3大重工(大手重工3社)の2025年3月期決算を比較|収益性、財務状況、株主還元、今期見通しは?

日本の基幹産業を支える大手重工3社、三菱重工業(三菱重工)、川崎重工業(川崎重工)、IHIの2025年3月期決算が出揃いました。
世界的な防衛需要の高まりや、航空旅客需要の回復を背景に、各社とも好調な業績を記録しています。

本記事では、3社の決算内容を徹底比較し、ランキング形式での概要把握から、各社の財務状況、収益性、株主還元、そして今後の見通しまでを詳しく解説します。

各社の強みや株式投資におけるポイントも分析しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

3大重工(大手重工3社)の業績・各指標ランキング形式で比較

まずは、各社の2025年3月期決算と今期見通しについて、主要な指標をランキング形式で見ていきましょう。

2025年3月期 売上ランキング

2025年3月期の業績では、売上収益、税引前利益、当期純利益の全てにおいて三菱重工がトップとなりました。

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項目1位:三菱重工2位:川崎重工3位:IHI
売上収益5兆271億円2兆1,293億円1兆6,268億円
税引前利益3,745億円1,075億円1,384億円
親会社所有者帰属
当期利益
2,454億円880億円1,127億円

IHIの売上収益は3位ではあるものの、税引前利益、当期純利益は2位です。

財務状況のランキング(2025年3月末)

財務の安定性を示す自己資本比率では、三菱重工が最も高い数値となっています。

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項目1位:三菱重工2位:川崎重工3位:IHI
総資産6兆6,589億円3兆169億円2兆2,403億円
自己資本比率35.2%23.3%21.5%

収益性ランキング(2025年3月期)

資本効率の高さを示すROEではIHIが26.3%と突出しており、ROAでもトップです
営業利益率は3社とも改善傾向にあります。

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項目1位:IHI2位:三菱重工3位:川崎重工
ROE(自己資本利益率)26.3%10.7%13.2%
ROA(総資産利益率)5.2%3.7%2.9%※
営業利益率8.8%7.6% (事業利益率)6.7% (事業利益率)
※ROAは「当期純利益 ÷ 総資産」で算出。
三菱重工、川崎重工の数値は計算値。

川崎重工は3位ですが、ROEは三菱重工よりも高いです。

株価の割安性ランキング(2025年6月17日終値基準)

株価の割安性を示すPER、PBRでは、川崎重工が最も低い数値となりました。

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項目1位:川崎重工2位:IHI3位:三菱重工
PER(株価収益率)20.53倍21.55倍48.86倍
PBR(株価純資産倍率)2.56倍5.04倍5.11倍

一般的な基準では割安とはいえない数値ですが、川崎重工が他2社よりも低いことがポイントです。

今期(2026年3月期)業績見通しランキング

今期の業績見通しでも、三菱重工が売上・利益ともに他社を大きく引き離す計画です。

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項目三菱重工川崎重工IHI
売上収益見通し5兆4,000億円2兆3,100億円1兆6,500億円
税引前利益見通し4,000億円1,150億円1,350億円
親会社所有者帰属
当期利益見通し
2,600億円820億円1,200億円
順位は売上収益で計測
※利益で見るとIHIが2位

今期(2026年3月期)配当利回りランキング

今期の配当利回りでは、川崎重工が1.39%でトップの予想となっています。

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項目川崎重工IHI三菱重工
配当利回り(見通し)1.39%0.87%0.67%

3大重工(大手重工3社)の2025年3月期の業績を比較

2025年3月期は、3社ともに増収増益を達成し、好調な決算となりました。
特に利益面での伸長が著しく、IHIと川崎重工は過去最高益を更新しています。

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会社名売上収益税引前利益親会社所有者帰属
当期利益
三菱重工50,2713,7452,454
川崎重工21,2931,075880
IHI16,2681,3841,127
単位:億円

三菱重工が売上収益、利益ともに他2社を大きく上回る結果となりました。
エナジー、プラント・インフラ、航空・防衛・宇宙の3セグメントで増益となり、特に防衛・宇宙が売上収益を大きく伸ばしています。

