ティアフォーは赤字でも大丈夫なの?決算の内容と黒字化までの条件を解説

自動運転のティアフォー(593A)を調べると、成長への期待とともに目に入るのが大幅な赤字です。「自動運転の成長企業とはいえ、この赤字額で大丈夫なのか」「いつ黒字化できるのか」と気になった人も多いのではないでしょうか。

ティアフォーの赤字は、売上が伸びないことで生じているわけではありません。自動運転システムを量産・商用化するための研究開発投資を、先に負担していることが主な要因です。

さらに2026年8月19日の個人投資家向け決算説明会では、会社が黒字化の目安を具体的な車両台数で説明しました。累計車両運用台数が約800台に達することが、経常利益黒字化の目安の一つとされています。赤字額だけでなく、量産案件が実際の車両台数へ変わっているかを追える状態になりました。

最新決算を確認したうえで、なぜ大幅赤字なのか、赤字の中身は改善しているのか、資金面に余裕はあるのか、約800台という目安がどんな意味を持つのかを順番に整理します。

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目次

ティアフォーの赤字はどれくらい?最新決算を確認

まず赤字の大きさを数字で押さえます。2026年9月期第3四半期累計は、売上高51億7,800万円に対して営業損失68億2,600万円でした。営業損失が売上高を上回る規模で、通期でも営業損失112億3,900万円を見込んでいます。

項目2026年9月期3Q累計通期会社予想
売上高51億7,800万円84億8,400万円
売上総利益20億300万円29億1,400万円
営業損益68億2,600万円の赤字112億3,900万円の赤字
経常損益40億8,700万円の赤字65億9,300万円の赤字
純損益41億7,400万円の赤字67億3,600万円の赤字

営業損益と経常損益の差が大きい点も特徴です。経常損益には本業以外の収支が含まれ、ティアフォーの場合は研究開発に関する補助金収入が営業外収益として計上されています。補助金の扱いは後半で詳しく整理します。

営業赤字が売上高を上回っている

3Q累計は売上高51億7,800万円に対して営業損失68億2,600万円、通期でも売上高84億8,400万円に対して営業損失112億3,900万円の予想です。成熟企業であればかなり重い損失ですが、ティアフォーは利益を最大化する段階ではなく、自動運転システムを量産・商用化するための開発投資を先行させるフェーズにあります。赤字の大きさを見るときは、その中身が縮小によるものか投資によるものかを分ける必要があります。

通期予想は据え置き|4Q売上の約9割には具体的な根拠がある

会社は第3四半期の決算発表時点で、2026年9月期の通期予想を据え置きました。売上高84億8,400万円に対して3Q累計は51億7,800万円なので、第4四半期には約33億600万円の売上計上が必要です。進捗率は61%にとどまりますが、ティアフォーは案件の検収時期などにより売上が第2四半期と第4四半期へ集中しやすい事業特性を説明しています。進捗率だけで未達と判断できる状況ではありません。

会社資料で示された4Q売上計画の内訳は、受注済み・開始済みプロジェクトの進行が19億8,400万円、納品済み・納品予定の自動運転バスが9億6,000万円、その他の受注見込みが約3億6,200万円です。受注済みプロジェクトと具体的なバス販売の合計29億4,400万円は、必要売上の約89%にあたります。4Qへの依存は大きいものの、その大部分にはすでに売上の根拠があることが、予想据え置きの背景です。

4Qで売上が伸びても、今期の黒字化は計画に入っていない

売上の達成と利益の改善は別の話です。通期会社予想から単純に逆算すると、第4四半期だけで営業損失約44億1,300万円を見込む計算になります。4Qに売上が集中しても、今期中に営業黒字へ近づく計画にはなっていません。

ティアフォーはなぜこんなに赤字なの?

ティアフォーはなぜこんなに赤字なの?

赤字の中心にあるのは研究開発費です。3Q累計の研究開発費59億8,900万円は、売上高51億7,800万円を上回ります。加えて、開発した技術が量産・運用へ移り切っていないため、コストを先に負担しながら、それに見合う収益がまだ積み上がっていない構造にあります。

最大の要因は約60億円の研究開発費

2026年9月期3Q累計の研究開発費は59億8,900万円で、販売費及び一般管理費88億2,900万円のうち約68%を占めます。

自動運転には、認知・判断・制御のソフトウェアだけでなく、AIモデル、センサー、車載コンピューター、シミュレーション、安全性検証、実車試験、量産向けの品質・性能改善など、多数の技術開発が必要です。ティアフォーはAIベースの自動運転、大規模データ収集基盤、次世代エッジAIにも投資しており、現在の売上規模に対して研究開発の負担が大きいことが営業赤字の主因になっています。

