キオクシアは株価上昇によって、時価総額が約40兆円まで拡大しました。
2026年3月期の利益を使った実績PERは約71倍、PBRは約28倍と高い一方、アナリスト予想を使うと予想PERは約7倍です。
この記事では、時価総額、PER、PBR、今後必要となる利益水準から、現在の株価が割高なのかを検証します。

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キオクシアのPERは高い?現在の指標を確認

2026年7月15日の終値73,100円を基準にすると、キオクシアの主な株価指標は次のとおりです。
| 指標 | 数値 | 基準 |
|---|---|---|
| 株価 | 73,100円 | 2026年7月15日終値 |
| 時価総額 | 約40兆円 | 株価×発行済株式数 |
| 2026年3月期EPS | 1,024.07円 | 実績 |
| 実績PER | 約71.4倍 | 株価÷実績EPS |
| 2026年3月期BPS | 2,561.74円 | 実績 |
| PBR | 約28.5倍 | 株価÷BPS |
| 2027年3月期予想EPS | 9,869.7円 | アナリスト予想平均 |
| 予想PER | 約7.4倍 | 株価÷予想EPS |
※株価は2026年7月15日終値、予想EPSは同日時点のコンセンサスを使用しています。株価やアナリスト予想は随時変動するため、公開・更新時には最新値を確認してください。
キオクシアの2026年3月期は、売上収益2兆3,376億円、営業利益8,704億円、親会社の所有者に帰属する当期利益5,545億円でした。基本的1株当たり利益は1,024.07円、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,561.74円です。
一方、2026年7月15日時点のアナリスト予想では、2027年3月期の予想EPSが9,869.7円となっています。実績EPSの約9.6倍に当たる大幅な利益成長が見込まれているため、予想PERは約7.4倍まで低下します。
キオクシアの実績PERとPBRは高い一方、今期の大幅増益予想を使った予想PERは低くなります。
割高かどうかは、年間数兆円規模の利益を実際に達成し、その利益水準を維持できるかで決まります。
実績PERは約71倍で高い
PERは、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを表す指標です。
計算式は次のとおりです。
株価÷EPS=PER
キオクシアの2026年3月期実績EPSは1,024.07円です。
2026年7月15日の終値73,100円を使うと、実績PERは次のように計算できます。
73,100円÷1,024.07円=約71.4倍
実績利益の水準が今後も変わらないと仮定した場合、現在の時価総額は約71年分の純利益に相当します。
一般的な日本株と比べても高い水準であり、2026年3月期の利益だけを基準にすれば、割安とは判断しにくいでしょう。
ただし、PERは将来の増益期待が強い企業ほど高くなる傾向があります。
現在の株価は2026年3月期の実績だけでなく、AIデータセンター需要やNAND販売価格の上昇による、2027年3月期以降の大幅増益を織り込んでいると考えられます。
予想PERは約7倍まで低下する
アナリスト予想のEPS9,869.7円を使用すると、予想PERは次のとおりです。
73,100円÷9,869.7円=約7.4倍
予想EPSは、2026年3月期の実績EPS1,024.07円の約9.6倍です。
つまり、予想PERが約7倍まで低下するのは、株価が安いからだけではなく、今期の利益が前年から約10倍へ増えるという強い業績予想が前提になっています。
アナリスト予想どおりの利益を達成できれば、時価総額約40兆円でもPERは1桁となり、利益に対して株価が低く評価されているように見えます。
一方、予想利益が下方修正されれば、株価が変わらなくても予想PERは上昇します。
例えば、実際のEPSが予想の半分程度にとどまれば、予想PERも約15倍まで上昇します。
予想PER約7倍という数字だけを見て割安と判断せず、予想EPSの実現可能性を確認する必要があります。
「PERが高い」と「PERが低い」の両方が正しい
キオクシアについては、「PERが70倍を超えていて割高」という見方と、「予想PERが7倍程度で割安」という見方が混在しています。
これは、計算に使用しているEPSが異なるためです。
| 指標 | 使用するEPS | PERの目安 |
|---|---|---|
| 実績PER | 2026年3月期実績EPS1,024.07円 | 約71.4倍 |
