三井E&S(7003)は、港湾クレーンや大型舶用エンジンへの期待から大きく買われる一方、短期間で急落することも多い銘柄です。「業績は良さそうなのに、なぜ株価が下がるのか」「下落は押し目なのか、それとも業績悪化を警戒すべきなのか」と気になる人も多いのではないでしょうか。
三井E&Sの株価下落は、1つの理由だけで説明しにくいのが特徴です。急騰後の期待値調整、信用買い残による需給、前期比での減益予想、資機材価格上昇による採算悪化、中国の輸出管理強化などが重なり、好材料が残っていても株価が不安定になりやすい局面があります。
この記事では、2026年の株価推移と最新の2027年3月期1Q決算をもとに、三井E&Sの株価が下がる理由を「需給」「業績」「事業環境」「市場期待」に分けて整理します。短期的な値動きの理由を断定するのではなく、今後の下落が一時的な調整で済むのか、長期化するリスクがあるのかを判断する材料まで解説します。

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三井E&Sの株価はなぜ下がる?

結論から言うと、三井E&Sの株価が下がる背景には、「業績悪化」だけでなく、急騰後の期待値調整や信用需給の重さが大きく関係します。
2026年3月3日に年初来高値8,438円を付けた後、6月11日には3,751円まで下落しました。高値から安値までの下落率は約55.5%です。2026年8月3日の終値は4,425円で、年初来高値からは約47.6%低い水準にあります。
一方、最新の2027年3月期1Qは増収増益で、受注高も前年同期比18.3%増加しました。通期営業利益予想も320億円から340億円へ上方修正されています。つまり、株価の大幅調整と会社の事業環境を同じものとして捉えるのは適切ではありません。
現在の下落リスクを考えるには、次の要因を分けて見る必要があります。
| 主な下落要因 | 現在の状況 | 投資判断で見るポイント |
|---|---|---|
| 急騰後の期待値調整 | テーマ性が強く、株価が業績より先に動きやすい | 好材料が市場期待を上回れるか |
| 信用買い残・需給 | 買い残は減少したが、信用倍率は高い | 買い残がさらに整理されるか |
| 前期比の営業減益予想 | 1Qで上方修正したが前期実績を下回る | 追加上方修正や利益率改善 |
| 舶用エンジンの採算 | 受注は急増、営業利益は減少 | 資材高を吸収して利益成長できるか |
| 港湾クレーンの受注変動 | 1Q受注は前年同期比で減少 | 大型案件の受注が継続するか |
| 中国の輸出管理強化 | 「注視リスト」に追加 | 調達遅延・コスト上昇の実害が出るか |
2026年は高値8,438円から一時55%超下落
三井E&Sは2026年3月3日に8,438円の年初来高値を記録しました。その後は大きく調整し、6月11日には3,751円まで下落しています。
この値動きからも分かるように、三井E&Sは業績の変化以上に株価が大きく振れやすい銘柄です。港湾クレーンや造船需要といったテーマで買いが集中すると株価が短期間で上昇しやすい一方、期待が剥落した局面では利益確定売りや信用取引の解消が重なり、下落率も大きくなりやすい点には注意が必要です。
決算発表日の値動きだけで「決算が悪かった」と判断しない
2026年8月3日は1Q決算の発表日でもあり、株価は大きく動きました。ただし、当日の株価変動を決算内容だけで説明するのは避けた方がよいでしょう。株価には決算前のポジション、信用需給、市場全体の地合い、短期資金の売買など複数の要因が同時に影響します。
実際の1Q決算は増収増益で、会社は通期利益予想を上方修正しています。株価反応とファンダメンタルズを切り分け、決算の中身そのものが悪化しているのかを確認することが重要です。
下落理由① 急騰で期待が先行しやすい
三井E&Sは、「実際の業績」だけでなく「将来のテーマ」に対する期待で株価が上がりやすい銘柄です。そのため、期待が先に膨らんだ局面では、好材料が出ても株価が上がらず、期待値の修正だけで大きく下落することがあります。
港湾クレーン・造船需要・次世代燃料エンジンと材料が多い
三井E&Sの主力は、大型舶用エンジンを中心とする「舶用推進システム」と、港湾クレーンを中心とする「物流システム」です。世界的な造船需要の回復、米国・アジアでの港湾設備需要、メタノールやアンモニアなど次世代燃料船への移行は、中長期の成長材料として注目されています。
