SUMCO(3436)が2026年8月6日に2026年12月期第2四半期決算を発表しました。上期は営業赤字ですが、2Q単独では1Qから大きく改善し、会社予想・市場コンセンサスも上回っています。
今回は、AI需要が強いのになぜ赤字が続くのか、300mmウェーハの需要回復や顧客在庫、減価償却費、3Qの黒字化シナリオまで詳しく整理します。
※数値は特に断りがない限り億円。市場コンセンサスは決算発表前の2026年8月5日時点のIFIS予想を使用しています。

SUMCOの最新決算はどうだった?

結論からいうと、今回の決算は「上期は赤字だが、2Q単独では収益改善が明確になり、市場期待も上回った」と評価できます。売上高は前年同期を上回った一方、上期累計の営業利益は赤字へ転落しました。ただし、四半期ごとの動きを見ると1Qを底に利益が戻り始めています。
| 項目 | 2026年上期 | 前年上期 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,150 | 2,054 | +97 |
| 営業利益 | ▲64 | +75 | ▲138 |
| 経常利益 | ▲122 | +47 | ▲169 |
| 親会社株主帰属利益 | ▲129 | +31 | ▲160 |
上期は増収でも営業赤字
2026年上期の売上高は2,150億円で前年同期比4.7%増となりました。半導体市場ではAI関連が数量回復をけん引し、300mmシリコンウェーハの出荷が増加しています。それにもかかわらず、営業利益は前年の75億円の黒字から64億円の赤字へ悪化しました。
この一見矛盾した動きが、SUMCOの今回の決算を理解するうえで最も重要です。需要は回復しているのに、過去の大型設備投資に伴う減価償却費や固定費の増加が利益回復を遅らせているためです。
2Q単独では1Qから大幅に改善
| 項目 | 1Q実績 | 2Q実績 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,014 | 1,136 | +122 |
| 営業利益 | ▲52 | ▲11 | +41 |
| 経常利益 | ▲79 | ▲42 | +37 |
| 親会社株主帰属利益 | ▲84 | ▲44 | +40 |
| EBITDA | 234 | 305 | +71 |
| EBITDAマージン | 23.1% | 26.9% | +3.8pt |
2Q単独の売上高は1,136億円で1Qから約12%増え、営業赤字は52億円から11億円へ約8割縮小しました。経常損失・純損失も改善しています。前年同期比だけを見ると厳しい決算ですが、直近の業績モメンタムは明確に上向いているといえます。
会社の2Q予想も上回った
| 項目 | 会社予想 | 2Q実績 | 上振れ |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,120 | 1,136 | +16 |
| 営業利益 | ▲25 | ▲11 | +14 |
| 経常利益 | ▲65 | ▲42 | +23 |
| 親会社株主帰属利益 | ▲70 | ▲44 | +26 |
| EBITDAマージン | 26.0% | 26.9% | +0.9pt |
SUMCOが5月時点で示していた2Q単独予想に対して、実績は売上・利益の全項目で上振れました。特に経常損失は会社予想65億円に対して42億円、純損失も70億円に対して44億円まで縮小しています。赤字そのものは残っていますが、会社自身の想定より回復が早かった点はポジティブです。
市場コンセンサスと比較するとどうだった?
決算の良し悪しを判断するには、前年比だけでなく市場がどこまでの業績を予想していたかとの比較が欠かせません。今回のSUMCOは、上期実績でも市場予想を上回りました。
上期経常損失はIFIS予想より約20億円良かった
| 項目 | 上期実績 | 決算前IFIS予想 | 差 |
|---|---|---|---|
| 経常利益 | ▲121.79 | ▲141.67 | +19.88 |
決算発表前の8月5日時点で、IFISの上期経常利益コンセンサスは▲141.67億円でした。実績は▲121.79億円で、赤字額は市場予想より約19.9億円、約14%小さくなりました。
1Q実績の経常損失79.65億円はすでに確定していたため、上期コンセンサスから逆算した2Q単独の市場想定は約▲62億円です。実際の2Qは▲42億円だったため、2Q単独でも参考ベースで約20億円上回った計算になります。
今回の決算は「赤字だが期待以上」
したがって今回の決算は、単純に「赤字だから悪い」と評価するのは適切ではありません。絶対額では営業赤字が続いている一方、1Qからの改善速度、会社計画との比較、市場コンセンサスとの比較はいずれも良好でした。
決算で重要なのは、赤字・黒字という結果だけではなく、投資家が事前に織り込んでいた期待値に対してどちら側へ外れたかです。SUMCOの2Qは、この意味ではポジティブ寄りの内容でした。
AI需要が強いのにSUMCOはなぜ赤字なの?
