ティアフォーの株主・出資企業は?トヨタ・SOMPO・KDDIとの関係を解説

ティアフォー(593A)を調べると、SOMPOホールディングス、ヤマハ発動機、いすゞ自動車、KDDI、トヨタ系の戦略投資会社など、名前の知られた大企業が次々と出てきます。「なぜこれほど大企業が出資しているのか」「トヨタが株主なら安心なのか」と気になった人も多いのではないでしょうか。

特徴的なのは、出資企業の多くが単なる財務投資家ではなく、自動運転の共同開発や社会実装にも関わっていることです。保険、通信、路線バス、工場内物流と、それぞれの資本関係の先に具体的なプロジェクトがあります。

一方で注意したい点もあります。2026年7月22日のIPOでは新株発行によって持株比率が薄まっているため、上場前の目論見書に載っていた「SOMPO 21.3%」「いすゞ5.7%」をそのまま現在の比率として扱うことはできません。主要株主には180日間のロックアップも設定されており、解除後の株式売却は需給面の材料になります。

主要株主と出資企業を整理したうえで、各社との具体的な関係、そしてロックアップ解除後の売り出しリスクまで順番に見ていきます。

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目次

ティアフォーの株主・出資企業一覧

ティアフォーの株主・出資企業一覧

筆頭株主はSOMPOホールディングスで、上場後の保有割合は17.49%です。上場会社では5%を超えて株式を保有する場合、原則として大量保有報告書(一定以上の株式を持つ投資家が提出する保有状況の届出書)の提出対象になります。2026年7月22日の上場を報告義務の発生日として確認できる5%超の保有者は、SOMPOホールディングス、加藤真平氏、ヤマハ発動機の3者です。

株主株券等保有割合株券等保有数保有目的・位置づけ
SOMPOホールディングス17.49%11,112,500株自動運転分野で中長期シナジー
加藤真平氏8.95%5,750,000株(普通株5,000,000株+潜在株750,000株)創業者・経営参加・安定株主
ヤマハ発動機5.45%3,459,490株自動搬送の技術確立・事業化

※加藤真平氏の5,750,000株は普通株式5,000,000株と潜在株式(新株予約権など、将来株式に変わる可能性のある権利)750,000株の合計です。保有割合8.95%も潜在株式を含む大量保有報告制度上の割合で、発行済普通株式に対する単純な保有率とは異なります。SOMPOホールディングスとヤマハ発動機の17.49%・5.45%も同制度上の「株券等保有割合」です。

5%未満の株主は大量保有報告書だけでは最新比率を同じ精度で追えません。そのため以下では、IPO前の有価証券届出書に記載された株数・比率を使って関係性を整理します。

IPO前の主な事業会社株主

2026年6月提出の有価証券届出書では、事業会社だけでも自動車、通信、保険、地図、建設、商社と幅広い企業が株主に並びます。下表の比率はIPO前のもので、上場後の現在比率ではありません。

株主・出資企業IPO前株数IPO前比率主な関係
SOMPOホールディングス11,112,500株21.3%保険・リスク評価・社会実装
ヤマハ発動機3,459,490株6.6%eve autonomy・工場内自動搬送
いすゞ自動車3,000,000株5.7%路線バス・レベル4
KDDI2,070,000株4.0%通信・遠隔監視・運行支援
アイサンテクノロジー1,575,000株3.0%高精度3D地図・社会実装
アクセル1,000,000株1.9%半導体・組み込み技術
Quanta Computer625,000株1.2%車載コンピューティング
大成建設500,000株1.0%建物・都市への自動運転実装
スズキ500,000株1.0%地域モビリティ・車両
JR東海500,000株1.0%鉄道と二次交通の連携
トヨタ・インベンション・パートナーズ500,000株1.0%トヨタ系戦略投資・e-Palette
ソニーグループ300,000株0.6%センシング等のモビリティ領域
ブリヂストン250,000株0.5%モビリティ・シリーズB出資
三菱商事250,000株0.5%地域交通DX・社会実装

