大成建設の2025年3月期決算を解説!大幅な増収増益と積極的な株主還元策で株価はどうなる?

大成建設の2025年3月期決算

大成建設株式会社が2025年5月13日に発表した2025年3月期連結決算は、売上高・利益ともに前期を大幅に上回る増収増益となりました。

特に、課題であった建築事業の収益性が大きく改善し、全体の業績を牽引しました。
一方で、2026年3月期の業績については、前期の好調の反動もあり減収減益を見込んでいます。

本記事では、大成建設の2025年3月期決算の内容をセグメント別業績や財務状況、株主還元策など多角的に分析し、今後の見通しや株価に与える影響について詳しく解説します。

目次

大成建設の2025年3月期における連結決算の振り返り

2025年3月期の連結決算は、売上高が2兆1,542億円(前期比22.1%増)、営業利益が1,201億円(前期比353.8%増)となり、大幅な増収増益を達成しました。

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項目2024年3月期 実績2025年3月期 実績前期比
売上高1兆7,650億円2兆1,542億円+22.1%
営業利益264億円1,201億円+353.8%
経常利益389億円1,345億円+245.7%
親会社株主に帰属する
当期純利益
402億円1,238億円+207.5%
出典:大成建設株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

受注高は、全セグメントで増加し、前期比24.2%増の2兆4,375億円となりました。
売上高も同様に全セグメントで増加した結果、2兆円を超える規模となっています。

利益面では、増収効果に加えて、特に土木事業および建築事業における利益率の好転が大きく寄与しました。

これにより売上総利益が前期比81.4%増の2,311億円となり、営業利益の大幅な増加につながっています。

さらに、持分法による投資利益の増加や投資有価証券売却益の増加も、経常利益および最終利益を押し上げる要因となりました。

大成建設の2025年3月期セグメント別の業績

セグメント別の業績は以下の通りです。

建築事業が黒字転換し、土木事業が安定的に利益を上げたことで、全体の好業績を支えました。

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セグメント売上高セグメント利益
(営業利益)
土木事業6,639億円875億円
建築事業1兆3,999億円113億円
開発事業1,467億円234億円
その他175億円23億円
出典:大成建設株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

土木事業

土木事業の売上高は前期比22.9%増の6,639億円、営業利益は同42.5%増の875億円と、増収増益を達成しました。

この好調な結果は、増収に加えて、同社および連結子会社の利益率が改善し、完成工事総利益が増加したことによるものです。

建築事業

建築事業の売上高は前期比22.7%増の1兆3,999億円となり、営業利益は113億円を確保しました。

前期は561億円の営業損失を計上していましたが、増収効果と利益率の著しい改善により、黒字転換を果たしています。

これが今期の全社的な業績回復における最大の要因と言えます。

開発事業

開発事業の売上高は、連結子会社の増加により前期比6.2%増の1,467億円となりました。

一方で、営業利益は増収により開発事業総利益が増加したものの、販売費及び一般管理費が増加したため、ほぼ前期並みの234億円で着地しました。

大成建設の2025年3月期末財務状況について

2025年3月期末の財務状況は以下の通りです。総資産は減少しましたが、有利子負債も削減され、財務の健全性は維持されています。

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項目2024年3月期末2025年3月期末
総資産2兆5,836億円2兆4,288億円
負債合計1兆6,226億円1兆5,281億円
純資産9,610億円9,006億円
自己資本比率36.0%35.7%
有利子負債3,763億円3,155億円
出典:大成建設株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

資産合計は、現金預金の減少などにより前期末比で1,548億円減少しました。

負債合計も、資金調達に係る有利子負債の減少などにより945億円減少しています。

純資産は、自己株式の取得や株価相場の下落に伴うその他有価証券評価差額金の減少などが影響し、603億円の減少となりました。

キャッシュフローの状況

当期のキャッシュ・フローの状況は以下の通りです。

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項目金額
営業活動による
キャッシュ・フロー
▲138億円
投資活動による
キャッシュ・フロー
105億円
財務活動による
キャッシュ・フロー
▲1,337億円
現金及び現金同等物
期末残高
2,959億円
出典:大成建設株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益として1,782億円を計上したものの、売上債権の増加などが影響し、138億円の支出超となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却などにより105億円の収入超となっています。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得などを実施したため、1,337億円の支出超となりました。

収益性に関する指標(ROEなど)

当期の主な収益性指標は以下の通りです。

  • ROE(自己資本当期純利益率): 13.8%
  • ROA(総資産経常利益率): 5.4%
  • 売上高営業利益率: 5.6%

ROE(自己資本当期純利益率)は、純利益の大幅な増加を背景に前期から9.2ポイント改善し、13.8%と高い水準を達成しました。

大成建設の株主還元について

大成建設は、長期的な安定配当を前提とした配当性向30%程度を基本方針としつつ、機動的な自己株式取得を行うことで株主還元を強化しています。

配当金の状況

当期の配当金は、好調な業績を反映し、1株当たり145円の期末配当を実施しました。

これにより、中間配当65円と合わせた年間配当金は210円となり、前期の130円から大幅な増配となりました。
配当性向は30.8%です。

次期(2026年3月期)の配当予想は、年間150円(中間75円、期末75円)です。

また、次期より新たに「下限付き配当性向30%」を導入し、1株当たり年間配当金150円を下限として設定することを発表しました。
これにより、業績が変動した場合でも安定した配当が期待されます。

自社株買いの発表はあった?