会社の「三井E&S Rolling Vision 2026」でも、2028年度に売上高4,400億円、営業利益率9.5%を目標とし、舶用推進システムのグリーン技術、物流システムの米国・アジア需要への対応を成長戦略に掲げています。
こうしたテーマは実際の事業に結びついている一方、株価は将来の利益を先取りして動きます。受注や利益の伸びが投資家の期待した速度に届かなければ、業績が悪化していなくても株価は調整しやすくなります。
「良い材料」より「市場の期待を超えたか」が重要
期待先行の銘柄では、決算や受注が良いか悪いかだけではなく、市場が事前にどこまで織り込んでいたかが重要です。
IFIS株予報では、2026年7月27日時点の2027年3月期営業利益コンセンサスは427億円でした。これに対し、会社の当初予想は320億円で、1Q発表時に340億円へ上方修正した後も、決算前の市場予想を大きく下回る水準です。
市場コンセンサスは決算後に更新されるため、この数字を固定的に比較することはできません。ただ、決算前から市場が「会社計画より大きな上振れ」を期待していたことは読み取れます。三井E&Sの株価が下がる局面では、悪材料の有無だけでなく、期待値が高すぎなかったかを確認する必要があります。
強気評価でも目標株価が引き下げられることがある
2026年7月には、米系大手証券が三井E&Sの強気レーティングを維持しながら、目標株価を8,200円から7,000円へ引き下げたとIFIS株予報が伝えています。
これは「会社の成長シナリオを否定すること」と「株価の適正水準を見直すこと」が別である例です。中長期の成長期待が残っていても、利益見通しやバリュエーションの前提が変われば株価評価は下がります。
下落理由② 信用買い残が多く、需給が悪化しやすい
三井E&Sは過去にも、信用買い残の積み上がりが株価の重荷になった実績があります。2026年現在は2024年ほど極端な水準ではありませんが、買い残が多い状態は続いています。
2024年には信用買い残が2,600万株を超えた
2024年2〜4月、米国港湾クレーンを巡る期待から三井E&Sの株価が急騰し、個人投資家の信用買いも急増しました。2024年4月12日時点の信用買い残は2,602万8,000株まで増加しています。
当時の発行済株式数は約1億株規模だったため、信用買い残は非常に大きな割合を占めていました。急騰後に株価が下がると、含み損になった信用建玉の損切りや戻り売りが発生しやすくなり、株価の上値を抑える要因になります。
この2024年の事例は、三井E&Sが「材料で人気化した後、信用取引が膨らむと需給悪化が長引きやすい銘柄」であることを示す参考になります。ただし、現在の信用残を2024年と同じとみなすのは適切ではありません。
2026年の信用買い残は減少している
2026年4月24日の信用買い残は630万7,800株でしたが、7月17日には440万800株まで減少しています。約3カ月で30%程度減っており、買い残の絶対量は整理が進んでいます。
| 日付 | 信用売り残 | 信用買い残 | 信用倍率 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月24日 | 60万1,100株 | 630万7,800株 | 10.49倍 |
| 2026年5月15日 | 25万8,600株 | 595万8,000株 | 23.04倍 |
| 2026年6月12日 | 19万6,900株 | 470万3,200株 | 23.89倍 |
| 2026年7月17日 | 17万5,400株 | 440万800株 | 25.09倍 |
信用買い残が減っていること自体は、2024年のような極端な需給悪化から距離があるという意味でプラスです。株価が下落するたびに「信用買いが多いから」と説明するのは正確ではありません。
買い残が減っても信用倍率は高い
一方、7月17日時点の信用倍率は25.09倍です。信用倍率は「信用買い残÷信用売り残」で、数字が高いほど信用買いに偏っていることを示します。
買い残は減少していますが、信用売り残も少ないため倍率は高い状態です。株価が反発したときに含み損の買い建玉が戻り売りとして出る可能性は残っており、需給が完全に軽くなったとは言いにくいでしょう。
下落理由③ 2027年3月期は前期比で営業減益予想
業績面で最も分かりやすい下落リスクは、今期の営業利益が前期実績を下回る会社計画になっていることです。1Qで予想は上方修正されましたが、前期比減益という構図はまだ変わっていません。
5月の本決算で営業利益15%減予想を発表
