ルネサスエレクトロニクスは2026年7月31日、2026年12月期第2四半期決算を発表しました。Non-GAAP売上収益は前年同期比24.8%増の4,053億円、営業利益は1,327億円となり、売上高・利益率ともに会社予想を上回っています。
結論からいうと、今回の決算は自動車向けと産業・インフラ・IoT向けがともに伸びた好決算です。為替の影響を除いても売上収益は前年同期比15.4%増えており、円安だけに頼らない需要回復も確認できました。
一方、売上総利益率と営業利益率は前四半期からやや低下しています。また、IFRS純利益にはWolfspeed関連の評価益が含まれるため、本業の実力を判断する際はNon-GAAP営業利益を中心に見る必要があります。
この記事でわかること
第3四半期ガイダンス、株価への影響、次回決算の注目点
ルネサスの2026年12月期第2四半期決算の評価
会社予想との比較と予想を上回った理由
自動車向けと産業・インフラ・IoT向けの業績
IFRSとNon-GAAP、Wolfspeed関連損益の違い

ルネサスの最新決算はどうだった?

ルネサスの2026年12月期第2四半期は、売上収益と利益が前年同期・前四半期の両方を上回り、会社予想も超過した好決算です。半導体需要の回復に加え、円安や稼働率の上昇も利益を押し上げました。
| 項目 | 2026年12月期2Q | 前年同期比 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| Non-GAAP売上収益 | 4,053億円 | 24.8%増 | 8.8%増 |
| 売上総利益 | 2,353億円 | 増加 | 増加 |
| 売上総利益率 | 58.1% | 1.3pt上昇 | 1.1pt低下 |
| Non-GAAP営業利益 | 1,327億円 | 409億円増 | 73億円増 |
| Non-GAAP営業利益率 | 32.7% | 4.5pt上昇 | 0.9pt低下 |
| 親会社帰属利益 | 1,133億円 | 355億円増 | 103億円増 |
| EBITDA | 1,543億円 | 441億円増 | 81億円増 |
売上収益は24.8%増、営業利益は約44%増
Non-GAAP売上収益は前年同期の3,246億円から4,053億円へ増加しました。営業利益は919億円から1,327億円へ増え、増益率は約44%です。営業利益率も前年同期の28.3%から32.7%へ上昇しました。
前四半期と比べても売上収益は8.8%増、営業利益は73億円増です。前年同期の反動だけではなく、2026年1〜3月期からも需要が拡大したため、業績回復の継続性を確認できる内容でした。
売上・利益率ともに会社予想を上回った
| 項目 | 2Q実績 | 会社予想 | 予想比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,053億円 | 3,880億円 | 4.5%上振れ |
| 売上総利益率 | 58.1% | 57.0% | 1.1pt上振れ |
| 営業利益率 | 32.7% | 29.0% | 3.7pt上振れ |
売上収益だけでなく、売上総利益率と営業利益率も会社予想を上回りました。営業利益率は予想を3.7ポイント上回っており、売上増加に加えて、営業費用の抑制や製品ミックス、製造費用の改善が寄与しています。
市場コンセンサスは集計時期や会計基準によって異なります。そのため、今回の記事では会社が4月に示したガイダンスとの比較を中心に評価しています。
為替影響を除いても売上収益は15.4%増
第2四半期の平均為替レートは1ドル159円、1ユーロ185円でした。前年同期と比べてドルは13円、ユーロは23円の円安となり、為替は業績の追い風です。
ただし、為替影響を除いた売上収益も前年同期比15.4%増、前四半期比6.5%増となりました。円安だけで売上が伸びたのではなく、自動車や産業・インフラ・IoT向けの需要増加も業績を押し上げています。
IFRSとNon-GAAPの違い
ルネサスはIFRSの決算数値に加えて、買収関連の償却費や株式報酬、一過性損益などを調整したNon-GAAP業績を開示しています。本業の四半期推移を確認する場合はNon-GAAP、法定開示上の最終利益や財政状態を見る場合はIFRSを使うと整理しやすくなります。
| 項目 | Non-GAAP | IFRS |
|---|---|---|
| 2Q売上収益 | 4,053億円 | 4,184億円 |
| 売上総利益率 | 58.1% | 58.6% |
| 営業利益 | 1,327億円 | 1,021億円 |
| 営業利益率 | 32.7% | 24.4% |
| 親会社帰属利益 | 1,133億円 | 1,492億円 |
本業の収益力はNon-GAAP営業利益で確認