| 予想PER | 2027年3月期予想EPS9,869.7円 | 約7.4倍 |
実績PERは、すでに確定した利益を使うため信頼性がありますが、今後の大幅な業績変化を反映できません。
予想PERは将来の利益を反映できますが、NAND市況やアナリスト予想の変更によって大きく変動します。
そのため、「PERが高い」「PERが低い」のどちらか一方が間違いというわけではありません。
重要なのは、表示されているPERが、どの時点の株価とどのEPSを使って計算されているかを確認することです。
キオクシアのPERがサイトによって違う理由
株価情報サイトによってキオクシアのPERが異なるのは、使用する利益や計算方法が統一されていないためです。
| PERの種類 | 使用する利益 | 特徴 |
|---|---|---|
| 実績PER | 前期の実績利益 | 確定値だが将来を反映しにくい |
| 会社予想PER | 会社の通期予想 | キオクシアは通期予想を未開示 |
| コンセンサスPER | アナリスト予想平均 | 将来を反映するが変動しやすい |
| 調整後PER | 一時的な損益を調整 | データ提供会社で計算が異なる |
同じ日の株価を使用しても、実績EPS、会社予想EPS、アナリスト予想EPSのどれを使うかによってPERは大きく変わります。
さらに、株価の基準日や発行済株式数、希薄化後株式数の扱いによっても、表示される数値に差が生じます。
キオクシアは通期業績予想を開示していない
キオクシアは、2027年3月期について第1四半期の業績予想を開示していますが、通期の売上収益、営業利益、純利益は公表していません。
第1四半期については、売上収益1兆7,500億円、営業利益1兆2,980億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益8,690億円を予想しています。
半導体メモリ業界は、需要や販売価格などの事業環境が短期間で大きく変化します。キオクシアも決算資料で、この特性を理由に年度計画値と達成状況の記載を省略しています。
会社が通期EPSを公表していないため、会社予想PERを表示できない株価サイトもあります。
その場合、PER欄が「―」と表示されたり、実績PERやアナリスト予想を使ったPERが掲載されたりします。
キオクシアの将来PERを確認する場合は、会社予想ではなく、証券会社や調査機関が集計したアナリスト予想への依存度が高くなります。
アナリスト予想が変わるとPERも大きく変わる
予想PERは、株価だけでなくアナリストの予想EPSによっても変化します。
株価が73,100円のままでも、予想EPSが変わればPERは次のように動きます。
| 予想EPS | 予想PER |
|---|---|
| 1万円 | 約7.3倍 |
| 8,000円 | 約9.1倍 |
| 5,000円 | 約14.6倍 |
| 3,000円 | 約24.4倍 |
| 1,000円 | 約73.1倍 |
EPS予想が上方修正されると予想PERは低下し、下方修正されると予想PERは上昇します。
特にキオクシアは、実績EPSと予想EPSの差が大きいため、アナリスト予想の変更によるPERの変化も大きくなりやすい銘柄です。
決算発表後には、NAND価格や出荷量、会社の見通しを受けて各証券会社が業績予想を更新します。
予想PERを固定された数字として見るのではなく、予想EPSが上方修正されているのか、下方修正されているのかも確認する必要があります。
Non-GAAP利益とIFRS利益の違いにも注意
キオクシアは、IFRSに基づく利益とNon-GAAP利益の両方を開示しています。
Non-GAAP利益は、キオクシアの本来の収益力を評価しやすくするため、IFRS利益から一時的な損益や特定の調整項目を除いた指標です。
主な調整項目には、次のようなものがあります。
・買収などに伴って発生するPPAの影響
・重要な税制変更による一時的な影響
・勤務継続型・業績連動型株式報酬制度の費用
・企業間比較が難しいと判断された特定の損益
キオクシアは、Non-GAAP指標について、IFRSに基づく会計項目ではなく、監査法人の監査や期中レビューを受けた数値ではないと説明しています。
2026年3月期の親会社の所有者に帰属する当期利益は、IFRSでは5,545億円、Non-GAAPでは5,596億円でした。基本的1株当たり利益も、IFRSでは1,024.07円、Non-GAAPでは1,033.58円です。
株価サイトや証券会社によって採用する利益が異なると、EPSやPERにも小さな差が生じます。
通常の実績PERを確認する場合は、親会社の所有者に帰属するIFRS利益を基準にしたEPSを見るのが基本です。
キオクシアの時価総額は高すぎる?