三井E&Sは2026年5月14日の本決算で、2027年3月期の売上高を前期比4.8%増の3,700億円、営業利益を同15.0%減の320億円と予想しました。前期の営業利益376億円から大幅な減益予想となり、同日の株価は急落しました。
会社は「Rolling Vision 2026」で、主力事業の受注環境は比較的良好としながらも、中東情勢や資源価格上昇などの不確実性を踏まえ、2026年度は保守的な前提を一部織り込んでいます。また、成長投資フェーズに伴う固定費増加も利益を押し下げる要因です。
つまり、売上や受注の成長が止まる予想ではありません。成長投資やコスト上昇によって、売上成長に対して利益が一時的に追いつきにくいことが株価の評価を難しくしています。
1Qで320億円→340億円へ上方修正
2026年8月3日の1Q決算では、通期営業利益予想を320億円から340億円へ上方修正しました。中東情勢を巡る調達リスクやコスト上昇リスクが想定の範囲内で推移しているとして、物流システムの営業利益予想を80億円から100億円へ引き上げています。
この修正によって、5月時点の「15%減益」という警戒はやや後退しました。ただし、前期営業利益376億円に対して340億円は約9.7%減です。上方修正したからといって、前期比増益に転じたわけではありません。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期当初予想 | 1Q後の修正予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,532億円 | 3,700億円 | 3,700億円 |
| 営業利益 | 376億円 | 320億円 | 340億円 |
| 営業利益率 | 10.7% | 8.6% | 約9.2% |
| 経常利益 | 449億円 | 370億円 | 390億円 |
| 純利益 | 385億円 | 300億円 | 310億円 |
投資判断では「今期が減益だから悪い」と単純化するのではなく、成長投資の負担を吸収しながら、2027年度以降に再び利益率を引き上げられるかを見る必要があります。会社は2027年度の営業利益率9.3%、2028年度9.5%を中期目標にしています。
下落理由④ 舶用エンジンは受注好調でも採算リスクがある
最新1Qを見ると、舶用推進システムは受注が非常に強い一方、利益は減っています。この「需要の強さと採算の弱さの同居」が、今後の業績リスクを考えるうえで重要です。
舶用推進システムの受注高は62.4%増
2027年3月期1Qの舶用推進システムは、受注高が前年同期比62.4%増の671億円となりました。全社受注高1,050億円の約64%を占め、今回の受注増の中心です。
受注残高も2026年3月末の1,423億円から6月末には1,689億円へ18.7%増えています。売上高406億円を計上しながら、それを上回る新規受注を獲得したため、将来の売上につながる受注残が積み上がりました。
造船所の手持ち工事量が高水準であることや、メタノールなど二元燃料エンジンの需要も追い風です。需要面だけを見れば、現在の三井E&Sを強く支えている事業といえます。
売上増でも営業利益は7.0%減
一方、舶用推進システムの営業利益は前年同期比7.0%減の38億円でした。売上高は6.7%増えていますが、会社は資機材価格上昇の影響を減益要因に挙げています。
計算すると、同事業の営業利益率は前年同期の約10.8%から約9.4%へ低下しています。約1.4ポイントの低下で、受注が増えてもコスト上昇を十分に吸収できなければ利益成長につながらないことが分かります。
株価の下落が長期化するかを見るうえでは、「受注が増え続けるか」だけでなく「受注した案件をどの利益率で売上化できるか」が重要です。資材高の価格転嫁、生産効率、案件ミックスが改善すれば、現在の受注残は将来の利益成長につながる可能性があります。
下落理由⑤ 港湾クレーンは大型案件で受注がぶれやすい
港湾クレーンを含む物流システムは中長期の成長テーマですが、大型案件中心のため四半期ごとの受注高が大きく変動します。単四半期の数字に市場が過度に反応すると、株価の変動要因になりやすい事業です。
1Q受注高は45.6%減少
2027年3月期1Qの物流システム受注高は114億円で、前年同期比45.6%減でした。見た目には大幅な受注減ですが、会社は前年同期に大型案件を受注していた反動を主因に挙げています。
