トヨタ自動車(7203)は2026年8月4日、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算を発表しました。営業収益は前年同期比10.4%増の13兆5,254億円まで伸びた一方、営業利益は8.8%減の1兆634億円となり、増収減益での着地です。一方で、税引前利益は56.8%増、親会社の所有者に帰属する四半期利益は75.6%増となりました。さらに会社は、通期営業利益予想を従来の3兆円から3兆4,000億円へ上方修正しています。
数字だけを見ると「営業減益なのに最終利益は大幅増」「しかも通期予想は上方修正」と少し分かりにくい決算です。今回のポイントは、円安が大きな追い風となった一方で、資材価格・仕入先基盤強化、研究開発、減価償却、労務費、中東情勢などの負担が重く、本業の利益率は低下したことです。
この記事では、決算が結局どうだったのか、なぜ営業利益が減ったのか、上方修正の中身、HEV・中国・中東の状況まで順番に整理します。

トヨタの最新決算はどうだった?

結論から言うと、2027年3月期1Qは「売上は伸びたが、本業の営業利益は減少。一方、営業外損益の改善で最終利益は大幅増となり、通期見通しは上方修正された」という評価の分かれる決算です。営業利益の減少だけを見れば弱さがありますが、HEVや北米、金融などの稼ぐ力は確認できています。
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 13兆5,254億円 | +10.4% |
| 営業利益 | 1兆634億円 | ▲8.8% |
| 営業利益率 | 7.9% | ▲1.6pt |
| 税引前利益 | 1兆9,638億円 | +56.8% |
| 親会社帰属利益 | 1兆4,770億円 | +75.6% |
| EPS | 120.69円 | 前年64.56円 |
営業収益は10.4%増、営業利益は8.8%減
営業収益は前年同期から約1兆2,720億円増加しました。円安により海外売上の円換算額が膨らんだことに加え、日本・北米・欧州などでの販売や金融収益の増加が寄与しています。
一方、営業利益は前年同期の1兆1,661億円から1兆634億円へ約1,026億円減少しました。営業利益率も9.5%から7.9%へ低下しています。売上規模は拡大しているため、単純な需要減による減益ではありません。資材価格、仕入先基盤強化、労務費、研究開発、減価償却など、売上増以上にコスト負担が増えたことが主因です。
特に重要なのは、1Qの平均為替が1ドル160円、1ユーロ185円と前年より大幅な円安だったことです。為替だけで営業利益を3,450億円押し上げたにもかかわらず、全体では減益でした。円安の追い風を除いて見ると、本業側のコスト負担はかなり重かったと評価できます。
市場予想と比べても営業利益はやや弱い着地
Reutersが決算前に集計したアナリスト予想では、1Q営業利益は約1.11兆円が見込まれていました。実績は1兆634億円だったため、営業利益は市場予想を数%下回った計算です。前年同期比だけでなく、事前期待との比較でも営業利益は強い着地とは言いにくい内容でした。
ただし、トヨタは営業利益以外の損益が大きく改善しており、税引前利益や最終利益では見え方が変わります。自動車メーカーとしての本業の稼ぐ力を確認する場合は営業利益を重視しつつ、金融・為替・持分法利益まで含めた連結全体の収益構造も分けて見る必要があります。
日野自動車の連結除外で販売台数比較には注意
今期から日野自動車とその連結子会社が連結範囲から除外されています。前年1Qの連結販売台数241.1万台には日野ブランド車2.6万台が含まれていました。今期の連結販売台数は239.5万台で前年同期比0.7%減ですが、前年の日野分を考慮すると、トヨタ本体の販売が大きく悪化したと単純には言えません。