2026年7月15日終値73,100円と発行済株式数約5億4,700万株を基準にすると、キオクシアの時価総額は約40兆円です。
| 項目 | 数値の目安 |
|---|---|
| 株価 | 73,100円 |
| 発行済株式数 | 約5億4,700万株 |
| 時価総額 | 約40兆円 |
| 2026年3月期売上収益 | 2兆3,376億円 |
| 2026年3月期営業利益 | 8,704億円 |
| 2026年3月期純利益 | 5,545億円 |
キオクシアの発行済株式数は、2026年7月中旬時点で約5億4,700万株です。株価73,100円を掛けると、時価総額は約40兆円になります。
時価総額は「株価×発行済株式数」
時価総額は、会社全体が株式市場でいくらと評価されているかを表す指標です。
計算式は次のとおりです。
株価×発行済株式数=時価総額
キオクシアの場合は、次の計算になります。
73,100円×約5億4,700万株=約40兆円
1株当たりの株価だけでは、会社全体の評価額は分かりません。
株価が高くても発行済株式数が少なければ、時価総額は小さい場合があります。反対に、株価が低くても発行済株式数が多ければ、時価総額は大きくなります。
キオクシアは1株あたりの株価が高いだけでなく、発行済株式数も約5億4,700万株あるため、時価総額が約40兆円まで拡大しています。
時価総額と売上だけでは割高と判断できない
キオクシアの時価総額約40兆円に対し、2026年3月期の売上収益は2兆3,376億円です。
時価総額が売上の約17倍となるため、一見すると高すぎるように見えるかもしれません。
ただし、時価総額と売上高だけで割高かを判断することはできません。
株式市場では、現在の売上規模よりも、将来どれだけ利益を生み出せるかが重視されます。
同じ売上高でも、利益率が高い企業や今後の成長率が高い企業は、より高い時価総額で評価される可能性があります。
キオクシアの2026年3月期営業利益率は約37%でした。さらに、第4四半期にはNAND平均販売単価の大幅上昇によって、営業利益5,968億円を計上しています。
一方、NANDは需給によって販売価格が大きく変動する製品です。
現在の高い利益率が長期間続くとは限らないため、1年間や1四半期の高利益だけを使って時価総額を評価するのも注意が必要です。
2026年3月期利益では時価総額を説明しにくい
キオクシアの2026年3月期純利益は5,545億円でした。
時価総額約40兆円を純利益5,545億円で割ると、実績PERは約72倍です。
この利益水準が今後も変わらないと仮定した場合、現在の時価総額はかなり高い評価となります。
市場は2026年3月期の利益だけでなく、2027年3月期以降の大幅な増益を先に織り込んでいると考えられます。
実際、2027年3月期第1四半期だけで、親会社の所有者に帰属する四半期利益8,690億円が予想されています。これは2026年3月期通期の純利益5,545億円を上回る水準です。
今後の利益が年間数兆円まで増加すれば、現在の時価総額にも利益面の裏付けが生まれます。
反対に、NAND価格の下落などによって利益が2026年3月期並みに戻れば、現在の株価には強い割高感が残ります。
時価総額40兆円にはいくらの利益が必要?
キオクシアの時価総額約40兆円を正当化するために必要な純利益は、市場が何倍のPERを認めるかによって変わります。
| 評価されるPER | 必要な年間純利益 |
|---|---|
| 10倍 | 4兆円 |
| 15倍 | 約2兆6,700億円 |
| 20倍 | 2兆円 |
| 30倍 | 約1兆3,300億円 |
| 約72倍 | 約5,545億円 |
時価総額40兆円をPER10倍で評価するには、年間4兆円の純利益が必要です。
PER20倍なら年間2兆円、PER30倍なら年間約1兆3,300億円の純利益が必要になります。
つまり、現在の株価が割安か割高かを判断するうえでは、キオクシアが今後どれほどの年間利益を継続できるかが中心になります。
予想利益が実現すればPERは低くなる
2026年7月15日時点のアナリスト予想EPSは9,869.7円です。
これを発行済株式数約5億4,700万株へ単純に掛けると、年間純利益は約5兆4,000億円に相当します。
9,869.7円×約5億4,700万株=約5兆4,000億円
時価総額約40兆円に対して純利益約5兆4,000億円を達成すれば、PERは約7.4倍です。
この予想が実現すれば、株価73,100円にも十分な利益面の裏付けがあると考えられます。
ただし、約5兆4,000億円は2026年3月期純利益5,545億円の約10倍に当たります。
また、アナリスト予想EPSは12カ月換算や各社の株式数前提をもとに集計されるため、純利益への換算額はあくまで概算です。
現在の低い予想PERは、過去最高を大幅に更新する利益が前提です。
実際の利益が予想を下回った場合は、現在考えられているほど割安ではなくなる可能性があります。
利益が2兆円ならPERは約20倍
AIデータセンター向け需要は継続する一方、NAND販売価格や利益率が現在の高水準から正常化し、年間純利益が2兆円になるケースを考えます。
時価総額40兆円÷純利益2兆円=PER約20倍
PER20倍は、成長期待のある半導体企業として説明できる範囲です。
