究室でAIモデルを動かすことと、公道で何年も安定して運行することの間に大きな差があります。車両制御、ハードウェア、安全評価、法規対応、運行保守までつなげる力が必要です。国内127市区町村での公道実証で蓄積したデータとノウハウは、事業上の資産といえます。
③ OEMと量産プロジェクトを進められる
ティアフォーは自動車メーカーやTier1サプライヤーとの共同開発を進めており、上場会見ではトヨタ、いすゞ、ヤマハ発動機、スズキ、コマツなどをOEMパートナーとして挙げています。
自動運転スタートアップにとっては、技術を開発することよりも、大手メーカーの量産要件に合わせて品質・安全・コストを満たすことが大きな壁になります。量産プロジェクトに入れれば、開発収入に加えて量産時の車両ごとの収入、運用開始後の継続収入へとつながります。
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ティアフォーとWaymo・テスラの違いは?
自動運転企業としての立ち位置は、Waymoやテスラと比べると分かりやすくなります。3社とも自動運転技術を手掛けていますが、技術の提供方法とビジネスモデルは大きく異なります。
| 企業 | 主な立場 | 技術の考え方 | 主な収益化の方向 |
|---|---|---|---|
| ティアフォー | 自動運転基盤・システムを外部企業へ提供 | Autowareを中心とするオープンなエコシステム | 開発支援、車両・ハードウェア、ライセンス、運用 |
| Waymo | 自社の自動運転配車サービスを運営 | 自社のWaymo Driverを中心とする垂直統合 | 自動運転ライドヘイリング |
| テスラ | 自社EVと自動運転ソフト、Robotaxiを展開 | 自社車両・AI・ソフトを垂直統合 | 車両販売、FSD、Robotaxi等 |
Waymoは自社の自動運転システムで配車サービス(ライドヘイリング)を運営し、自ら交通サービスの事業者になる色彩が強い企業です。テスラも自社の車両、AIコンピューター、FSD、Robotaxiを垂直統合して展開しています。
一方のティアフォーは、他社の自動車メーカー、自治体、交通事業者、研究機関などが自動運転を作るための共通基盤を提供する立場が中心です。自社でも車両提供や運行支援を行いますが、一社ですべてを囲い込むより、Autowareと自社製品を外部パートナーへ広げ、複数のメーカー・用途で使われることを成長戦略にしています。
そのため成長を測るときは、自社ブランドの車が何台売れたかではなく、Autowareベースのシステムを採用するメーカー数、量産プロジェクト数、搭載・運用車両数、そして量産時のワンタイム収益と運用後のリカーリング収益がどこまで増えるかを追うことになります。
ティアフォーの将来性|「実証・開発」から「量産・運用」へ移れるか
現在のティアフォーは、量産・運用台数の拡大で大きな利益を得る段階には達していません。2026年9月期第3四半期累計は売上高51億7,800万円に対して営業損失68億2,600万円、研究開発費は59億8,900万円と、売上高を上回る規模の研究開発を先行させています。案件ごとにエンジニアや車両が必要な開発中心のフェーズから、車両台数に応じて収益が積み上がる量産・運用フェーズへ移れるかどうかが、収益性を大きく左右します。
自動車メーカーの量産車に採用されれば、一度開発した技術を多数の車両へ展開できます。会社がDevelopment Serviceを将来の中核事業と位置付けているのも、開発案件が量産・運用へ移ったときに収益構造が変わるためです。
2025年114台から2030年1,800台超へ、車両運用台数の拡大を目指す
会社は2026年8月19日の第3四半期決算説明会で、事業成長を測る重要なKPIとして「車両運用台数」を挙げました。2025年9月期の累計114台から、2030年9月期には少なくとも累計1,800台超まで拡大する目標です。5年間で約16倍の水準にあたり、車両が量産・運用されるほど量産時と運用後の収益を両方伸ばせるため、事業規模を測る指標になります。
この1,800台超は、市場規模から逆算した目標ではありません。会社説明では、すでに受注、または条件付きで受注して開発が進んでいる複数プロジェクトの量産目標を積み上げた数字とされています。現時点ではバス・シャトルと特殊用途車両が中心で、既存プロジェクトを実証・開発から量産へ確実に移行させられるかが焦点になります。
黒字化の目安は累計約800台
同じ説明会で、会社は累計車両運用台数の約800台を経常利益が黒字化する目安の一つとして示しました。2025年9月期の114台から約7倍の水準で、2030年9月期の1,800台超という目標の手前に位置します。車両運用台数を増やして売上高と売上総利益を伸ばし、研究開発費をコントロールすることで黒字化を目指す、という道筋です。
車両運用台数は、売上規模だけでなく黒字化の時期も左右するKPIになっています。「無料のAutowareでどう稼ぐのか」「量産・運用へ移ると何が変わるのか」という疑問は、最終的にこの台数へつながります。なお会社は、約800台の前提の一つとして一定の補助金収入が継続することも挙げています。
ティアフォーで注意したいリスク
成長シナリオがはっきりしている一方、現時点で確認しておきたい点もあります。大幅な赤字が続いていることと、Autowareという技術を独占しているわけではないことの2つです。