営業利益が減少した理由
今回の決算で最も重要なのが、営業利益の減益要因です。トヨタの決算説明資料では、前年同期の営業利益1兆1,661億円から今回の1兆634億円まで、各要因をウォーターフォールで分解しています。
| 増減要因 | 営業利益への影響 |
|---|---|
| 為替変動の影響 | +3,450億円 |
| 原価改善の努力 | ▲850億円 |
| 営業面の努力 | +700億円 |
| 諸経費の増減・低減努力 | ▲1,900億円 |
| その他 | ▲2,426億円 |
| 合計 | ▲1,026億円 |
円安だけで営業利益を3,450億円押し上げ
為替は今回の決算にとって最大の追い風でした。前年1Qは1ドル145円、1ユーロ164円でしたが、今回は1ドル160円、1ユーロ185円です。輸出入などの外貨取引分で3,350億円、海外子会社の利益換算などで100億円、合計3,450億円の増益要因となりました。
それでも全社営業利益は1,026億円減っています。会社資料では「為替・スワップ等の影響を除く」営業利益前年差を▲2,050億円としています。つまり、円安がなければ本業ベースではさらに大きな減益だったと考えられます。今回の決算を「円安で利益が伸びた好決算」と評価するのは適切ではありません。
「原価改善」が850億円の減益要因になった理由
決算資料では「原価改善の努力」が▲850億円となっており、一見すると原価改善が進まなかったように見えます。ただし内訳を見ると、実際の原価改善努力は+550億円です。これに対し、資材価格の上昇や仕入先基盤強化の負担が▲1,400億円あり、差し引きで▲850億円となっています。
さらに資材価格・仕入先基盤強化の中には、中東情勢による▲250億円の影響が含まれています。現場でのコスト低減自体は進んでいるものの、原材料・物流・サプライチェーン維持のコストがそれ以上に増えた、というのが正確な読み方です。
HEV・バリューチェーンなど営業面では700億円改善
営業面の努力は+700億円でした。台数・車種構成では▲600億円のマイナスがあった一方、金融事業や補給部品、中古車、コネクティッドなどのバリューチェーン収益が増えています。バリューチェーンだけでも+300億円で、うち金融+50億円、補給・用品/中古車/コネクティッドなどが+250億円です。
また、会社は競争力の高いHEVの増販も利益確保の要因として挙げています。新車販売そのものだけでなく、金融、メンテナンス、用品、中古車、コネクティッドまで含めて顧客との関係から収益を得る構造が、トヨタの利益を下支えしています。
固定費・研究開発・減価償却も利益を圧迫
諸経費の増減・低減努力は▲1,900億円の減益要因でした。内訳は労務費▲550億円、減価償却費▲400億円、研究開発費▲350億円、経費ほか▲600億円です。
賃上げや人材投資、電動化・ソフトウェア・次世代電池などの研究開発、生産設備の更新・増強は短期的に利益を押し下げます。一方で、今後の競争力を維持するために必要な投資でもあります。今後のポイントは、増えた固定費をHEV増産や新車販売、原価低減によって吸収し、営業利益率を再び引き上げられるかです。
「その他」▲2,426億円は会計上の振れも大きい
営業利益を押し下げた「その他」▲2,426億円のうち、未実現損益の調整が▲2,483億円を占めます。スワップ等の評価損益は+116億円、その他は▲59億円です。したがって、「その他」全額を販売競争力の悪化やコスト増とみなすのも適切ではありません。
トヨタの営業利益は、為替やスワップ、連結内取引の未実現損益など会計上の調整でも大きく動きます。決算を見る際は、営業利益の前年差だけでなく、その内訳に継続的な要因と一時的な要因がどれだけ含まれているかを確認することが重要です。
営業利益は減ったのに純利益が75%増えたのはなぜ?