2026年3月期の実績PER約72倍と比べれば割高感は大幅に低下しますが、予想PER約7倍ほどの割安感はありません。
また、株価73,100円と実績BPS2,561.74円から計算したPBRは約28.5倍です。
純利益が2兆円まで増えても、純資産がすぐに株価へ追いつくわけではないため、PBRの高さは残ります。
年間2兆円の利益を複数年続け、利益を純資産として積み上げられるかも重要です。
利益が1兆円へ低下すればPERは約40倍
NANDメーカーの増産によって供給が増えたり、データセンター事業者の在庫調整が発生したりすると、NAND販売価格が下落する可能性があります。
その結果、年間純利益が1兆円まで低下した場合のPERは次のとおりです。
時価総額40兆円÷純利益1兆円=PER約40倍
純利益1兆円は2026年3月期実績の約1.8倍ですが、時価総額40兆円に対してはPER40倍です。
利益成長が続く企業であれば許容される可能性はありますが、NAND市況の影響を受ける景気循環株としては高い評価となります。
特に、アナリストが予想EPSを9,869.7円から大幅に引き下げた場合は、予想PERが上昇し、株価の割高感が急速に強まります。
キオクシアの株価を見るうえでは、予想PERの低さよりも、その前提となっている年間数兆円規模の利益をどこまで維持できるかが重要です。
キオクシアのPBRは高い?
キオクシアのPBRは、2026年7月15日の終値73,100円を基準にすると約28.5倍です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 株価 | 73,100円 |
| BPS | 2,561.74円 |
| PBR | 約28.5倍 |
| 2026年3月期ROE | 51.9% |
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍まで評価されているかを示します。
キオクシアは純資産に対して株価が高く評価されていますが、2026年3月期のROEも51.9%と高い水準です。
そのため、PBRだけを見ると割高感が強い一方、高い利益成長と収益性が続けば、将来的にBPSが増加し、PBRが低下する可能性もあります。
PBR約28倍は純資産基準では高い
PBRは、次の計算式で求められます。
株価÷BPS=PBR
キオクシアの場合は、次のとおりです。
73,100円÷2,561.74円=約28.5倍
これは、キオクシアの1株当たり純資産1円に対して、株式市場が約28.5円の価値を付けていることを意味します。
一般的な日本株では、PBR1倍前後が純資産と株価が同程度となる目安です。キオクシアの約28.5倍は、純資産基準ではかなり高い水準といえます。
ただし、PBRが高いから直ちに株価が下落するとは限りません。
今後の大幅な利益成長や高いROE、AIデータセンター向けSSDの拡大などが期待される企業では、現在の純資産を大きく上回る株価が付く場合があります。
キオクシアの高PBRには、現在の資産価値だけでなく、将来生み出すと予想されている利益も反映されています。
高ROEがPBRを押し上げている
ROEは、株主が出資した自己資本を使って、どれだけ効率よく利益を生み出したかを示す指標です。
キオクシアの2026年3月期ROEは51.9%でした。
これは、期中平均の親会社所有者帰属持分に対して、非常に大きな利益を計上したことを示しています。
一般にROEが高い企業は、純資産を効率よく利益へ変えていると評価されやすく、高いPBRが認められる場合があります。
キオクシアの場合、NANDの販売価格上昇や高付加価値製品の拡大によって、収益性が大きく改善しました。
今後も高い利益を維持できれば、PBRが高くても将来の純資産増加によって説明しやすくなります。
一方、キオクシアの利益はNAND市況の影響を受けます。
販売価格の下落や供給過剰によって利益が減少すれば、ROEも低下する可能性があります。高いROEを前提に評価されていた株価は、収益性の低下によって調整するリスクがあります。
現在のPBR約28.5倍を見る際は、2026年3月期の高ROEが一時的なものか、今後も維持できるのかを確認する必要があります。
利益の蓄積でBPSが増えればPBRは下がる
企業が稼いだ純利益を配当などで全額社外へ支払わず、内部留保として残すと、基本的には純資産が増加します。
純資産が増えると、1株当たり純資産であるBPSも上昇します。
株価が73,100円のままでも、BPSが増えればPBRは次のように低下します。
| BPS | 株価73,100円の場合のPBR |
|---|---|
| 2,561.74円 | 約28.5倍 |
| 5,000円 | 約14.6倍 |
| 10,000円 | 約7.3倍 |
| 20,000円 | 約3.7倍 |
キオクシアが年間数兆円規模の利益を複数年にわたって積み上げれば、BPSが増加し、現在の高いPBRは徐々に低下する可能性があります。
ただし、純利益の全額がそのまま純資産へ加算されるわけではありません。
配当、自己株式の取得、為替換算差額、その他の包括利益、株式数の変化などによってもBPSは変動します。
また、現在予想されている高利益が一時的であれば、純資産の増加も限定的です。
PBR約28.5倍が正当化されるかは、単年度の利益だけでなく、高い利益を何年間継続できるかが重要になります。
キオクシアの予想利益は実現できる?
