S&P500に連動する投資信託を保有していると、米国株がそれほど下がっていないのに基準価額だけ大きく下がることがあります。その代表的な原因が円高です。
日本で人気の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、S&P500指数(配当込み、円換算ベース)への連動を目指し、原則として為替ヘッジを行いません。そのため、米国株の値動きだけでなくドル円も基準価額を大きく動かします。
円高局面で重要なのは、「S&P500指数がどう動いたか」と「円換算した投資信託がどう動いたか」を分けることです。この記事では、円高による下押しを数字で確認したうえで、積立・買い増し・売却をどう考えればよいかまで整理します。
※本記事は2026年9月9日時点の開示資料をもとに作成しています。
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円高になるとS&P500投信の基準価額は下がりやすい

円高は、為替ヘッジなしのS&P500投信にとって基準価額を押し下げる要因です。米国株をドルで保有しているため、同じ1ドルの資産でも円高になるほど日本円へ換算した価値が小さくなります。
| S&P500の値動き | ドル円 | 円建てS&P500投信への影響 |
|---|---|---|
| 横ばい | 円高 | 下落要因 |
| 上昇 | 円高 | 上昇幅を押し下げる |
| 大幅上昇 | 円高 | 株高が上回れば上昇 |
| 下落 | 円高 | 株安と円高が重なり下落幅が拡大しやすい |
最終的な基準価額は「米国株の値動き」と「ドル円」の組み合わせで決まります。円高の下押し以上にS&P500が上昇すれば円ベースでも利益は残り、株価が横ばいなら円高分がそのまま基準価額の重しになりやすくなります。
S&P500指数とS&P500投資信託は違う
S&P500の値動きと、日本の投資信託の基準価額は、同じ指数を参照していても表しているものが異なります。まずはこの2つを分けて確認します。
S&P500指数は米国大型株の値動きを表す
S&P500は、米国の主要産業を代表する大型株500社で構成される時価総額加重型の株価指数です。S&P Dow Jones Indicesによると、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしており、米国大型株市場の代表的な指標として使われています。
米国でニュースに表示されるS&P500の指数値は、米ドルベースの米国株の値動きを表します。ドル円が160円から150円へ動いても、それ自体でS&P500指数の値が変わることはありません。
為替ヘッジなしのS&P500投信は円換算した値動きを受ける
一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、S&P500指数(配当込み、円換算ベース)への連動を目指します。投資先は米国株でも、確認する基準価額は円表示のため、ドル建ての株価を円へ換算する過程で為替変動が反映されます。
| 項目 | S&P500指数 | eMAXIS Slim米国株式(S&P500) |
|---|---|---|
| 主に表すもの | 米国大型株の値動き | S&P500の円換算ベースの投資成果 |
| 表示・基準 | 米ドルベースの指数値 | 日本円の基準価額 |
| ドル円の直接影響 | 指数の円換算とは別 | 基準価額の変動要因 |
| 為替ヘッジ | 該当しない | 原則として行わない |
この違いを押さえると、「S&P500は上がっているのに、自分の投資信託は下がっている」という現象を理解できます。
なぜ為替ヘッジなしのS&P500投信は円高で下がりやすい?
S&P500投信が円高で下がりやすいのは、ドル建てで保有する米国株の価値を、円換算する過程で為替変動が反映されるためです。ここでは、その円換算の仕組みを確認します。
ドル建て資産の円換算額が小さくなる
100ドル分の米国株を保有しているとすると、1ドル160円なら円換算額は16,000円です。株価が全く変わらないまま1ドル150円へ円高になると、円換算額は15,000円へ減少します。
| ドル円 | 100ドルの円換算額 | 160円時からの変化 |
|---|---|---|
| 160円 | 16,000円 | 基準 |
| 150円 | 15,000円 | -6.25% |
| 140円 | 14,000円 | -12.50% |
| 130円 | 13,000円 | -18.75% |
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は原則として為替ヘッジを行わないため、この円換算の変化が基準価額に反映されます。円高が進むほど、米国株の上昇分を円換算時に削る力が大きくなると考えると分かりやすいです。
ドル円が160円から150円になるとS&P500投信にどれくらい影響する?
