テラドローンの2026年1月期第1四半期決算を解説|今期は損失拡大も今後の成長に期待!株価はどうなる?

ドローンサービスの世界大手、Terra Drone(テラドローン)株式会社(東証グロース:278A)は2025年6月16日、2026年1月期の第1四半期決算を発表しました。

近年ではドローン技術に注目が集まっており、株式市場でも今後の注目セクターとして期待されていますが、業績や今後の見通しが気になる人もいるでしょう。

本記事では、同社の最新の決算内容を深掘りし、セグメント別の業績や財務状況、そして今後の株価に与える影響について、決算説明資料と決算短信をもとに詳しく解説します。

目次

テラドローンの2026年1月期第1四半期における連結決算の振り返り

テラドローンの2026年1月期第1四半期における連結決算の振り返り2026年1月期第1四半期の連結決算は、売上高が前年同期比でほぼ横ばいであった一方、各利益段階では損失が拡大する結果となりました。

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勘定科目2026年1月期 1Q実績2025年1月期 1Q実績前年同期比
売上高948百万円946百万円+0.2%
営業利益(損失)△283百万円△92百万円損失拡大
経常利益(損失)△173百万円△89百万円損失拡大
親会社株主に帰属する
四半期純利益(損失)
△149百万円△84百万円損失拡大
出典:
Terra Drone株式会社「2026年1月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2026年1月期 第1四半期決算説明資料

連結売上高は948百万円と、前年同期から2百万円の微増となりました。
しかし、営業損失は前年同期の92百万円から283百万円へと191百万円拡大しています。

これは、後述する運航管理セグメントにおける売上高の一時的な減少や、事業拡大に伴う両セグメントでの販売管理費の増加が主な要因です。

会社側は、これらの結果について「概ね期初の想定に近い水準」であり、通期予想に対する第1四半期の売上高構成比が比較的小さくなるという見通し通りの着地であったと説明しています。

テラドローンの2026年1月期第1四半期のセグメント別の業績

テラドローンは、「ドローンソリューション」と「運航管理」の2つの事業セグメントで事業を展開しています。

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セグメント名売上高前年同期比セグメント利益
(損失)
前年同期比
(損失額)
ドローンソリューション886百万円+16.3%△121百万円58百万円拡大
運航管理62百万円△66.3%△163百万円133百万円拡大
出典:
Terra Drone株式会社「2026年1月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2026年1月期 第1四半期決算説明資料

ドローンソリューションセグメント

ドローンを活用して測量、点検、農業などの産業課題解決に貢献するセグメントです。

収益
売上高は前年同期比16%増の886百万円と堅調に推移しました。
これは、主力の測量/災害復旧事業が国内およびサウジアラビアで順調に伸長したことが主な要因です。
点検事業はほぼ横ばい、農業事業は減少となりましたが、会社はこれらも期初の想定通りの進捗であるとしています。

減益となった要因は?
一方で、セグメント損失は121百万円となり、前年同期の63百万円から赤字幅が58百万円拡大しました。
主な要因として、点検・農業事業における売上総利益の減少に加え、事業規模の拡大に伴う人員増強やM&A関連費用など、販売管理費が増加したことが挙げられます。

運航管理セグメント

ドローンの運航管理システム(UTM)の提供を通じて、空のインフラ構築を目指すセグメントです。

収益
売上高は62百万円と、前年同期比で66%の大幅な減少となりました。
これは、中核子会社であるベルギーのUnifly社において、案件の検収タイミングがずれたことにより売上計上が後ろ倒しになったためです。
会社は、計上タイミングの問題であり、事業自体は順調に進捗していると説明しています。

減益となった要因
セグメント損失は163百万円と、前年同期の30百万円から133百万円も赤字が拡大しました。
Unifly社の売上減少に加え、国内でのUTM事業立ち上げに向けた体制拡大が主な要因です。
ただし、同社は国内UTM事業において補助金(営業外収益)を含めた収益管理を行っています。
今四半期に1億57百万円の補助金収入を計上しており、これを考慮した「調整後営業損失」は5百万円となり、前年同期比で24百万円赤字が縮小しています。

テラドローンの2026年1月期第1四半期末時点での財務状況について

テラドローンの2026年1月期第1四半期末時点の財務状況は以下の通りです。

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勘定科目2026年1月期 1Q末2025年1月期末増減
総資産8,532百万円8,930百万円△398百万円
負債1,760百万円1,786百万円△26百万円
純資産6,772百万円7,144百万円△372百万円
自己資本比率75.4%75.4%0.0 pt
出典:
Terra Drone株式会社「2026年1月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2026年1月期 第1四半期決算説明資料

