ニデックの多くの拠点で、利益を実際より大きく見せる会計処理が行われていたことが、2026年4月の第三者委員会の最終報告で認定されました。
過去の決算の訂正に加えて、2026年3月期の配当はゼロになり、東京証券取引所(東証)による上場維持の審査も続いています。株主にとっての焦点は、訂正後の数字が確定し、同じ不正を繰り返さない体制に変われるかです。
この記事では、何があったのか、なぜ止められなかったのか、株主にどんな影響が出ているのかを順番に解説します。
※本記事は2026年9月29日時点の開示資料をもとに作成しています。
ニデックで何があった?

中国子会社で見つかった約2億円の会計処理の疑いをきっかけに調査範囲が広がり、2026年4月の最終報告で、ニデックグループの複数拠点にわたる多数の不正会計が認定されました。2025年9月の調査開始時点では「疑い」でしたが、その後の第三者委員会の調査によって、意図的な処理を含む不正の実態が確認されています。
発端の一つは中国子会社で見つかった約2億円の会計処理だった
2025年7月22日、ニデックの子会社から親会社の監査等委員会へ、中国の子会社で仕入れ先からの値引きにあたる1,000万元、約2億円を不適切に会計処理した疑いがあるとの報告が届きました。監査等委員会とは、取締役のうち経営をチェックする役割を担う人で構成される組織です。
外部専門家を入れて調査すると、別の拠点でも、資産の価値を引き下げる時期を経営陣の関与や認識のもとで調整していた可能性を示す資料が複数見つかりました。ニデックは社内だけの調査では不十分と判断し、2025年9月3日に第三者委員会を設置しました。第三者委員会は、会社から独立した弁護士や会計士などで構成し、事実関係や原因を調べる委員会です。
2026年4月の最終報告で多数の不正会計が認定された
第三者委員会は2026年2月27日に調査報告書を提出し、追加調査の後、4月17日に最終報告書を提出しました。最終報告では、費用を計上しない、損失を先送りする、収益を早く計上するなど、複数の手口による不正会計がグループの多くの拠点で認定されました。
その結果、グループ全体の内部管理体制が問われる事態に広がりました。内部管理体制とは、正しい決算を作り、不正やミスを防ぐための社内の仕組みです。
「不適切会計」と「不正会計」は同じ意味?
2025年9月に第三者委員会を設置した段階では、事実関係がまだ確定していなかったため、ニデックは「不適切な会計処理の疑義」と表現していました。その後の調査では、意図的な行為である「不正」と、意図的ではない「誤謬(ごびゅう)」を分けて検討し、最終報告で多数の不正会計が認定されています。
ニュースで「不適切会計」とあるのは、主に調査前の疑いを含む表現です。「不正会計」は、第三者委員会が意図的な処理と認定したものを指します。
発覚から最終報告までの流れ
2025年3月期の有価証券報告書の提出は、イタリア子会社の関税問題でもともと遅れていました。有価証券報告書は、上場会社が年に1回提出する、決算や事業・経営の状況をまとめた公式書類です。
| 時期 | 主な出来事 | 補足 |
|---|---|---|
| 2025年6月 | 2025年3月期の有価証券報告書提出を延期 | イタリア子会社の関税問題などで監査完了が遅れた |
| 2025年7月 | 中国子会社の約2億円の会計処理に疑い | 不正会計調査の入口となった |
| 2025年9月3日 | 第三者委員会を設置 | 調査範囲をグループへ拡大 |
| 2025年9月26日 | 有価証券報告書を提出、監査法人は意見不表明 | 決算の適正性について意見を出せない状態 |
| 2025年10月27日 | 東証が特別注意銘柄への指定を公表 | 指定日は翌10月28日 |
| 2026年2月27日 | 第三者委員会の調査報告書を受領 | 多数の不正と原因分析を公表へ |
| 2026年4月17日 | 第三者委員会の最終報告書を受領 | 追加調査を含めた事実認定が確定 |
| 2026年4月27日 | 改善計画の改訂版を公表 | 再発防止策を更新し実行段階へ |
ニデックは具体的にどんな不正会計をした?