キオクシアの予想PERが約7倍まで低下するのは、2027年3月期に大幅な利益成長が見込まれているためです。
しかし、現在の利益予想には、AIデータセンター向け需要の拡大だけでなく、NANDの販売価格が高水準で推移することも織り込まれています。
AI需要が伸びても、競合メーカーの増産によってNAND価格が下落すれば、予想利益を下回る可能性があります。
2027年3月期第1四半期は大幅増益予想
キオクシアが公表した2027年3月期第1四半期の業績予想は、次のとおりです。
| 項目 | 2027年3月期第1四半期予想 |
|---|---|
| 売上収益 | 1兆7,500億円 |
| 営業利益 | 1兆2,980億円 |
| 純利益 | 8,690億円 |
| 営業利益率 | 約74% |
営業利益率約74%は、通常の製造業と比べても非常に高い水準です。
キオクシアはInvestor Dayで、2026年度も高い利益水準を維持し、第1四半期の売上高営業利益率は74%になるとの見通しを示しました。
利益成長を支える材料としては、AIデータセンター向けの旺盛な需要、NANDの需給逼迫、販売価格の上昇が挙げられます。
一方、四半期純利益8,690億円は、2026年3月期通期の純利益5,545億円を上回る水準です。
非常に強い予想であるため、実績が予想を下回っただけでも、アナリストの通期利益予想や予想PERが見直される可能性があります。
AI・データセンター向けSSDが利益成長を支える
キオクシアは、PCやスマートフォン向けだけでなく、データセンターや企業サーバー向けのSSDを展開しています。
AIシステムでは、AIモデル、企業データ、RAGで参照する情報、生成された画像や動画など、大量のデータを保存する必要があります。
特にAIの利用が学習から推論へ広がると、多数の利用者が保存データへ繰り返しアクセスするため、容量だけでなく高速性や低遅延も重要になります。
キオクシアはAI推論向けとして、次のようなSSDを展開する方針です。
| 製品 | 主な特徴 |
|---|---|
| CMシリーズ | 高帯域・高信頼性 |
| GPシリーズ | XL-FLASH™を使った低遅延・高IOPS |
| LCシリーズ | 最大245TBの大容量 |
Investor Dayでは、AI推論システムの拡大によって、用途ごとに高帯域、低遅延、大容量のSSD需要が生まれるとの戦略が示されました。
データセンター向けの高付加価値SSDが増えれば、出荷量の増加だけでなく、製品構成の改善によって収益性が高まる可能性があります。
ただし、AI関連製品の需要が増えても、キオクシアの利益は販売するNAND全体の価格にも左右されます。
高性能SSDの成長だけで、現在の非常に高い利益率を維持できるとは限りません。
NAND価格上昇の影響が大きい
キオクシアの利益成長には、NANDの出荷量だけでなく、平均販売単価の上昇が大きく影響しています。
NANDは需給によって価格が大きく変動するため、販売数量が同じでも、価格が上昇すれば売上と利益率が改善します。
キオクシアはInvestor Dayで、AIデータセンター向け需要の拡大と供給制約によって需給の引き締まりが続き、NAND価格も上昇傾向にあるとの市場見通しを示しました。
この環境が続けば、2027年3月期の高い利益予想を達成しやすくなります。
一方、次のような変化が起きると、NAND価格が下落する可能性があります。
・競合メーカーの増産
・新工場や新世代製品の量産拡大
・顧客の在庫積み増し終了
・スマートフォンやPC需要の減速
・データセンター事業者の設備投資抑制
NAND価格が下落すると、売上収益だけでなく工場の稼働率や利益率も悪化しやすくなります。
キオクシアの予想利益を判断する際は、AI需要の拡大だけでなく、NANDの販売価格が高水準を維持できるかを見る必要があります。
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キオクシアは割高?3つのシナリオで検証
キオクシアが割高か割安かは、どの程度の利益を継続できるかによって評価が大きく変わります。
時価総額を約40兆円として、利益水準ごとのPERを比較すると次のとおりです。
| シナリオ | 年間純利益のイメージ | PERの目安 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 強気 | 約5兆4,000億円 | 約7倍 | 利益実現なら割安感 |
| 中立 | 2兆円 | 約20倍 | 成長を織り込んだ水準 |