総資産は、前期末から398百万円減少し8,532百万円となりました。
これは主に、現金及び預金の減少(647百万円)によるものです。

一方で、有形固定資産や投資有価証券は増加しています。

純資産は、当期純損失の計上(149百万円)や、円安進行が一服したことによる為替換算調整勘定の減少(166百万円)などにより、372百万円減少しました。

結果として、自己資本比率は前期末と同じ75.4%を維持しており、高い財務健全性を保っています

キャッシュフローの状況

決算短信において「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」と記載されているため、詳細なキャッシュフローの状況は開示されていません。

参考情報として、当第1四半期連結累計期間における減価償却費(無形固定資産の償却費を含む)は105,641千円でした。

主要財務指標

指標2026年1月期 1Q
ROE(自己資本利益率)赤字のため算定不能
ROA(総資産利益率)赤字のため算定不能
営業利益率-29.9%

当四半期は営業損失、純損失ともに赤字であったため、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)はマイナスとなり、収益性には課題が残る状況です。営業利益率は-29.9%(△283百万円 ÷ 948百万円)でした。

テラドローンの今期の見通しと戦略について

テラドローンの2026年1月期の通期連結業績予想については、2025年3月14日に公表された数値を据え置いています。

  • 売上高: 5,303百万円
  • 営業損失: △610百万円
  • 経常損失: △479百万円
  • 親会社株主に帰属する当期純損失: △392百万円

会社は、第2四半期も第1四半期に近い業績推移となり赤字が累積するものの、下半期には売上高・利益ともに良化する見通しだとしています。

今後の戦略は?

また、今後の成長に向けた戦略として、以下の取り組みを明らかにしています。

  • 運航管理事業の強化
    傘下のUniflyが、ドローンの飛行前リスク評価支援ソフトウェアを提供するEuroUSC Italia社を買収。
    これにより、リスク評価から運航管理までを一気通貫で支援する統合プラットフォームの構築を目指します。
  • 米国市場への展開加速
    三井物産株式会社と、米国におけるドローン・空飛ぶクルマ関連事業の共同事業検討に関する覚書(MOU)を締結しました。
  • 災害復旧事業への参入
    2025年3月にTerra DX Solutions株式会社を連結子会社化し、災害復旧事業へ本格的に参入しています。

決算内容や今期の見通しで、株価はどうなる?

今回の決算内容と今後の見通しが株価に与える影響を、ポジティブ・ネガティブの両面から分析します。

株価にポジティブな影響を与える要因

株価にポジティブな影響を与える要因としては、以下の4つが考えられます。

  • 将来の成長への布石
    三井物産とのMOU締結や、欧州での戦略的買収など、グローバルでの事業拡大に向けた具体的な動きは、将来の業績への期待を高める材料です。
  • 下半期の業績回復シナリオ
    短期的には赤字が続くものの、会社が下半期の業績回復見通しを維持していることは安心感につながります。
  • ドローンソリューション事業の底堅さ
    測量/災害復旧事業を中心にドローンソリューションセグメントが堅調に成長していることは、業績の下支えとなります。
  • 圧倒的な市場ポジション
    ドローンサービス企業として世界No.1、UTM導入国数でも世界No.1という競争優位性は、長期的な投資魅力となります。

株価にネガティブな影響を与える要因

株価にネガティブな影響を与える要因としては、以下の3つが考えられます。

  • 赤字の継続と拡大
    第1四半期で営業赤字が拡大し、第2四半期も赤字が累積する見込みである点は、短期的な収益性を懸念する売り圧力につながる可能性があります。
  • 運航管理セグメントの大幅減収
    売上計上のタイミングの問題と説明されてはいるものの、前年同期比で66%減という数字は、見た目のインパクトとしてネガティブに捉えられる恐れがあります。
  • 大株主の株式売却
    2025年5月末時点では大株主だった三井物産が、6月16日時点で全株式を売却済みであることが開示されました。
    事業連携は継続するものの、株式市場での需給面では懸念材料となる可能性があります。

テラドローンの四半期決算から分かる強みは?