IPO前の比率をそのまま使えない理由

IPOでは公募17,449,600株が新規発行され、公開日現在の発行済株式数は63,524,090株になりました。新たに発行された株式は発行済株式数の約27%にあたります。既存株主が1株も売らなくても、その分だけ持株比率は下がります。

もう一つの理由が算定の基準です。目論見書の「株主の状況」の比率は潜在株式を含む52,207,490株を基礎としており、上場後の大量保有報告書の「株券等保有割合」とは分母が完全には同じではありません。21.3%から17.49%への変化を、同一基準の比較として扱うことはできない点に注意が必要です。

なお、オーバーアロットメント(需要が多い場合に追加で売り出す仕組み)に関連して最大3,212,700株の第三者割当増資も予定されていましたが、2026年8月6日にSMBC日興証券が全株について申込みを行わないことが確定し、失権しました。この分による追加の希薄化は発生していません。

ティアフォーの筆頭株主はSOMPOホールディングス

SOMPOホールディングスは保有株数11,112,500株、保有割合17.49%の筆頭株主です。保有目的は「自動運転分野における中長期的なシナジー創出のため」とされており、短期の投資ではなく戦略保有として位置づけられています。関係は資本だけでなく、保険とリスク評価という自動運転の社会実装に欠かせない機能へ広がっています。

上場後も17.49%を保有する

SOMPOの保有株数11,112,500株は、IPO前後で変わっていません。公募増資で発行済株式数が増えたため、上場後の大量保有報告書では17.49%になりました。株を売って比率が下がったわけではない点は、需給を考えるうえで押さえておきたいところです。

出資の経緯|保険とリスク評価から関係が始まった

2019年2月、損保ジャパンはティアフォー、アイサンテクノロジーと、自動運転サービスの実証を支えるインシュアテックソリューション「Level IV Discovery」の共同開発に向けて業務提携しました。自動運転の技術だけでは解決しにくいリスク分析、遠隔監視、事故対応、保険を組み合わせ、自治体や交通事業者が安全に実証・導入できる仕組みを作る狙いです。

同じ2019年に損保ジャパンがティアフォーへ出資し、2020年8月にはSOMPOホールディングスが第三者割当増資の引受けと損保ジャパン保有株の取得により約98億円を投じて資本提携を強化しました。この出資により、当時のティアフォーはSOMPOホールディングスの関連会社となっています。

実務では損保ジャパンが前面に出る案件もある

大株主として名前が出るのはSOMPOホールディングスですが、実際の自動運転サービスや保険・リスク評価では、中核子会社の損保ジャパンが担当する案件があります。

2026年4月には、大成建設、ティアフォー、損保ジャパン、日本信号の4社が、建物内外を自動運転車両がシームレスに走行するための共同研究を開始しました。この案件で損保ジャパンは実証フィールドの提供とリスク評価を担当しています。SOMPOとの資本関係は、自動運転を社会へ広げるときに必要な安全・保険の機能と結びついています。

トヨタはティアフォーに出資している?

出資しているのはトヨタ自動車そのものではなく、100%子会社の戦略投資会社です。ただし事業面では、トヨタの次世代モビリティ「e-Palette」にティアフォーの自動運転システムが関わっており、資本より事業の接点の方が大きい関係といえます。

出資しているのはトヨタ100%子会社のTIP

有価証券届出書では、トヨタ・インベンション・パートナーズ株式会社(TIP)が500,000株、IPO前比率1.0%を保有していました。「トヨタ自動車が直接1%を持っている」と表現するより、トヨタの100%子会社である戦略投資会社が出資していると整理する方が正確です。

TIPは2025年にトヨタが設立した戦略投資子会社で、投資枠は1,000億円です。一定のファンド期限を設けず、トヨタの事業戦略とシナジーが見込まれる企業へ長期的に投資し、トヨタの人材やモノづくりの知見も活用した協業を目指しています。