ニデックの不正会計は、大きく分けて「出すべき費用や損失を先送りする処理」と「計上できない収益を計上する処理」の2種類です。どちらも、利益や資産を実態より大きく見せる方向に働きます。
| 主な類型 | 何をしたのか | 大きく見えたもの |
|---|---|---|
| 在庫 | 価値が落ちた原材料・製品の評価損を計上しない | 利益・在庫 |
| 固定資産 | 達成が難しい売上計画を使って減損を回避 | 利益・設備などの資産 |
| 費用の資産化 | 本来費用にすべき人件費を固定資産として計上 | 利益・固定資産 |
| 収益の計上 | 補助金に関する引当金を不適切に取り崩すなどして収益計上 | 利益 |
| 回収できない債権 | 貸倒引当金を少なく計上 | 利益・債権 |
在庫の損失を計上せず、費用を先送りした
在庫(販売する製品や原材料など)は、古くなったり使えなくなったりして、帳簿に載っている金額ほどの価値がなくなることがあります。その場合は、本来、その価値を引き下げて「評価損」という費用を計上します。
第三者委員会は、価値がない原材料や製品について評価損を計上せず、費用を先送りした例を認定しました。評価損を計上しなければ、その年度の費用が少なくなるため利益は大きくなり、在庫も高い金額のまま残ります。
達成が難しい売上計画を使って減損を回避した
固定資産の「減損」は、工場や設備、のれんなどが将来生み出す利益を考えたとき、帳簿上の価値を回収できないと判断した場合に、資産価値を引き下げて損失を計上する処理です。「のれん」は、企業買収で支払った金額のうち、買収先の純資産を上回る部分などを資産として計上したもので、将来の収益力への期待が含まれます。
減損の判定では将来の売上や利益の見通しが大きく影響します。達成が難しい売上計画を前提にすれば、「将来十分な利益を生むので資産価値を維持できる」と見せることができます。第三者委員会は、実現確度の低い計画に基づいて減損処理を回避した事例を認定しました。
減損を先送りすると、当時の損失が小さくなり、利益と資産が高く残ります。後から現実的な事業計画に置き直したときに大きな減損が発生しやすくなるため、現在の追加減損の検討にもつながっています。
人件費を「費用」ではなく「資産」として計上した
人件費は通常、その年度の費用として利益から差し引きます。一方、一定の条件を満たす開発費などは、いったん資産として計上し、何年かに分けて少しずつ費用にできます。
本来その年度の費用にすべき人件費を固定資産に計上し、費用を計上する時期を遅らせていた例も見つかりました。本来100の費用のうち30を資産に振り替えると、その年度の費用は70になり、利益は30大きく見えます。変わるのは費用を計上する時期で、現金が増える処理ではありません。
本来計上できない収益を計上した
「引当金」は、将来発生する可能性が高い支出や損失に備えて、あらかじめ費用として計上しておく金額です。引当金を必要な根拠なく取り崩すと、費用や負債が減るため利益が増えます。
第三者委員会は、補助金の返還に備えた引当金を不適切に取り崩した例や、まだ収益として認められない補助金を収益に計上した例を認定しました。いずれも、その年度の利益を実態より大きく見せる方向に働きます。
回収できない債権への引当金を少なく計上した
売掛金などの債権は、取引先の経営悪化などで回収できなくなることがあります。企業は、回収不能になると見込まれる金額を「貸倒引当金」として費用に計上します。
回収が難しい債権への貸倒引当金を、少なく計上した例も確認されました。引当金が少なければ費用が減り、利益と債権が大きく見えます。
なぜニデックで不正会計が広がった?