大幅な営業赤字が続いている
2026年9月期第3四半期累計の営業損失は68億2,600万円で、利益を出している段階ではありません。赤字の主因は需要の縮小ではなく研究開発の先行投資ですが、投資を続ければ自動的に黒字化できるわけでもありません。黒字化は、開発フェーズの案件が量産・運用へ移り、車両台数に連動する収益が積み上がることが前提です。目安として示された累計約800台へ、運用台数をどこまで近づけられるかが焦点になります。
Autowareはオープンで、技術そのものを独占しているわけではない
Autowareが誰でも使えるということは、他社も同じ基盤を利用できるということです。ティアフォーの競争力はAutowareの独占ではなく、開発を主導してきた知見、Pilot.Autoなどの周辺製品、実装ノウハウ、顧客プロジェクト、パートナー網をどれだけ事業化できるかにかかっています。オープンソース戦略は普及の速さと引き換えに、参入障壁を技術以外の部分で作る必要があるモデルです。
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まとめ|ティアフォーはAutowareを起点に自動運転を社会実装する会社
ティアフォー(593A)は、自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」の開発を主導し、その技術を実際の車両、サービス、量産開発へ展開する企業です。Autoware自体はオープンソースで、権利はThe Autoware Foundationが持っています。ティアフォーが収益を得ているのはAutowareそのものではなく、Pilot.Auto、Web.Auto、Edge.Autoといった製品、自動運転車両の販売・導入、OEMとの共同開発、ハードウェア、保守運用、ソフトウェアライセンスです。
現在は自動運転バスの導入や共同開発、技術支援が売上の中心ですが、中長期の焦点は開発案件を量産・運用へ移し、車両台数の増加に伴うワンタイム収益とリカーリング収益を拡大できるかどうかにあります。eve autonomyでは稼働台数に応じたライセンス料という継続収益がすでに実現しており、運用台数の増加が収益につながる具体例になっています。
一方で営業赤字は大きく、Autowareはオープンであるがゆえに技術そのものを独占できません。今後は、黒字化の目安とされる累計約800台に向けた車両運用台数の進捗と、量産プロジェクトの移行状況が確認したいポイントです。「Autowareという無料ソフトを作る会社」ではなく、「オープンソースを共通基盤として広げ、その上で商用化に必要な製品・車両・開発・運用を提供し、開発から量産、運用の各段階で収益を積み上げようとしている会社」と捉えると、事業のつながりが見えてきます。
出典
ティアフォー「会社情報」 https://tier4.co.jp/about-us
ティアフォー「オープンソース|Autoware」 https://tier4.co.jp/open-source
ティアフォー「製品|Pilot.Auto・Web.Auto・Edge.Auto」 https://tier4.co.jp/products
ティアフォー「L4 RIDE|自動運転移動サービスの導入を支援」 https://tier4.co.jp/services/l4-ride
ティアフォー「東京証券取引所グロース市場への上場のお知らせ」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20260722-tokyo-stock-exchange-growth-market-listing
株式会社ティアフォー 有価証券届出書(新規公開時) https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y9OA.pdf
ログミーファイナンス「ティアフォー上場会見、トヨタ等と自動運転システム量産化を推進」 https://finance.logmi.jp/articles/385545
ログミーファイナンス/みんかぶ「ティアフォー、3Q累計売上高・売上総利益は前年比30%超増 3サービスすべて成長、自動運転の量産・社会実装を推進」(2026年8月28日) https://minkabu.jp/news/4606554
Autoware Foundation「Why Autoware」 https://autoware.org/about/why-autoware/
Autoware Foundation「Organization Overview」 https://autoware.org/about/organization-overview/
Waymo「Ride with Waymo」 https://waymo.com/rides/
Tesla「Full Self-Driving (Supervised)」 https://www.tesla.com/support/fsd
Tesla「Robotaxi」 https://www.tesla.com/robotaxi
Yahoo!ファイナンス「ティアフォー(593A)決算情報」 https://finance.yahoo.co.jp/quote/593A.T/financials
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