トヨタとはe-Paletteの自動運転で関係がある

事業面で重要なのが、トヨタの次世代モビリティ「e-Palette」です。ティアフォーは2026年4月のイベントでトヨタ製e-Paletteを展示し、同車に搭載予定のティアフォー製自動運転システムを紹介しました。

トヨタが車両と車両制御の基盤を持ち、ティアフォーなどの自動運転システム開発企業が自動運転キット(ADK)を組み合わせる構造です。トヨタはe-Paletteについて、現在のレベル2相当から、2027年度にレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指しています。

2027年度のレベル4市場導入が量産化を見る節目

ティアフォーにとっての焦点は、トヨタが株主であること自体ではなく、資本関係が実際の量産プロジェクトへつながるかです。e-Paletteへの自動運転システム搭載が予定どおり進み、市場導入後の車両台数が増えれば、開発収入だけでなく量産・運用段階の収益につながります。トヨタとの関係では、出資比率よりもe-Paletteの量産・市場導入スケジュールを追う方が判断材料になります。

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いすゞ自動車は60億円を出資

いすゞ自動車は2024年3月にティアフォーと資本業務提携を結び、60億円を出資しました。協業の中心は路線バスで、実証から量産向け開発へ進んでいる代表例です。

IPO前は300万株・5.7%を保有

有価証券届出書では3,000,000株、IPO前比率5.7%を保有する主要な事業会社株主でした。IPO後は新株発行による希薄化だけでも5%を下回る水準になるため、SOMPOやヤマハ発動機のような上場直後の5%超の大量保有報告は確認できません。IPO前の株数・比率と、現在確認できる開示は分けて見る必要があります。

エルガ・エルガEVのレベル4自動運転で協業

ティアフォーの自動運転技術と、いすゞが持つ路線バスの車両・運行に関する知見を組み合わせ、レベル4に対応した車両と運行システムの実現を目指しています。

2025年には神奈川県平塚市で「エルガEV 自動運転バス」の実証を実施しました。2026年3月にはNVIDIAも加わり、「エルガ」「エルガEV」にNVIDIA DRIVE Hyperionを採用したレベル4バスの実装に取り組むことを発表しています。

KDDIも出資し、通信と運行面で支える

KDDIとの資本業務提携は2018年3月から続いており、ティアフォーにとって最も関係の長いパートナーの一社です。自動運転サービスは車両が自律走行するだけでは成立しないため、通信と運行管理を担うKDDIの役割は大きくなります。

IPO前は207万株・4.0%を保有

有価証券届出書では2,070,000株、IPO前比率4.0%を保有していました。IPO後は公募増資で発行済株式数が増えているため、現在の持株比率を4.0%とみなすことはできません。5%未満の保有者は大量保有報告制度の対象外となるため、上場後の最新比率を同じ精度では確認できない点にも注意が必要です。

通信・遠隔監視・運行管理で社会実装を支える

自動運転サービスには、通信ネットワーク、遠隔監視、走行計画、車両調達、自治体や交通事業者との調整といった運用側の仕組みが必要です。

2026年5月、ティアフォーとKDDIは自動運転サービスの社会実装に向けて改めて協業に合意しました。2026年7月からはKDDIスマートモビリティを加え、ティアフォーが自動運転システム、KDDIが通信基盤とインフラオペレーション、KDDIスマートモビリティが走行計画・車両調達・遠隔監視・運行管理を担う体制になっています。

2030年までに累計1,000台規模の商用導入を目指す

3社は2030年までに、自動運転サービスを累計1,000台規模で商用導入する目標を掲げています。ティアフォーは別途、2030年9月期に累計車両運用台数1,800台超を目標としているため、KDDIとのプロジェクトは台数拡大を見るうえで大きな位置を占めます。

ただし、KDDIとの1,000台がティアフォーの1,800台計画にどこまで含まれるのかは、公表資料からは分かりません。

ヤマハ発動機は上場後も5.45%を保有

ヤマハ発動機は上場後の大量保有報告書で3,459,490株、保有割合5.45%を報告しています。SOMPOに次ぐ事業会社の大株主で、合弁会社を通じてすでに商用サービスを展開している点が特徴です。

