三菱マテリアルの2027年3月期1Q決算はどうだった?銅・資源・業績見通しを解説

三菱マテリアル(5711)の決算を見て、「今回の数字は本当に良かったのか」「銅価格の上昇はどこまで利益につながっているのか」と気になる人も多いのではないでしょうか。

2027年3月期第1四半期は、タングステン・銅・金などの金属価格上昇や円安、自動車・半導体関連需要の改善を背景に、前年同期から業績が大きく改善しました。会社は第1四半期として過去最高益を記録したと説明し、同時に通期業績予想も大幅に上方修正しています。

もっとも、利益増加のすべてが継続的な成長によるものではありません。タングステンの低価格在庫払出効果や金属価格上昇による在庫評価、鉱山配当の増加など、市況に左右される要因も大きいため、決算の中身を分けて見ることが重要です。

この記事では、最新決算の数値、市場予想との比較、銅・資源・タングステンが利益に与えた影響、通期見通しと今後の確認点を整理します。

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目次

三菱マテリアルの最新決算はどうだった?

三菱マテリアルの最新決算はどうだった?

結論から見ると、2027年3月期第1四半期は非常に強い決算でした。売上高は前年同期比38.4%増の5,970億5百万円となり、営業利益・経常利益・純利益はいずれも前年同期の赤字から大幅な黒字へ転換しています。会社は今回の利益水準について、第1四半期として過去最高益と説明しています。

単に前年同期の反動で黒字化しただけではなく、在庫評価影響を除いた実力ベースでも利益が大きく改善しました。さらに、発表前の市場予想を大幅に上回り、通期業績予想まで引き上げた点が今回の決算の重要なポイントです。

項目2027年3月期1Q2026年3月期1Q前年同期からの変化
売上高5,970億5百万円4,314億2百万円38.4%増
営業利益329億94百万円△26億41百万円356億円改善
経常利益519億2百万円△1億43百万円520億円改善
親会社株主に帰属する四半期純利益512億84百万円△40億50百万円553億円改善
営業利益率約5.5%約△0.6%約6.1ポイント改善

1Qとして過去最高益を記録

今回の決算でまず注目したいのは、利益の改善幅です。営業利益は329億94百万円となり、前年同期の26億41百万円の営業損失から356億円改善しました。売上高が38.4%増えた一方、営業利益率も前年同期の約△0.6%から約5.5%へ改善しており、増収だけでは説明できない採算改善が起きています。

経常利益は519億2百万円です。営業利益の改善に加え、鉱山からの受取配当金が前年同期の24億円から125億円へ増えたほか、持分法損益も42億円から68億円へ増加し、為替差益も計上されました。営業外損益まで含めて資源価格と円安の恩恵を受けたことで、経常利益の伸びは営業利益以上に大きくなっています。

純利益は512億84百万円まで増加しました。ただし、純利益には退職給付制度の改定に伴う110億円の特別利益が含まれています。純利益の通期進捗率だけを見ると高く見えますが、一過性の特別利益を含むため、営業利益や経常利益と分けて評価する必要があります。

市場予想・コンセンサスを大幅に上回った

発表前のIFISコンセンサスでは、2027年3月期第1四半期の経常利益は160億円が予想されていました。これに対して実績は519億2百万円となり、市場予想の約3.2倍に達しています。市場予想を約359億円上回る大幅な上振れです。

通期についても、発表前のIFISコンセンサスは経常利益822億6,000万円でした。会社の期初予想730億円よりは強気の市場予想でしたが、今回会社が新たに示した経常利益予想は1,800億円です。市場が会社計画より上振れを見込んでいた状態から、さらにその想定を大きく超える上方修正が出た形になります。

コンセンサスとの比較では、結果が上振れしたかだけでなく、その上振れが今後も再現しやすいかを見る必要があります。今回の上振れにはタングステン価格、銅価格、為替、在庫評価、鉱山配当など複数の市況要因が含まれるため、次の四半期でも同じペースで利益が積み上がると単純に考えるのは早いでしょう。