今回の決算で最も分かりにくいのが、営業利益は減ったのに税引前利益と最終利益が大幅に増えている点です。理由は営業外損益の改善です。
| 項目 | 前年1Q | 今回1Q |
|---|---|---|
| 営業利益 | 1兆1,661億円 | 1兆634億円 |
| 持分法投資損益 | 1,410億円 | 2,107億円 |
| その他の金融収益 | 1,537億円 | 8,506億円 |
| 為替差損益 | ▲2,124億円 | +1,124億円 |
| 税引前利益 | 1兆2,522億円 | 1兆9,639億円 |
| 親会社帰属利益 | 8,413億円 | 1兆4,770億円 |
営業外損益が8,143億円改善
決算説明資料では、営業外損益が前年の860億円から9,003億円へ増え、前年差は+8,143億円となっています。持分法による投資損益は+696億円増え、為替差損益も前年の▲2,124億円から+1,124億円へ大きく改善しました。
その結果、営業利益は1,026億円減ったにもかかわらず、税引前利益は7,117億円増、親会社帰属利益は6,356億円増となっています。したがって「最終利益が75%増えた=自動車本業の利益が75%増えた」という意味ではありません。本業の収益性を見るなら営業利益、本社財務・投資・持分法まで含めたグループ全体の利益を見るなら税引前・純利益、と使い分ける必要があります。
HEVがトヨタの稼ぐ力を支えている
販売面では、トヨタの現在の強みがHEVにあることが今回の決算でも確認できます。トヨタ・レクサスの小売販売は全体で前年同期比3.5%減となった一方、電動車販売は12.4%増えました。
| 販売区分 | 前年1Q | 今回1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| トヨタ・レクサス全体 | 264.3万台 | 255.2万台 | 96.5% |
| 電動車 | 125.4万台 | 141.0万台 | 112.4% |
| HEV | 116.0万台 | 123.8万台 | 106.7% |
| PHEV | 4.7万台 | 5.8万台 | 124.5% |
| BEV | 4.7万台 | 11.4万台 | 241.1% |
全体販売が減ってもHEVは6.7%増
HEV販売は116.0万台から123.8万台へ6.7%増えました。トヨタ・レクサス販売全体は3.5%減っているため、商品構成がHEVへ明確にシフトしています。電動車比率も47.4%から55.3%まで上昇しました。
HEVは、エンジンと電動技術を組み合わせながら既存の生産設備・サプライチェーンを活用しやすく、現時点ではトヨタにとって販売台数と利益の両方を確保しやすい電動車です。会社が決算サマリーで「競争力の高いHEVの増販」を利益確保の要因として挙げているのは、この商品力と収益性を重視しているためです。
BEV販売は2.4倍でも、利益の主役はまだHEV
BEV販売は4.7万台から11.4万台へ2.4倍となりました。トヨタのBEV販売が伸びていないという印象とは異なり、数量は明確に増えています。ただしHEVの123.8万台と比べると規模はまだ小さく、現時点の電動車収益を支えている中心はHEVです。
通期ではBEV計画を下げ、HEV計画を引き上げ
| 電動車 | 前回予想 | 今回予想 |
|---|---|---|
| HEV | 507.1万台 | 508.8万台 |
| PHEV | 28.6万台 | 28.4万台 |
| BEV | 59.8万台 | 53.3万台 |
通期計画では、HEV販売を507.1万台から508.8万台へわずかに引き上げる一方、BEVは59.8万台から53.3万台へ下方修正しています。これは、トヨタが電動化をやめたという意味ではなく、現在の市場需要に合わせて「利益の出るHEVを伸ばしつつ、BEVは需要を見ながら拡大する」というマルチパスウェイ戦略を継続していることを示します。
HEVの生産能力をさらに増強
決算説明資料では、HEVを中長期の稼ぐ力としてさらに強化する方針も示されました。各地域でHEV比率が上昇しているため、トヨタは2030年に向けてHEV販売台数を伸ばし、リチウムイオン電池の生産能力も拡大する計画です。
次世代HEV用電池へ切り替え、コスト競争力も改善
2027〜2028年には60万台規模で次世代HEV用電池へ切り替える計画です。電池世代の進化で性能を高めるだけでなく、原価低減も狙います。HEV販売が伸びても電池コストが高止まりすれば利益率は改善しにくいため、電池の生産量と原価低減を同時に進めることが今後の営業利益回復に重要です。
地域別では北米回復と中国不振が鮮明
地域別業績を見ると、今回の決算は北米の回復と中国の弱さが対照的でした。
北米は赤字から大幅黒字へ改善
北米の営業利益は前年の▲211億円から1,854億円へ大きく改善しました。所在地別の金利スワップ評価損益を除くベースでも、前年の▲636億円から1,253億円へ改善しています。販売台数は前年同期比でほぼ横ばいですが、価格・商品構成、コスト低減、金融などが利益改善に寄与しました。
最大市場の北米で利益を取り戻せたことはポジティブです。今後は、現地生産の強化やテキサス工場でのタコマ生産などを通じて、関税・物流リスクを抑えながら利益率を維持できるかが重要になります。
日本は販売増でも営業利益が減少
日本の連結販売台数は48.1万台から52.4万台へ8.9%増えました。一方、所在地別営業利益は6,450億円から5,401億円へ減少しています。販売数量は増えていますが、労務費、研究開発、減価償却、未実現損益などのコスト要因が利益を圧迫しました。
中国販売は28%減少
中国のトヨタ・レクサス販売台数は45.0万台から32.4万台へ約28%減少しました。中国事業では連結子会社の営業利益が233億円から160億円、持分法適用会社の持分法投資損益が550億円から415億円へ低下しています。
中国ではBYDなど現地EVメーカーとの競争が激しく、価格・商品サイクル・スマート化で厳しい戦いが続いています。HEVが強い北米や欧州と異なり、中国ではBEV・PHEVを中心とした現地ブランドの競争力が高く、トヨタの中長期的な課題です。販売減が止まるか、新エネルギー車や現地開発車で巻き返せるかは今後も確認する必要があります。
中東情勢はどの程度トヨタの利益を圧迫した?
