※株価・業績データは2026年9月3日時点で確認できる公表情報を基準にしています。
三菱商事(8058)の株価は中長期で大きく水準を切り上げてきました。2026年9月3日には、バークシャー・ハサウェイのグレッグ・アベルCEOが日本の5大商社への投資を長期保有する方針を示し、保有比率をさらに高める意向も報じられたことから、商社株が一斉に上昇しています。
ただし、株価上昇を「バフェットやバークシャーが買っているから」だけで説明すると実態を取りこぼします。2027年3月期第1四半期の連結純利益は前年同期比47%増となり、豪州原料炭や銅の市況上昇、LNGカナダの生産開始、新規事業の利益貢献など、企業業績そのものにも改善が見られます。
加えて、累進配当や約1兆円の自社株買い、ROE向上を掲げた経営戦略も株価評価を支えています。株価が上がる仕組みを短期的なニュース材料と中長期の企業価値向上に分けて整理し、そのうえで今から買う余地があるのか、どの条件が崩れると下がりやすいのかまで確認します。
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三菱商事の株価はなぜ上がる?上昇理由を一覧で確認

上昇要因には、短期的なニュース材料と、中長期的に企業価値を押し上げる構造的な要因の両方があります。9月3日の上昇を直接説明する材料はバークシャーの長期保有・追加取得への期待ですが、株価がここまで評価されてきた背景には業績回復や株主還元、資本効率の改善もあります。
| 上昇理由 | 株価に効くポイント |
|---|---|
| バークシャーの長期保有・買い増し期待 | 世界的な長期投資家からの評価が、商社株への資金流入や評価倍率を下支え |
| 株主還元の強化 | 累進配当と機動的な自社株買い。2025年度に約1兆円を取得し、2026年4月に全株消却 |
| 業績回復 | 2027年3月期1Q純利益は2,985億円で前年同期比47%増。通期1兆1,000億円計画に順調な進捗 |
| 資源・LNG事業の追い風 | 原料炭・銅の市況上昇、LNGカナダの生産開始、米国シェールガス事業 |
| ROE・成長投資への期待 | 経営戦略2027でROE12%以上を目標。成長投資と資本効率改善を同時に進める |
整理の軸になるのは、株価上昇を1株当たり利益(EPS)が増えることと、投資家が許容するPERやPBRなどの評価倍率が上がることに分けて考えることです。三菱商事では、足元の増益や自社株買いがEPSを支え、バークシャーによる評価、累進配当、ROE改善への期待が評価倍率を支える構図になっています。
9月3日は4.09%高、株価は年初来高値の下
株価の位置も確認しておきます。バークシャー関連の報道を受けた9月3日の終値は5,059円で、前日比4.09%高でした。ただし年初来高値6,012円は下回っており、高値から約16%低い水準にあります。
| 項目 | 水準 | 備考 |
|---|---|---|
| 9月3日終値 | 5,059円 | 前日比4.09%高 |
| 年初来高値 | 6,012円 | 9月3日終値は高値比 約16%安 |
| 会社予想EPS | 約300円 | 通期純利益1兆1,000億円計画ベース |
| 予想PER | 17倍弱 | 9月3日終値ベース |
| PBR | 約1.9倍 | ― |
| 予想配当利回り | 約2.5% | 年間配当予想125円で計算 |
株価は高値圏から一度調整した位置にありますが、PBRは約1.9倍で、低PBRの商社株を割安に買う局面とは状況が変わっています。指標面の評価は後半で詳しく確認します。
三菱商事の株価が上がる5つの理由
① バークシャーが長期保有し、追加取得への期待もある
バークシャー・ハサウェイの存在は無視できません。同社は日本の5大商社への投資を長期的に拡大しており、2026年9月3日にはアベルCEOが、5社の基礎的な利益は今後も伸び続け、増配や自社株買いの拡大も期待できるとの見方を示しました。さらに今後何十年にもわたって保有する趣旨の発言が報じられ、保有比率を引き続き高めていく意向も伝えられています。
この発言を受け、9月3日の三菱商事株は前日比4.09%高で取引を終えました。短期的には、バークシャーによる追加取得への期待が買い材料になったといえます。
より大きいのは、バークシャーの投資が短期売買ではなく、商社の事業ポートフォリオ、キャッシュ創出力、株主還元を長期的に評価した投資である点です。世界的に知名度の高い長期投資家が保有を継続することで、資源価格次第で利益が大きくぶれる低評価の商社という見方から、安定したキャッシュを生み出しながら資本配分を行う企業へと再評価される要因になります。