S&P500指数が全く動かないと仮定すると、ドル円が160円から150円へ円高になるだけで、円換算価値は約6.25%低下します。140円なら約12.5%、130円なら約18.75%です。
| ドル円の変化 | 為替の変化率 | S&P500横ばい時の円換算への単純影響 |
|---|---|---|
| 160円→150円 | -6.25% | 約-6.25% |
| 160円→140円 | -12.50% | 約-12.50% |
| 160円→130円 | -18.75% | 約-18.75% |
オルカンでは米ドル以外の通貨や日本株も混ざるためドル円だけでは計算できませんが、S&P500投信は米国株へ投資するため、ドル円との関係をより直接的に捉えられます。為替の変化率を把握しておくと、基準価額の動きのうちどの程度が円高から生じ得るのかをイメージしやすくなります。
実際の基準価額には株価、配当、運用コストなども反映されるため、この表は為替だけを切り出した簡易計算です。使い方は将来の基準価額を当てることではなく、円高の下押しの大きさを株価上昇率と比較することにあります。
S&P500が上昇すれば円高でも利益は出る?
円高が進んでも、S&P500の上昇率が為替による下押しを上回れば、円建てS&P500投信は上昇できます。株価と為替は足し算ではなく掛け算で考えると正確です。
例えばドル円が160円から150円へ6.25%円高になったケースで、S&P500の値動きを組み合わせると次のようになります。
| S&P500の変化 | ドル円 | 円ベースの概算リターン |
|---|---|---|
| 0% | 160円→150円 | 約-6.25% |
| +5% | 160円→150円 | 約-1.6% |
| +10% | 160円→150円 | 約+3.1% |
| +20% | 160円→150円 | 約+12.5% |
株価と為替は、それぞれの変化率を単純に足し引きするのではなく、掛け合わせて計算します。例えばS&P500が10%上昇し、ドル円が160円から150円へ円高になった場合、1.10×150÷160-1=約3.1%です。米国株が10%上がっていても、円ベースでは3%程度の上昇にとどまることがあるのが、為替ヘッジなし投信の特徴です。
逆にS&P500が5%上昇しても、160円から150円への円高が重なると円ベースでは約1.6%のマイナスです。米国株のニュースと自分の評価額が噛み合わないときは、この株価と為替の掛け算で見ると原因を整理できます。
2026年9月の円高でS&P500投信は実際どうなった?
2026年9月は、S&P500投信に対する円高の影響を確認しやすい局面になりました。ドル円は9月2日の160円39銭から9月8日の152円89銭まで、5営業日で約7円50銭の円高が進みました。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の9月2日から9月9日の基準価額に対応する米国市場を見ると、S&P500は9月1日の7,631.47から9月8日の7,673.52へ約0.6%上昇しました。一方、基準価額は9月2日の45,017円から9月9日の43,426円へ約3.5%下落しています。
| 項目 | 起点 | 終点 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ドル円 | 160.39円(9/2) | 152.89円(9/8) | 約-4.7%(円高) |
| S&P500指数 | 7,631.47(9/1) | 7,673.52(9/8) | 約+0.6% |
| eMAXIS Slim S&P500 | 45,017円(9/2) | 43,426円(9/9) | 約-3.5% |
この期間、S&P500の価格指数は約0.6%上昇した一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の基準価額は約3.5%下落しました。同ファンドの連動対象は配当込み・円換算ベースのS&P500指数であるため両者を厳密な要因分解には使えませんが、米国株が大きく下落していない中で円建て基準価額が下落しており、急速な円高による下押しを確認しやすい局面です。
海外株式を組み入れる投資信託の基準価額は、原則として算出日の直近の海外取引所終値を使い、為替は算出日の午前10時頃のレートで円換算されます。そのため、9月2日の基準価額にはS&P500の9月1日終値、9月9日の基準価額には9月8日終値が対応します。ドル円についても市場の同日終値ではなく基準価額算出時の為替が使われるため、公開されているドル円の値動きと基準価額を1対1で対応させるのではなく、評価タイミングをそろえて株価と為替の両方を見ることが重要です。
円高になったらS&P500の積立は止めるべき?