第2四半期では、無形資産・固定資産の償却費252億円、株式報酬費用など119億円、その他の非経常的な調整項目67億円などが、Non-GAAP営業利益とIFRS営業利益の差に含まれています。
ルネサスは買収を通じて事業を拡大してきたため、無形資産の償却負担が大きい企業です。四半期ごとの事業の稼ぐ力を比較する際は、Non-GAAP営業利益と利益率を中心に見ると変化を把握しやすくなります。
IFRS純利益にはWolfspeed関連の評価益が含まれる
IFRSベースの親会社帰属利益は1,492億円となり、前年同期の2,013億円の赤字から大幅に改善しました。ただし、この前年差をすべて本業の回復と考えるのは適切ではありません。
前年同期にはWolfspeed向け預託金に関して2,350億円の評価損を計上しました。一方、今回の第2四半期にはWolfspeed関連で633億円の評価益が計上されています。本業を評価する際は、これらの評価損益を除いたNon-GAAP利益を重視しましょう。
決算の良かった点
今回の決算では、自動車向けが回復しただけでなく、産業・インフラ・IoT向けがさらに高い成長率を記録しました。両事業とも営業利益率が30%を超え、在庫回転とキャッシュフローも良好です。
産業・インフラ・IoT向け売上が40%増加
| 事業 | 2Q売上収益 | 前年同期比 | 為替影響除く | 前四半期比 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車向け | 1,871億円 | 15.9%増 | 7.3%増 | 9.0%増 |
| 産業・インフラ・IoT向け | 2,163億円 | 40.0%増 | 29.3%増 | 10.4%増 |
産業・インフラ・IoT向けの売上収益は2,163億円となり、前年同期比40.0%増えました。為替影響を除いても29.3%増えており、今回の決算で最も強い成長を示した事業です。
産業機器、データセンター・インフラ、IoT機器向けの需要が回復し、前四半期比でも10.4%増となりました。ルネサスは車載半導体の印象が強い企業ですが、成長のけん引役が複数に広がっている点は評価できます。
自動車向けも増収し、高い利益率を維持
自動車向け売上は1,871億円で、前年同期比15.9%増、前四半期比9.0%増となりました。為替影響を除いても7.3%増えており、車載半導体需要は回復方向にあります。
営業利益率は34.4%と高水準です。前四半期からは1.5ポイント低下したものの、前年同期の23.3%を大きく上回っており、売上回復による固定費吸収と製品構成の改善が進んでいます。
両事業とも営業利益率が30%を超えた
| 事業 | 営業利益 | 営業利益率 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 自動車向け | 約644億円 | 34.4% | 1.5pt低下 |
| 産業・インフラ・IoT向け | 約690億円 | 31.9% | 0.2pt低下 |
自動車向けと産業・インフラ・IoT向けの営業利益率はいずれも30%を超えました。特に産業・インフラ・IoT向けは前年同期の24%台から大きく改善し、全社営業利益率32.7%を支えています。
売上収益が増えただけでなく、両事業が高い収益性を確保したことが、今回の決算を好決算と評価できる理由です。
在庫は増えたが回転日数は改善
自社在庫と販売チャネル在庫は前四半期から増えました。ただし、自社在庫の日数を示すDOIと、販売チャネル在庫の週数を示すWOIはいずれも低下しています。
需要増に対応して仕掛品や完成品を積み増した一方、セルスルーが在庫の増加以上に伸びたためです。現時点では過剰在庫というより、販売拡大へ対応するための在庫増と評価できます。
上期のフリーキャッシュフローは約1,813億円
| キャッシュフロー | 2026年上期 |
|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | 2,569億円 |
| 投資活動によるキャッシュフロー | 757億円の支出 |
| 単純差引のフリーキャッシュフロー | 約1,813億円 |
| 6月末の現金及び現金同等物 | 3,760億円 |
上期の営業キャッシュフローは2,569億円の黒字でした。棚卸資産や営業債権は増加したものの、利益と減価償却費が現金創出を支えています。
投資キャッシュフローを差し引いた単純なフリーキャッシュフローは約1,813億円の黒字です。長期借入金の返済や配当を実施しながら、現金残高は期初から約801億円増加しました。

決算の懸念点
決算は予想を上回りましたが、前四半期比で利益率が低下したこと、円安の追い風、IFRS利益に一過性要因が含まれることには注意が必要です。
売上総利益率と営業利益率は前四半期から低下
売上総利益率は前四半期の59.2%から58.1%へ1.1ポイント低下し、営業利益率も33.7%から32.7%へ0.9ポイント低下しました。