2017年から複数回にわたって出資

保有目的は、工場敷地内の自動搬送ソリューション事業をはじめとする自動運転技術の確立と事業化の推進です。2017年、2019年、2022年と複数回にわたって出資しており、長期的な関係を築いてきました。

合弁会社eve autonomyで自動搬送を商用化

ヤマハ発動機とティアフォーは2020年に合弁会社eve autonomyを設立しました。ヤマハ発動機の車体技術とティアフォーの自動運転ソフトウェアを組み合わせ、工場や物流施設向けの無人搬送サービス「eve auto」を展開しています。

有価証券届出書によると、2026年3月時点で93台が国内各地の工場で無人運行しており、ティアフォーは稼働台数に応じたライセンス料を受け取っています。出資企業との関係が、実際の車両運用台数と売上へつながっていることが分かりやすい事例です。

そのほかのティアフォー出資企業

アイサンテクノロジー|高精度地図と社会実装

IPO前に1,575,000株、3.0%を保有していました。SOMPO・ティアフォーとの「Level IV Discovery」共同開発をはじめ、高精度3次元地図や自動運転の実証で長く協業しています。自動運転にはソフトウェアだけでなく、自己位置推定や走行環境を支える地図・データが必要で、その役割を補完するパートナーです。

スズキ|地域モビリティを共同開発

IPO前に500,000株、1.0%を保有していました。2024年6月に資本業務提携を発表し、ティアフォーのソフトウェアプラットフォームとスズキの車両・製造ノウハウを組み合わせて、地域モビリティを支える自動運転の研究開発と社会実装を進めています。

JR東海|鉄道と自動運転の二次交通をつなぐ

IPO前に500,000株、1.0%を保有していました。2025年12月に資本業務提携を行い、鉄道駅へのアクセスを担う自動運転バス・シャトルなど、駅から目的地までの二次交通の整備で協力する方針です。

三菱商事|地域交通DXと自動運転の事業化

IPO前に250,000株、0.5%を保有していました。地域交通DXと自動運転の社会実装を共同で進めることを目的に、第三者割当増資を引き受けています。三菱商事はオンデマンド交通や自動運転ワンストップサービスなどの事業基盤を持ち、ティアフォーの技術を実際の地域交通へ展開する役割が期待されます。

大成建設・アクセル・ソニー・ブリヂストンなども株主

有価証券届出書には、大成建設、アクセル、ソニーグループ、ブリヂストン、台湾のQuanta Computerなども株主として記載されています。大成建設は2026年に建物内外の自動運転実装でティアフォーと共同研究を開始し、ブリヂストンは2022年のシリーズBラウンドでSOMPO、ヤマハ発動機とともに出資しました。自動車メーカーだけでなく、自動運転を構成する周辺産業まで資本関係が広がっています。

なぜティアフォーには大企業の株主が多い?

理由は事業モデルにあります。ティアフォーは自動運転を自社だけで完結させるのではなく、車両、通信、保険、地図、運行を持つ企業と組むことを前提に事業を設計しているためです。

ティアフォーは完成車メーカーを目指しているわけではない

ティアフォーの強みは、Autowareを基盤とする自動運転ソフトウェアと、自動運転システムを開発・運用するためのプラットフォームです。一方で、車両の量産、通信、保険、地図、運行、地域交通の事業運営までをすべて自社で抱えるモデルではありません。

そのため、量産車を持つOEM(自動車メーカー)、通信インフラを持つKDDI、保険とリスク管理を持つSOMPO、地図を持つアイサンテクノロジーなど、異なる機能を持つ企業との連携が事業モデルそのものに組み込まれています。