第三者委員会と東証は、次の4つが重なり、不正を止めにくい状態になったと整理しています。
- 短期の利益目標を必ず達成するよう求める強いプレッシャー
- 永守重信氏への権限集中と、意向を優先しやすい企業風土
- 経理・内部監査・監査等委員会のチェック機能の不全
- M&A後のグループ会社を統一的に管理する仕組みの弱さ
短期の利益目標を必ず達成するよう求める強いプレッシャー
第三者委員会は根本原因の一つに過度な業績プレッシャーを挙げ、ニデックも改善計画で、株価や短期利益を強く意識し、目標未達を許容しにくい企業風土があったと認めています。
問題になるのは、目標が厳しいことよりも、未達を報告したり必要な損失を計上したりできなくなることです。実際の事業状況より目標達成が優先されると、経営改善ではなく会計処理で利益を整える動機が生まれます。
永守重信氏への権限集中と、意向を優先しやすい企業風土
ニデックは改善計画で、第三者委員会が指摘した「永守氏への権限集中と同氏の意向を優先する風土」を原因分析に反映しています。経営トップの決断力は強みになり得ますが、異論や悪い情報が上がりにくくなると、会計上の専門判断まで経営目標に引っ張られます。
経理・内部監査・監査等委員会のチェック機能の不全
東証は2026年4月30日の「上場契約違約金の徴求:ニデック(株)」で、監査等委員会、経理部門、内部監査部門などのチェック機能に不全があったと指摘しました。監査等委員会への情報提供が十分でなかったほか、経理部門や内部監査部門が不正を抑止する役割を十分に果たせなかったとしています。
ニデックの場合、内部管理体制そのものが立て直しの対象です。不正な処理を直すだけでなく、同じ圧力がかかったときにチェック機能が働くかが再発防止を左右します。
東証は、役職員が監査法人へ不正確な情報を与え、都合のよい意見を引き出そうとするなど、不誠実な対応があったとも指摘しています。外部の監査法人も、会社から正確な資料や説明を得られなければ、監査だけで不正を防ぐことには限界があります。
M&A後のグループ会社を統一的に管理する仕組みの弱さ
ニデックはM&Aを積極的に活用して事業を拡大してきました。東証は、買収後のグループ会社の管理体制が統一されておらず、グループ会社の管理が弱かった点も挙げています。海外子会社や買収会社が増えるほど、会計ルール、承認手続き、内部監査、報告経路をグループ全体でそろえることが難しくなります。
永守重信氏にはどこまで責任がある?
永守重信氏については、経営責任、個別の不正会計への関与、法的責任を分けて考える必要があります。第三者委員会や東証は、永守氏を起点とする強い業績プレッシャーや権限集中を原因分析の中心に置いています。
| 論点 | 2026年9月29日時点の整理 |
|---|---|
| 経営責任 | 第三者委員会・東証は、強い業績プレッシャーや権限集中を不正が広がった背景として指摘 |
| 個別の不正への関与 | 不正ごとに、関与した人と認識の程度が異なる |
| 法的責任 | 役員責任調査委員会(2026年3月13日設置)が調査中 |
経営責任は企業風土や目標管理の作り方まで含む
第三者委員会の調査結果を受けた改善計画では、株価や短期利益を過度に重視する経営、永守氏への権限集中、同氏の意向を優先する風土が見直し対象になっています。問われているのは、経営トップが作った目標管理と意思決定の仕組みです。
個別の不正への関与は案件ごとに異なる
不正会計には、経営幹部や経理部門が関わった例もあれば、各拠点で行われた処理もあります。「ニデックの不正はすべて永守氏が直接指示した」とまとめると、第三者委員会の認定範囲を超えます。
法的責任は役員責任調査委員会が調べている
ニデックは2026年3月13日、現旧役員の職務執行について法的責任の有無を調べる「役員責任調査委員会」を設置しました。経営責任と法的責任は別です。損害賠償などの法的責任は、この委員会の調査やその後の手続きで判断されます。
経営陣の辞任の経緯
| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 2025年12月19日 | 永守重信氏が代表取締役を辞任し、名誉会長(非常勤)へ |
| 2026年2月26日 | 永守氏が名誉会長を辞任し、経営から退くと表明 |
| 2026年3月3日 | 取締役会長の小部博志氏、副社長執行役員の北尾宜久氏、最高財務責任者の佐村彰宣氏など主要役員が退任 |
| 2026年3月13日 | 役員責任調査委員会を設置 |
不正会計はニデックの財務と配当にどう影響した?