売上高は8.4%増の172億円、営業利益は3.8%増の31億円で、既存案件の工事は順調です。受注残高も6月末で920億円あり、1Qの受注減だけで需要崩壊と判断する状況ではありません。
ただし、2026年3月末の受注残978億円からは5.9%減少しています。大型案件の新規受注が複数四半期にわたって弱い状態が続けば、将来の売上成長を鈍らせるリスクになるため、2Q以降の受注回復は重要な確認点です。
米国・アジア需要への期待が高いほど受注の遅れが失望につながりやすい
会社は「Rolling Vision 2026」で、物流システムについて米国・アジア地域の需要に対応し、生産能力拡大を進める方針を示しています。港湾クレーンは三井E&Sの株価上昇テーマとして注目されてきただけに、市場は大型案件の受注拡大を期待しやすい状態です。
そのため、受注が計画通りでも発表時期が後ろ倒しになったり、四半期の数字が前年を下回ったりすると、「期待ほど伸びていない」と受け止められる可能性があります。短期的な受注のブレと、中長期的な需要減少を区別して見る必要があります。
下落理由⑥ 中国の「注視リスト」で調達リスクが意識される
2026年6月29日、中国商務部は三井E&Sを含む日本の20企業・団体を軍民両用品の「注視リスト」に追加しました。中国からの調達に追加の手続きが必要になるため、潜在的な供給・コストリスクとして意識されます。
「全面輸出禁止」のリストとは異なる
三井E&Sが追加されたのは、中国の輸出管理上の「注視リスト」です。輸出業者は三井E&S向けの軍民両用品について包括許可を利用できず、個別許可を申請する際にはリスク評価報告書や用途に関する誓約が必要になります。最終用途の審査も厳格化されます。
したがって、「中国からすべての部材を輸入できなくなった」は正確ではありません。一方で、対象品目の調達に時間がかかる、代替調達が必要になる、調達コストが上がるといった影響が出る可能性はあります。
現時点では業績への実害を確認する段階
2027年3月期1Qの会社説明では、各事業の工事は安定的に進み、通期利益予想も上方修正されました。少なくとも1Q時点で、中国の注視リスト入りを理由に会社が通期予想を引き下げた事実は確認できません。
今後は、調達リードタイムの長期化、特定部材の価格上昇、代替調達によるコスト負担などが決算資料に表れるかを確認する必要があります。株価材料としては不確実性が高い一方、実際の業績影響が限定的と確認できれば、逆に懸念の後退につながる可能性もあります。
三井E&Sの業績は本当に悪化している?
足元の数字だけを見ると、「株価が大幅に下がっている=事業環境も悪化している」とは言いにくい状況です。最新1Qでは受注・売上・利益がいずれも前年同期を上回っています。
2027年3月期1Qは受注高1,050億円(前年同期比18.3%増)、売上高917億円(13.0%増)、営業利益102億円(14.4%増)でした。受注残高も2026年3月末の4,627億円から6月末の4,756億円へ2.8%増えています。
一方で、前期比の通期減益予想、舶用推進システムの利益率低下、物流システムの新規受注の弱さなどは残ります。つまり、現在は「需要が崩れている」局面というより、旺盛な需要をどの程度の利益率で成長へつなげられるかが焦点です。
| 確認項目 | ポジティブ材料 | リスク・注意点 |
|---|---|---|
| 全社業績 | 1Qは増収増益、通期利益を上方修正 | 通期営業利益は前期比減益予想 |
| 受注 | 全社受注高+18.3%、受注残も増加 | 物流システムの1Q受注は-45.6% |
| 舶用エンジン | 受注+62.4%、受注残増加 | 資材高で営業利益-7.0% |
| 港湾クレーン | 売上・営業利益は増加、受注残920億円 | 大型案件の受注時期で数字がぶれる |
| 財務・中計 | 2028年度売上4,400億円を目標 | 成長投資で固定費負担が増える |
市場が期待する利益水準との差も残る
決算直前のIFISコンセンサスでは、2027年3月期の営業利益予想は427億円、経常利益予想は478億円でした。会社は1Qで営業利益予想を340億円、経常利益予想を390億円へ引き上げましたが、決算前の市場期待には届いていません。
市場予想は今後変化するため、その差だけで買い・売りを決めるべきではありません。ただ、株価が大きく上昇してきた銘柄では「会社計画を上回る成長」がすでに株価に織り込まれていることがあります。会社予想の上方修正幅が小さい場合、業績自体は良くても評価修正が起こる可能性があります。
今回の下落は一時的?それとも長期化する?