三菱マテリアルの利益が急増した理由

利益急増の中心は、タングステン・銅・金などの金属価格上昇と円安です。そこに自動車・半導体関連需要の改善、鉱山からの受取配当金増加が重なりました。特に今回の決算では、銅以上にタングステンの価格上昇が利益増加へ大きく寄与しています。

会社が示した利益増減要因を見ると、経常利益は前年同期比で520億円改善し、在庫評価影響を除いても431億円の実力差が出ています。市況要因が大きい決算ではありますが、単なる会計上の在庫評価だけで利益が増えたわけではありません。

タングステン価格の上昇が大きな追い風

今回の決算で最も大きな変化の一つがタングステンです。指標となるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)価格は、前年同期の410ドル/MTUから3,069ドル/MTUまで上昇しました。会社の利益増減分析では、販売価格面でタングステンが337億円のプラス要因となっています。

一方、原料価格も上昇しており、コスト面ではタングステン原料価格上昇が261億円のマイナス要因です。それでも、価格高騰前に仕入れた低価格在庫を払い出す効果が生じたことで、販売価格の上昇を利益として取り込みやすい状態になりました。製錬・資源循環セグメントでは、この低価格在庫払出効果だけで76億円のプラスと説明されています。

この点は今後の利益を考えるうえでも重要です。会社は通期予想でもタングステン価格上昇を大幅な増益要因として織り込む一方、価格高騰前の低価格在庫を払い出す効果は第4四半期以降に縮小すると見ています。価格が高止まりしても、現在の高い利益率がそのまま続くとは限りません。

銅・金価格の上昇と円安も利益を押し上げ

銅・金価格と為替も前年同期から大きく変化しました。第1四半期の平均前提を見ると、ドル円は前年同期の145円から159円、銅価格は432セント/ポンドから604セント/ポンド金価格は3,280ドル/オンスから4,516ドル/オンスへ上昇しています。

三菱マテリアルでは、金属価格の上昇が製錬・伸銅品の在庫評価に影響します。銅価格が上昇したことで、伸銅品では原材料の在庫評価が38億円のプラス要因となりました。製錬でも円安による在庫評価影響が44億円のプラスとなっています。

円安は輸出採算だけでなく、外貨建て資産・負債や海外鉱山からの収益にも影響します。今回の利益増減分析では為替差が69億円のプラスとなり、営業外でも外貨建て債権債務の為替差益が経常利益を押し上げました。

鉱山からの受取配当金が増加

資源事業では、海外銅鉱山からの受取配当金増加が大きな利益押し上げ要因になりました。全社の受取配当金は前年同期の24億円から125億円へ増え、101億円の増加となっています。会社は銅価上昇と円安を背景に、投資先銅鉱山からの配当が増えたと説明しています。

三菱マテリアルを銅関連企業として見る場合、国内の銅製錬だけでなく鉱山権益から得られる収益も重要です。銅価格上昇は製錬マージンを直接押し上げるとは限りませんが、鉱山投資からの配当や持分法利益にはプラスに働きやすく、今回の経常利益拡大にも明確に表れました。

通期予想でも受取配当金は従来予想304億円から373億円へ引き上げられています。このうち鉱山配当の見通し更新が61億円の増益要因とされており、銅価格と為替が現在の業績予想を支える重要な前提になっています。

自動車・半導体・AI関連需要も回復

今回の増益は金属市況だけで説明できるものではありません。超硬製品では市場全体が緩やかな回復基調となり、販売数量の増加や円安、価格適正化が利益改善につながりました。利益増減分析では、超硬製品の数量差が29億円のプラスとなっています。

高機能製品ではAI関連製品の需要拡大が追い風です。第1四半期の経常利益は前年同期の4億円から34億円へ増えました。会社はシール製品などの販売数量増加を挙げており、通期でもAI・半導体向け製品の販売増加を見込んでいます。

金属価格や為替は変動しやすい一方、自動車・半導体・AI関連の需要回復が継続すれば、利益の持続性を高める要因になります。 次の決算では、市況要因を除いた数量増加がどこまで続いているかも確認したいところです。

銅価格の上昇は三菱マテリアルにどこまで追い風?