まだ「開発」から「量産・運用」へ移る途中

ティアフォーの収益機会は、プロジェクトの段階によって変わります。開発中はプロジェクト数や開発規模に応じたエンジニアリング収入が中心です。量産へ移ると、車両に搭載するソフトウェアやハードウェアから車両1台ごとのワンタイム収益が発生し、運用開始後は保守やWebサービスによるリカーリング収益(稼働が続く限り積み上がる継続収益)が加わります。

現在は複数のOEM(自動車メーカー)や自治体との開発・実証案件が進む一方、量産・運用台数は拡大の途中です。研究開発費や開発人員のコストを先に負担しながら、量産後に見込む収益がまだ積み上がっていないことが、現在の赤字構造につながっています。

Autowareのオープンソース化で開発の負担を分散する

会社は研究開発費を際限なく増やす方針ではありません。ティアフォーが開発を主導するAutowareはオープンソースとして公開されており、会社説明ではAutoware開発者の約7割がティアフォー以外のエンジニアとされています。

外部の企業や大学、研究者が共通部分の開発に参加することで、ティアフォー自身は量産化や商用化など事業に直結する領域へ開発資源を集中できます。会社が黒字化戦略で研究開発費の「規律あるコントロール」を強調しているのは、売上を増やしながら研究開発費を同じ速度では増やさないことが、利益改善の条件になるためです。

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赤字の中身は改善している?

営業赤字は依然として大きいものの、3Q累計では売上・粗利の成長に対して研究開発費を抑えるという黒字化の方向性が見え始めています。会社の決算説明では、売上高と売上総利益が前年同期比で30%以上増える一方、研究開発費は前年同期とほぼ同水準に抑えられました。

項目前年同期今期3Q累計変化
売上高39億8,400万円51億7,800万円約30.0%増
売上総利益15億2,200万円20億300万円約31.6%増
粗利率約38.2%約38.7%約0.5ポイント上昇
研究開発費60億9,900万円59億8,900万円約1.8%減
営業損益72億800万円の赤字68億2,600万円の赤字約3億8,200万円の改善

※前年同期の比較値は、会社の決算説明で示された比較情報を基に整理しています。前期3Qは四半期連結財務諸表を作成していないため、法定の四半期財務諸表同士を単純比較したものとは扱いが異なります。

売上・粗利が30%超伸びた

会社説明ベースでは、売上高は39億8,400万円から51億7,800万円へ約30%、売上総利益は15億2,200万円から20億300万円へ約32%増えました。売上総利益率も約38.2%から約38.7%へわずかに改善しています。

黒字化を考えるうえで見たいのは、売上高そのものより売上総利益です。研究開発費や固定費を吸収する原資になるのは、売上から原価を引いた粗利だからです。

売上が伸びても研究開発費はほぼ横ばい

研究開発費は前年同期の60億9,900万円に対して59億8,900万円と、ほぼ横ばいでした。売上高が約30%増えるなかで研究開発費を増やしていないため、売上高に対する研究開発費の比率は下がっています。

まだ売上高を上回る研究開発費を投じている状態ですが、売上を伸ばすために研究開発費も同じ比率で増え続ける構造から離れられるかを見る最初の材料になります。

3Q累計では営業赤字が約3億8,200万円縮小

営業損失は会社説明ベースで、前年同期の72億800万円から68億2,600万円へ約3億8,200万円縮小しました。同じ期間同士の比較では、本業の赤字幅が改善しています。売上総利益の増加分を研究開発費の増加で打ち消さなかったためで、会社が説明するオペレーティングレバレッジ(売上が増えてもコストが同じペースで増えなければ、利益が売上以上に伸びやすくなる効果)の方向と一致します。

ただし通期では赤字の拡大を計画している

3Q累計で営業損失が縮小しても、2026年9月期の通期で赤字幅が縮む計画ではありません。2025年9月期の営業損失105億600万円に対し、2026年9月期の会社予想は112億3,900万円で、通期では約7億3,300万円の赤字拡大を見込んでいます。経常損失も前期の55億400万円から今期予想65億9,300万円へ拡大する計画です。3Qまでに収益効率の改善は見えるものの、今期中に収益構造が大きく変わる段階には達していません。

経常赤字は逆に拡大している

経常損失は前年同期の35億7,300万円から40億8,700万円へ拡大しました。3Q累計では補助金収入36億6,100万円を計上したものの前年同期より減少し、加えて持分法による投資損失9億1,800万円(出資先企業の損失のうち、持ち分に応じた金額を反映したもの)も発生しています。

営業損失が縮小しても、経常損益まで一貫して改善しているわけではありません。3Q累計の改善と通期計画は分けて確認し、補助金など営業外収益の影響も併せて見ておきたいところです。

補助金収入が大きいのは問題?