不正の訂正で、連結純資産は約1,607億円減る見込みです。さらに約2,500億円規模の資産で減損するかどうかが検討され、2026年3月期の配当は中間・期末ともゼロになりました。
| 項目 | 内容 | 規模を読む基準 |
|---|---|---|
| 連結純資産 | 2026年4月17日の最終報告を受け、東証が4月30日に約1,607億円の累積影響と説明 | 2025年6月末に開示されていた連結純資産約1兆6,796億円の約9.6% |
| 追加減損 | 2026年3月3日に、主に車載事業ののれん・固定資産約2,500億円を検討対象と公表 | 対象資産の規模。確定損失額ではない |
| 配当 | 2026年3月期は中間・期末とも無配 | 株主が受け取る現金に直接影響 |
| 上場契約違約金 | 東証が2026年4月30日に9,120万円を徴求 | プライム市場で上場時価総額5,000億円超の区分に定められた金額 |
連結純資産は約1,607億円減少する見込み
東証は2026年4月30日の公表で、連結純資産への累積影響額が約1,607億円に達すると説明しました。第三者委員会が算定した不正会計の訂正の影響で、2025年6月末時点の金額です。連結純資産とは、子会社を含むグループ全体の純資産です。
ニデックが2025年11月14日に開示した第1四半期決算では、2025年6月末の連結純資産は約1兆6,796億円でした(決算短信では「資本合計」と表示されています)。1,607億円はその約9.6%に相当します。ただし、この決算には後に判明した不正会計の最終的な訂正がすべて反映されていないため、9.6%は規模をつかむための参考比較です。
約2,500億円規模の資産で減損するかどうかを検討している
ニデックは2026年3月3日の開示資料で、主に車載事業ののれん・固定資産約2,500億円を、減損するかどうかの検討対象にすると公表しました。過去の利益を引き下げる修正に伴う追加の影響です。4月17日の最終報告後も、対象規模は約2,500億円とされています。
2025年6月末に開示されていた連結純資産との単純比較では約14.9%の規模です。最終的な減損額は、各事業が将来どの程度の利益を生み出せるかを見直して決まります。
2026年3月期は中間・期末とも無配になった
ニデックは2025年10月23日、不正会計の調査が続いていることを踏まえて中間配当を無配とし、期末配当予想と連結業績予想を未定へ変更しました。その後、2026年3月3日に期末配当も無配と決定しました。過去の決算訂正だけでなく、株主が受け取る現金にも影響が及んでいます。
東証は9,120万円の上場契約違約金を求めた
東証は2026年4月30日、業務を適正に運営するための体制整備に関する上場ルールに違反し、市場の信頼を損なったとして、ニデックに9,120万円の上場契約違約金の支払いを求めました。金額は東証の規則で市場区分と上場時価総額に応じて決まり、プライム市場で上場時価総額5,000億円を超える会社は9,120万円の区分です。
東証は、業績プレッシャーやチェック機能の不全などを理由に挙げ、上場会社のルールに反する重大な問題と判断しました。東証が問題にしたのは、個別の会計処理よりも、内部管理体制全体です。
監査法人の「意見不表明」は何が問題なの?