ただし、バークシャーが株価を保証しているわけではありません。買い増し観測が織り込まれた後は、三菱商事自身の利益成長や株主還元が伴わなければ、この材料だけで株価が上昇し続けることは考えにくくなります。
② 累進配当と大規模な自社株買いで株主還元を強化している
三菱商事は「経営戦略2027」でも累進配当を維持し、機動的に自己株式を取得する方針を掲げています。累進配当は、原則として配当を減らさず、利益やキャッシュ創出力の拡大に合わせて増配を目指す考え方です。年間配当は2024年度100円、2025年度110円、2026年度は125円を見込んでおり、株主還元を段階的に増やしています。
自社株買いも大規模でした。2025年4月から2026年3月にかけて、取得価額総額約1兆円の自己株式取得を実施しています。取得株式数は318,397,611株で、取得前の発行済株式総数に対して7.9%に相当します。これらは2026年4月30日に消却され、発行済株式総数は約40.29億株から約37.11億株へ減少しました。
自社株買いは市場で株式を買うことによる需給改善に加え、自己株式を除く株式数を減らすことでEPSやROEの改善につながります。EPSは自己株式を除いた期中平均株式数を基礎として計算されるため、買い戻した株式は取得した段階からEPSの分母から外れます。消却は資本効率を重視する経営姿勢を示すものですが、EPSへの押し上げ効果が消却時にもう一段生じるわけではありません。
なお、約1兆円の自社株買いは2026年3月で終了しており、現在も同規模の買い付けが続いているわけではありません。一方で会社は累進配当と機動的な自己株式取得という基本方針を継続しているため、業績や投資案件、財務健全性の状況によっては追加還元が検討される余地があります。今後の株価を見るうえでは、新たな自社株買いの有無が一つの材料になります。
③ 2027年3月期は業績回復が進み、上方修正余地も意識されている
中長期で株価を支える最も基本的な要因は、会社が実際に利益を増やせるかどうかです。2027年3月期第1四半期の連結純利益は2,985億円で、前年同期の2,031億円から954億円、率にして47%増加しました。会社独自の資金創出指標である営業収益キャッシュフローも2,504億円から3,412億円へ36%増えています。
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期 | 通期計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 連結純利益 | 2,985億円 | 2,031億円 | 1兆1,000億円 | 27% |
| 営業収益キャッシュフロー | 3,412億円 | 2,504億円 | 1兆2,500億円 | 27% |
| 巡航利益 | 2,696億円 | 1,657億円 | 8,200億円 | 33% |
会社は通期見通し達成に向けて順調な滑り出しと説明しています。巡航利益は継続的な稼ぐ力を見るために会社が示している指標ですが、不動産・電力など資産回転型事業の資産・事業リサイクル関連損益や特殊要因も含まれるため、すべての一過性要因を除いた調整後利益という意味ではありません。
会社は第1四半期決算時点で、為替や一部の資源価格が期初想定より円安・高値圏で推移していることから、第2四半期に向けて業績見通しの上方修正余地を精査するとしています。上方修正が確定したわけではありませんが、現在の株価には会社計画を上回る利益への期待も含まれやすい状況です。
2025年度の連結純利益は8,005億円だったため、2026年度計画の1兆1,000億円を達成すれば大幅な増益になります。株価上昇が持続するには、外部の材料よりも最終的にはこの利益回復が実績として続くことが条件になります。
④ 原料炭・銅の市況上昇に加え、LNGやシェールガスが利益成長につながる
三菱商事は非資源事業も幅広く持つ総合商社ですが、金属資源やエネルギー事業の利益規模が大きいため、原料炭、銅、原油、天然ガスなどの市況が業績に強く影響します。第1四半期では、豪州原料炭事業と銅事業の市況上昇、LNGカナダの生産開始に伴う取引増加などが増益要因になりました。
金属資源セグメントの第1四半期連結純利益は866億円で、前年同期の275億円から591億円増えています。会社資料では、巡航利益の前年同期比の増減要因として原料炭が約190億円、銅が約200億円のプラスと示されました。資源価格の高さが足元の利益を大きく押し上げていることが分かります。