ティアフォーは自動運転の研究開発・社会実装に関する補助事業を活用しており、2026年9月期3Q累計では補助金収入36億6,100万円を営業外収益に計上しました。営業損失68億2,600万円に対して補助金収入が大きいため、経常損失は40億8,700万円まで圧縮されています。

自動運転は国が社会実装を後押ししている政策分野で、補助金で研究開発の負担を軽くすること自体は不自然ではありません。会社も、複数年にわたり採択されている補助事業があると説明しています。

ただし補助金は、顧客が商品やサービスに対して支払った本業の売上とは性質が違います。将来の収益力を見るときは、補助金を含んだ経常損益だけでなく、売上総利益や営業損益、量産・運用からの収入がどこまで増えているかを併せて確認したいところです。

ティアフォーはいつ黒字化する?

会社が示した黒字化の目安は、累計車両運用台数の約800台です。年度ではなく台数で示された点が特徴で、2025年9月期末の114台を基準にすると約7倍の水準にあたります。車両が量産・運用されるほど収益が積み上がる構造のため、台数が黒字化への距離を測る物差しになります。

黒字化の目安は累計車両運用台数「約800台」

2026年8月19日の個人投資家向け決算説明会で、会社は現時点の事業前提として、累計車両運用台数が約800台へ到達することを経常利益黒字化の目安の一つに挙げました。

これは「2028年に黒字化する」といった年度目標ではありません。車種別の収益構成、研究開発費、補助金などによって損益は変わるため、800台は現在の前提に基づくマイルストーンです。それでも、これまで見えにくかった黒字化への距離を、車両台数というKPIで追えるようになった意味は小さくありません。

2025年9月期末の114台から約7倍

2025年9月期末の累計車両運用台数は114台でした。この114台を基準にすると、黒字化目安の約800台は約7倍に相当します。なお、2026年8月時点の全社累計台数は今回の会社説明では示されていないため、114台を「現在の台数」として扱わないことに注意が必要です。

一方で、ゼロから800台を新規受注しなければならないわけでもありません。すでに複数のOEM、自治体、交通事業者との開発案件が進んでおり、会社はこれらを順番に量産・社会実装へ移すことを黒字化の最重要課題としています。

なぜ車両台数が増えると黒字化へ近づくのか

車両運用台数が鍵になるのは、ティアフォーが開発・量産・運用のそれぞれで収益を得る構造だからです。開発段階ではプロジェクト収入、量産段階では車両ごとのソフトウェア・ハードウェアなどのワンタイム収入、運用開始後は保守やWebサービスのリカーリング収入が発生します。

車両が量産されるほど、開発時の一時的な収入だけでなく、台数に連動する収益と運用後の継続収益が積み上がります。ここで研究開発費を規律ある水準に抑えられれば、売上総利益の増加分が利益改善へ回りやすくなります。

800台には補助金の継続も前提に入っている

800台という数字を見るときに押さえておきたいのが補助金です。決算説明会のQ&Aで会社は、約800台という目安には一定の補助金収入が継続することも前提の一つに含まれると説明しています。

800台へ到達すれば無条件で経常黒字になる、という意味ではありません。車種や案件の収益性、研究開発費の水準、補助金収入といった複数の前提が組み合わさった数字です。短期的には補助金を活用しながら研究開発を進め、中長期では車両の量産・運用から得る事業収益の比率をどこまで高められるかが焦点になります。

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黒字化目安の800台は達成できそう?

会社は2030年9月期に累計1,800台超という目標を掲げており、黒字化の目安である800台はその途中に位置します。数字の根拠はある一方、必要な拡大ペースは高いという両面を確認しておきたいところです。

2030年9月期に累計1,800台超を目指す

2025年9月期末の累計114台から、2030年9月期に累計1,800台超へ増やす計画です。黒字化目安の800台を大きく上回る目標になります。

この1,800台は、自動運転市場の成長率から逆算した数字ではありません。会社によると、すでに受注または条件付きで受注し、開発が進行している複数プロジェクトについて、各案件の量産目標を積み上げた数字とされています。現時点ではバス・シャトルと特殊用途車両が中心です。

5年で約15.8倍|年平均約74%の拡大ペースが必要

計画の難易度も見ておく必要があります。114台から1,800台へは約15.8倍の拡大が必要です。5年間で均等に増えると仮定した単純計算では、車両運用台数の年平均成長率は約74%になります。