今回の決算では中東情勢が販売とコストの両面で逆風になりました。1Qの営業利益増減要因では、営業面に約▲500億円、資材価格・仕入先基盤強化に約▲250億円の中東影響が含まれています。合計すると1Qだけで約750億円の営業利益押し下げ要因です。
代替物流ルートで通期影響を縮小
会社は通期見通しの修正で、中東向けの代替物流ルート構築など営業面の改善を織り込みました。前回見通しとの比較では、中東影響の改善が営業面+1,050億円、原価面+550億円に反映されています。Reutersによると、中東情勢の通期営業利益への影響見込みは従来の6,700億円から5,100億円へ縮小されました。
ただし5,100億円規模の影響は依然として大きく、情勢がさらに悪化すれば物流コスト・資材価格・現地販売の再悪化につながる可能性があります。影響が縮小したことは好材料ですが、「中東リスクが解消した」と評価する段階ではありません。
通期業績予想を上方修正
トヨタは1Q決算と同時に2027年3月期通期予想を上方修正しました。営業収益は51兆円から54兆円、営業利益は3兆円から3兆4,000億円へ引き上げています。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 修正額 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 51兆円 | 54兆円 | +3兆円 |
| 営業利益 | 3兆円 | 3兆4,000億円 | +4,000億円 |
| 営業利益率 | 5.9% | 6.3% | +0.4pt |
| 税引前利益 | 4兆2,300億円 | 4兆5,700億円 | +3,400億円 |
| 親会社帰属利益 | 3兆円 | 3兆2,500億円 | +2,500億円 |
| 年間配当 | 100円 | 100円 | 据え置き |
上方修正の最大要因は円安
| 上方修正要因 | 前回予想比 |
|---|---|
| 為替変動 | +4,800億円 |
| 原価改善 | ▲1,200億円 |
| 営業面 | +2,300億円 |
| 諸経費 | ▲500億円 |
| その他 | ▲1,400億円 |
| 合計 | +4,000億円 |
今回の上方修正で最も注意したいのは、営業利益の上方修正額4,000億円に対し、為替変動だけで+4,800億円の増益効果を見込んでいることです。つまり、上方修正の全てが販売増や原価改善によるものではありません。
為替前提は1ドル150円から160円、1ユーロ180円から181円へ変更しました。ドル円の見直しによる影響が特に大きく、ドルの輸出入取引だけで+4,200億円の改善を見込んでいます。今後円高方向へ戻れば、この押し上げ効果は縮小します。
円安だけではなく営業面も2,300億円改善
一方、上方修正が為替だけというわけでもありません。営業面では+2,300億円を見込み、台数・構成が+1,450億円、バリューチェーンが+350億円、その他が+500億円です。中東向けの代替物流ルートや販売対応、HEVを中心とした商品構成改善など、本業側の改善も織り込まれています。
会社資料では、為替・スワップ等の影響を除く前回予想比の営業利益改善は+600億円です。したがって「上方修正の中心は円安だが、営業面でも前回想定より改善した」という評価が妥当です。
ドル円160円前提は今後の最大チェックポイント
通期前提の1ドル160円は、1Q実績とほぼ同水準です。今後も160円前後が続けば計画達成を支える一方、150円台前半まで円高が進めば数千億円規模で利益の押し下げ要因になり得ます。
今回の決算では「上方修正したか」よりも「その上方修正がどれだけ為替に依存しているか」を確認する方が重要です。
上方修正後も前期より営業減益の見通し
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 50兆6,849億円 | 54兆円 |
| 営業利益 | 3兆7,662億円 | 3兆4,000億円 |
| 営業利益率 | 7.4% | 6.3% |
| 親会社帰属利益 | 3兆8,480億円 | 3兆2,500億円 |
「上方修正=前年比増益」ではない
今回の通期予想は前回計画から上方修正されましたが、前期実績と比べると営業利益は9.7%減、純利益は15.5%減を見込みます。営業利益率も7.4%から6.3%へ低下する計画です。