意見不表明とは、監査法人が決算を確かめるための証拠を十分に集められず、「正しい」とも「正しくない」とも判断できなかった状態です。投資家が判断に使う決算の数字を、監査法人が十分に確かめられていない点が問題です。ニデックの2025年3月期の有価証券報告書では、PwC Japan有限責任監査法人が連結財務諸表について意見不表明としました。
| 監査意見 | 意味 |
|---|---|
| 適正意見 | 重要な点で財務諸表が適正に表示されていると監査法人が判断 |
| 限定付適正意見 | 一部に重要な問題があるが、その影響は財務諸表全体に広がるほどではないと判断 |
| 不適正意見 | 重要で広範な誤りがあり、財務諸表が適正とはいえないと判断 |
| 意見不表明 | 十分な監査証拠を得られず、適正か不適正かの結論自体を出せない |
監査法人は十分な証拠を得られなかった
第三者委員会の調査が継続し、連結財務諸表に重要かつ広い影響が及ぶ可能性があったため、監査法人は監査意見の基礎となる十分な証拠を得られなかったとしています。
PERやPBRの前提となる数字を信用しにくくなる
投資家は利益や純資産をもとに、PER(株価収益率。利益に対して株価が何倍かを見る指標)やPBR(株価純資産倍率。純資産に対して株価が何倍かを見る指標)を使います。利益や純資産が後から大きく訂正されれば、過去のPERやPBRで見た割安・割高の判断もやり直す必要があります。
ニデックは上場廃止になる?
特別注意銘柄に指定されても、すぐに上場廃止になるわけではありません。ただし、今後の審査と有価証券報告書の提出の結果によっては、上場廃止の基準に当たる可能性があります。
東証は2025年10月27日、ニデックを特別注意銘柄に指定すると公表しました(指定日は10月28日)。特別注意銘柄は、内部管理体制に重大な課題があり、改善の必要性が高い会社を東証が継続審査する制度です。
指定から1年後に内部管理体制の整備・運用を審査する
東証の現行制度では、特別注意銘柄への指定から1年が経過した後に、内部管理体制が適切に整備・運用されているかを審査します。1年後の審査までに内部管理体制が適切に整備されていると認められない場合は、上場廃止基準に該当します。整備は認められても運用が十分でない場合は指定が継続され、次の審査が行われます。
2026年9月29日時点の東証サイトでは、ニデックの審査状況は「改善中」です。指定日が2025年10月28日なので、1年後の審査時期が近づいています。
有価証券報告書の提出遅延にも別の上場廃止基準がある
ニデックは国の承認を受け、2026年3月期有価証券報告書の提出期限を2026年9月30日まで延長しています。延長された提出期限の後、休業日を除いて8日目までに、監査報告書を添えた有価証券報告書を提出できないと、上場廃止の基準に当たります。2026年は10月12日が東証の休業日なので、8日目は10月13日です。
上場維持を見るときは、①特別注意銘柄の審査で内部管理体制の改善が認められるか、②10月13日までに、監査報告書を添えた有価証券報告書を提出できるか、という2つの基準を確認します。
不正会計と品質の不適切行為は同じ問題なの?
2026年には、ニデックの品質管理でも多数の不適切行為が明らかになりました。調査した委員会も、対象となった行為も、不正会計とは異なります。
| 項目 | 不正会計 | 品質の不適切行為 |
|---|---|---|
| 主な内容 | 費用計上の回避、収益の過大計上、減損回避など | 顧客承認なしの部材・工程・設計変更、検査データの不適切な取扱いなど |
| 調査主体 | 会計に関する第三者委員会 | 品質に関する外部専門家の調査委員会 |
| 主な公表時期 | 2025年9月に調査開始、2026年4月に最終報告 | 2026年5月に疑いを公表、9月に調査結果を公表 |
| 共通する論点 | 内部管理体制、企業風土、経営管理 | 内部管理体制、企業風土、品質管理・変更管理 |
2026年9月に公表された品質調査では、グループ全体で844件の品質の不適切行為が認定されました。不正会計と件数を足し合わせる性質のものではありませんが、ルールどおりに報告・承認する仕組みが機能していたかという点では共通の課題があります。
ニデックは会計と品質をそれぞれ是正しつつ、ガバナンス(経営を監視する仕組み)と企業風土の改革を会社全体の再生策として進めています。
ニデックの不正会計はもう終わった?