実際の台数は量産開始のタイミングによって段階的に増えるため、毎年一定のペースにはなりません。それでも高い拡大ペースが求められることは変わらず、受注済み案件を予定どおり量産へ移す実行力が黒字化の確度を左右します。

eve autonomyではすでに約90台規模で商用運用

ヤマハ発動機との取り組みでは、工場や物流施設などの閉鎖空間で無人搬送サービス「eve auto」を展開しています。会社説明ではすでに90台規模まで導入が進んでおり、開発案件ではなく実際の商用サービスとして自動運転技術が使われている代表例です。

eve autonomyでは、稼働台数に応じてティアフォーがライセンス料を受け取るモデルも採用されています。規模は小さいものの、車両台数の増加が継続収益につながる仕組みがすでに動いている点は、将来の収益モデルを考えるうえでの参考になります。

KDDIとは2030年までに累計1,000台規模を目指す

KDDIとの協業では、自治体や交通事業者への自動運転サービス導入を進め、2030年までに累計1,000台規模の商用導入を目指しています。会社は、実証地域を増やす段階から1地域当たりの車両台数を増やす段階へ移ることを重要な取り組みとしています。

ただし、KDDIとの1,000台構想と全社の1,800台目標を単純に足し算することはできません。個別プロジェクトごとに量産の時期や条件が異なるため、実際の導入台数や量産開始の開示を確認していく必要があります。

黒字化する年度はまだ公表されていない

800台という目安は示されたものの、会社は「何年何月に800台へ達する」という黒字化の年度を公表していません。複数のプロジェクトは量産開始の時期がそれぞれ異なり、公表できる段階で順次開示すると説明しています。

現時点で2028年黒字化、2029年黒字化などと断定するのは早い段階です。黒字化の条件は以前より見えやすくなりましたが、時期は各案件の量産移行を追いながら判断することになります。

大幅赤字でも資金面は大丈夫?

赤字が大きくても、当面の資金には余裕があります。IPOによる調達を含めた2026年7月末時点のネットキャッシュは約230億円で、会社は直近1年間の経常損失を基準にした単純換算でおおむね5年程度の資金余力があると説明しています。

項目金額・比率時点
現金及び預金93億9,100万円2026年6月末
純資産100億3,700万円2026年6月末
自己資本比率66.0%2026年6月末
有利子負債28億4,100万円2026年6月末
ネットキャッシュ約230億円2026年7月末

※ネットキャッシュは手元資金から有利子負債を差し引いた金額を指します。6月末の数値はIPO前、7月末のネットキャッシュはIPOによる公募増資後の数字です。

6月末は現預金93億9,100万円・自己資本比率66.0%

2026年6月末時点の現金及び預金は93億9,100万円、純資産は100億3,700万円、自己資本比率は66.0%、有利子負債は28億4,100万円でした。大幅な純損失で純資産は減っているものの、自己資本比率は高い水準を保っています。

ただし、この貸借対照表はIPO前の6月末時点のものです。7月22日の新規上場に伴う公募増資は反映されていません。

7月末のネットキャッシュは約230億円

IPO時の公募増資で、会社は事業計画に必要なコア資金174億円を確保したと説明しています。これを含めた2026年7月末時点のネットキャッシュが約230億円です。6月末の貸借対照表を見るより、この数字の方が現時点の資金余力を把握しやすくなります。

会社は直近1年間の経常損失を基準に単純換算するとおおむね5年程度の資金余力があるとし、決算説明会の時点では追加の資金調達について具体的に検討している事項はないとしています。

この「約5年」は、現在の損失ペースを機械的に当てはめた会社側の単純換算です。研究開発費、量産投資、損失額、補助金収入が変われば実際の資金消費も変わります。5年間は追加調達が絶対に不要という意味ではなく、黒字化までの時間を確保できる資金基盤が現時点ではあるという受け止め方になります。

次の本決算ではキャッシュフローも確認したい

第3四半期決算では四半期連結キャッシュ・フロー計算書が作成されていないため、営業キャッシュフローやフリーキャッシュフローの詳細は確認できません。研究開発投資が大きい企業では、会計上の損益だけでなく、実際にどれだけ現金を使っているかが効いてきます。

次の本決算では、IPOで調達した資金の残高、営業キャッシュフロー、研究開発・量産投資への支出を確認すると、資金余力をより正確に判断できます。

黒字化へ近づいているか判断する5つのポイント

赤字額そのものより、赤字が減る条件が満たされつつあるかを見る方が判断しやすくなります。今後の決算で確認したいのは次の5点です。

① 車両運用台数|114台からその後何台まで増えたか

最重要のKPIは車両運用台数です。会社自身が約800台を経常黒字化の目安としているため、決算では2025年9月期末の114台からその後どこまで増えたかを最初に確認したいところです。2026年8月時点の全社累計台数は今回の説明では示されておらず、次回以降の更新が焦点になります。実証地域の数ではなく、実際に量産・運用される台数が増えているかを見ます。