銅価格の上昇は三菱マテリアルにとって基本的には追い風ですが、「銅高=製錬利益がそのまま増える」と考えるのは正確ではありません。 鉱山収益、在庫評価、製錬マージン、伸銅品の原材料コストなど、銅価格が影響する経路が複数あるためです。

今回の決算では、銅価格上昇による鉱山配当や在庫評価が大きなプラスとなる一方、銅精鉱の需給逼迫によるTC/RC悪化はマイナス要因になりました。銅関連企業として業績を見る際は、銅相場と製錬条件を同時に確認する必要があります。

銅高は鉱山収益や在庫評価にはプラス

銅高の恩恵が最も分かりやすく表れたのは資源事業です。第1四半期の資源事業の経常利益は前年同期の19億円から140億円へ増加しました。主因は投資先鉱山からの受取配当金増加で、銅価格上昇と円安が収益を押し上げています。

在庫評価にもプラスが出ました。伸銅品では銅価上昇に伴う原材料の在庫評価が38億円のプラス、製錬では円安による在庫評価影響が44億円のプラスです。市況が上昇する局面では、保有する原材料や仕掛品の評価が利益を押し上げることがあります。

もっとも、在庫評価益は販売数量の拡大や生産性向上による利益とは性質が異なります。会社も営業利益・経常利益について「在庫評価影響除く」数字を併記しており、今回の第1四半期では経常利益519億円に対し、在庫評価影響を除く利益は485億円でした。在庫評価を除いても前年同期から431億円改善しているため、今回の好決算は在庫評価だけに依存しているわけではありません。

銅製錬ではTC/RC悪化が逆風

銅製錬ではTC/RCの悪化が逆風です。TC/RCは、銅鉱山から仕入れた銅精鉱を製錬会社が電気銅へ加工する際に受け取る製錬・精製マージンに相当します。銅精鉱の供給が不足して鉱山側の交渉力が強くなると、製錬会社が受け取れるTC/RCが低下しやすくなります。

第1四半期の利益増減分析では、TC/RC悪化が21億円のマイナス要因となりました。銅価格自体が上昇していても、原料である銅精鉱の調達条件が悪化すれば、製錬事業の収益性には逆風となります。

このため、三菱マテリアルの銅関連業績を見るときはLMEなどの銅価格だけでは不十分です。海外鉱山からの収益、TC/RC、銅プレミアム、在庫評価、伸銅品需要まで見ることで、銅高が全社利益へどのように効いているかを判断しやすくなります。

今回は銅プレミアム改定でTC/RC悪化を吸収

今回の第1四半期では、TC/RC悪化は想定外の損失拡大にはつながりませんでした。会社は、TC/RCの悪化について期初計画どおり銅プレミアムの改定で吸収したと説明しています。利益増減分析では、製錬の銅プレミアム改定が25億円のプラス要因となり、TC/RC悪化による21億円のマイナスをおおむね補いました。

銅プレミアムは、電気銅の販売価格に上乗せされる費用です。原料調達環境が悪化した際に販売条件へ転嫁できれば、製錬マージンの悪化を一定程度抑えられます。今回の決算では、この価格改定が機能したとみることができます。

ただし、銅精鉱不足そのものが解消したわけではありません。TC/RC低迷が長期化した場合、今後も販売価格への転嫁で吸収できるかが重要です。銅需要の長期拡大はプラス材料でも、製錬事業では原料確保と採算維持が別の課題として残ります。