第三者委員会による事実調査は2026年4月17日の最終報告で区切りを迎えましたが、決算の訂正、追加減損、監査、東証の審査は続いています。
財務への影響を確定する作業が続いている
ニデックは、第三者委員会が認定した不正を過去の決算に反映する作業に加え、過去の利益を引き下げる修正によって発生する減損などの影響も詳しく調べています。2026年3月期の有価証券報告書は9月29日時点で会社のIRサイトに掲載されていません。
改善策は実行段階にある
ニデックは2026年4月27日に公表した改善計画の改訂版などで、次の施策を進めています。
- 現実的な事業計画を現場から積み上げる仕組みへ変更する
- 経理機能の独立性を高め、会計方針を明確にする
- 内部監査を強化し、不正の兆候を経営から独立して確認する
- 内部通報制度を改善し、悪い情報を上げやすくする
- 監査等委員会の情報収集と監督機能を強化する
- 経営トップへの過度な権限集中を改め、取締役会の監督機能を強化する
制度を作っただけで改善が完了したとは判断できません。利益目標が未達になりそうなときでも必要な損失を計上できるか、経理や監査が経営陣へ異論を言えるか、といった実際の運用が審査されます。
ニデック株を持っている人は売った方がいい?
売るかどうかは、株を買ったときの理由が、不正会計の発覚後も成り立つかで判断します。保有を続けるか考えるときは、不正会計の発覚で以前の財務数値や会社への信頼を前提にした評価を見直します。株価への影響には、業績・財務面と需給面の2つの経路があります。
業績・財務面では利益、純資産、配当の前提が変わる
過去の決算訂正や減損で利益・純資産が減れば、PERやPBRの前提が変わります。2026年3月期の配当がゼロになったことも、株主還元を目的に保有していた人には直接の変化です。株価が下がっても、利益や純資産も同じように下がっていれば、割安になったとはいえません。事業の将来性で買った場合も、訂正後の数字で本業の利益を確かめ直します。
需給面では不確実性が買いを控える要因になり得る
監査意見が定まらない、特別注意銘柄の審査結果が見えない、上場維持への不安が残るといった状態では、通常より大きなリスクを取りたくない投資家が買いを控える可能性があります。逆に、提出書類や監査意見、東証の審査結果が確定すれば、不確実性そのものは小さくなります。
保有・売却を考えるときのチェックリスト
| 確認すること | 改善を示す材料 | 警戒が強まる材料 |
|---|---|---|
| 有価証券報告書・監査意見 | 10月13日までに提出され、監査法人が意見を出せる | 提出がさらに遅れる、再び意見不表明や不適正意見となる |
| 減損 | 金額と理由が確定し、追加損失の範囲が見える | 主力事業の収益力低下が原因で、追加減損が続く |
| 特別注意銘柄 | 東証が内部管理体制の改善を認め、指定解除へ進む | 1年後の審査で整備が認められない(上場廃止の基準に当たる) |
| 本業 | 訂正後の数字でも事業が利益とキャッシュを生み出す | 会計整理後も収益力の低下が続く |
| 改善計画 | 経理・内部監査・通報制度が実際に機能する | 制度を整えても実際の運用が機能しない |
| 品質の不適切行為 | 844件への是正と再発防止が進む | 類似の不適切行為が続く |
会計訂正後も本業が利益を生み出せるか
過去の利益が訂正されても、主力事業の競争力が維持される場合と、減損対象の事業で将来収益が低下している場合では企業価値への影響が異なります。会計の問題が片づいた後、ニデックがどれだけ利益とキャッシュを生み出せるかが、最終的に企業価値を決めます。
まとめ
ニデックの不正会計は、次の3点に整理できます。
- 多くの拠点で、損失を先送りしたり収益を早めに計上したりして、利益や資産を大きく見せていた
- 目標の達成を最優先する風土と、それを止めるチェック機能の弱さが、不正を長く見逃す原因になった
- 訂正後の数字はまだ確定しておらず、配当や上場の審査にも影響が続いている
株主が確認したいのは、訂正後の決算が確定し、監査法人が通常の意見を出せるようになるかです。そのうえで、東証が内部管理体制の改善を認めるか、本業が会計整理後も利益を生み出せるかを見ると、会社の再生が進んでいるか判断しやすくなります。
出典
1. ニデック株式会社「第三者委員会設置のお知らせ」(2025年9月3日):https://www.nidec.com/jp/ir/news/2025/news0903-01/
2. ニデック株式会社「会計に関する第三者委員会の調査結果を踏まえて」:https://www.nidec.com/jp/corporate/internal-control-improvement/
3. ニデック株式会社「事案の概要」:https://www.nidec.com/jp/corporate/internal-control-improvement/overview/