今回の決算で最も分かりにくいのが、AI・データセンター向けの300mmウェーハ需要が強いのに、営業赤字が続いていることです。原因を分けると、需要の弱さよりも固定費、なかでも減価償却費の増加が大きく効いています。
300mmウェーハの出荷数量は実際に増えている
会社は2Qの市場環境について、300mmウェーハはAI向けの先端ロジックとメモリー向けが好調で、出荷数量が増加したと説明しています。200mm以下も顧客・製品ごとに濃淡はあるものの、出荷は増加しました。
決算説明資料の季節変動グラフでも、2026年2Qの300mm出荷は1Qから大きく増え、2025年の同時期を上回る水準です。つまり、赤字の理由を「半導体ウェーハが売れていないから」と説明するのは不正確です。
減価償却費の急増が利益を圧迫
| 項目 | 前年上期 | 2026年上期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 494 | 644 | +150 |
| うち営業内償却費 | 487 | 603 | +116 |
| 営業利益 | +75 | ▲64 | ▲138 |
上期の減価償却費は644億円と、前年同期から150億円増加しました。営業利益に直接影響する営業内償却費だけでも116億円増えています。営業利益の前年差が約▲138億円であることを考えると、利益悪化のかなり大きな部分を償却負担の増加が占めていることが分かります。
過去の大型設備投資が今の利益を圧迫している
SUMCOは半導体需要の中長期成長を見込み、300mmを中心に大規模な設備投資を進めてきました。設備投資は支払った年に全額が費用になるわけではなく、設備が稼働した後に数年間かけて減価償却費として損益へ計上されます。
そのため、需要回復より先に新設備の減価償却が立ち上がると、売上が増えても利益が伸びにくくなります。現在のSUMCOは、増産投資の固定費が先に増え、販売数量の回復がそれを追いかけている局面と捉えると理解しやすいでしょう。
1Qから営業赤字が41億円縮小した理由
2Q単独では、営業損失が1Qの52億円から11億円へ41億円改善しました。会社の増減分析を見ると、販売・生産数量の改善が減価償却費増加を上回ったことが主因です。
| 要因 | 1Q→2Qの営業利益影響 |
|---|---|
| 販売・生産関係ほか | +60 |
| 為替影響(NT$含む) | +16 |
| コスト | ▲6 |
| 減価償却費 | ▲29 |
| 合計 | +41 |
販売・生産関係の+60億円が最大の改善要因
2QはAI向けの先端ロジック・メモリー需要を背景に300mmウェーハの販売数量が増加しました。販売数量が増えると、売上が増えるだけでなく、工場の固定費をより多くのウェーハで負担できるため、1枚当たりの固定費が低下します。
今回の+60億円は、SUMCOの利益回復が「需要回復 → 稼働率上昇 → 固定費吸収」の段階に入ってきたことを示す重要な数字です。
円安も+16億円の追い風
ドル円は1Q平均155.4円から2Q159.9円へ円安が進み、為替影響は+16億円でした。会社は米ドルに対して1円の変動で年間約12億円の営業利益影響があるとしています。
したがって2Qの改善をすべて実需回復とみるのも適切ではありません。販売・生産の改善が主役ですが、円安も一定程度利益を支えています。
減価償却費はなお▲29億円の悪化要因
一方、減価償却費は1Qからさらに増え、営業利益を29億円押し下げました。それでも営業赤字が縮小したということは、数量増・稼働率改善の効果が償却増を上回り始めたということです。
本格的な営業黒字化には、この販売・生産面の改善が今後も続き、増加する固定費を継続的に吸収する必要があります。
前年より売上が増えたのに利益が悪化した理由
前四半期比では改善した一方、上期累計を前年同期と比べると営業利益は75億円の黒字から64億円の赤字へ悪化しています。こちらは短期的な回復とは別に、SUMCOが抱えるコスト構造の変化を確認する必要があります。
| 要因 | 前年上期→2026年上期の営業利益影響 |
|---|---|
| 減価償却費 | ▲116 |
| コスト | ▲35 |
| 販売・生産関係ほか | ▲37 |
| 為替影響(NT$含む) | +51 |
| 合計 | ▲137 |
最大の悪化要因は減価償却費の▲116億円です。加えてコストで▲35億円、販売・生産関係でも▲37億円のマイナスがありました。円安による+51億円の追い風がなければ、利益はさらに悪化していた計算です。
2Q単独では販売数量が戻ってきたものの、上期全体でみれば製品ミックスや稼働率、価格などを含む収益性はまだ前年水準まで戻っていません。AI先端品の好調と、非AIを含む会社全体の収益回復には時間差がある点が重要です。
営業赤字でもEBITDAは305億円、どう評価する?