事業別では製錬・資源循環と資源事業が大幅改善

セグメント別に見ると、今回の利益成長を大きくけん引したのは製錬・資源循環と資源事業です。プロダクト領域でも超硬製品と高機能製品が増益となっており、資源市況だけでなく製品需要側にも改善が広がっています。

以下は第1四半期の主なセグメント別経常利益です。

セグメント2026年3月期1Q2027年3月期1Q増減
製錬・資源循環△74億円222億円+296億円
伸銅品△6億円58億円+65億円
超硬製品31億円85億円+54億円
高機能製品4億円34億円+30億円
資源19億円140億円+120億円
再生可能エネルギー1億円10億円+9億円

製錬・資源循環は大幅黒字に転換

製錬・資源循環の経常利益は、前年同期の74億円の赤字から222億円の黒字へ改善しました。296億円の増益となり、今回の全社利益改善における最大の寄与セグメントです。

増益の背景には、タングステン価格高騰前の低価格在庫払出効果、円安による在庫評価、タングステン製品の販売価格上昇などがあります。TC/RC悪化はマイナスでしたが、銅プレミアムの改定や原料構成差などで吸収しました。

通期予想でも製錬・資源循環の経常利益は従来の213億円から1,084億円へ大幅に引き上げられています。タングステン価格上昇の影響が非常に大きいため、このセグメントの利益を評価する際はタングステン価格と在庫効果の持続性が最重要です。

伸銅品も黒字転換

伸銅品の経常利益は前年同期の6億円の赤字から58億円の黒字へ転換しました。銅価格上昇に伴う原材料の在庫評価が38億円のプラスとなったことが大きく、為替や販売価格、数量も利益改善に寄与しています。

通期の経常利益予想も従来の7億円から90億円へ引き上げられました。会社は銅価格前提の見直しによる在庫評価影響を主因に挙げています。このため、伸銅品は黒字化自体はポジティブですが、利益改善のすべてを需要回復によるものと見るのは適切ではありません。

伸銅品では製品ポートフォリオの最適化も進められています。短期的な市況効果だけでなく、不採算製品の整理や高付加価値品へのシフトが利益率改善につながるかが中期的な確認点です。

資源事業は鉱山配当増加で利益が急増

資源事業の経常利益は前年同期の19億円から140億円へ増加しました。営業利益ではなく経常利益が大きく増えているのは、鉱山からの受取配当金や持分法利益が営業外収益として計上されるためです。

銅価格が高い状態と円安が続けば、海外銅鉱山からの収益は三菱マテリアルの経常利益を支える可能性があります。今回の通期見通しでも資源事業の経常利益は337億円から458億円へ引き上げられました。

一方で、鉱山配当は銅価格や鉱山会社の配当方針、操業状況によって変動します。資源事業の増益は強い追い風ですが、市況変動を受けやすい利益である点は押さえておきたいところです。

超硬製品・高機能製品も回復

超硬製品の経常利益は31億円から85億円高機能製品は4億円から34億円へ増加しました。どちらも資源価格とは異なる需要側の改善が利益を押し上げています。

超硬製品では自動車関連などの市場が緩やかに回復し、販売数量増加が29億円の利益押し上げ要因となりました。価格適正化も27億円のプラスです。原料価格上昇の影響を受けながらも、数量増と価格改定によって増益を確保しています。

高機能製品ではAI関連製品の需要拡大が寄与しました。通期経常利益予想も53億円から80億円へ引き上げられています。資源市況に左右されにくい利益源として、AI・半導体向け製品がどこまで拡大するかは今後の業績の質を見るうえで重要です。

三菱マテリアルは通期業績予想を大幅に上方修正

三菱マテリアルは第1四半期決算と同時に、2027年3月期の通期業績予想を大幅に上方修正しました。営業利益は360億円から1,300億円、経常利益は730億円から1,800億円へ引き上げられています。利益予想は小幅修正ではなく、前提そのものが大きく変わる規模の上方修正です。