| 弱気 | 1兆円 | 約40倍 | 割高感が強い |
| 実績利益並み | 約5,500億円 | 約72倍 | かなり割高 |
この表からも、現在の株価は過去の利益ではなく、今後の大幅な利益成長を前提に評価されていることが分かります。
強気シナリオ|アナリスト予想どおりの利益が続く
強気シナリオでは、年間純利益が約5兆4,000億円まで増加すると想定します。
この場合、時価総額約40兆円に対するPERは約7倍です。
強気シナリオが実現するためには、次のような条件が必要になります。
・AI推論向けSSD需要が大幅に拡大する
・NANDの需給逼迫が続く
・平均販売単価が高水準を維持する
・データセンター向け製品の比率が上昇する
・競合メーカーの供給増加が限定的となる
アナリスト予想どおりの利益を達成し、その水準を維持できれば、現在の株価には割安感が出ます。
ただし、年間5兆円を超える純利益は、2026年3月期実績を大幅に上回ります。
一度達成するだけでなく、NAND価格が正常化した後も高い利益を維持できるかが重要です。
中立シナリオ|利益率が正常化する
中立シナリオでは、AI需要は続くものの、NAND価格の上昇が一服し、年間純利益が2兆円前後へ正常化すると想定します。
時価総額約40兆円に対するPERは、約20倍です。
このケースでは、次のような市場環境が考えられます。
・AIデータセンター向け需要は拡大する
・高付加価値SSDの販売も増える
・競合メーカーの供給量が徐々に増える
・NAND価格の急上昇は落ち着く
・営業利益率が現在の極端に高い水準から低下する
PER約20倍であれば、AIやデータセンター需要の成長を織り込んだ半導体株として説明できる範囲です。
ただし、一般的な景気循環株として見れば安いとは限りません。
また、PBRの高さはすぐには解消されないため、年間2兆円規模の利益を継続して純資産を積み上げる必要があります。
弱気シナリオ|NAND市況が悪化する
弱気シナリオでは、NAND市場が供給過剰となり、年間純利益が1兆円以下へ減少すると想定します。
純利益1兆円の場合、時価総額約40兆円に対するPERは約40倍です。
弱気シナリオにつながる主な要因は次のとおりです。
・競合メーカーの増産
・NAND販売価格の下落
・顧客の在庫調整
・スマートフォンやPC需要の減速
・データセンター投資の鈍化
・工場稼働率の低下
利益が1兆円を下回る場合は、予想PER約7倍という割安感が失われます。
高いPBRを支えていたROEも低下し、利益と純資産の両面から現在の株価を説明しにくくなります。
その場合は、PERやPBRが低下するまで株価が調整する可能性があります。
キオクシアと同業他社のPERを比較
キオクシアの予想PERが高いか判断するため、主要なメモリメーカーと比較します。
| 企業 | 予想PERの目安 | 主な事業 | 数値の基準時点 |
|---|---|---|---|
| キオクシア | 約7.4倍 | NAND・SSD | 2026年7月15日 |
| SKハイニックス | 約5.7~6.2倍 | DRAM・HBM・NAND | 2026年7月15~16日 |
| マイクロン | 約6.6倍 | DRAM・HBM・NAND | 2026年7月15日頃 |
| サンディスク | 約9.3倍 | NAND・SSD | 2026年7月7日 |
| サムスン電子 | 約6.8倍 | 半導体・スマートフォン・家電 | 2026年4月時点 |
※各社の予想PERは、アナリスト予想や株価の基準日が異なるため目安です。公開時には最新数値へ更新してください。
キオクシアの予想PER約7.4倍は、SKハイニックスやマイクロンよりやや高く、サンディスクより低い水準です。
少なくとも予想PERだけを比較すると、キオクシアがメモリ大手の中で極端に割高というわけではありません。主要なメモリメーカーはおおむね1桁台の予想PERで評価されていま
割高か判断するために確認したいポイント
キオクシアの割高・割安を判断するうえでは、PERやPBRだけでなく、利益を左右するNAND市況や製品構成を確認する必要があります。
| 確認項目 | 株価評価への影響 |
|---|---|
| NAND販売価格 | 上昇で売上・利益率が改善 |
| ビット出荷量 | 需要と生産量を確認 |
| データセンター向けSSD | 高付加価値製品の成長 |
| 営業利益率 | 現在の高利益率を維持できるか |
| アナリスト予想EPS | 予想PERの計算に直結 |
| 通期業績予想 | 会社による利益見通し |