一方、成長材料は資源価格だけではありません。LNGカナダは本格稼働が進み、第1四半期には100カーゴ目の出荷を達成しました。米国テキサス州・ルイジアナ州のヘインズビルシェールガス事業にも参画し、2026年7月に買収を完了しています。会社は第2四半期以降の利益貢献を見込んでおり、既存資産の市況上昇だけでなく新規取得事業からの利益上積みも期待されています。
そのため「資源価格が上がれば三菱商事も上がる」と単純化するより、原料炭・銅などの価格、LNGカナダなど既存大型案件の生産量、新規投資の利益貢献の3点を分けて確認する方が実態に近くなります。市況が落ち着いても、生産量や新規連結による利益増でカバーできるかが中長期の評価を左右します。
⑤ 経営戦略2027でROE向上と成長投資を同時に進めている
三菱商事は「経営戦略2027」で、成長性の指標として営業収益キャッシュフローの平均成長率10%以上、資本効率の指標として2027年度ROE12%以上を目標にしています。利益の絶対額を増やすだけでなく、株主から預かった資本をどれだけ効率よく利益に変えられるかを数値目標にした点が特徴です。
2025年度のROEは8.5%でしたが、2026年度会社見通しは11.5%です。さらに2027年度には12%以上を目標としており、利益成長と自己資本の適正化の両方を進める計画になっています。大型の自己株式取得も、会社自身が積み上がった資本のリバランスと位置づけています。
成長投資も拡大しました。当初の経営戦略2027では3年間で約1兆円の更新投資と3兆円以上の拡張・新規投資を計画していましたが、堅調なキャッシュ創出や投資案件を踏まえ、2025年度有価証券報告書では更新投資を約1.3兆円以上、拡張・新規投資を約3.3兆円以上へ引き上げています。
投資額が増えれば企業価値が上がるわけではありません。投資した資金がLNG、シェールガス、食品、デジタル金融などの利益として回収され、ROE12%以上につながるかが焦点です。市場が資本を効率よく増やせる会社だと判断すれば、利益成長だけでなくPERやPBRの高い状態を維持しやすくなります。
三菱商事の株価上昇を「EPS×PER」で分けて考える
株価上昇の理由を整理するときは、「株価=EPS×PER」という考え方が役に立ちます。実際の株価形成はもっと複雑ですが、企業が1株当たりでどれだけ稼ぐかと、その利益に対して投資家が何倍の価格を払うかに分ければ、上昇要因を切り分けられます。
業績回復と自社株買いでEPSが伸びやすくなる
EPSは、親会社の所有者に帰属する利益を、自己株式を除く期中平均株式数などで割って算出します。純利益が増えるだけでなく、自社株買いによって自己株式を除く株式数が減ることもEPSの押し上げ要因です。三菱商事は2027年3月期に連結純利益1兆1,000億円を見込んでおり、前年度8,005億円から大幅な増益計画になっています。
自己株式は2025年4月4日から2026年3月24日にかけて318,397,611株、取得価額総額約1兆円を取得し、2026年4月30日に全株消却されました。発行済株式総数は4,028,926,353株から3,710,528,742株へ減少しています。ただし、EPSへの効果は消却によって初めて生じるものではありません。買い戻した株式は取得した段階からEPS計算上の株式数から除かれるため、自社株買いの進捗に応じて効果が生じます。実際のEPSは取得時期を反映した期中平均株式数で計算されるため、消却率7.9%をそのままEPS上昇率として扱うことはできません。
三菱商事では、会社全体の利益を増やすことと、自社株買いによって自己株式を除く株式数を減らすことの両面がEPS成長につながります。今後の株価を考える際は、純利益の増減だけでなく自社株買いの進捗も含めて見ることになります。
バークシャーの評価やROE改善期待はPER・PBRを支える
利益が同じでも、投資家がその企業を高く評価するようになればPERやPBRが上昇し、株価は上がります。総合商社は以前から資源価格による利益変動や複雑な事業構造を理由に低い評価倍率になりやすい面がありましたが、現在は株主還元、資本効率、事業ポートフォリオの質がより強く評価されています。
バークシャーが商社株を長期保有し、利益成長や増配、自社株買いを評価していることは、他の投資家が商社の資本配分能力を見直すきっかけになります。三菱商事自身がROE12%以上という数値目標を掲げていることも、PBRを高めるうえで働きます。
これまでの株価上昇は、利益の増加だけでなく、以前より高い評価倍率を付けてもよい会社だと市場が判断するようになったことも影響しています。ただし、評価倍率の上昇には限界があります。すでにPERやPBRが切り上がった局面では、今後の上昇にEPS成長の重要度が増します。
三菱商事は今から買っても遅くない?