項目5月13日時点の予想8月6日修正後修正額
売上高1兆9,900億円2兆4,000億円+4,100億円
営業利益360億円1,300億円+940億円
経常利益730億円1,800億円+1,070億円
親会社株主に帰属する当期純利益490億円1,400億円+910億円

第1四半期実績の修正後予想に対する進捗率は、売上高が約24.9%、営業利益が約25.4%、経常利益が約28.8%、純利益が約36.6%です。純利益は退職給付制度改定益の影響があるため単純比較には注意が必要ですが、経常利益は修正後の高い通期予想に対しても4分の1を上回っています。

営業利益予想は360億円から1,300億円へ

営業利益予想は従来の360億円から1,300億円へ940億円引き上げられました。修正率は261.1%です。経常利益も1,070億円増額されており、会社は過去最高益を見込んでいます

上方修正の中身を見ると、タングステン製品の販売価格上昇が非常に大きく、通期の販売価格差では1,666億円のプラスを見込んでいます。このうちタングステン製品の販売価格上昇が1,595億円を占めます。一方でタングステン原料価格上昇は848億円のマイナスで、販売価格と原料価格の差が利益拡大につながる構造です。

在庫評価影響を除いても、経常利益の従来予想からの実力差は916億円とされています。したがって上方修正の規模は在庫評価だけで説明できません。ただし、タングステン価格や為替、銅価格といった外部条件への依存度が高まっているため、今後の市況変動によって予想が再び動く可能性もあります。

銅・為替・タングステンなどの前提を引き上げ

上方修正の背景には、会社が第2四半期以降の前提条件を見直したことがあります。通期のドル円前提は150円から158円銅価格は500セント/ポンドから579セント/ポンドへ引き上げられました。タングステンのAPT価格は855ドル/MTUから3,017ドル/MTUへ大幅に見直されています。

会社は「主にタングステン価格上昇の影響を反映し、通期業績予想を上方修正する」と説明しています。銅高や円安も重要ですが、今回の上方修正を理解するうえではタングステンの寄与を外せません。

前提を引き上げた後も実際の市況が会社想定を上回れば再上振れ余地が生まれる一方、タングステン価格や銅価格が急落した場合は逆の影響が出ます。今後は「上方修正したか」より、修正後の前提に対して実勢価格がどう推移するかを見る段階です。

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好決算でも確認しておきたい懸念点

今回の決算は数字だけを見れば非常に強い内容ですが、利益の質には確認が必要です。金属価格・為替・在庫評価・鉱山配当など外部環境の影響が大きく、現在の利益水準をそのまま恒常的な収益力とみなすのは早いでしょう。

特にタングステンの低価格在庫効果とキャッシュフローは、決算数値の見た目と実態を分けて見るうえで重要です。

利益成長の一部は金属価格と円安に依存

第1四半期の事業環境は、前年同期と比べてドル円、銅、金、タングステンのすべてが利益に有利な方向へ動きました。銅価格は432セント/ポンドから604セント/ポンド、APT価格は410ドル/MTUから3,069ドル/MTUへ上昇しています。

こうした市況上昇は鉱山配当、販売価格、在庫評価など複数の経路で利益を押し上げます。逆に、金属価格が下落した場合には在庫評価の反転や鉱山収益の減少が起こる可能性があります。円高に転じれば、外貨建て収益や為替差の面でも追い風が弱まります。

一方で、在庫評価影響を除いた経常利益も485億円まで増えているため、市況だけの決算と評価する必要もありません。市況効果と需要回復による本業改善を分けて追うことが、次の決算の重要な見方です。

タングステンの低価格在庫効果は4Q以降縮小する見通し

タングステンでは、価格高騰前に仕入れた低価格在庫を高い販売価格で払い出すことで、一時的に高いマージンを確保しやすくなっています。第1四半期の製錬・資源循環では、この低価格在庫払出効果が76億円のプラス要因でした。