長期の資産形成を目的に毎月積み立てている場合、円高局面でも当初の積立方針を維持する考え方が基本です。定額積立では、円高によって基準価額が低下した局面も購入時期の一つとして取り込めます。
例えば毎月3万円を積み立てる場合、基準価額が3万円(1万口あたり)から2万5,000円へ下がれば、同じ3万円で購入できる口数は約20%増えます。円高による基準価額の低下局面でも積立を続けることで、円安・円高の両方の価格帯に購入時期を分散できます。
SBI証券は、2001年12月末から2021年12月末までの20年間、S&P500(配当込み、円換算ベース)へ毎月3万円を積み立てた場合のシミュレーションを公表しています。投資額720万円に対して最終評価額は3,246万円、評価益は2,526万円となりました。
円高はS&P500を買い増すチャンス?
円高で円建てS&P500投信の基準価額が下がれば、日本円で購入する投資家は以前より低い基準価額で口数を増やせます。長期的にS&P500への投資額を増やしたい人にとって、円高による基準価額低下は追加投資を検討しやすい局面の一つです。
円建て投信の価格が下がったことと、米国株そのもののバリュエーションが低下したことは分けて考える必要があります。S&P500指数が7,600のまま、ドル円だけが160円から150円へ動いて投信が下落した場合、米国企業の株価水準そのものは変わっていないことになります。
そのため買い増しでは、円高による購入条件の改善とS&P500自体の株価水準を分けて考えると判断しやすくなります。どこまで円高が進むかを一度で当てようとするより、追加資金を数回に分ければ、円高が続く場合も株安が重なる場合も購入時期を分散できます。
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円高でS&P500投信が下がったら売るべき?
円高でS&P500投信の基準価額が下がっても、S&P500構成企業の米ドルベースの株価は、同じ割合では下落していない場合もあります。投資対象や保有期間に対する考え方が変わっていないなら、まず「米国株が下がったのか」「円高で円換算額が下がったのか」を分けると売却判断が明確になります。
長期積立の途中であれば、円高局面も異なる為替水準で購入する時間分散の一部として取り込めます。一方、数年以内に使う予定の資金では、株安と円高が重なったタイミングで売却することを避けるため、必要時期が近づくにつれて現金や国内債券など円建て資産へ移す方法があります。
つまり、積立期は米国株への投資方針を軸に継続を判断し、取り崩し期は使う時期に合わせて円建て資産を増やす。このように資産形成の段階を分けると、円高のたびにS&P500を売買する必要がなくなります。
S&P500投信に為替ヘッジは必要?
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は原則として為替ヘッジを行いません。円高局面では円換算価値が下がる影響を受ける一方、円安局面では円換算価値が増える効果も基準価額に反映されます。
為替ヘッジありの投資信託を使えば、円高・円安による基準価額への影響を抑えやすくなります。円金利がヘッジ対象通貨の金利より低い場合には金利差相当のヘッジコストが生じるため、為替変動を抑える効果と保有コストをセットで比較することが大切です。
長期でS&P500を積み立てる場合は、為替変動を受け入れて低コストのヘッジなし商品を保有する方法が一般的です。値動きを小さくしたい資金については、S&P500投信だけで調整するのではなく、現金や国内債券など円建て資産を組み合わせるとポートフォリオ全体で為替リスクを管理できます。
ドル安がS&P500企業の業績に与える影響
日本人投資家がS&P500投信で受ける為替影響と、S&P500企業自身が受ける為替影響は分けて考える必要があります。投資家側ではドル円が円高になると円換算額が直接下がります。一方、企業業績ではドルがユーロや英ポンドなど他の主要通貨に対してどう動いているかも重要です。
S&P500企業には米国外で大きな売上を稼ぐグローバル企業が多く、ドル安が主要通貨全体に広がる局面では、海外売上をドルへ換算した金額が増えやすくなります。S&P Globalも、ドル安が海外売上比率の高い企業の追い風になり得ると説明しています。
日本人投資家には「円高・ドル安による円換算の下押し」が生じる一方、広範なドル安は米国企業の海外売上のドル換算額を押し上げたり、海外市場で価格競争力の追い風になったりする場合があります。こうした効果が企業業績を支え、株価にはプラス材料となるケースもあります。日本人投資家にとっての円換算への影響と、米国企業の業績への影響は、同じ円高・ドル安局面でも方向が異なることがあります。
S&P500とオルカンでは円高の影響がどう違う?