今回の決算資料からは、テラドローンの以下のような強みが読み取れます。

グローバルな事業基盤と複数事業ポートフォリオ

アジア、欧州、中東、北米と世界中に事業拠点を持ち、多様な市場でビジネスを展開しています。

これにより、「測量」「点検」といった収益化フェーズの事業で足元を固めつつ、「農業」「UTM」といった将来性の高い成長・立ち上げフェーズの事業へ戦略的に投資することが可能となっています。

この事業ポートフォリオのバランスが、安定と成長の両立を支えています。

各事業領域における高い競争優位性

単に事業を多角化しているだけでなく、それぞれの領域で高いポジションを築いています。

ドローンサービス企業として世界ランキングNo.1、インドネシアの農業事業でシェアNo.1、そして参入障壁の高いUTM市場でも導入国数で世界シェアNo.1を獲得しており、強い競争力を持っていることが伺えます。

先行投資による高い参入障壁の構築

特にUTM事業は、各国の航空当局との連携が不可欠なインフラビジネスです。

一度導入されれば継続的な収益が見込めるリカーリング性の高いビジネスモデルであり、同社は世界に先駆けて導入実績を積み上げることで、後発企業に対する高い参入障壁を築いています。

テラドローンの今後の成長性は?

テラドローン社は現在、将来の大きな成長に向けた投資フェーズにあります。

決算資料からは、特に「UTM(運航管理)事業」と「農業事業」、そして「グローバル展開」の3つの軸で大きな成長が見込まれます。

現在は利益が赤字となっていますが、いずれの事業も成功すれば、将来的に現在の事業規模をはるかに上回る成長を遂げる可能性があるでしょう。

1. UTM(ドローン運航管理)事業の本格的な収益化

UTMは、自動車にとっての信号や道路のような、ドローンが安全に飛び交うために不可欠なインフラです。
この領域で同社は大きな成長ポテンシャルを秘めています。

  • 市場の急成長と規制の後押し
    • 世界のUTM市場は、2024年から2033年にかけて年平均成長率+25%という高い成長が予測されています。
    • 欧州では2023年にUTMの導入が義務化されるなど、世界的にドローンの安全運航のためのルール整備が進んでおり、これがUTMの需要を強力に後押しします。
  • 圧倒的なシェアと先行者利益
    • 同社グループは、UTMの導入国数でグローバルシェアNo.1の実績を誇ります。
    • 一度導入されると継続的なライセンス料や、飛行ごとの従量課金(カナダでは飛行承認1回ごとに5.5米ドル)が見込めるため、先行してシェアを握っていることは将来の安定的な収益基盤に直結します。
  • 事業領域の拡大
    • 2025年4月、子会社のUniflyが欧州のEuroUSC Italia社を買収しました。
      これにより、従来の「運航中の管理」だけでなく、「飛行前のリスク評価」までを一気通貫で提供できる体制を構築し、サービスの付加価値を高めています 。

2. 農業事業の広大な市場ポテンシャル

同社はインドネシアやマレーシアで、アブラヤシ(パームヤシ)農園向けにドローンで農薬や肥料を散布するサービスを展開しており、この市場は非常に広大です。

  • 巨大な潜在市場
    • 同社が展開する農業ビジネスの潜在的な市場規模は、インドネシアとマレーシアだけで約5,000億円と推計されています。
    • 同社の現在のシェアはまだ1%未満であり、極めて大きな成長の余地(アップサイド)があります。
  • 高い競争力
    • 誤差5cm以内のピンポイント散布が可能な高い技術力や、インドネシアのパーム農園事業者トップ2社を顧客に持つ実績など、高い競争優位性を確立しています。
      この事業は現在「成長フェーズ」と位置付けられており、今後も高成長が期待されます。

3. 三井物産との提携による米国市場への本格展開

アジア・欧州・中東で事業基盤を築いてきましたが、次の成長ドライバーとして北米市場への展開を本格化させています。

  • 米国でのJV設立検討
    • 三井物産株式会社と、米国でドローンや「空飛ぶクルマ」関連の事業を行う合弁会社(JV)の設立を検討する覚書(MOU)を締結しました。
    • 世界最大のドローン市場の一つである米国での事業を、日本の総合商社と連携して進めることで、大きな成長機会を捉えようとしています。

まとめ

テラドローンの2026年1月期第1四半期決算は、売上高は横ばいながら、成長に向けた先行投資により利益面では赤字が拡大する結果となりました。

短期的には赤字の継続が株価の重しとなる可能性がありますが、会社は通期業績予想を据え置き、下半期の回復を見込んでいます。

M&Aや大手企業との提携を通じて、主戦場であるUTM事業やグローバル展開を加速させるなど、将来の飛躍に向けた布石は着実に打たれています。

同社が持つグローバルな事業基盤と各事業領域での高い競争力を踏まえ、中長期的な視点での成長が見込めるかが今後のポイントとなるでしょう。

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