通期予想にも同様の効果が織り込まれていますが、会社は低価格在庫払出効果が第4四半期以降に縮小すると明記しています。高騰後の原料へ在庫が入れ替われば、販売価格が高くても原料コストも高くなり、現在ほどのスプレッドを確保しにくくなるためです。

そのため、今期の利益が大きく伸びても、来期以降の基準利益が同水準になるとは限りません。タングステン価格そのものに加えて、原料在庫の取得価格と販売価格の差がどの程度残るかを見る必要があります。

利益ほどキャッシュフローは増えない可能性

大幅な上方修正にもかかわらず、会社が予想するフリー・キャッシュ・フロー(FCF)の増加は限定的です。従来予想の460億円から今回予想は490億円へ、増加幅は30億円にとどまります。

理由は、金属価格上昇によって運転資本が大きく増えるためです。経常利益の上振れ1,070億円に対し、運転資本は1,070億円のマイナスを見込んでいます。内訳では製錬・資源循環が410億円、そのうちタングステンが350億円、伸銅品が160億円、超硬製品が500億円の資金負担になる想定です。

原料価格が上がると同じ数量の在庫を持つために必要な資金も増えます。会計上の利益が増えても、その利益がすぐに現金として残るとは限りません。株主還元や成長投資の余力を見る際は、利益だけでなくFCFの推移も確認する必要があります。

三菱マテリアルの配当予想は年間116円で据え置き

2027年3月期の配当予想は、中間58円・期末58円の年間116円で据え置かれました前期の年間100円からは16円増配予定ですが、今回の大幅な業績上方修正に伴う追加増配は発表されていません。

三菱マテリアルは2026年度から2028年度の中期経営戦略期間について、DOE(株主資本配当率)2.5%を目途に安定配当を行う方針です。DOEは利益だけでなく株主資本を基準に配当水準を決めるため、単年度の利益が急増しても配当が同じ割合で増える仕組みではありません。

今回の会社説明でも、配当予想はキャッシュフローと株主還元方針を踏まえて据え置くとされています。金属価格上昇で利益が増える一方、運転資本の増加によってFCFの上振れが限定的であることも、追加増配を見送った背景として理解しやすいポイントです。

もっとも、純利益の増加によって株主資本が積み上がれば、DOEを基準とする将来の配当水準にはプラスに働く可能性があります。今期の利益増加が純資産へどの程度反映されるか、年度後半に株主還元方針の追加変更があるかを確認したいところです。

最新決算を踏まえて今後確認したいポイント

今後は、強い第1四半期を確認した後に「どこまで利益を持続できるか」が焦点になります。修正後の会社予想自体が大幅に引き上げられたため、次の決算では単なる前年同期比よりも、新しい通期予想に対する進捗と利益の中身を確認することが重要です。

特に確認したいのは、タングステン・銅・為替の前提、本業の数量回復、在庫効果縮小後の利益率です。

上方修正後も業績が上振れできるか

経常利益の通期予想は730億円から1,800億円へ一気に引き上げられました。第1四半期の経常利益519億円は修正後予想に対して約28.8%の進捗です。第1四半期としては十分な水準ですが、会社計画そのものが大きく上がったため、今後は新しいハードルに対して進捗を確認する必要があります。

第1四半期には鉱山配当や為替差益、低価格在庫の払出効果などが含まれます。これらの発生時期には四半期ごとの偏りがあるため、単純に519億円を4倍して年間利益を推計するのは適切ではありません。

それでも、会社は第1四半期実績を踏まえて通期予想を大幅に引き上げています。今後もタングステン価格や銅価格が会社前提を上回り、超硬製品や高機能製品の数量回復が続けば、修正後予想に対する上振れ余地が意識される可能性があります。

銅・タングステン・為替の動向

今回の通期予想は、ドル円158円、銅579セント/ポンド、APT3,017ドル/MTUなどの前提を置いています。実勢価格がこの前提を上回るか下回るかで、業績の評価は変わります。