4. ニデック株式会社「改善・対策について」:https://www.nidec.com/jp/corporate/internal-control-improvement/action/
5. ニデック株式会社「第三者委員会の調査報告書(最終報告)の受領 及び当社の対応に関するお知らせ」(2026年4月17日):https://www.nidec.com/jp/corporate/news/2026/news0417-01/
6. ニデック株式会社「第三者委員会の調査報告書の公表及び当社の対応に関するお知らせ」(2026年3月3日):https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/0303-01/260303-01jp.pdf
7. ニデック株式会社「役員等の異動に関するお知らせ」(2026年3月3日):https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/0303-01/260303-01jp.pdf
8. ニデック株式会社「名誉会長辞任に関するお知らせ」(2026年2月26日):https://www.nidec.com/jp/ir/news/2026/news0226-01/
9. ニデック株式会社「役員責任調査委員会の設置に関するお知らせ」(2026年3月13日):https://www.nidec.com/jp/ir/news/2026/news0313-01/
10. ニデック株式会社「2026年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2025年11月14日):https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/ir/library/earnings/2026/FY25Q1_3_1114_jp.pdf
11. ニデック株式会社「中間配当(無配)の決定、期末配当予想修正及び連結業績予想修正に関するお知らせ」(2025年10月23日):https://www.nidec.com/jp/ir/news/2025/news1023-01/
12. ニデック株式会社「剰余金の配当(期末配当無配)に関するお知らせ」(2026年3月3日):https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/0303-02/260303-02jp.pdf
13. 日本取引所グループ「特別注意銘柄の指定:ニデック(株)」(2025年10月27日公表、10月28日指定):https://www.jpx.co.jp/news/1023/20251027-12.html
14. 日本取引所グループ「上場契約違約金の徴求:ニデック(株)」(2026年4月30日):https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260430-14.html
15. 日本取引所グループ「特別注意銘柄一覧」:https://www.jpx.co.jp/listing/measures/alert/
16. 日本取引所グループ「上場廃止基準の概要」:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/delisting/outline/01.html
17. 日本取引所グループ「上場契約違約金」:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/measure/03.html
18. ニデック株式会社「第53期(2026年3月期)有価証券報告書の提出期限延長に係る承認のお知らせ」(2026年6月30日):https://www.nidec.com/jp/news/2026
19. ニデック株式会社「有価証券報告書・半期報告書」:https://www.nidec.com/jp/ir/library/reports/
20. ニデック株式会社「品質に関する不適切行為の疑義への対応について」:https://www.nidec.com/jp/corporate/disclosure/quality/
21. ニデック株式会社「事案の概要|品質に関する不適切行為の疑義への対応について」:https://www.nidec.com/jp/corporate/disclosure/quality/overview/
22. 日本取引所グループ「営業時間・休業日一覧」:https://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/calendar/
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