稼働率の上昇や売上増加はプラスでしたが、製品ミックスの悪化や製造費用、営業費用の増加が利益率を押し下げています。売上が増えても利益率が低下する状態が続かないか、3Q以降も確認が必要です。
円安が予想上振れの一部を押し上げた
第2四半期の会社予想は1ドル156円、1ユーロ180円でしたが、実績は1ドル159円、1ユーロ185円でした。予想より円安となったため、売上と利益率の上振れには為替の影響も含まれます。
ただし、為替影響を除いても前年同期比15.4%増収となっているため、「円安だけの好決算」ではありません。今後円高へ反転した場合に、実需の成長で為替のマイナスを補えるかが重要です。
IFRS純利益は継続利益だけではない
Wolfspeed関連の633億円の評価益は、毎四半期継続的に発生する利益ではありません。金融資産の評価額は市場環境やWolfspeedの企業価値によって変動する可能性があります。
純利益の前年比やEPSだけを見ると本業を過大評価するおそれがあるため、営業利益率、Non-GAAP利益、キャッシュフローをあわせて確認することが重要です。
タイミング事業の除外で単純比較が難しい
ルネサスは2026年2月以降、譲渡を決めたタイミング事業をNon-GAAP業績から除外しています。また、過去のセグメント情報も変更後の区分へ組み替えて開示しています。
IFRS売上収益とNon-GAAP売上収益の差にはタイミング事業の扱いも影響します。前年同期比を確認する際は、タイミング事業補正後の参考数値も使い、同じ集計範囲で比較しましょう。
2026年12月期の配当予想は未定
2025年12月期の年間配当は28円でしたが、2026年12月期は中間配当を実施せず、期末配当と年間配当の予想も未定です。今回の決算では増配や具体的な株主還元策は発表されませんでした。
業績とキャッシュフローは強いものの、通期業績予想を開示しない方針であることや、事業売却後の資本配分を検討する必要があるため、配当判断は年度後半に持ち越されています。
第3四半期の業績予想はどうだった?
ルネサスは通期予想ではなく、翌四半期までの累計業績をレンジ形式で開示します。今回発表された公式予想は2026年1〜9月の3Q累計予想です。
| 項目 | 3Q累計の会社予想 |
|---|---|
| Non-GAAP売上収益 | 1兆2,001億〜1兆2,151億円 |
| 売上総利益率 | 58.2% |
| 営業利益率 | 33.0% |
上期実績を差し引くと、第3四半期単独の売上収益は4,225億〜4,375億円、中央値は約4,300億円となります。営業利益は中央値ベースで約1,403億円、営業利益率は計算上約32.6%です。
| 項目 | 2Q実績 | 3Q単独の計算値 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4,053億円 | 4,225億〜4,375億円 |
| 売上収益中央値 | 4,053億円 | 約4,300億円 |
| 営業利益 | 1,327億円 | 約1,403億円 |
| 営業利益率 | 32.7% | 約32.6% |
3Qも増収増益を見込む
第3四半期単独の売上中央値は、2Q実績を約6%上回ります。営業利益も2Qの1,327億円から約1,403億円へ増える計算で、会社は需要回復が3Qも続くと見込んでいます。
自動車向けと産業・インフラ・IoT向けの両方が成長を支える前提です。2Qの予想上振れが一時的なものではなく、売上拡大が継続するガイダンスと評価できます。
利益率はほぼ横ばいの計画
第3四半期単独の営業利益率は計算上約32.6%で、2Q実績の32.7%とほぼ同じです。売上の増加は見込む一方、利益率の大幅な改善までは織り込んでいません。
製品ミックスや製造費用、在庫拡充に伴うコストなどを考慮している可能性があります。3Qでは売上成長だけでなく、売上総利益率58%前後と営業利益率32%台を維持できるかが焦点です。
3QのIFRS利益にはタイミング事業売却益が入る予定
タイミング事業の譲渡完了に伴い、ルネサスは2026年12月期第3四半期累計のIFRS決算で約4,433億円の譲渡益を計上する予定です。
この売却益はNon-GAAP業績から除外される一過性の利益です。3QのIFRS純利益が大幅に増えても、本業が同じ割合で伸びたことを意味しないため、Non-GAAPガイダンスと分けて評価する必要があります。
ルネサスが通期予想を開示しない理由
半導体市場は需要、顧客在庫、稼働率、製品価格、為替が短期間で変化します。このため、ルネサスは通期業績を一度に予想するのではなく、翌四半期までの累計予想をレンジ形式で開示しています。
他社のように通期予想の「上方修正」「下方修正」を基準に評価するのではなく、毎四半期の売上レンジ、売上総利益率、営業利益率が前回より強いかを確認することが重要です。
決算後の株価はどうなる?