株主構成そのものが自動運転のエコシステムになっている

役割主な企業ティアフォーとの関係
車両・量産トヨタ系、いすゞ、ヤマハ発動機、スズキ車両へ自動運転システムを搭載・量産化
通信・運行KDDI通信、遠隔監視、運行管理、社会実装
保険・安全SOMPO/損保ジャパンリスク評価、事故対応、保険
地図・導入アイサンテクノロジー高精度地図、実証・社会実装
地域交通JR東海、三菱商事二次交通、地域交通DX
都市・建物大成建設建物内外の自動運転環境

役割ごとに企業が並ぶこの構成は、資金調達の結果というより、自動運転を社会へ実装するために必要な機能をそろえた結果です。

出資が開発契約・量産・運用台数へ進むかが焦点

有名企業が出資していること自体は、業績を保証しません。出資後に共同開発が始まり、その案件が量産へ移り、最終的に運用台数が増えるかどうかが問われます。

ヤマハ発動機とのeve autoはすでに商用運用とライセンス収入につながっています。いすゞは路線バスのレベル4開発、トヨタはe-Palette、KDDIは1,000台規模の商用導入構想と、資本関係の先に具体的なプロジェクトがあります。こうした案件が量産へ移るほど、株主構成の事業価値も高まります。

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大企業からの出資はティアフォーの強み?

大企業からの出資は強みではありますが、成功の保証ではありません。評価するときは、株主名ではなく各プロジェクトがどの段階にあるかを見ることになります。

資金面だけでなく社会実装のハードルを下げられる

自動運転はソフトウェアを完成させれば終わりではありません。車両、運行、通信、保険、地図、自治体との調整と、社会実装までに複数のハードルがあります。各分野の大企業が資本と事業の両面で参加することで、ティアフォー単独では持たない機能を補える点は強みです。

「大企業が株主=成功確定」ではない

出資は将来の成功を保証するものではありません。実証で止まる案件、量産時期が遅れる案件、事業環境の変化で規模が縮小する案件も出てきます。株主名だけで判断せず、各社とのプロジェクトが実証段階か、量産開発段階か、商用運用段階かを確認したいところです。

見たいのは出資額より車両運用台数

ティアフォーは現時点の事業前提として、累計車両運用台数の約800台を経常利益黒字化の目安の一つとしています。トヨタ、いすゞ、KDDI、ヤマハ発動機などとの提携を評価するときも、いくら出資したかより、何台の量産・運用につながるかを追う方が業績との関係をつかみやすくなります。

大株主による売り出し・株式売却のリスクはある?

主要株主には上場後180日のロックアップが設定されており、期限は2027年1月17日です。解除後の売却は短期的な需給の悪化要因になりますが、出資企業側から見れば投資回収の機会でもあります。売却の有無と協業の継続は、分けて確認する必要があります。

主要株主には上場後180日のロックアップ

ロックアップは、上場後の一定期間、既存株主が株式を売却しないよう定める契約です。ティアフォーのIPOでは、SOMPOホールディングス、ヤマハ発動機、いすゞ自動車、KDDI、アイサンテクノロジー、アクセル、スズキ、トヨタ・インベンション・パートナーズ、ソニーグループ、ブリヂストン、三菱商事など、多数の既存株主が対象になっています。

大量保有報告書では、2026年7月13日から、上場日を含めて180日目にあたる2027年1月17日まで、主幹事側の事前の書面同意なしに売却等を行わない契約が確認できます。ただし、期間中でも引受会社が同意すれば解除できる条項がある点は把握しておきたいところです。

ロックアップ解除後の売却は短期的な需給悪化要因

ロックアップが終われば、既存株主は契約上の制限を受けずに株式を売却しやすくなります。SOMPOは1,111万株超、ヤマハ発動機も345万株超を保有しており、まとまった株数が売り出されれば市場に供給される株式が増えます。短期的には需給の悪化や、株価の上値を抑える要因になります。

主要な戦略株主の多くはIPO時に保有を継続

ティアフォーのIPOでは、既存株主による売出し3,968,400株に加え、オーバーアロットメントによる売出し3,212,700株が設定され、売出し合計は7,181,100株でした。既存株主による3,968,400株の売出しは、IPO時点で一部の株主がすでに投資回収を行ったことを示します。