IHIは、民間航空エンジン事業におけるスペアパーツ販売の拡大や、防衛事業の成長が大きく貢献し、受注高、売上収益、営業利益、当期利益の全てで過去最高を達成しました。

川崎重工も、航空宇宙システムやエネルギーソリューション&マリン(ES&M)での利益上振れが寄与し、事業利益は過去最高を大幅に更新しました。

3大重工(大手重工3社)の財務状況の比較

次に、2025年3月期末時点での各社の財務状況を見てみましょう。

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会社名総資産親会社所有者帰属持分自己資本比率
三菱重工66,58923,46735.2%
川崎重工30,1697,02923.3%
IHI22,4034,81721.5%
単位:億円(比率は%)

総資産では三菱重工が6.6兆円と、他の2社に大差をつけています。

企業の財務健全性を示す自己資本比率においても、三菱重工が35.2%と最も高く、安定した財務基盤を築いていることが分かります。

IHIと川崎重工も20%を超えており、一般的な目安とされる水準を維持しています。

3大重工(大手重工3社)の収益性の比較

企業の稼ぐ力を示す収益性の各指標を比較します。

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会社名ROE
(自己資本利益率)
ROA
(総資産利益率)
営業利益率EPS
(1株当たり利益)
三菱重工10.7%3.7%※7.6% (事業利益率)73.04円
川崎重工13.2%2.9%※6.7% (事業利益率)525.44
IHI26.3%5.2%8.8%744.84
※ROAは「当期純利益 ÷ 総資産」で算出。三菱重工、川崎重工の数値は計算値。

収益性ではIHIが非常に高い数値を示しています。特に、投下した自己資本に対してどれだけ効率的に利益を上げたかを示すROEは26.3%と、他2社を大きく上回っています。

これは、航空エンジン事業でのスペアパーツ販売など、利益率の高いビジネスが好調であることが要因と考えられます。

また、3社とも前期から営業利益率が改善しており、稼ぐ力が向上していることがうかがえます。

3大重工(大手重工3社)の株価の割安性の比較

2025年6月17日終値を基準に、株価の割安度を示すPERとPBRを比較します。

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会社名PER
(株価収益率)
PBR
(株価純資産倍率)
三菱重工48.86倍5.11倍
川崎重工20.53倍2.56倍
IHI21.55倍5.04倍
2025/6/17終値基準の株価を基に計算

株価の割安性という観点では、PER、PBRともに最も低い川崎重工に軍配が上がります。

一般的にPERは15倍、PBRは1倍が基準とされますが、重工業界は景気動向や大型案件の受注に業績が左右されやすいため、一概に評価はできません。

三菱重工とIHIのPER・PBRが高い水準にあるのは、防衛関連や航空宇宙分野での今後の成長に対する市場の強い期待が株価に織り込まれているためと考えられます。

3大重工(大手重工3社)の株主還元の比較

各社の株主還元策について、配当金と自社株買いの状況を見ていきます。

配当金の比較

2025年3月期の実績配当金は、3社とも前期から増配となりました。

会社名2025年3月期
年間配当金(実績)
前期比
三菱重工23+3
川崎重工150+100
IHI120+20
単位:円
※三菱重工は2024年4月1日付で1:10の株式分割を実施。分割後の株価で換算した前期比。
※川崎重工は2024年3月期の年間配当金が50円だったため、100円の増配。

自社株買いの比較

2025年3月期における自己株式の取得状況は以下の通りです。

会社名取得総額
(百万円)
備考
三菱重工12,1742025年3月期中の取得実績
川崎重工3,0782025年3月期中の取得実績
IHI実施なし

三菱重工と川崎重工は自己株式の取得を実施していますが、発行済株式総数に対する割合は限定的です。

IHIは当期中の自社株買いの実施はありませんでした。

なお、2026年3月期の自己株式取得については、各社ともに発表されていません。

3大重工(大手重工3社)の今期(2026年3月期)見通しの業績について比較

各社が発表した今期(2026年3月期)の業績見通しを比較します。3社とも増収増益の強気な見通しを立てています。

業績の比較

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会社名売上収益前期比増減税引前利益前期比増減親会社所有者帰属
当期利益
前期比増減
三菱重工54,000+7.4%4,000+6.8%2,600+5.9%
川崎重工23,100+8.5%1,150+7.0%820-6.8%
IHI16,500+1.4%1,350-2.5%1,200+6.4%
単位:億円(増減率は%)