SUMCOのように設備投資額が大きい企業では、営業利益だけでなくEBITDAも見ると業績の実態を理解しやすくなります。2Q単独の営業利益は▲11億円でしたが、EBITDAは305億円、EBITDAマージンは26.9%でした。
| 項目 | 1Q | 2Q | 3Q会社予想 |
|---|---|---|---|
| 営業利益 | ▲52 | ▲11 | 0 |
| EBITDA | 234 | 305 | 337 |
| EBITDAマージン | 23.1% | 26.9% | 28.6% |
EBITDAは減価償却前の稼ぐ力を見る指標
EBITDAは、簡単にいえば営業利益に減価償却費を足し戻した指標です。減価償却費は会計上の費用ですが、その四半期に同額の現金が出ていくわけではありません。そのため、設備投資型企業の現在の事業キャッシュ創出力を見る際に使われます。
SUMCOは営業赤字であっても、事業活動そのものから何も稼げていないわけではありません。2QのEBITDAマージン26.9%は、販売数量の回復とともに1Qから3.8ポイント改善しています。
ただし減価償却費を無視してよいわけではない
一方で、減価償却費は過去に実際に投じた設備投資コストを期間配分したものです。設備が十分に稼働しなければ投資回収が進まないため、EBITDAだけを見て「実質的には好業績」と判断するのも行き過ぎです。
今後の焦点は、高いEBITDAを維持しながら販売数量を増やし、減価償却後の営業利益まで黒字へ戻せるかにあります。
300mmシリコンウェーハ需要は回復している?
需要面では、300mmウェーハの回復がかなり鮮明になってきました。会社はAI・データセンター向けの先端ロジックとメモリー需要が強く、2Qの300mm出荷数量が大きく増えたと説明しています。
3Qについても、AI向け先端ロジックとDRAM向けの強い需要が継続し、さらにサーバーSSDの拡大に伴ってNAND向け需要も伸びると予想しています。つまり、SUMCOが受けるAI恩恵はGPU周辺だけに限定されず、メモリーやCPUを含むサーバー全体へ広がりつつあります。
AI向け先端品が300mm回復の中心
300mmウェーハは、先端ロジックやDRAM、NANDなど高性能半導体の製造に幅広く使用されます。AIサーバーではGPU・AI ASICだけでなく、それを制御するCPUや大量のDRAM/HBM、データ保存用NANDが必要です。
AI投資が続けば、最先端デバイスの枚数だけでなく、サーバー1台当たりの半導体搭載量も増えるため、シリコンウェーハ需要へ波及します。
3QはNAND向けにも回復が広がる見通し
これまでAI半導体の恩恵ではHBMや先端ロジックが注目されやすかったものの、SUMCOは3QからサーバーSSD向けNAND需要の拡大も見込んでいます。NANDまで回復が広がれば、メモリー向け300mm需要の裾野がさらに広がります。
この点は、SUMCOの回復が一部の高性能GPU向けだけに依存しない可能性を示す材料です。
300mmウェーハの顧客在庫調整は終わりに近づいている?
