GMOインターネットグループの中核を担うGMOインターネット株式会社が発表した2024年12月期決算と今後の事業戦略について、本記事で詳しく解説します。
2025年1月1日に大規模な組織再編を完了し、同社は新たなステージへと歩みを進めました。
本記事では、再編前の2024年12月期の業績を振り返りつつ、再編後の新体制が描く成長戦略、株主還元方針、そして今後の株価に与える影響まで、公開された決算資料をもとに深く掘り下げていきます。
GMOインターネットの株価について分析した動画もあります。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
GMOインターネットの2024年12月期における連結決算の振り返り
まずは、2024年12月期の連結決算の全体像を見ていきましょう。
この決算は、2025年1月1日の事業承継前のGMOアドパートナーズ株式会社としての業績です。
項目 | 2024年12月期実績 | 前期比 |
---|---|---|
売上高 | 12,997百万円 | 12.8%減 |
営業利益 | 139百万円 | (前期は25百万円の損失) |
経常利益 | 151百万円 | 15.7%減 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | △4百万円 | (前期は40百万円の利益) |
2024年12月期は、一部顧客の広告需要縮小により売上高は前期比で減少しました。
しかし、生成AIなどを活用した業務効率化が奏功し、営業利益は前期の損失から黒字へと転換しています。
一方で、後述する大規模な組織再編に関連する費用として257百万円を計上したことが影響し、親会社株主に帰属する当期純利益は4百万円の損失となりました。
GMOインターネットの2024年12月期セグメント別の業績
次に、セグメント別の業績を詳しく見ていきます。当期の報告セグメントは「インターネット広告事業」と「インターネットメディア事業」の2つです。
セグメント名 | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
インターネット広告事業 | 11,570百万円 | 1,068百万円 |
インターネットメディア事業 | 1,438百万円 | 151百万円 |
インターネット広告事業
インターネット広告の代理事業や、広告配信プラットフォーム「ReeMo」の提供などを行う主力事業です。
当期は、一部業種での広告予算縮小の影響で売上高は前期比15.8%減となりました。
しかし、利益率の高い自社商材の拡販が堅調に推移したことや、営業体制の効率化を進めたことにより、営業利益は前期比89.0%増と大幅な増益を達成しました。
インターネットメディア事業
自社WEBメディア「michill byGMO」の運営などを手掛ける事業です。
当期は、検索エンジンのアルゴリズム変更の影響があったものの、外部メディアとのアライアンス強化によって売上高は前期比22.5%増となりました。
一方で、外部への支払いが先行したことにより、営業利益は30.5%減の減益となっています。
GMOインターネットの2024年12月期末財務状況について
2024年12月期末の財務状況は以下の通りです。
項目 | 2024年12月期末 | 2023年12月期末 |
---|---|---|
総資産 | 10,356百万円 | 10,847百万円 |
純資産 | 5,246百万円 | 5,242百万円 |
自己資本比率 | 50.0% | 47.7% |
当期末の総資産は、現金及び預金やその他の流動資産が減少したことなどから、前期末に比べて491百万円減少しました。
負債合計は、買掛金の減少などが主な要因で496百万円減少しています。
結果として純資産はほぼ横ばいを維持し、自己資本比率は47.7%から50.0%へと改善しました。
キャッシュフローの状況
続いて、キャッシュフローの状況です。
項目 | 2024年12月期 | 2023年12月期 |
---|---|---|
営業活動による キャッシュ・フロー | 6百万円 | △912百万円 |
投資活動による キャッシュ・フロー | △144百万円 | △68百万円 |
財務活動による キャッシュ・フロー | △22百万円 | △177百万円 |
現金及び現金同等物 期末残高 | 4,024百万円 | 4,185百万円 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上(113百万円)や法人税等の還付(226百万円)などプラス要因があったものの、仕入債務の減少(376百万円)などが影響し、6百万円の収入にとどまりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主にグループの資金運用(CMS)のための関係会社への預入金(900百万円)により、144百万円の支出となっています。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い(20百万円)が主な要因でマイナスとなりました。
収益性に関する指標(ROEなど)
収益性に関する主要な指標は以下の通りです。
- 自己資本当期純利益率 (ROE): △0.1%
- 総資産経常利益率 (ROA): 1.4%
- 売上高営業利益率: 1.1%
当期は最終損失となったため、ROEはマイナスとなっています。
GMOインターネットの株主還元について
同社は株主還元を重要な経営課題と位置づけています。
2025年12月期からは、株主還元方針をさらに強化するとしています。
配当金の状況
2024年12月期の年間配当金は、1株あたり6円90銭を予定しています。
これは、当期は最終赤字となったものの、組織再編費用という一時的な要因を考慮し、期初に予想していた1株当たり当期純利益(13円65銭)に対して配当性向50%を適用して算出されたものです。
そして、2025年12月期からは配当方針が変更されます。
- 配当性向の引き上げ: 連結配当性向の目標を従来の50%から65%に引き上げます。
- 四半期配当の導入: 株主への迅速な利益還元を目的とし、年1回の期末配当から年4回の四半期配当へ変更する予定です。
この新方針に基づき、2025年12月期は1株あたり年間18円20銭の配当が予想されています。
これには、プライム市場への上場を記念した記念配当(6円37銭)も含まれています。
自社株買いの発表はあった?