前期実績と今回予想の営業利益を比較した会社資料では、為替・スワップ等の影響を除くと▲7,850億円の減益要因が残ります。資材価格・仕入先基盤強化、労務費、減価償却費、研究開発費、中東影響などのコスト負担が大きいためです。今後の本当の業績改善は、円安がなくても営業利益を増やせる状態へ戻せるかどうかで判断する必要があります。
事業構造改革で稼ぐ力を引き上げられるか
トヨタは決算説明資料で、単に今期の利益を守るだけでなく、生産体制や商品ポートフォリオを見直して稼ぐ力を引き上げる方針も示しています。
テキサスでタコマを年15万台生産
2029年から米国テキサス工場でタコマを年間15万台規模で生産する計画です。北米の需要に近い場所で生産することで、輸送距離・納期・関税リスクを抑えやすくなります。北米の利益回復を持続させるうえでも、地産地消の強化は重要です。
インドでは20万台規模の能力増強
インドでは2026年稼働の第3工場10万台に加え、2030年稼働予定の第4工場を新設し、合計20万台規模の能力増強を計画しています。中国での販売が弱い一方、インドは中長期の成長市場です。地域ごとの需要変化に合わせて生産能力を再配置することで、販売機会を取り込みやすくなります。
海外拠点から日本向けにも供給
ランドクルーザー「FJ」やノア・ヴォクシーなどを海外拠点から日本へ供給する方針も示されています。国内工場だけに生産を固定せず、拠点間で車種を柔軟に組み替えることで、需要が強いモデルの供給制約を緩和する狙いがあります。
キャッシュフローはどうだった?
| キャッシュフロー | 前年1Q | 今回1Q |
|---|---|---|
| 営業CF | 1兆8,765億円 | 5,366億円 |
| 投資CF | ▲1兆8,020億円 | +1兆4,275億円 |
| 財務CF | ▲8,033億円 | ▲4兆3,391億円 |
| 期末現金同等物 | 8兆2,109億円 | 10兆3,431億円 |
営業キャッシュフローは利益増でも減少
親会社帰属利益は大幅に増えましたが、営業CFは前年の1兆8,765億円から5,366億円へ減少しました。トヨタは金融事業を持つため、金融債権や資金調達、車両在庫、運転資金の変動が大きく、純利益と営業CFが単純に連動する会社ではありません。利益だけでキャッシュ創出力を判断しないことが重要です。
投資CFの大幅プラスは金融資産の売却・償還が主因
投資CFは前年の▲1兆8,020億円から+1兆4,275億円へ大幅なプラスに転じました。ただし、設備投資を止めたからではありません。公社債・株式の売却および満期償還による収入が約3兆1,889億円に達したことが大きく影響しています。
一方、公社債・株式の購入は約1兆3,776億円、有形固定資産や賃貸資産の取得にも大きな支出があります。金融資産の売買を含むトヨタの投資CFは変動が大きいため、「投資CFがプラス=設備投資が減った」とは判断できません。
財務CF4.3兆円の流出には自己株買いが影響
財務CFは▲4兆3,391億円と大きく流出しました。最大の要因の一つが自己株式の取得で、1Qだけで約3兆6,569億円を支出しています。現金及び現金同等物が3月末の12兆6,596億円から6月末の10兆3,431億円へ減った背景には、財務悪化だけでなく積極的な株主還元もあります。
1兆円の自社株買いと2億株消却を発表
トヨタは1Q決算と同時に、新たに最大1兆円の自己株式取得枠を設定しました。強いキャッシュ創出力と財務基盤を活用し、成長投資と株主還元を両立させる方針です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得上限株数 | 5億株 |
| 発行済株式数(自己株除く)に対する割合 | 4.22% |
| 取得価額の上限 | 1兆円 |
| 取得期間 | 2026年8月5日〜2027年8月4日 |
| 取得方法 | 市場買付 |
| 消却予定 | 2億株(消却前発行済株式数の1.37%) |
自社株消却は1株当たり価値の改善につながる
自社株買いだけでなく2億株の消却も決めています。取得した株式や既存の自己株式を消却すると発行済株式数が減るため、利益が同じでも1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産は改善しやすくなります。今回の還元策は、単に現金を配るだけでなく資本効率の改善も意識したものです。
年間配当は100円予想を維持
2027年3月期の年間配当予想は中間50円、期末50円の合計100円です。前期の95円から5円増配となる見通しで、今回の上方修正でも配当予想は据え置かれました。自社株買い1兆円と合わせて見ると、株主還元の規模は大きいといえます。