SUMCOの業績回復を長く遅らせてきた要因が、半導体メーカー側に積み上がったウェーハ在庫です。半導体需要が回復しても、顧客が手元在庫を先に消化すれば、ウェーハメーカーへの新規発注はすぐには増えません。
決算説明資料の顧客在庫推定を見ると、2023年以降に高水準まで膨らんだ300mmウェーハ在庫は、2026年2Qで減少方向に転じています。在庫月数も最新四半期で低下しており、購入量と投入量の差が縮小しています。
在庫正常化で半導体生産とウェーハ購入が連動しやすくなる
在庫が多い局面では、半導体メーカーの生産が増えてもSUMCOからの購入量は増えにくい状態が続きます。しかし在庫が適正水準へ近づけば、最終需要の増加がウェーハ購入へ反映されやすくなります。
会社も3Qについて「顧客のウェーハ在庫適正化も進み、300mm全体で需給の改善が進む」と説明しています。需要回復と在庫正常化が同時に進んでいることは、今後の売上回復を考えるうえで重要です。
ロジック・メモリーとも在庫月数は低下方向
資料ではロジック向けとメモリー向けを分けた在庫推定も示されています。両方とも直近では在庫月数が低下しており、調整が前進しています。
ただし、過去の平常時と比べると在庫水準はまだ高めです。したがって「在庫調整が完全に終了した」とまでは言えず、次回以降も在庫月数の低下が続くかを確認する必要があります。
AI需要はGPU・HBMからCPU・DRAM・NANDへ広がる
今回の決算説明資料でSUMCOが強く訴えているのが、生成AIからエージェンティックAIへの進化です。AIが質問に答えるだけでなく、自律的に計画・実行・評価を繰り返すようになると、GPUだけでなくCPU側の処理量も増えると会社は見ています。
エージェンティックAIでCPUの役割が拡大
従来の生成AIではCPUは主にGPUへのデータ入出力を担っていました。エージェンティックAIでは、これにタスク管理、ツール連携、情報整理などが加わります。
その結果、CPU自体の処理性能とCPU周辺のメモリー容量が増え、AI需要の恩恵がCPU・DRAMへ拡大するというのがSUMCOの見方です。
サーバーSSD拡大でNAND需要も増える
エージェンティックAIでは処理するデータ量だけでなく保存するデータ量も増えます。会社資料ではサーバー用DRAM容量とNAND容量の予測が前年時点から上方修正されており、高速・大容量SSDの需要拡大を見込んでいます。
SUMCOにとっては、先端ロジック、DRAM/HBM、NANDという複数用途で300mmウェーハ需要が増えるため、AI投資の波及範囲が広がることになります。
サーバー向けシリコンウェーハ需要はどこまで増える?
SUMCOは調査会社データを基に、サーバー向けシリコンウェーハ需要の見通しを前年時点から大きく上方修正しています。資料では先端ロジック・DRAM/HBM・NANDの合計需要が2026年から2029年にかけて増加し続ける想定です。
| 年 | サーバー向けウェーハ需要(資料記載値、千枚/月) |
|---|---|
| 2026年 | 2,083 |
| 2027年 | 2,275 |
| 2028年 | 2,488 |
上記は決算説明資料に明記された数値です。2029年もグラフ上ではさらに増加する見通しですが、記事では明確に記載された数値を中心に扱います。
SUMCOは既存設備を先端品向けへ高度化
会社は需要増に対応するため、単純な能力増強だけでなく、既存製造設備を高付加価値の先端品向けへ転換・高度化する方針です。
すでに大規模設備投資で減価償却負担が重くなっているため、今後は追加投資を抑えつつ既存設備の製品ミックスを改善できるかが資本効率の面でも重要になります。
LTA価格維持とスポット価格見直しは利益回復につながる?