2024年11月7日開催の取締役会において、大規模な自己株式の取得を決議し、現在実施中です。

  • 取得する株式の種類: 普通株式
  • 取得しうる株式の総数: 30,000,000株(上限)
    • これは2025年3月31日時点の発行済株式総数(自己株式を含む)183,166,472株に対し、約16.4%に相当します。
  • 株式の取得価額の総額: 1,500億円(上限)
  • 取得期間: 2024年11月8日から2025年11月6日まで(※決算短信の注記に基づく期間ですが、資料によっては期間が明記されていない部分もあります)

2025年3月31日までに、10,917,700株(進捗率36.4%)、約720億円(進捗率48.0%)の取得を完了しています。

大成建設の今期見通しと戦略について

2026年3月期の連結業績予想は、売上高1兆9,600億円(前期比9.0%減)、営業利益1,010億円(同15.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益800億円(同35.4%減)と、減収減益を見込んでいます。
これは主に、好調であった2025年3月期からの反動減によるものです。

このような状況下で、同社は中期経営計画(2024-2026)に基づき、引き続き利益成長を重視した事業展開を進める方針です。

  • 国内建築事業
    建設物価の工事価格への適切な転嫁などを通じて、収益体制の立て直しを図ります。
    また、データセンターや市街地再開発といった優位性のある分野へ経営資源を投入し、受注を強化しています。
  • 海外事業
    2024年4月に国際事業本部を設立し、建設と開発を一体化した事業体制を確立しました。
    ベトナムで大型オフィスビル「TAISEI SQUARE HANOI」を完成させるなど、現地主体の事業展開を加速させています。
  • 成長投資
    将来の収益機会獲得のため、技術開発やDX、再生可能エネルギーへの投資を積極的に進めています。
    具体的には、次世代技術研究所の建設や、浮体式洋上風力発電に関する技術開発などが進行中です。

決算内容や今期の見通しで、株価はどうなる?

今回の決算内容と今期の見通しが株価に与える影響について、ポジティブな要因とネガティブな要因に分けて分析します。

株価にポジティブな影響を与える要因

  • 好調な当期実績
    2025年3月期の大幅な増収増益、特に懸案だった建築事業の黒字化は、企業の収益力回復を強く印象付けるものです。
    13.8%という高いROEも評価されるでしょう。
  • 積極的な株主還元
    前期から大幅な増配となる年間210円の配当実績に加え、次期から導入される「150円下限」の配当方針は、株主にとって大きな安心材料です。
    上限1,500億円という大規模な自社株買いの継続も、1株当たりの価値向上につながり、株価を支える要因となります。
  • 中期経営計画の進捗
    利益重視の方針や、国内建築の利益率改善、海外事業の拡大、再エネ投資といった具体的な成長戦略が示されており、将来への期待感を醸成します。

株価にネガティブな影響を与える要因

  • 次期の減収減益予想
    2026年3月期は大幅な減収減益を見込んでおり、これが市場の期待を下回る場合、株価の重しとなる可能性があります。
    前期の好業績が一時的なものと捉えられるリスクがあります。
  • 外部環境の不確実性
    建設業界では労務需給の逼迫といった課題が継続しています。
    また、米国の政策動向や中東情勢といった海外経済の不透明感も、企業の設備投資意欲に影響を与えるリスクとして認識されています。

決算から分かる大成建設の強みは?

今回の決算からは、大成建設の以下のような強みが読み取れます。

  • 豊富な受注残高
    2025年3月期の受注高は前期比24.2%増と非常に好調で、次期への繰越高も3兆4,439億円(前期比9.0%増)と潤沢です。
    これは将来の売上と収益の安定性を担保する大きな強みです。
  • 事業ポートフォリオの安定性
    土木、建築、開発というバランスの取れた事業ポートフォリオを持っています。
    当期は不振だった建築事業が大きく回復する一方で、土木事業が安定的に高い収益性を維持したことで、全社的な業績向上を実現しました。
  • 先行投資による将来性
    低炭素技術や洋上風力発電といった次世代分野への研究開発投資を積極的に行っています。
    また、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが評価され、「DX銘柄2025」に選定されるなど、将来の成長に向けた布石を着実に打っている点も強みです。
  • 健全な財務基盤
    当期は自己株式取得などで純資産が減少したものの、自己資本比率は35.7%を維持し、有利子負債も削減するなど、健全な財務基盤を保っています。

まとめ

大成建設の2025年3月期決算は、建築事業の劇的な回復に支えられ、大幅な増収増益という力強い結果となりました。

増配や大規模な自社株買いといった積極的な株主還元策も打ち出しており、市場からの評価も高まると考えられます。

一方で、2026年3月期は減収減益を見込んでおり、建設業界を取り巻く外部環境の不透明さも残ります。

今後は、中期経営計画に掲げる利益重視の戦略をどこまで着実に実行し、建築事業の収益性を安定させ、海外事業や再生可能エネルギーなどの成長分野を軌道に乗せられるかが、持続的な企業価値向上への鍵となるでしょう。

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