今回の決算で注意したいポイント
円安を除く本業利益にはまだ弱さが残る
1Qでは為替・スワップ等の影響を除く営業利益前年差が▲2,050億円、通期の前期差分析でも▲7,850億円です。円安が大きく利益を補っています。今後円高へ戻った場合でも利益を維持できるよう、材料費・固定費・研究開発費の吸収と販売ミックス改善を進められるかが最大の課題です。
中国の販売減少は構造的な課題
中国販売は1Qで約28%減少しました。短期的な販売タイミングだけではなく、中国EVメーカーの競争力向上という構造要因があるため、今後も注意が必要です。現地向けBEV・PHEV・スマート化商品の競争力を高められるか、価格競争でも利益を確保できるかが重要になります。
中東情勢の影響は依然大きい
会社は代替物流ルートの構築などで影響を縮小していますが、通期ではなお大きな利益圧迫を見込んでいます。物流・原材料・現地販売の影響が長期化すれば、上方修正した3.4兆円の営業利益予想に対する下振れリスクになります。
熊本地震の影響は今回の通期予想に未反映
会社は決算発表時点で、令和8年熊本地震の状況と事業への影響を精査中としており、今回の通期業績見通しには反映していません。生産停止や仕入先への影響がどの程度続くかによっては、2Q以降の生産台数・コストへ影響する可能性があります。次回決算ではこの点も確認が必要です。
次回決算はいつ?
次回は2027年3月期第2四半期(中間)決算です。2026年8月4日時点では正式な発表日は公表されていません。前年の2Q決算は2025年11月5日に発表されているため、例年どおりであれば2026年11月上旬が一つの目安になります。正式日程はトヨタのIRカレンダーを確認してください。
次回決算で確認したいポイント
- 営業利益率7.9%からの回復
- 為替・スワップ等の影響を除いた営業利益の改善
- 1ドル160円の会社前提と実勢為替との差
- HEV販売とHEV用電池の増産状況
- BEV販売53.3万台計画の進捗
- 北米事業の利益回復が続くか
- 中国販売の下げ止まり
- 中東情勢による利益影響の縮小
- 資材価格・仕入先基盤強化コストの改善
- 研究開発費・減価償却費など固定費の吸収
- 通期営業利益3.4兆円の追加上方修正余地
- 熊本地震の生産・仕入先への影響
- 1兆円自社株買いの進捗

まとめ
トヨタの2027年3月期1Qは、営業収益が10.4%増えた一方、営業利益は8.8%減った増収減益決算でした。円安が営業利益を3,450億円押し上げたにもかかわらず減益となっており、資材価格、仕入先支援、労務費、研究開発、減価償却、中東情勢などの負担は重い状況です。
一方、HEV販売は6.7%増え、電動車比率は55.3%まで上昇しました。北米事業も大きく改善し、金融・バリューチェーン収益も利益を支えています。営業利益は減りましたが、為替差益や金融収益、持分法利益の増加で税引前利益・最終利益は大幅増となりました。
通期営業利益は3兆円から3.4兆円へ上方修正されましたが、修正額4,000億円に対して為替の増益効果は4,800億円です。今回の上方修正は円安の影響が大きく、今後の評価ポイントは「円安がなくても利益を伸ばせるか」にあります。HEVと北米の強さを維持しつつ、中国・中東・固定費の逆風を吸収できるかが次回決算の焦点です。
出典
トヨタ自動車「2027年3月期 第1四半期決算説明資料」
https://global.toyota/jp/ir/
トヨタ自動車「2027年3月期 第1四半期決算要旨」
https://global.toyota/jp/ir/
トヨタ自動車「自己株式取得に係る事項の決定および自己株式の消却に関するお知らせ」
https://global.toyota/jp/ir/
Reuters「Toyota lifts annual forecast and announces stock buyback, but shares fall」
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/toyota-profit-drops-fifth-straight-quarter-china-slump-iran-war-impact-2026-08-04/
トヨタ自動車 投資家情報(IRカレンダー)
https://global.toyota/jp/ir/
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