数量回復と並んで重要なのが販売価格です。SUMCOは2Qについて「LTA価格は守られた」と説明し、スポット価格については見直しの交渉が始まったとしています。3Qも同じ傾向を想定しています。
LTA価格が維持されている意味
LTAはLong-Term Agreement(長期契約)の略で、顧客と一定期間の数量・価格などを取り決める契約です。半導体市況が悪化してウェーハ需給が緩んでも、LTAが機能すれば価格下落を抑えられます。
過去数年のウェーハ需要低迷でも、価格が大きく崩れなかったことはSUMCOの収益を支える要因でした。需要回復局面でLTA価格を維持できれば、数量増がそのまま売上増につながりやすくなります。
スポット価格は「上昇」ではなく「見直し交渉開始」
一方、スポット価格はまだ値上げが確定したわけではありません。会社の表現はあくまで「見直しの交渉が始まった」です。
今後、在庫調整が進んで需給が引き締まり、スポット価格まで改善すれば、数量増+価格改善+稼働率上昇が同時に利益を押し上げる可能性があります。次回決算では価格交渉の進展も重要な確認点です。
200mm以下のシリコンウェーハも底打ちし始めた?
300mmだけでなく、2Qは200mm以下のウェーハ出荷も増加しました。決算説明資料の季節変動グラフでも1Qから2Qへ数量が増えています。
ただし、会社は3Qの200mm以下について「顧客や製品で強弱があるものの、緩やかな回復」と表現しており、300mmほど強い需要回復は見込んでいません。
200mmは需要回復だけでなく構造改革が必要
200mm以下は産業機器、自動車、民生など幅広い用途に使われますが、非AI市場の回復が相対的に遅く、稼働率低下が収益を圧迫してきました。
SUMCOは200mm以下の生産体制を再編し、効率化と収益改善を進めています。今後は市場回復だけに依存せず、固定費削減や生産拠点の最適化によって採算を改善できるかがポイントです。
3Qは営業損益ゼロまで改善する予想
会社は3Q単独について、売上高1,180億円、営業損益0億円、経常利益10億円を予想しています。1Q▲52億円、2Q▲11億円、3Q0億円という形で、営業損益は四半期ごとに改善する計画です。
| 項目 | 2Q実績 | 3Q会社予想 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,136 | 1,180 | +44 |
| 営業利益 | ▲11 | 0 | +11 |
| 経常利益 | ▲42 | +10 | +52 |
| 親会社株主帰属利益 | ▲44 | 0 | +44 |
| EBITDA | 305 | 337 | +32 |
| EBITDAマージン | 26.9% | 28.6% | +1.7pt |
販売・生産関係で+71億円を見込む
| 要因 | 2Q→3Q予想の営業利益影響 |
|---|---|
| 販売・生産関係ほか | +71 |
| コスト | ▲39 |
| 減価償却費 | ▲21 |
| 為替影響 | ±0 |
| 合計 | +11 |
3Qも減価償却費とコストは悪化要因ですが、販売・生産数量増による+71億円で吸収する計画です。つまり会社の黒字化シナリオは、値上げや為替ではなく、数量増と稼働率改善を中心に据えていることが分かります。
3Q会社予想は市場コンセンサスより強い?
決算発表前の8月5日時点で、IFISの3Q累計経常利益コンセンサスは▲176.07億円でした。これに対し、SUMCOが今回示した3Q累計予想は▲111億円です。
| 項目 | 3Q累計会社予想 | 決算前IFIS予想 | 差 |
|---|---|---|---|
| 経常利益 | ▲111 | ▲176.07 | +65.07 |
会社計画の赤字額は、決算前の市場予想より約65億円、約37%小さい水準です。2Q実績が市場予想を上回っただけでなく、3Qに向けた会社見通しも市場が事前に想定していた回復ペースより強いことになります。
ただし、このIFIS予想は決算発表前の数字です。決算後にはアナリスト予想が見直される可能性があります。
通期では市場はまだ赤字を予想している
SUMCOは半導体市況の変動が大きいことから、通期業績予想を開示せず、翌四半期累計までの予想のみを示しています。そのため、通期の見通しを考える際は市場コンセンサスが重要な参考になります。
| 項目 | 8月5日時点 IFIS通期予想 |
|---|---|
| 売上高 | 4,417億円 |
| 営業利益 | ▲85.6億円 |
| 経常利益 | ▲204.6億円 |
| 親会社株主帰属利益 | ▲188.6億円 |
市場はQ4で再び利益が弱くなる可能性を見ていた
3Q累計の会社予想は営業利益▲63億円、経常利益▲111億円です。一方、決算前の通期コンセンサスは営業利益▲85.6億円、経常利益▲204.6億円でした。
単純差では、市場はQ4に営業利益約▲23億円、経常利益約▲94億円を見込んでいた計算になります。ただし、これは3Q会社予想と決算前の通期市場予想を組み合わせた参考値であり、会社のQ4ガイダンスではありません。