下落が一時的な調整で終わるかは、「株価だけが下がっているのか」「業績の前提まで崩れているのか」を分けて考えると判断しやすくなります。
現時点では、1Qの受注・売上・利益が伸び、通期利益も上方修正されているため、事業環境が全面的に悪化したとは言えません。一方、利益率や市場期待、信用需給には改善余地が残ります。
| 一時的な調整になりやすい材料 | 下落が長期化しやすい材料 |
|---|---|
| 信用買い残の整理が続く | 反発局面で信用買い残が再び積み上がる |
| 舶用エンジン受注の強さが継続 | 受注が増えても利益率が回復しない |
| 物流システムの大型受注が回復 | クレーンの新規受注低迷が複数四半期続く |
| 通期予想を追加上方修正 | 会社予想と市場期待の差が縮まらない |
| 中国の注視リストの実害が限定的 | 調達遅延・コスト増が実際の業績に波及 |
信用買い残がさらに整理されるか
信用買い残は4月から7月にかけて減少しています。今後も株価が反発する局面で買い残が増えず、現物中心の買いに移れば、戻り売り圧力は軽くなりやすくなります。
逆に、株価が上がるたびに信用買いが急増すると、将来の売り圧力が再び積み上がります。三井E&Sでは過去に信用需給が株価の変動を拡大した実績があるため、週次の買い残推移は継続して確認したい指標です。
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受注の強さが利益成長へつながるか
ファンダメンタルズでは、舶用推進システムの受注増が最も分かりやすい成長材料です。受注残1,689億円が今後売上化するなかで、資材高を吸収して営業利益率が回復するなら、現在の減益予想が再度引き上げられる余地があります。
逆に、売上や受注が伸びても利益率が下がり続ける場合、株価の評価は上がりにくくなります。三井E&Sを見る際は「受注高」だけでなく、「営業利益率」をセットで確認することが重要です。
物流システムの受注が戻るか
港湾クレーンは大型案件のため四半期の受注がぶれます。1Qの45.6%減が前年の大型案件の反動にとどまり、2Q以降に新規案件が積み上がれば懸念は後退します。
一方で、複数四半期にわたって受注残が減少する場合は、将来の売上見通しを見直す必要があります。米国・アジアでの需要拡大を成長シナリオに掲げているだけに、受注の実績が伴うかが重要です。
下落後は買い時になる?判断するときのポイント
三井E&Sの下落を押し目と考えられるかは、株価の下落率ではなく「投資前提が崩れたか」で判断するのが基本です。高値から大きく下がっただけで割安と決めるのは避けた方がよいでしょう。
押し目と考えやすくなるケース
株価が下がっていても、受注・利益・中期成長の前提が維持されているなら、需給や期待値調整による下落の可能性があります。具体的には、次の状態が確認できると、下落の質は比較的良くなります。
- 舶用推進システムの受注高・受注残が高水準を維持している
- 資材価格の上昇を吸収し、舶用推進システムの営業利益率が回復している
- 物流システムで新規の大型案件が受注され、受注残が再び増加している
- 通期利益予想が追加で上方修正され、市場予想との差が縮まっている
- 信用買い残が再増加せず、需給の整理が進んでいる
- 中国の注視リストによる調達への実害が限定的と確認できる
この場合は、株価だけが先に下がり、事業価値との乖離が広がっている可能性を検討できます。
慎重に見た方がよいケース
逆に、下落に業績悪化が伴っている場合は「安くなったから買う」という判断が危険になります。
- 舶用エンジンの新規受注が減少し、受注残も縮小する
- 売上は伸びても資材高で利益率がさらに低下する
- 物流システムの受注低迷が一時的ではなく複数四半期続く
- 通期予想が下方修正される、または上方修正余地がなくなる
- 信用買い残が株価反発局面で再び急増する
- 中国の輸出管理が実際の納期・コストに影響し始める
特に三井E&Sは「受注の強さ」が投資ストーリーの中心です。受注が維持されているのに株価だけが下がっているのか、受注・利益率まで崩れているのかで、下落の意味は大きく変わります。
株価水準だけでなくPERの前提となる利益にも注意
株価が半値近くまで下がると割安感が出やすいですが、PERは将来利益の予想によって変わります。会社の利益予想が下方修正されれば、株価が下がってもPERが思ったほど低下しないことがあります。
三井E&Sでは2027年3月期の会社予想と市場予想に差があるため、どの利益水準を基準に割安・割高を判断するかで評価が変わります。株価だけではなく、営業利益・経常利益の見通しがどの方向へ修正されているかを合わせて確認することが大切です。
今後の株価下落リスクを判断する5つの確認ポイント
三井E&Sの株価が再び大きく下落するリスクを考えるなら、日々の値動きよりも次の5項目を定期的に確認する方が実用的です。
- 舶用推進システム:受注高・受注残・営業利益率
- 物流システム:大型クレーンの新規受注と受注残