株価が大きく上昇したという理由だけで、今からでは遅いとは判断できません。2027年3月期の利益成長、LNGカナダや米国シェールガスの利益貢献、ROE改善が続くなら、EPSの成長に伴って株価がさらに上昇する余地はあります。
一方で、低PBRの商社株を高配当目的で割安に買うという局面とは性質が変わっています。9月3日の終値5,059円は年初来高値6,012円を下回っているものの、会社予想EPS約300円を基準にすると予想PERはおおむね17倍弱、PBRも約1.9倍です。配当125円を前提とした予想配当利回りは約2.5%になります。高値から下がっているからといって、指標面で明確に割安とは言い切れません。
判断の軸は、過去より株価が高いかではなく、今後のEPS成長が現在の評価倍率を正当化できるかになります。
株価が上がっただけで「高すぎる」とは判断できない
株価が30%上昇していても、同じ期間にEPSも30%増えていればPERはほぼ変わりません。反対に、EPSがほとんど増えていないのに株価だけが30%上昇すれば、評価倍率が大きく上がったことになり、期待先行の状態になります。
三菱商事の場合、2026年度は会社計画そのものが大幅増益で、第1四半期の巡航利益も前年同期比で大きく増えています。この点は株価だけが上がっている銘柄とは異なります。ただし巡航利益には資産・事業リサイクル関連損益や特殊要因も含まれるため、33%という進捗率だけで上方修正を見込むのは早計です。
今後は評価倍率よりEPS成長を重視することになる
バークシャーの保有、累進配当、自己株式取得、ROE改善方針といった好材料はすでに広く知られています。これらが評価倍率を押し上げる局面はかなり進んでおり、今後もPERやPBRが同じペースで上昇し続けることを前提にすると、想定が外れたときの調整が大きくなります。
現在からの上値余地では、2027年3月期の上方修正、2027年度の利益成長、新規投資案件の利益貢献、追加の増配・自社株買いによってEPSがさらに伸びるかが焦点です。利益成長が止まった状態で評価倍率だけが高くなると、悪材料が出た際の株価調整も大きくなります。
今から買うなら決算と株主還元を継続して確認する
投資を検討する場合、買った時点で結論を固定するのではなく、決算ごとに前提が維持されているかを確認することになります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 連結純利益・巡航利益 | 1兆1,000億円の通期計画に対して進捗しているか。巡航利益の伸びが続いているか |
| 上方修正 | 為替・資源価格・事業進捗を受けて会社計画が引き上げられるか |
| LNG・シェールガス | LNGカナダの生産・販売と米国シェールガスの利益貢献が計画どおりか |
| 銅・原料炭 | 価格だけでなく生産量やコストを含めて利益貢献が維持されているか |
| 配当 | 125円予想から追加増配の余地が出てくるか |
| 自社株買い | 2025年度の1兆円取得に続く追加還元があるか |
| ROE | 2026年度11.5%見通し、2027年度12%以上の目標に近づいているか |
一括で高値を追うより、決算や調整局面を利用して分散する方法もある
好材料が出た直後は、短期資金が集中して株価が企業価値の変化以上に動くことがあります。9月3日のようにバークシャー関連の報道で商社株が一斉に上昇した日は、長期の投資判断と短期の値動きを分けて考えることになります。
中長期の成長性を評価する場合でも、投資資金を一度に投入するのではなく、決算確認後、全体相場の調整、資源価格の変動など複数のタイミングに分ける方法があります。必ず押し目が来るという意味ではなく、評価倍率がすでに高まった局面で高値づかみの影響を抑える考え方です。
三菱商事の株価が下がる可能性もある
上昇要因が逆回転すれば、そのまま下落要因になります。特に資源価格、為替、業績期待、評価倍率の4点は確認しておきたいところです。
資源価格が下落すると利益が押し下げられる
第1四半期の大幅増益には、原料炭と銅の市況上昇が大きく貢献しました。世界景気の減速や供給増加などで資源価格が下落すれば、現在の増益要因が逆に働きます。
会社の2026年度見通しに対する感応度では、銅地金価格が1トン当たり100ドル変動すると連結純利益に約26億円、Brent原油が1バレル1ドル変動すると約24億円の影響があるとされています。実際の影響は生産量や価格反映のタイムラグでも変わりますが、市況の変化が利益に直接結びつきやすい構造です。
円高は海外利益の円換算額を押し下げる