IPO時の売出人売出株数
ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合1,444,000株
UTEC 4号投資事業有限責任組合942,000株
SMBC信託銀行(特定運用口)500,000株
ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合361,000株
出川章理氏250,000株
ソニーグループ150,000株
二宮芳樹氏100,000株
河口信夫氏100,000株
武田一哉氏100,000株
佐々木栄美子氏21,400株

売出人はベンチャーキャピタルや個人が中心でした。事業会社ではソニーグループが15万株を売り出した一方、SOMPOホールディングス、ヤマハ発動機、いすゞ自動車、KDDI、トヨタ・インベンション・パートナーズは売出人に含まれていません。少なくともこれら主要な戦略株主は、IPO時点では保有を継続しています。ロックアップ解除後も同じ方針が続くとは限らないため、その後の売却の有無は改めて確認したいところです。

出資企業にとっては投資回収・売却益の機会でもある

ティアフォー株主の立場では大株主の売却は需給面のマイナス材料ですが、出資企業側から見ると意味が違います。未上場時に出資した株式を上場後に売却し、帳簿価額を上回る価格で処分できれば、投資回収や売却益につながります。

ただし会計上の売却益は各社の帳簿価額や会計処理によって決まるため、取得資金を株数で割った金額から正確な利益額を計算することはできません。戦略保有株は純投資と異なり、協業上の必要性を優先して長期保有される場合もあります。

SOMPO・ヤマハの取得単価は売却リスクを見る参考になる

大量保有報告書では、SOMPOホールディングスの取得資金は198億円、保有株数は11,112,500株と報告されています。単純に割ると1株あたり約1,782円です。ヤマハ発動機は取得資金約35億5,900万円、3,459,490株で、単純平均は約1,029円になります。

株主保有株数取得資金単純平均取得額※
SOMPOホールディングス11,112,500株198億円約1,782円/株
ヤマハ発動機3,459,490株約35億5,900万円約1,029円/株

※大量保有報告書の取得資金を保有株数で単純に割った参考値です。会計上の簿価、手数料、過去の株式分割や取得時期ごとの条件を反映した損益分岐価格ではありません。

売却で見たいのは「協業関係が変わったか」

大株主が一部を売却したからといって、提携の解消を意味するわけではありません。持分を一部現金化しても共同開発や商用導入を続けるのであれば、投資回収や持分調整の色合いが強くなります。

反対に、株式売却と同時に共同開発の中止、導入台数の縮小、資本業務提携の見直しが発表された場合は、需給だけでなく事業面にも影響が及びます。ティアフォーは出資企業が事業パートナーでもあるため、何株売ったかと協業が続いているかをセットで確認したいところです。

ティアフォーの株主構成を見るときの注意点

IPO前と上場後で持株比率が違う

有価証券届出書の持株比率は、上場時の公募増資前のものです。さらに目論見書の「株主の状況」の割合は潜在株式を含むため、上場後の大量保有報告書の株券等保有割合とは算定の基準も完全には同じではありません。「SOMPO 21.3%」「いすゞ5.7%」といったIPO前の数字を、注記なしで現在の比率として使わないことが大切です。

5%未満の株主は最新比率を同じ精度で追いにくい

大量保有報告制度は原則5%超が基準です。上場後に5%を下回るいすゞ、KDDI、TIPなどについては、SOMPOやヤマハ発動機と同じ形で最新の保有割合を確認できません。ロックアップ期間中であることは確認できますが、最新の持株比率を述べるには追加の開示が必要になります。

出資企業と協業企業は同じではない

ティアフォーはNVIDIAやルネサスなど、多数の企業と自動運転分野で協業しています。重要な協業先であることと、ティアフォー株を保有していることは別です。「株主・出資企業」と「技術・事業パートナー」を分けて整理すると、関係を正確につかめます。

