古河電気工業の2025年3月期決算を解説|データセンタ・AI関連が好調で大幅回復に!

古河電気工業の2025年3月期決算が発表されました。

この記事では、同期の連結業績やセグメント別の詳細、財務状況、株主還元策、そして来期の見通しに至るまで、公式の決算資料をもとに詳しく掘り下げていきます。
古河電気工業の業績や今後が気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

目次

古河電気工業の2025年3月期における連結決算の振り返り

2025年5月13日に発表された古河電気工業の2025年3月期連結決算は、売上高・利益ともに前期を大幅に上回る結果となりました。

スクロールできます
項目2025年3月期
実績
2024年3月期
実績
前期比
売上高1兆2,018億円1兆565億円+13.7%
営業利益471億円112億円+321.6%
経常利益486億円103億円+373.1%
親会社株主に帰属する
当期純利益
334億円65億円+412.7%
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

ワイヤハーネスなどの自動車部品が増収となった「電装エレクトロニクス事業」や、データセンタ関連製品が好調だった「機能製品事業」が全体の売上を牽引しました。
利益面では、高付加価値製品の拡充、生産性の改善、販売価格の適正化などが功を奏し、大幅な増益を達成しています。

古河電気工業の2025年3月期セグメント別の業績

セグメント別の業績は以下の通りです。すべてのセグメントで増収となり、特にインフラ、機能製品セグメントの利益改善が顕著です。

スクロールできます
セグメント名売上高営業利益または
損失(△)
インフラ3,094億円45億円
電装エレクトロニクス7,364億円323億円
機能製品1,470億円140億円
サービス・開発等338億円△36億円
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

インフラ

売上高は3,094億円(前期比11.2%増)、営業利益は45億円(前期比158億円の改善)と、増収増益を達成しました。

情報通信ソリューションでは、データセンタ・AI関連市場の成長を背景に、ローラブルリボンケーブルなどの高付加価値製品の売上が増加しました
北米テレコム市場も顧客の在庫調整による需要低迷から緩やかに回復しつつあります。

エネルギーインフラ事業では、国内の超高圧地中線や再生可能エネルギー向け海底線などの堅調な需要が続きました。
利益確保を重視した受注活動や販売価格の適正化も増益に貢献しています。

電装エレクトロニクス

売上高は7,364億円(前期比12.7%増)、営業利益は323億円(前期比72.7%増)と、こちらも増収増益です。

自動車部品事業では、車両の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネスの搭載車種が拡大し、売上が堅調に推移しました。
顧客の安定的な生産計画による生産性の改善や、販売価格の適正化が増益の主な要因です。

電装エレクトロニクス材料事業では、銅地金価格の高騰や円安の影響に加え、パワー半導体用などの高付加価値製品の拡販や製品ミックスの改善により増収増益となりました。

機能製品

売上高は1,470億円(前期比27.4%増)、営業利益は140億円(前期比84億円増)と大幅な増収増益を記録しました。

特に、データセンタ・AI関連市場の成長を捉え、需要が旺盛な空冷方式ヒートシンクの供給体制を整備したことが収益拡大につながりました
また、ハードディスクドライブ用アルミブランク材も、顧客の在庫調整が解消し需要が回復したことで増収増益に貢献しています。

サービス・開発等

売上高は338億円(前期比7.1%増)でしたが、営業損失は36億円(前期比17億円悪化)となりました。
このセグメントには、水力発電や新製品の研究開発、不動産賃貸などが含まれます。

古河電気工業の2025年3月期末財務状況について

2025年3月期末の財務状況は、資産合計が前期末から微増し、自己資本比率が改善するなど、財務の健全性が高まっています。

スクロールできます
項目2025年3月期末2024年3月期末増減
総資産9,870億円9,850億円+20億円
純資産3,733億円3,582億円+151億円
自己資本比率34.6%33.3%+1.3ポイント
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

資産の部では、現金及び預金や売掛金、棚卸資産が増加した一方、投資有価証券が減少しました。負債の部では、借入金などが減少し、総額で131億円の減少となっています。純資産は、利益剰余金の増加やその他の包括利益累計額の増加により151億円増加しました。これらの結果、自己資本比率は1.3ポイント上昇し34.6%となりました。

キャッシュフローの状況

当期のキャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローが大幅に増加しました。

スクロールできます
項目2025年3月期2024年3月期
営業活動による
キャッシュ・フロー
598億円319億円
投資活動による
キャッシュ・フロー
△72億円△248億円
財務活動による
キャッシュ・フロー
△442億円△93億円
現金及び現金同等物
期末残高
661億円531億円
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
  • 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加(541億円)や減価償却費(413億円)などが主な要因で、前期比279億円増の598億円の収入となりました。
  • 投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入(433億円)があったものの、有形固定資産の取得による支出(△367億円)などにより、72億円の支出となりました。
  • 財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの減少(△340億円)や長期借入金の返済(△595億円)などが影響し、442億円の支出となりました。

収益性に関する指標(ROEなど)

収益性の改善が各指標に表れています。特に自己資本当期純利益率(ROE)は大幅に向上しました。

スクロールできます
指標2025年3月期2024年3月期
自己資本当期純利益率
(ROE)
10.0%2.1%
総資産経常利益率
(ROA)
4.9%1.1%
売上高営業利益率3.9%1.1%
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