海外事業の比重が大きいため、為替も業績を左右します。2026年度会社見通しではドル円150円を前提とし、ドル円が1円動いた場合の連結純利益への影響額を約50億円としています。他の条件が同じまま10円円高になれば、単純計算で約500億円の減益方向に働く規模です。
一方、第1四半期の平均ドル円は159.57円と会社の通期前提より円安でした。会社が上方修正余地を精査するとした背景には、この円安もあります。今後円高が急速に進めば、市場が期待している上振れ余地は縮小します。
好決算でも市場期待に届かなければ株価は下がる
株価は実績そのものではなく、事前の期待との差で動きます。第1四半期が好調で上方修正期待が高まるほど、第2四半期以降に求められるハードルも高くなります。増益決算であっても、上方修正がない、巡航利益の伸びが鈍る、LNGやシェールガスの利益貢献が想定を下回るといった結果になれば、期待剥落で売られます。
現在の三菱商事は業績が悪くなければ買われる段階ではなく、高まった期待を上回れるかが問われる段階に入りつつあります。今から買う場合は、この期待値の高さもリスクとして見ることになります。
PER・PBRが高まった分、評価倍率の縮小リスクもある
株価上昇の一部がPERやPBRの上昇によるものであれば、利益が維持されていても評価倍率が下がるだけで株価は調整します。バークシャーの買い増し期待、資本効率改善、増配期待などが十分に織り込まれたと判断されれば、追加材料がない期間に評価倍率が低下します。
特に金利上昇や株式市場全体のリスク回避が進む局面では、投資家が株式に求めるリターンが高まり、PERの高い銘柄ほど評価が切り下がります。三菱商事固有の業績だけでなく、市場全体のバリュエーション環境も株価に影響します。
三菱商事の株価が今後も上がるための条件
株価上昇が続くには、すでに知られている好材料の確認ではなく、市場予想を上回る新しい材料が必要になります。
① 2027年3月期の業績が会社予想を上回る
最も分かりやすい上昇要因は業績の上方修正です。第1四半期時点で連結純利益の進捗率は27%、巡航利益は33%でした。巡航利益の進捗は好調さを測る材料の一つですが、資産・事業リサイクル関連損益や特殊要因も含まれるため、この数字だけで上方修正を断定することはできません。
今後の決算で1兆1,000億円の純利益計画が引き上げられれば予想EPSも上昇し、現在の株価に対するPERは低下するため、追加の株価上昇を正当化しやすくなります。逆に会社計画が据え置かれ続け、巡航利益も伸び悩む場合は、現在の株価が先に期待を織り込んでいたと判断されます。
② LNG・銅・シェールガスの利益貢献が想定を上回る
三菱商事は資源市況の上昇だけでなく、LNGカナダの本格稼働、米国シェールガス事業の新規連結による利益成長を計画しています。これらが計画以上の生産量や利益を生めば、市況依存ではない増益要因として評価されやすくなります。
特に米国シェールガス事業は2026年7月に買収を完了したばかりで、第2四半期以降の実績確認が必要です。大型投資が期待どおり利益に変わるかは、経営戦略2027そのものへの市場評価にも影響します。
③ 追加の増配や自社株買いが発表される
2026年度の配当予想は1株125円で、前年度110円から増配予定です。累進配当を基本方針としているため、営業収益キャッシュフローが想定以上に伸びれば追加増配への期待も高まります。
2025年度の1兆円自社株買いは終了しましたが、会社は今後も業績、投資案件、財務健全性を踏まえて機動的に自己株式取得を行う方針です。追加の自社株買いが発表されれば、需給改善だけでなく資本効率を重視する姿勢の再確認としても株価材料になります。
④ バークシャーが実際に追加取得する
9月3日時点では、アベルCEOが長期保有と保有比率引き上げの意向を示したこと自体が株価材料になっています。今後、実際の保有比率上昇が確認されれば、発言が実際の買いにつながったことになり、需給面と評価面の両方で追い風になります。
ただし、追加取得のタイミングや規模は事前に確定しているわけではありません。市場が買い増しを先に織り込むほど、実際の保有増加が小さい場合や時間がかかる場合には期待剥落も起こります。
⑤ ROE12%以上に向けて利益と資本効率が改善する
経営戦略2027では2027年度ROE12%以上を目標としています。ROEを高める方法は、自己資本を減らすことだけではありません。新規投資から利益を生み出し、低収益資産を入れ替え、必要以上に積み上がった資本を配当や自社株買いで株主へ返すことで、利益成長と資本効率の両方を高める必要があります。