今回の決算は、売上・利益率が会社予想を上回り、3Qも増収増益を見込んだため、基本的には株価の好材料になり得ます。特に産業・インフラ・IoT向けが為替影響を除いて29.3%増えた点は、需要回復への安心材料です。
一方、利益率は前四半期から低下し、Wolfspeed評価益やタイミング事業売却益など一過性利益も大きくなります。決算の見た目だけでなく、本業のNon-GAAP利益率が市場期待を上回ったかが株価反応を左右します。
株価上昇につながる材料
- 売上収益・売上総利益率・営業利益率が会社予想を上回った
- 為替影響を除いても前年同期比15.4%増収
- 自動車向け売上が回復し、営業利益率34.4%を確保
- 産業・インフラ・IoT向け売上が40.0%増加
- 3Qも売上・営業利益の増加を見込む
- 在庫回転日数が改善し、上期FCFも黒字
好決算でも株価が下がる可能性
- 売上総利益率と営業利益率が前四半期から低下した
- 予想上振れの一部に円安の効果が含まれる
- 3Qの営業利益率は2Qとほぼ横ばいの計画
- IFRS純利益にWolfspeed評価益を含む
- 期末配当と年間配当予想が未定
- 決算前から半導体需要回復が株価へ織り込まれていた可能性
好決算でも市場の事前期待が高ければ、材料出尽くしで売られる場合があります。翌営業日の値動きだけでなく、証券会社による業績予想や目標株価の変更も確認しましょう。
次回決算はいつ?
次回は2026年12月期第3四半期決算です。2026年7月31日時点で正式な発表日は公表されていません。前年の第3四半期決算は2025年10月30日に発表されたため、例年どおりであれば2026年10月末が候補です。
正式な日程はルネサスの財務カレンダーで公表されます。決算発表日や時間は変更される可能性があるため、過去実績ではなく公式発表を優先してください。
次回決算で確認したいポイント
- 3Q単独売上4,225億〜4,375億円の達成
- 営業利益率32%台の維持
- 自動車向け売上の回復継続
- 産業・インフラ・IoT向けの高成長継続
- 為替影響を除いた売上成長率
- 売上総利益率の下げ止まり
- 自社在庫と販売チャネル在庫、DOI・WOIの推移
- Wolfspeed関連資産の評価変動
- タイミング事業売却益を除いた本業利益
- 期末配当と株主還元方針
- 4Qに向けた新しいガイダンス

まとめ
ルネサスの2026年12月期第2四半期は、Non-GAAP売上収益が24.8%増の4,053億円、営業利益が1,327億円となり、売上・利益率ともに会社予想を上回った好決算です。自動車向けが回復し、産業・インフラ・IoT向けは40%増収となりました。
為替影響を除いても増収で、3Qも売上・営業利益の拡大を見込んでいます。一方、利益率は前四半期から低下し、IFRS純利益にはWolfspeed評価益など一過性の要因が含まれます。今後は本業の利益率、需要回復の継続、在庫管理、配当方針を確認することが重要です。
出典
ルネサス エレクトロニクス「2026年12月期 第2四半期 決算説明資料」
https://www.renesas.com/ja/about/investor-relations/event/presentation
ルネサス エレクトロニクス「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」
https://www.renesas.com/ja/about/investor-relations/financial/statement
ルネサス エレクトロニクス「業績ハイライト:Non-GAAP」
https://www.renesas.com/ja/about/investor-relations/financial/highlight
ルネサス エレクトロニクス「業績ハイライト:IFRS」
https://www.renesas.com/ja/about/investor-relations/financial/highlight/ifrs
ルネサス エレクトロニクス「財務カレンダー」
https://www.renesas.com/ja/about/investor-relations/event/schedule
ルネサス エレクトロニクス「当社連結子会社による事業譲渡完了に関するお知らせ」
https://www.renesas.com/ja/about/newsroom/update-notice-regarding-completion-business-transfer-consolidated-subsidiary
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