古河電気工業の株主還元について

古河電気工業は、中期経営計画において、親会社株主に帰属する連結当期純利益の30%を目途として業績に連動した配当を行うことを株主還元方針としています。

配当金の状況

上記の方針に基づき、2025年3月期の期末配当は前期の2倍となる1株当たり120円を予定しています。これにより、年間配当金も120円となります。
配当性向は25.3%です。

また、2026年3月期の配当についても、1株当たり120円を予想しており、安定的な株主還元を継続する方針です。

スクロールできます
決算期1株当たり
年間配当金(円)
親会社株主に帰属する
当期純利益
配当性向
(連結)
2024年3月期60.0065億円64.9%
2025年3月期(予定)120.00334億円25.3%
2026年3月期(予想)120.00360億円23.5%
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

自社株買いの発表はあった?

今回の決算発表において、新たな自己株式取得(自社株買い)に関する発表はありませんでした。

古河電気工業の今期見通しと戦略について

2026年3月期の連結業績は、売上高は微減ながらも、各段階利益は増益となる見通しです。

スクロールできます
項目2026年3月期
予想
2025年3月期
実績
前期比
売上高1兆2,000億円1兆2,018億円△0.1%
営業利益530億円471億円+12.5%
経常利益520億円486億円+7.1%
親会社株主に帰属する
当期純利益
360億円334億円+7.9%
出典:古河電気工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

この見通しは、情報通信ソリューション事業・機能製品事業におけるデータセンタ関連製品の売上増や、高付加価値品の増産・拡販、生産性改善などに基づいています。
一方で、米国関税措置や地政学リスクなど、先行きが不透明な状況が続くことも想定されています。

戦略面では、2025年度を最終年度とする中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦―」に基づき、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」「開発力・提案力の強化による新事業創出」「ESG経営の基盤強化」の3つを柱として推進しています。

具体的には、データセンタ・AI関連市場向けに光ケーブル等の供給体制を強化するほか、電動自動車市場向けの製品開発、半導体製造用テープの新工場稼働など、各事業で成長分野への投資を加速させています。

決算内容や今期の見通しで、古河電気工業の株価はどうなる?

決算内容と今期の見通しには、株価にとってポジティブな要因とネガティブな要因の両方が含まれています。

株価にポジティブな影響を与える要因

  • 大幅な増益達成
    2025年3月期の営業利益が前期比4.2倍(321.6%増)と、力強い回復を示したこと。
  • 好調な事業領域
    今後の成長が期待されるデータセンタ・AI関連市場で、インフラ部門と機能製品部門が共に売上を伸ばしていること。
  • 来期も増益予想
    2026年3月期も営業利益で12.5%の増益を見込んでいること。
  • 財務健全性の向上
    ROEが10.0%へ大幅に改善し、自己資本比率も34.6%に上昇していること。
  • 株主還元の強化
    年間配当を前期の60円から120円へと倍増させ、来期も同額を維持する予想であること。

株価にネガティブな影響を与える要因

  • 売上高の微減予想
    2026年3月期の売上高が、電池事業の非連結化などの影響で微減予想となっていること。
  • 外部環境の不確実性
    米国の関税措置や地政学リスクなど、世界経済の先行き不透明感が業績に影響を与える可能性があること。
  • 一部セグメントの減益予想
    エネルギーインフラ事業において、2024年度の大型案件集中からの反動で減益が見込まれていること。

決算から分かる古河電気工業の強みは?

今回の決算からは、古河電気工業のいくつかの強みが読み取れます。

多様な事業ポートフォリオと成長市場への集中

インフラ、電装エレクトロニクス、機能製品といった多岐にわたる事業を展開し、特定の市場変動に対するリスクを分散しています。
特に、データセンタ・AIという高成長市場の需要を的確に捉え、関連製品の供給体制を強化することで収益を拡大している点は大きな強みです。

積極的なM&Aによる事業強化

自社のコア技術(メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波)を活かしつつ、M&Aを戦略的に活用して成長領域を強化しています。

光コネクタに強みを持つ白山、医療・産業機器向け光ファイバを製造するMFオプテックス、高速光変調器で世界トップレベルのシェアを持つ富士通オプティカルコンポーネンツ(現・古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ)などを子会社化し、開発力と競争力を高めています。

資本効率と財務規律への意識

中期経営計画でROIC(投下資本利益率)やROEといった資本効率の目標を掲げ、その達成に向けて事業ポートフォリオの最適化を進めています。

実際にROEは10.0%まで改善し、Net D/Eレシオも0.72倍まで低下するなど、財務体質の改善が進んでいる点も強みと言えるでしょう。

まとめ

古河電気工業の2025年3月期決算は、データセンタ・AI関連市場の好調を追い風に、売上・利益ともに大幅な回復を遂げた力強い内容でした。

財務体質の改善も進み、株主への還元も倍増させるなど、経営の安定化と成長への自信がうかがえます。

2026年3月期も増益を見込んでおり、中期経営計画の最終年度として目標達成に向けた施策を着実に進めていく姿勢です。
外部環境の不確実性という課題はあるものの、多様な事業と技術力を武器に、持続的な成長を目指す同社の今後の動向が注目されます。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次
閉じる