銅では価格だけでなくTC/RCも重要です。銅価格が高くても銅精鉱の調達条件が悪化すると製錬採算が圧迫されるため、銅プレミアム改定などでどこまで吸収できるかを継続的に見る必要があります。

タングステンではAPT価格に加え、低価格在庫の残存量が利益率を左右します。第4四半期以降に在庫効果が縮小した後でも高い利益を維持できるかが、今期の一時的な好業績と中長期の収益力を分ける確認点です。

本業の需要回復が続くか

市況要因に左右されにくい成長を確認するためには、超硬製品と高機能製品の販売数量が重要です。第1四半期は自動車関連の回復やAI関連製品の需要拡大が利益を押し上げました。

超硬製品では数量差が29億円のプラスとなり、通期経常利益予想は129億円から185億円へ引き上げられています。高機能製品もAI・半導体向け製品の販売増を見込み、通期経常利益予想を53億円から80億円へ上方修正しました。

金属価格が落ち着いた局面でもこれらの事業が伸びれば、三菱マテリアルの利益構造は市況依存から少しずつ分散されます。次回以降は「金属価格が高いから増益」だけでなく、数量と製品ミックスで利益を伸ばせているかも確認したいところです。

三菱マテリアルの次回決算はいつ?

三菱マテリアルの2027年3月期第2四半期決算は、2026年11月11日に発表予定です。会社のIRカレンダーでも第2四半期決算・IR決算説明会の日程として11月11日が示されています。

次回決算は、今回の大幅上方修正後の業績進捗を初めて本格的に確認する機会になります。特に、タングステン価格と低価格在庫の効果、銅価格とTC/RC、鉱山配当、自動車・半導体・AI関連需要の継続性が重要です。

経常利益1,800億円という新しい通期予想に対して上期でどこまで進捗できるか、金属市況の追い風を除いても本業の利益が改善しているかを確認することで、今期の上方修正の持続性を判断しやすくなります。

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まとめ

三菱マテリアルの2027年3月期第1四半期は、売上高5,970億5百万円、営業利益329億94百万円、経常利益519億2百万円となり、第1四半期として過去最高益を記録しました。発表前の市場予想も大幅に上回り、通期経常利益予想は730億円から1,800億円へ引き上げられています。

利益拡大の中心はタングステン価格上昇ですが、銅・金価格、円安、鉱山配当、自動車・半導体・AI関連需要の回復も寄与しました。一方、タングステンの低価格在庫効果は第4四半期以降に縮小する見通しで、金属価格上昇に伴う運転資本増加によってFCFの上振れも限定的です。

今後は、大幅上方修正後の会社計画に対する進捗に加え、市況要因を除いた本業の利益成長が続くかが重要になります。次回の第2四半期決算では、タングステン・銅・為替の前提と、超硬製品・高機能製品の数量回復を確認したいところです。

出典

三菱マテリアル株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」

https://ir.mmc.co.jp/ja/ir/main/0/teaserItems1/0/linkList/04/link/J_20260806_1Q.pdf

三菱マテリアル株式会社「2027年3月期 第1四半期決算補足説明資料」

https://ir.mmc.co.jp/ja/ir/main/0/teaserItems1/0/linkList/02/link/J_20260806_1Q_2.pdf

三菱マテリアル株式会社「業績予想の修正に関するお知らせ」

https://ir.mmc.co.jp/ja/ir/news/auto_20260806511388/pdfFile.pdf

三菱マテリアル株式会社「配当情報」

https://ir.mmc.co.jp/ja/ir/stockinfo/dividend.html

三菱マテリアル株式会社「IRカレンダー」

https://ir.mmc.co.jp/ja/ir/calendar.html

IFIS株予報「5711 三菱マテリアル – 業績進ちょくと決算スケジュール」

https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&bcode=5711&sa=report_chg

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