SOMPOホールディングスの2025年3月期決算を解説|6月から始まる自社株買いで株価は上がるの?

SOMPOホールディングスの2025年3月期決算が発表されました。

本記事では、発表された決算参考資料、決算説明資料、決算短信をもとに、同社の業績を詳しく解説します。

連結決算の概況からセグメント別の詳細、財務状況、株主還元、そして今期の見通しと株価への影響まで、投資家必見の情報をお届けします。

目次

SOMPOホールディングスの2025年3月期における連結決算の振り返り

SOMPOホールディングスの2025年3月期の連結決算は、経常収益が前期比10.5%増の5兆4,537億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1.7%増の4,229億円となり、増収増益を達成しました。

海外保険事業の増収や、国内損害保険事業における政策株式売却益の増加などが寄与しました。

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項目2024年3月期2025年3月期前期比
経常収益4兆9,336億円5兆4,537億円+5,201億円
経常利益4,880億円5,529億円+648億円
親会社株主に帰属する
当期純利益
4,160億円4,229億円+68億円
出典:SOMPOホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

経常収益は、主に保険引受収益の増加によるものです。特に海外保険事業における正味収入保険料が18.9%増加したことが大きく貢献しました。

一方、経常利益は増益となったものの、海外保険事業における純利益が前期比で減少しています。これは、2023年度に計上した保守的な備金積増影響の剥落があったものの、一過性の税効果剥落などの影響があったためです。

国内損害保険事業は、資産運用損益は好調だったものの、自動車保険の損害率上昇などが影響し、修正利益は微減となりました。

SOMPOホールディングスのセグメント別の業績は?

SOMPOホールディングスのセグメント別の業績は以下の通りです。海外保険事業が収益・利益ともにグループ全体の成長を牽引していることがわかります。

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セグメント経常収益/保険料等収入
(2025年3月期)
前期比親会社株主に帰属する
当期純利益/純利益
(2025年3月期)
前期比修正連結利益
(2025年3月期)
前期比
国内損害保険事業2兆3,017億円
(正味収入保険料)
+538億円1,797億円+699億円662億円-61億円
海外保険事業1兆7,148億円
(正味収入保険料)
+2,723億円1,935億円-441億円2,184億円+553億円
国内生命保険事業3,166億円
(生命保険料)
+75億円208億円+49億円404億円-13億円
介護事業1,826億円
(経常収益)
+54億円-16億円-14億円66億円-21億円
出典:SOMPOホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

国内損害保険事業 (損害保険ジャパン)

正味収入保険料は、自動車保険や火災保険の増収により、前期比2.4%増の2兆2,299億円となりました。特に火災保険は10.1%の増収となっています。
純利益は、政策株式の売却益が増加したことなどから、前期比23.6%増の2,569億円と大幅な増益を達成しました。一方で、修正利益は、自動車保険の修理費単価上昇による損害率悪化や、先行投資に伴う物件費増加などが影響し、前期比で微減となりました。

海外保険事業

正味収入保険料は、円安の影響に加え、再保険やグローバルマーケットの堅調な成長により、前期比18.9%増の1兆7,148億円と大幅に増加しました。
純利益は、前期比15.1%減の2,250億円となりました。これは、前年度にあった一過性の税効果剥落などの影響によるものです。修正利益は、堅調なトップライン成長と資産運用利益の上昇により、前期比33.9%増の2,184億円と大幅に増加しました。

国内生命保険事業 (SOMPOひまわり生命)

生命保険料等収入は、前期比1.0%増の4,373億円となりました。
純利益は、前期比30.9%増の207億円となりました。資産運用損益の増加などが寄与しました。修正利益は、事業費の増加などが影響し、微減となりました。

介護事業

売上高は、利用者数の増加などにより、前期比3.1%増の1,813億円となりました。
純利益は、処遇改善や物価高騰によるコスト増加、一過性要因の剥落などにより、61億円の損失(前期は82億円の利益)となりました。

SOMPOホールディングスの財務状況について

SOMPOホールディングスの2025年3月期末の財務状況は以下の通りです。総資産は前期末比で増加しましたが、純資産は微減となりました。自己資本比率は18.9%となっています。

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項目2024年3月31日2025年3月31日前期末比
総資産14兆8,327億円15兆300億円+1,972億円
負債11兆9,645億円12兆1,648億円+2,003億円
純資産2兆8,682億円2兆8,651億円-31億円
自己資本2兆8,518億円2兆8,470億円-48億円
自己資本比率19.2%18.9%-0.3 pt
出典:SOMPOホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

総資産が増加したのは、主に有価証券の増加によるものです。負債の増加は、保険契約準備金の増加が主な要因です。純資産は、利益剰余金が増加したものの、その他有価証券評価差額金が減少したことなどにより、微減となりました。

キャッシュフローの状況

2025年3月期のキャッシュフローの状況は以下の通りです。

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項目2024年3月期2025年3月期前期比
営業活動によるCF4,731億円4,306億円-424億円
投資活動によるCF-4,969億円-532億円+4,437億円
財務活動によるCF-876億円-4,574億円-3,697億円
現金及び
現金同等物期末残高
1兆1,985億円1兆1,493億円-492億円

営業活動によるキャッシュフローは、支払備金の増減額が減少したことなどにより、前期比で減少しました。投資活動によるキャッシュフローは、有価証券の取得による支出が減少したことや、売却・償還による収入が増加したことなどにより、支出が大幅に減少しました。財務活動によるキャッシュフローは、自己株式の取得による支出が増加したことや、配当金の支払額が増加したことなどにより、支出が大幅に増加しました。