② 開発案件が量産へ移るか

ティアフォーは複数のOEMや特殊用途車両メーカーと開発プロジェクトを進めています。開発契約が増えるだけでなく、それらが量産へ移ることで車両ごとのワンタイム収入とその後の運用収入が生まれます。新規開発案件数より、「量産開始」「商用導入」「採用台数」といった開示を重視したいところです。

③ 売上高より「売上総利益」がどこまで増えるか

研究開発費や固定費を吸収するのは売上高ではなく売上総利益です。3Qでは売上総利益が前年同期比30%超増え、粗利率も小幅に改善しました。量産・運用フェーズの売上が増えることで売上総利益がどこまで伸びるかが、黒字化の進捗を測る数字になります。

④ 研究開発費を抑えながら成長できるか

3Qでは売上・粗利が30%超伸びる一方、研究開発費はほぼ横ばいでした。この傾向が続けばオペレーティングレバレッジが働きやすくなります。反対に、次世代技術への投資競争で研究開発費が再び大きく増えれば、車両台数が増えても黒字化のハードルは上がります。

⑤ 補助金を含めない本業の収益力が改善しているか

補助金は研究開発を進めるうえで有効な資金源ですが、長期的な企業価値を見るには事業そのものから得る収益の拡大が必要です。営業損失の縮小、量産・運用収入の増加、売上総利益の成長を確認し、補助金への依存度が相対的に下がっていくかを見ていきます。

まとめ|赤字は大きいが、黒字化を測る物差しは見え始めた

ティアフォーは現在も大幅な赤字企業です。2026年9月期3Q累計の営業損失は68億2,600万円、通期では112億3,900万円の営業損失を見込んでいます。成長企業だからという理由で赤字額を軽く扱える段階ではありません。

一方、3Q累計の同期間比較では、売上高と売上総利益が30%超伸びるなかで研究開発費をほぼ横ばいに抑え、営業損失は前年同期より約3億8,200万円縮みました。ただし通期では、前期実績105億600万円から112億3,900万円へ赤字が拡大する計画のままです。改善の兆しはあるものの、黒字化が目前という段階ではありません。

そのうえで会社が累計車両運用台数約800台を経常黒字化の目安として示したことで、進捗を具体的なKPIで追えるようになりました。114台を基準にすると800台は約7倍、2030年9月期の1,800台超は約15.8倍で、5年間で均した単純計算では年平均約74%の拡大が必要です。計画には受注済み案件という根拠がある一方、それを予定どおり量産へ移す実行力が黒字化の確度を左右します。

今後の決算では、赤字額だけでなく、車両運用台数、量産移行、売上総利益、研究開発費、補助金を除いた本業の収益力をセットで確認したいところです。ティアフォーが赤字企業から収益化フェーズへ移れるかは、実証が増えたかではなく、量産された車両がどこまで増えたかで判断しやすくなっています。

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出典

ティアフォー「決算短信」

https://tier4.co.jp/ir/financial-results

ティアフォー「決算説明資料」

https://tier4.co.jp/ir/financial-results-materials

ティアフォー/ログミーファイナンス「ティアフォー、3Q累計売上高・売上総利益は前年比30%超増 3サービスすべて成長、自動運転の量産・社会実装を推進」

https://minkabu.jp/stock/593A/news/4606554

株式会社ティアフォー「有価証券届出書(新規公開時)」

https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y9OA.pdf

ティアフォー「発行価格及び売出価格、国内外の募集株式数並びにオーバーアロットメントによる売出しの売出株式数決定のお知らせ」

https://tier4.co.jp/updates/press-release/20260713-offering-price-and-share-allocation

ティアフォー「eve autonomyの自動搬送ソリューション」

https://tier4.co.jp/case-studies/eve-autonomy

ティアフォー・KDDI「ティアフォーとKDDI、自動運転サービスの社会実装に向け協業に合意」

https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-1027_4532.html

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この記事を書いた人

投資歴7年。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員資格取得。2019年に100万円から投資スタート。2022年に1000万円→2025に年5000万円突破。
YouTubeでは株式投資・企業決算を中心とした解説動画を200本以上公開(チャンネル登録者数5000人)。日本株を中心に、企業決算や業績、株価材料を分析しています。

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