- 通期業績予想:追加上方修正の有無と市場コンセンサスとの差
- 信用需給:信用買い残が減少しているか、反発局面で再び膨らんでいないか
- 外部リスク:中国の注視リストや中東情勢が調達・コストに影響していないか
この5項目のうち、受注と利益率が同時に悪化する場合はファンダメンタルズ面の警戒度が高まります。一方、受注・利益が改善しているのに信用需給だけで株価が調整している場合は、下落の性質が異なります。

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まとめ|三井E&Sの株価下落は「需給」と「利益率」を分けて見る
三井E&Sの株価が下がる理由は、業績悪化だけではありません。港湾クレーンや舶用エンジンへの期待で株価が急騰しやすいため、期待値調整や信用買い残の整理だけでも株価が大きく下がることがあります。
2026年現在の信用買い残は春から減少しており、2024年の2,600万株規模と比べれば需給は改善しています。一方、信用倍率は高く、戻り売り圧力が完全に消えたわけではありません。
業績面では、2027年3月期1Qが増収増益となり、通期利益予想も上方修正されました。舶用推進システムの受注高・受注残は増えており、需要面は強い状態です。ただし、資材高で同事業の営業利益率が低下していることや、物流システムの新規受注が1Qで減ったこと、会社の通期利益予想が前期実績を下回ることは確認しておきたいリスクです。
今後の投資判断では、「株価がどこまで下がったか」よりも、「受注の強さが利益成長へつながっているか」「信用需給が改善しているか」を見ることが重要です。受注・利益率・通期予想が改善しているなら一時的な調整を検討できますが、これらが同時に悪化する場合は下落が長期化する可能性にも注意が必要です。
出典
三井E&S「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
https://www.mes.co.jp/assets/uploads/financial-results_2027-1q-results.pdf
三井E&S「2027年3月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」
https://www.mes.co.jp/assets/uploads/timely_20260803_02.pdf
三井E&S「三井E&S Rolling Vision 2026」
https://www.mes.co.jp/assets/uploads/rolling-vision-2026.pdf
三井E&S「財務戦略」
https://www.mes.co.jp/ir/library/financial-strategy
三井E&S「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
https://www.mes.co.jp/assets/uploads/financial-results_2026-annresults.pdf
Yahoo!ファイナンス「三井E&S(7003)株価時系列」
https://finance.yahoo.co.jp/quote/7003.T/history
Yahoo!ファイナンス「三井E&S(7003)信用残時系列」
https://finance.yahoo.co.jp/quote/7003.T/history?styl=margin
株探「信用残ランキング【買い残増加】 NTT、東電HD、三井E&S」
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202404210005
株探「三井E&Sは後場急落し年初来安値更新、固定費増加で今期は営業益15%減を計画」
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202605141040
IFIS株予報「三井E&S 業績進ちょくと決算スケジュール」
https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&bcode=7003&sa=report
IFIS株予報「三井E&S 米系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き下げ、7,000円」
https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?nid=7003_20260713_rep_20260714_110506_5&sa=consNewsDetail
中国商務部「商务部公告2026年第28号 公布将20家日本实体列入关注名单」
https://policy.mofcom.gov.cn/claw/clawContent.shtml?id=106215
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