| 競合の設備投資 | 将来の供給増加リスク |
| 在庫動向 | 供給過剰・価格下落の兆候 |
特に重要なのは、NAND販売価格と営業利益率です。
出荷量が増加しても、販売単価が下落すれば利益が減少する場合があります。
反対に、需給が引き締まり販売単価が上昇すれば、出荷量の伸び以上に利益が拡大する可能性があります。
また、アナリスト予想EPSが上方修正されているのか、下方修正されているのかも確認する必要があります。
株価が同じでも、予想EPSが引き下げられると予想PERは上昇し、割高感が強まります。
7月31日の第1四半期決算が重要
キオクシアは、2027年3月期第1四半期決算を2026年7月31日15時30分に発表する予定です。
決算では、次の項目が注目されます。
・会社予想に対する売上収益と利益の進捗
・営業利益率約74%を達成できたか
・NANDの平均販売単価
・ビット出荷量
・データセンター向けSSDの売上動向
・次の四半期の業績予想
・通期見通しに関する経営陣の発言
会社予想を上回れば、アナリスト予想EPSがさらに引き上げられ、予想PERが低下する可能性があります。
反対に、販売単価や利益率が想定を下回れば、コンセンサスの下方修正につながる可能性があります。
キオクシアは通期業績予想を開示していないため、四半期ごとのガイダンスや経営陣の説明が株価評価に与える影響も大きくなります。
まとめ
キオクシアは、2026年3月期実績を基準にするとPER約71倍、PBR約28.5倍で、割高感の強い水準です。
一方、アナリストの大幅増益予想を使うと、予想PERは約7倍まで低下します。時価総額約40兆円を正当化するには、年間数兆円規模の利益を実際に達成し、継続する必要があります。
予想利益が実現すれば割安感がありますが、NAND価格が下落して利益が減少すれば、PERとPBRの両面で割高感が強まります。AI需要だけでなく、販売単価、営業利益率、利益の持続性を確認することが重要です。
出典
2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)|キオクシアホールディングス株式会社
https://ssl4.eir-parts.net/doc/285A/tdnet/2815552/00.pdf
決算説明資料|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ir/library/presentation.html
2026年3月期 有価証券報告書|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ir/library/securities.html
Investor Day 2026 プレゼンテーション資料|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/shared/ir/library/event/asset/Kioxia-Investor-Day-2026-ja.pdf
Investor Day 2026 プレゼンテーション資料(スクリプト付き)|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/shared/ir/library/event/asset/Kioxia_Investor_Day_2026_ja_script.pdf
IRイベント|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ir/library/event.html
IRニュース|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ir/news.html
IRカレンダー|キオクシアホールディングス株式会社
https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ir/calendar.html
キオクシアホールディングス(285A)の理論株価・予想EPS|マネックス証券 銘柄スカウターライト
https://scouter.monex.co.jp/report/theoryDps/285A
キオクシアホールディングス(285A)株価・株式情報|Yahoo!ファイナンス
https://finance.yahoo.co.jp/quote/285A.T
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