三菱重工は、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)や航空エンジンを中心に増収増益を見込んでいます。

川崎重工IHIも、それぞれ航空宇宙システムや民間エンジン事業が引き続き好調に推移すると見ており、増収増益を計画しています。

配当見通しの比較

今期の配当見通しと、それを基に算出した配当利回りは以下の通りです。3社とも更なる増配を予定しています。

会社名2026年3月期
年間配当金(見通し)
配当利回り
(見通し)
三菱重工24円0.67%
川崎重工1501.39%
IHI1400.87%

配当利回りでは川崎重工が1.39%と最も高くなる見込みです。
ただし、3社とも株価が上昇基調にあるため、利回りの水準としては高くありません。

3大重工(大手重工3社)に株式投資をする上でのポイントは?

ここまでの比較を踏まえ、投資スタイル別に各社の魅力をまとめます。

  • 業績が良い企業に投資するなら?
    • 三菱重工
      売上・利益ともに圧倒的な規模を誇り、エナジー、防衛・宇宙など複数の成長ドライバーを持つ安定感が魅力です。
    • IHI
      過去最高益を更新し、今期も増益見通し。特にROEの高さは資本効率の良さを示しており、成長性に期待する投資家に適しています。
  • 配当利回りで選ぶなら?
    • 川崎重工
      3社の中では最も高い配当利回り(1.39%)となる見通しです。安定的な配当を重視するなら候補となるでしょう。
  • 株価の割安感を重視するなら?
    • 川崎重工
      PER、PBRともに3社の中で最も低く、株価の割安感があります。今後の業績拡大に伴う株価水準の是正が期待されます。
  • 資本効率を重視するなら?
    • IHI
      ROEが26.3%と極めて高く、効率的な経営が行われていることが分かります。少ない自己資本で大きな利益を生み出す力は、株主価値の向上に直結します。

3大重工(大手重工3社)の決算から分かる各社の強みは?

最後に、長期投資をするうえで重要なポイントとなる「3大重工の強み」をそれぞれ分析していきます。

三菱重工:総合力と成長事業の二本柱

三菱重工の強みは、その圧倒的な事業規模と多角的なポートフォリオにあります。

特に、脱炭素の流れを捉えたGTCC事業と、安全保障環境の変化を背景に需要が拡大する防衛・宇宙事業が力強い成長ドライバーとなっています。

横浜本牧工場の一部土地売却といったアセットマネジメントも利益に貢献しており、盤石な経営基盤が光ります。

IHI:航空エンジン事業の高い収益性

IHIの最大の強みは、民間航空エンジン事業です。

特に、エンジンのアフターマーケットにおけるスペアパーツ販売が大きな収益源となっており、高い利益率を誇ります。

防衛事業も堅調に拡大しており、「空」の事業を両輪として高い成長性と収益性を実現しています。

ROEの高さは、この選択と集中が成功している証左と言えるでしょう。

川崎重工:航空宇宙とPS&Eの安定収益

川崎重工は、航空宇宙システム事業が最大の利益貢献セグメントです。

前期に計上したPW1100G-JMエンジン関連損失の反動に加え、航空エンジン事業の採算改善が大幅な増益につながりました。

また、二輪車・四輪車などを手掛けるパワースポーツ&エンジン(PS&E)事業も安定した収益基盤となっており、この2事業が同社の屋台骨を支えています。

まとめ

大手重工3社の2025年3月期決算は、いずれも航空・防衛関連事業が業績を牽引する形で好調な結果となりました。

今期(2026年3月期)も各社そろって増収増益を見込んでおり、力強い成長が続く見通しです。

  • 三菱重工は、業界のリーダーとして規模と総合力で他を圧倒。
  • IHIは、航空エンジンを軸とした高い収益性と資本効率が際立つ。
  • 川崎重工は、堅実な業績と株価の割安感が魅力。

各社それぞれに異なる強みと特徴を持っています。

本記事で比較した業績や各種指標を参考に、ご自身の投資戦略に合った企業を見つけてみてはいかがでしょうか。

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