市場がQ4まで慎重だった背景としては、減価償却費の高止まり、非AI需要の回復速度、価格、季節性などが考えられます。3Q決算で会社が初めて示すQ4見通しが、次の重要な評価材料になります。
営業赤字でもキャッシュフローはプラス
営業損益は赤字ですが、キャッシュフローを見ると財務状況の印象は異なります。2026年上期の営業キャッシュフローは465億円、フリーキャッシュフローは210億円のプラスでした。
| キャッシュフロー | 2026年上期 |
|---|---|
| 営業キャッシュフロー | +465 |
| 投資キャッシュフロー | ▲255 |
| フリーキャッシュフロー | +210 |
| 現預金増減 | +365 |
減価償却費が大きいため営業CFは黒字
税引前損失121億円に対し、減価償却費は644億円です。減価償却費は損益上の費用ですが現金支出を伴わないため、営業キャッシュフローでは足し戻されます。
このため営業利益が赤字でも営業CFは465億円のプラスとなりました。会計上の赤字と資金繰りの悪化を同じものとして扱わないことが重要です。
設備投資は前年上期519億円から194億円へ減少
検収ベースの設備投資額は前年上期の519億円から194億円へ大きく減少しました。過去の大型増産投資のピークを越え、現在は減価償却費が増える一方で新規の現金支出は抑えられています。
この構造が続けば、需要回復によるキャッシュ創出と設備投資減少が重なり、フリーキャッシュフローは改善しやすくなります。
財務体質はどうなっている?
| 項目 | 2025年12月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現預金等 | 752 | 1,117 | +365 |
| 有利子負債 | 3,537 | 3,673 | +136 |
| 純資産 | 6,477 | 6,410 | ▲67 |
| 自己資本比率 | 51.3% | 50.0% | ▲1.3pt |
| D/Eレシオ(ネット) | 0.48倍 | 0.45倍 | ▲0.03倍 |
有利子負債は136億円増えましたが、現預金等は365億円増加しました。その結果、ネットD/Eレシオは0.48倍から0.45倍へ改善しています。
純資産は赤字計上などで減少し、自己資本比率も50.0%へ低下しましたが、現時点で資金繰りが急激に悪化している状況ではありません。今後は先端品対応のための設備高度化と、フリーキャッシュフローのバランスを確認する必要があります。
配当はどうなる?
2026年12月期の中間配当は1株10円です。一方、期末配当は現時点で未定となっています。2025年12月期は中間10円・期末10円の年間20円でした。
| 年度 | 中間配当 | 期末配当 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 10円 | 10円 | 20円 |
| 2026年12月期 | 10円 | 未定 | 未定 |
会社は配当について、利益水準、次期以降の見通し、設備投資、フリーキャッシュフロー、EBITDA、配当原資などを総合的に判断するとしています。
したがって、現時点で「年間配当が10円へ減配された」と読むのは誤りです。3Q以降の利益回復とキャッシュフローを確認したうえで、期末配当を決定する方針です。
今回の決算で注意したいポイント
営業黒字化はまだ達成していない
2Qは期待以上に改善しましたが、営業利益はまだ11億円の赤字です。3Qも会社予想は0億円であり、本格的な増益局面へ入ったことを確認するには、4Q以降も営業黒字を継続できるかを見る必要があります。
減価償却費は3Qも増える
減価償却費は2Qの336億円から3Q予想354億円へさらに増加します。会社は販売・生産関係の改善で吸収する計画ですが、数量回復が想定より弱ければ再び赤字が拡大する可能性があります。
顧客在庫は改善中だがまだ高水準
300mmの在庫月数は低下方向にあるものの、過去の平常時と比べると高い水準です。在庫調整が完全に終了していない以上、最終需要の変化がウェーハ発注へ反映されるまでの時間差は残ります。
200mm以下の回復は緩やか
AI向け300mmが強い一方、200mm以下は顧客・製品によって強弱が残ります。自動車、産業機器、民生など非AI市場の回復が遅れれば、会社全体の稼働率改善を抑える可能性があります。
スポット価格改善はまだ確定していない
LTA価格は維持されていますが、スポット価格は見直し交渉が始まった段階です。価格改善を先取りして利益予想を大きく引き上げるより、次回決算で実際の価格変化を確認する方が安全です。
為替160円前提は円高時の逆風
3Qの会社為替前提は1ドル160円です。2Q実績も159.9円とほぼ同水準でした。円安は利益の追い風となるため、今後大きく円高へ動けば3Q計画に対するマイナス要因になります。
次回決算はいつ?