今回の決算発表において、GMOインターネット株式会社(証券コード: 4784)単体での自己株式取得(自社株買い)の発表はありませんでした。
しかし、親会社であるGMOインターネットグループ株式会社(証券コード: 9449)は、取得総額100億円を上限とする自己株式取得枠の設定を発表しています。
これは、発行済株式総数の4.4%に相当する規模で、取得期間は2025年2月13日から2026年2月10日までです。
グループ全体として株主還元を重視する姿勢が示されています。
GMOインターネットの今期見通しと戦略について
2025年1月1日、同社は親会社であるGMOインターネットグループ株式会社からインターネットインフラ事業とインターネット広告・メディア事業を承継し、商号を「GMOアドパートナーズ株式会社」から「GMOインターネット株式会社」へ変更しました。
この組織再編により、事業内容が大きく変化するため、2025年12月期の業績見通しは前期から飛躍的に拡大します。
項目 | 2025年12月期予想 | 前期比 |
---|---|---|
売上高 | 75,000百万円 | 477.0%増 |
営業利益 | 8,000百万円 | – |
経常利益 | 7,800百万円 | – |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 5,000百万円 | – |
1株当たり 当期純利益 | 18.20円 | – |
この力強い見通しを支える戦略の柱は、以下の通りです。
- 事業シナジーの最大化
これまでの広告事業のノウハウと、承継したインフラ事業(ドメイン、クラウド、ホスティング等)の顧客基盤やストック型ビジネスの運営ノウハウを掛け合わせ、双方の強みを最大限に活かした事業展開を目指します。 - 4つの基本方針
①既存事業の継続的成長、②インフラ事業と広告事業のシナジー発揮、③新規事業の成長と投資、④M&Aによる事業規模拡大、を掲げ、継続的な成長と企業価値向上を目指します。 - セキュリティ事業の強化
GMOインターネットグループ全体として「ネットのセキュリティもGMO」を新たなスローガンに掲げており、サイバーセキュリティ事業を今後の重要な成長ドライバーと位置づけています。
決算内容や今期の見通しで、GMOインターネットの株価はどうなる?
今回の決算内容と今後の見通しから、株価に影響を与えうるポジティブな要因とネガティブな要因を整理します。
株価にポジティブな影響を与える要因
- 力強い業績見通し
2025年12月期は、組織再編により売上高が約5.7倍、営業利益は80億円と、大幅な増収増益を見込んでおり、市場の期待を高める可能性があります。 - 株主還元の強化
配当性向を65%へ引き上げ、記念配当を含め前期比で大幅な増配を予想している点は、株価にとって強い支援材料です。
また、四半期配当の導入も投資家の関心を集めそうです。 - 事業再編による成長期待
インフラ事業と広告事業の統合によるシナジー効果や、グループの祖業を承継したことによる事業基盤の強化は、中長期的な成長期待につながります。 - 成長分野への注力
グループ全体で注力するセキュリティ事業は、社会的な需要も高く、新たな収益の柱となることが期待されます。
株価にネガティブな影響を与える要因
- 前期決算の最終赤字
2024年12月期決算が最終赤字だったことは、短期的にネガティブな印象を与える可能性があります。 - 再編後の不確実性
大規模な組織再編後の事業運営が、計画通りにシナジーを生み出せるかについては、今後の実績で示していく必要があり、現時点では不透明さが残ります。 - 市場競争の激化
主力となるインターネット広告市場やインフラ市場は、競争が激しい領域であり、常に優位性を保ち続けることが求められます。
決算から分かるGMOインターネットの強みは?
決算資料からは、同社及びグループ全体の強みが明確に読み取れます。
強固な「岩盤ストック収益」
ドメイン、クラウド・レンタルサーバー、決済、インターネット接続など、解約率が低く継続的に収益を生み出す「岩盤ストック収益」が事業の根幹を支えています。
この安定した収益基盤があるからこそ、新たな成長分野への投資が可能になります。
このストック収益は過去8年で2.8倍に成長しています。
「No.1サービス」の集合体
ドメイン登録(お名前.com)、クラウド・レンタルサーバー、決済代行、電子契約サービス(GMOサイン)など、数多くの事業で国内No.1のシェアを獲得しています。
このブランド力と顧客基盤が、圧倒的な競争優位性を生み出しています。
自社開発力とグループシナジー
サービスの多くを自社で開発・運用しており、顧客ニーズへの迅速な対応や高品質なサービス提供を可能にしています。
また、グループ内に100社以上の企業と多様なサービスを有し、それらを相互に連携・紹介(クロスセル)することで、グループ全体の成長を加速させています。
まとめ
GMOインターネットの2024年12月期決算は、組織再編に伴う一時的な費用で最終赤字となったものの、営業利益は黒字化を達成し、事業の足腰の強さを示しました。
より重要なのは、2025年1月からの新体制です。グループの祖業である強力なインターネットインフラ事業を承継し、社名も新たに「GMOインターネット」として再出発しました。
大幅な増収増益を見込む今期予想と、配当性向の引き上げに代表される株主還元の強化は、市場に対して強いメッセージを発信しています。
今後は、インフラ事業と広告事業のシナジーをいかに具現化し、セキュリティなどの成長分野で確固たる地位を築けるかが、企業価値をさらに高めるための鍵となるでしょう。
投資家にとっては、同社の新たな挑戦と成長ストーリーに注目すべき局面と言えそうです。
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