主要財務指標(ROEなど)

項目2024年3月期2025年3月期
自己資本当期純利益率
(ROE)
17.5%14.8%
総資産経常利益率
(ROA)
3.5%3.7%
1株当たり当期純利益419.83円436.45円

ROEは前期から低下しましたが、14.8%と依然として高い水準を維持しています。ROAは微増となりました。1株当たり当期純利益は増加しました。

SOMPOホールディングスの株主還元について

SOMPOホールディングスは、株主還元を重要な経営課題と位置づけています。2025年3月期は、1株当たり年間配当金を前期の300円(株式分割前)から、株式分割後換算で132円としました。これは、株式分割を考慮すると実質的な増配となります。

2026年3月期の配当予想は、さらに増配となる150円としており、12期連続の増配を目指しています。

また、2024年度には総額2,600億円の自己株式取得を実施し、2025年度も1,050億円を上限とする自己株式取得を決議しており、積極的な株主還元姿勢を示しています。
取得期間は2025年6月2日~2025年11月18日です。

今期の見通しと戦略について

SOMPOホールディングスは、2026年3月期の連結業績予想(IFRSベース)として、親会社の所有者に帰属する当期利益3,350億円を見込んでいます。

これは、2025年3月期(日本基準)の4,229億円からは減少しますが、IFRSへの移行影響を考慮する必要があります。IFRS修正連結利益(予想)は3,630億円であり、2024年度のIFRS修正連結利益(3,234億円)と比較すると12.2%の増益を見込んでいます。

今後はIFRSを任意適用し、財務情報の国際的な比較可能性向上を目指します。

IFRS任意適用のポイント

SOMPOホールディングスは2025年度からIFRSを任意適用します。

これにより、日本の保険会計の特殊性が是正され、PLを中心にポジティブな影響が見込まれますが、これは中期経営計画策定時に織り込み済みであり、経営戦略に大きな変更はありません。

経営数値目標としては、IFRS修正連結ROE 13~15%(2026年度)、IFRS修正EPS成長率 +12%(2024~2026年度)を目指します。

事業別の戦略について

各セグメントの今期見通しや戦略は以下の通りです。

  • 国内損保事業
    自動車保険では事故率の逓減傾向を見込む一方、修理費単価の上昇に対応します。火災保険は料率適正化効果により黒字定着を目指します。2025年度は、自然災害や大口事故の増加を見込むものの、火災保険のベース収支改善などでコア保険引受利益の増加を目指します。
  • 海外保険事業
    トップラインの成長と収益性改善による保険引受利益の増加を牽引役とし、2025年度のIFRS修正利益は2,030億円を見込んでいます。特に、再保険と北米のベース収支改善、一過性要因(カリフォルニア山火事等)の剥落が寄与する見込みです。
  • 国内生保事業
    保険と健康サービス(Insurhealth®)の相乗効果で新契約拡大を図り、保有契約の積み上げを目指します。2025年度のIFRS修正利益は610億円を見込んでいます。
  • 介護事業
    利用者数の拡大や価格改定により、2025年度は1,882億円の売上高、100億円のIFRS修正利益を目指します。

決算内容や今期の見通しで、株価はどうなる?

今回の決算内容と今期の見通しから、株価に与える影響をポジティブ、ネガティブの両面から分析します。

株価にポジティブな影響を与える要因

株価にポジティブな影響を与える要因として、以下の4点が考えられます。

  • 過去最高益の更新と安定した収益基盤
    2024年度の修正連結利益が過去最高益を更新したこと、そして2025年度もIFRSベースで増益予想であることは、安定した収益力を示しており、株価に好影響を与える可能性があります。
  • 海外保険事業の力強い成長
    海外保険事業が保険引受利益、資産運用利益ともに好調で、グループ全体の成長を牽引している点は、今後の成長期待を高めます。
  • 積極的な株主還元
    12期連続の増配予想や大規模な自己株式取得は、株主への利益還元姿勢を明確にしており、投資家からの評価を高める要因となります。
  • IFRS適用による透明性向上
    IFRS適用により、グローバルな投資家からの評価が高まる可能性があります。

株価にネガティブな影響を与える要因

株価にネガティブな影響を与える要因として、以下の4点が考えられます。

  • 国内損害保険事業の課題
    自動車保険における修理費単価の上昇や、国内自然災害リスクは、収益の変動要因となり得ます。
  • IFRS移行に伴う数値の変動
    IFRSへの移行により、見かけ上の利益水準や純資産額が変動する可能性があり、市場がこれをどう評価するかが不透明です。
  • 金融市場の変動リスク
    金利や為替、株価の変動は、資産運用損益を通じて業績に影響を与える可能性があります。特に、海外保険事業は為替の影響を大きく受けます。
  • 海外保険事業の純利益減少
    2024年度の海外保険事業の純利益が減少した点は、懸念材料となる可能性があります。

まとめ

SOMPOホールディングスの2025年3月期決算は、海外保険事業を牽引役として堅調な結果となりました。

今期はIFRS適用という大きな変更がありますが、成長戦略と積極的な株主還元を継続し、更なる企業価値向上を目指しています。

国内損保事業の課題や金融市場の変動リスクには注意が必要ですが、海外事業の成長性や株主還元姿勢は、今後の株価を支える要因となるでしょう。投資家としては、IFRS移行後の業績推移と各事業戦略の進捗を注視していくことが重要です。

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