市場がROE12%以上を一時的ではなく持続可能と判断すれば、PBRの高い状態を維持しやすくなります。反対に、投資額だけが増えて利益が伴わなければROEは改善せず、成長投資への評価も低下します。2027年度に向けては、いくら投資したかより、投資によってどれだけ利益とキャッシュフローが増えたかが問われます。
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まとめ|株価上昇はバークシャーだけが理由ではない
三菱商事の株価が上がる理由として、バークシャーによる長期保有・追加取得への期待は分かりやすい材料です。実際、2026年9月3日にはアベルCEOの発言を受けて商社株が一斉に買われ、三菱商事も4.09%高で引けました。
ただし中長期の株価上昇を支えるのは、2027年3月期の利益回復、原料炭・銅・LNGなどの事業利益、大規模自社株買いと累進配当、ROE改善を目指す経営戦略です。利益増加と自社株買いによる自己株式を除く株式数の減少がEPSの上昇につながり、資本効率改善への期待が評価倍率を支えてきました。
今から買っても必ず遅いわけではありませんが、以前より評価倍率は高まっています。商社だから割安、バフェットが買うから上がるという理由だけでは判断材料として足りません。今後は2027年3月期の上方修正、LNG・シェールガスの利益貢献、追加の株主還元、ROE12%目標への進捗を確認し、EPS成長が現在の株価水準を正当化できるかを見ることになります。
出典
三菱商事「2026年度第1四半期 決算説明会資料」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/meetings/pdf/260803/20260803j.pdf
三菱商事「経営戦略2027」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/news/release/2025/20250403001.html
三菱商事「株主還元情報」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/shareholder/allot/
三菱商事「自己株式の取得結果および取得終了並びに消却株式数に関するお知らせ」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/news/release/2026/20260325001.html
三菱商事「株式基本情報」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/shareholder/stock/
三菱商事「2025年度 有価証券報告書」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/fstatement/pdf/2025_04/y2025_04.pdf
三菱商事「米国テキサス州・ルイジアナ州におけるヘインズビルシェールガス事業への参画について」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/news/release/2026/20260116002.html
TBS CROSS DIG with Bloomberg「商社株が軒並み高、バークシャー長期保有方針-買い増し意欲報道も」 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2917974?display=1
Reuters「バークシャー、日本五大商社株約10%保有『米投資先と同様に重視』」 https://jp.reuters.com/markets/global-markets/FBHRNENOPNNF5AGDET453JKC5A-2026-03-02/
野村證券「三菱商事(8058)株価」 https://quote.nomura.co.jp/nomura/cgi-bin/parser.pl?MKTN=T&QCODE=8058&TEMPLATE=nomura_tp_kabu_01
Yahoo!ファイナンス「三菱商事(8058)配当情報」 https://finance.yahoo.co.jp/quote/8058.T/dividend
Yahoo!ファイナンス「三菱商事(8058)株価・株式情報」 https://finance.yahoo.co.jp/quote/8058.T
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