S&P500とオルカンはどちらも円高の影響を受けますが、為替の構造は異なります。S&P500は米国株へ集中投資するためドル円との関係が分かりやすく、オルカンは米ドル以外の通貨や日本株も含むため、複数の為替・株式市場の動きが合成されます。
| 項目 | S&P500投信 | オルカン |
|---|---|---|
| 主な投資先 | 米国大型株 | 全世界株式 |
| 為替 | 主に米ドル円 | 米ドルを中心に複数通貨 |
| 日本株 | 基本的になし | 一部含む |
| ドル円の影響 | より直接的 | 大きいが他通貨も影響 |
| 値動きの見方 | S&P500×ドル円 | 世界株×複数通貨 |
ドル円が大きく動いたときに影響を把握しやすいのはS&P500投信です。オルカンでは米ドル以外の通貨や各国株式が異なる動きをするため、ドル円だけでは基準価額の変化を説明しきれません。両方を保有・比較するときは、投資先だけでなく為替構造の違いまで押さえると整理しやすくなります。
円高局面でS&P500を見るポイント
| 確認するもの | 見る理由 |
|---|---|
| S&P500指数 | 米国株そのものが上昇・下落しているかを確認 |
| ドル円 | 円換算時の追い風・向かい風を把握 |
| S&P500投信の基準価額 | 株価と為替を合わせた実際の円ベース結果を確認 |
| 積立か一括か | 為替変動への対応方法が変わる |
| 投資期間・取り崩し時期 | 長期保有か円建て資産へ移す段階かを判断 |
積立中は円高で基準価額が下がる局面も異なる価格帯で購入する機会として取り込み、保有中はS&P500指数とドル円を分けて値動きを確認します。取り崩しが近づいたら必要資金を円建て資産へ移す、と整理すれば、為替の短期変動を投資判断の中心に置かずに済みます。
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まとめ
円高は、原則として為替ヘッジを行わないS&P500投信の基準価額を押し下げる要因です。ドル円が160円から150円へ円高になれば、S&P500が横ばいという単純な条件では円換算価値に約6.25%の下押しが生じます。
実際の基準価額は、S&P500の値動きとドル円の組み合わせで決まります。米国株の上昇が円高の下押しを上回れば円ベースでも利益は残ります。2026年9月のように、対応する米国市場ではS&P500が約0.6%上昇した一方で急速な円高が進み、円建て投信の基準価額が下落した局面は、為替の影響を確認しやすい実例です。
長期積立では、円高による基準価額低下も購入時期の一つとして取り込めます。買い増しでは、円高で円建て価格が下がったことと、S&P500そのものが割安になったことを分けて見ます。保有中は株価と為替を分けて評価します。この視点を持つと、円高局面でもS&P500への投資判断がかなりシンプルになります。
出典
S&P Dow Jones Indices「S&P 500」
https://www.spglobal.com/spdji/jp/indices/equity/sp-500
三菱UFJアセットマネジメント「S&P500指数が上昇しても、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の基準価額が上昇しないのはどうしてですか」
https://faq1.am.mufg.jp/answer/672055cc11568de36a975d31
三菱UFJ銀行「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」
https://fs.bk.mufg.jp/webasp/mufg/fund/detail/m00355320.html
三菱UFJアセットマネジメント「株式に投資するファンドは、いつの時点の株価が基準価額に反映されますか」
https://faq1.am.mufg.jp/answer/66cbcdd9b8442d43ea5840dd
三菱UFJアセットマネジメント「日本の休日・祝日明けのeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の基準価額には、いつの時点の株価が反映されていますか」
https://faq1.am.mufg.jp/answer/6943bf0087a1afcac3c78412
三菱UFJアセットマネジメント「為替ヘッジとは何ですか」
https://faq1.am.mufg.jp/answer/66c85ba8e17300a001af293f
三井住友DSアセットマネジメント「急速な円高の進行が日本株に与える影響について考える」
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2026/09/irepo260909
OANDA「S&P500の振り返りと見通し」2026年9月2日
https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_09_02_us500
OANDA「S&P500の振り返りと見通し」2026年9月9日
https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/2026_09_09_us500
InvesTech Research「Daily Data(S&P 500)」
Yahoo!ファイナンス「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)時系列」
https://finance.yahoo.co.jp/quote/03311187/history
楽天証券「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C000GKC6
SBI証券「下落時の追加購入が効果的!? S&P500円高局面での積立投資の結果は?」
https://go.sbisec.co.jp/media/report/fund_info_plus/fund_info_plus_240819.html
S&P Global Market Intelligence「International revenue rebounds for group of S&P 500 companies in Q1 2025」
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