株式売却と提携解消も同じではない

ロックアップ解除後に出資企業が株式を売却しても、事業提携が続くケースは十分あります。一方で、資本関係を維持すること自体が長期的な協業意思の表れになる場合もあります。売却のニュースが出たときは、売却理由、売却割合、残った持分、協業契約や量産計画の変更の有無まで確認したいところです。

まとめ|株主構成は自動運転事業そのものと結びついている

ティアフォーの株主構成で特徴的なのは、金融投資家だけでなく、自動運転を社会実装するための機能を持つ事業会社が数多く参加していることです。SOMPOは保険とリスク評価、トヨタ系はe-Palette、いすゞは路線バス、KDDIは通信と運行、ヤマハ発動機は工場内物流と、それぞれの資本関係が具体的なプロジェクトと結びついています。

そのため、有名企業が株主だから安心という評価にはなりません。出資企業との共同開発が量産へ進み、実際の車両運用台数とティアフォーの収益につながっているかが判断材料になります。

一方、主要株主には2027年1月17日までの180日ロックアップが設定されており、解除後の株式売却は短期的な需給リスクです。ただし出資企業にとっては投資回収の機会でもあるため、売却だけで提携の悪化と判断するのは早計です。株主構成を見るときは、保有比率の変化とあわせて、各社との協業が維持・拡大しているかを確認すると、ティアフォーの事業価値をつかみやすくなります。

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出典

金融庁 EDINET「株式会社ティアフォー 有価証券届出書(新規公開時)」 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y9OA.pdf

ティアフォー「東京証券取引所グロース市場への上場のお知らせ」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20260722-tokyo-stock-exchange-growth-market-listing

金融庁 EDINET「ティアフォー株式会社の株券等に関する大量保有報告書(SOMPOホールディングス・ヤマハ発動機ほか提出)」 https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/

金融庁 EDINET「株式会社ティアフォー 提出書類一覧(訂正届出書を含む)」 https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/

SOMPOホールディングス「ティアフォーと資本提携契約を締結」 https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/files/news/2020/20200828_1.pdf

SOMPOホールディングス「安心・安全なモビリティ社会に向けた商品・サービス提供」 https://www.sompo-hd.com/csr/action/customer/content1/

損保ジャパンほか「自動運転を建物・まちに実装するための技術開発を開始」 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/topics/2026/20260406_1.pdf?la=ja-JP

トヨタ「トヨタ・インベンション・パートナーズ株式会社を設立」 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/43358823.html

トヨタ「次世代モビリティ e-Paletteを発売」 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/43305367.html

ティアフォー「SusHi Tech Tokyo 2026でトヨタ製e-Paletteを展示」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20260423

ティアフォー「いすゞとティアフォーが資本業務提携」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20240306

ティアフォー「いすゞとの路線バス向け自動運転システム開発」 https://tier4.co.jp/case-studies/isuzu

ティアフォー「NVIDIA DRIVE Hyperionを搭載した自動運転レベル4バスを実装へ」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20260317

KDDI「ティアフォーと自動運転時代に向けて業務資本提携契約を締結」 https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/03/05/2984.html

KDDI「ティアフォーとKDDI、自動運転サービスの社会実装に向け協業に合意」 https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-1027_4532.html

ヤマハ発動機「ティアフォーへの追加出資について」 https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2022/0719/corporate1.html

ヤマハ発動機「eve auto 無人搬送サービス提供を開始」 https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2022/1130/corporate.html

ティアフォー「ティアフォーとスズキが資本業務提携」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20240617

ティアフォー「JR東海と資本業務提携」 https://tier4.co.jp/updates/press-release/20251226

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投資歴7年。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員資格取得。2019年に100万円から投資スタート。2022年に1000万円→2025に年5000万円突破。
YouTubeでは株式投資・企業決算を中心とした解説動画を200本以上公開(チャンネル登録者数5000人)。日本株を中心に、企業決算や業績、株価材料を分析しています。

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