次回は2026年12月期第3四半期決算です。SUMCOのIRカレンダーでは3Q決算は11月に発表する年間スケジュールとなっています。現時点で正式な発表日は確認できないため、具体的な日付は会社のIR発表を優先してください。
SUMCOは翌四半期累計までしか業績予想を出さないため、3Q決算ではQ4の業績見通しが初めて示される可能性があります。通期の市場コンセンサスと比較するうえでも重要度の高い決算になります。
次回決算で確認したいポイント
次回の3Q決算では、以下の点を確認したいところです。
- 営業黒字化できるか:会社は3Q単独の営業損益を0億円と予想しています。300mmウェーハの販売数量増で、増え続ける減価償却費を吸収できるかが最大のポイントです。
- 300mm需要と顧客在庫:AI向け先端ロジック・DRAMに加え、NAND向け需要の伸びも見込まれています。顧客在庫月数がさらに低下し、需要増がウェーハ購入へつながるかを確認します。
- スポット価格の改善:LTA価格は維持されていますが、スポット価格は見直し交渉が始まった段階です。実際に価格改善へ進めば、数量増と合わせて利益回復を後押しします。
- 市場コンセンサスとの比較:次回も最新の市場予想を確認し、3Q実績が会社計画だけでなく市場期待を上回ったかを比較します。
- Q4の業績見通し:SUMCOは翌四半期累計までしか業績予想を開示しないため、次回示されるQ4の見通しが通期着地を考える重要な材料になります。

まとめ
SUMCOの2026年12月期2Qは、上期累計では営業赤字となったものの、2Q単独では1Qから赤字幅が大きく縮小し、会社予想・市場コンセンサスも上回りました。
・上期売上高は2,150億円、営業利益は▲64億円
・2Q単独の営業損失は1Qの▲52億円から▲11億円へ改善
・上期経常損失▲121.79億円は決算前IFIS予想▲141.67億円を約20億円上回った
・AI・データセンター向けの300mmウェーハ需要は強く、顧客在庫も正常化方向
・利益回復を遅らせている大きな要因は減価償却費の増加
・2Q EBITDAは305億円、EBITDAマージン26.9%
・3Qは営業損益0億円、経常利益+10億円までの改善を予想
・3Q累計会社予想は決算前コンセンサスより強い
・LTA価格は維持、スポット価格は見直し交渉が始まった段階
今回の決算は「赤字だから悪い」で終わらせるより、需要はすでに回復しており、販売数量の増加が重い減価償却費をどこまで吸収できるかを見る局面へ移ったと捉えるのが適切です。3Qで営業損益ゼロを達成し、4Q以降に本格黒字化へ移れるかが次の焦点になります。
出典
・SUMCO「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」
https://www.sumcosi.com/ir/library/
・SUMCO「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」
https://www.sumcosi.com/ir/library/
・SUMCO「IRカレンダー」
https://www.sumcosi.com/ir/event/calendar.html
・株予報Pro「SUMCO(3436)決算・業績進捗情報」
https://kabuyoho.jp/report?bcode=3436
・株予報Pro「SUMCO(3436)アナリスト予想・コンセンサス」
https://kabuyoho.jp/reportAnalyst?bcode=3436
コメント