TDKは2026年7月31日、2027年3月期第1四半期決算を発表しました。売上高は前年同期比38.3%増、営業利益は53.0%増となり、売上高とすべての段階利益で過去最高を更新しています。
結論からいうと、今回の決算はAIデータセンター向けHDD部品や受動部品、スマートフォン向け二次電池、センサが伸びた好決算です。円安による押し上げを除いても営業利益は増えており、本業の収益改善も確認できました。
一方、売上高の過半を占めるエナジー応用製品では利益率が低下し、フリー・キャッシュ・フローは794億円の赤字です。通期予想も据え置かれたため、今後はAI需要の継続、二次電池の採算、キャッシュフローの改善、業績上方修正の有無が焦点になります。
この記事でわかること
- TDKの2027年3月期第1四半期決算の評価
- 市場予想との比較と利益が伸びた理由
- AIデータセンター、HDD、二次電池、センサの状況
- 赤字となったフリー・キャッシュ・フローの見方
- 通期予想、決算後の株価、次回決算の注目点

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TDKの最新決算はどうだった?

TDKの2027年3月期第1四半期は、大幅な増収増益となった好決算です。売上高だけでなく営業利益、税引前利益、親会社帰属利益も過去最高となり、利益率も改善しました。
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,410億500万円 | 38.3%増 |
| 営業利益 | 863億1,000万円 | 53.0%増 |
| 営業利益率 | 11.6% | 1.1ポイント上昇 |
| 税引前利益 | 945億円 | 64.0%増 |
| 親会社帰属四半期利益 | 805億8,100万円 | 94.4%増 |
| 基本的1株利益 | 42.45円 | 前年21.85円 |
売上高とすべての段階利益が過去最高
売上高は前年同期から2,052億円増加し、7,410億円となりました。営業利益は299億円増加して863億円となり、営業利益率も10.5%から11.6%へ改善しています。
直前の2026年3月期第4四半期と比べても、売上高は14.7%増、営業利益は107.1%増です。前年同期の反動だけではなく、前四半期比でも業績が大きく回復したことから、決算の内容は強かったと評価できます。
市場予想も大幅に上回る着地
IFISが決算前に集計していた第1四半期の税引前利益相当の市場予想は668億5,000万円でした。実績は945億円で、市場予想を約276億円、約41%上回っています。
| 項目 | 実績 | 市場予想 | 予想比 |
|---|---|---|---|
| 税引前利益相当 | 945億円 | 668億5,000万円 | 約41.4%上振れ |
TDKはIFRSを採用しており、IFISでは税引前利益に相当する数値を経常利益として掲載しています。会計項目の名称には違いがありますが、少なくとも決算前の市場期待を大きく上回る利益水準でした。
決算の良かった点
今回の決算では、AIデータセンター需要の恩恵がHDD関連部品だけでなく、コンデンサなどの受動部品にも広がりました。さらに、センサと二次電池も増収増益となり、全セグメントで売上が伸びています。
AIデータセンター需要が複数事業を押し上げた
AIデータセンター向けニアラインHDDの需要が堅調に推移し、HDDヘッドとHDDサスペンションの販売が増加しました。大容量データを保存するニアラインHDDは、生成AIやクラウドサービスでデータ量が増えるほど需要が伸びやすい製品です。
AI需要の効果は磁気応用製品だけではありません。受動部品でもAIデータセンター向けセラミックコンデンサ、アルミ・フィルムコンデンサの販売が増えました。TDKはAIサーバー本体だけでなく、電源や記憶装置周辺の部品需要も取り込んでいます。
受動部品とセンサの利益が約3倍に増加
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 受動部品 | 1,768億円 | 28.0%増 | 174億円 | 172.2%増 | 9.8% |
| センサ応用製品 | 619億円 | 33.3%増 | 78億円 | 191.6%増 | 12.7% |
| 磁気応用製品 | 816億円 | 49.6%増 | 96億円 | 51.8%増 | 11.7% |
| エナジー応用製品 | 4,058億円 | 42.1%増 | 694億円 | 25.3%増 | 17.1% |
受動部品の営業利益は前年の64億円から174億円へ増え、営業利益率も4.6%から9.8%へ改善しました。AIデータセンター、自動車、産業機器向けの販売増に加え、合理化や前期の構造改革効果が利益の伸びにつながっています。
センサ応用製品の営業利益は27億円から78億円へ増えました。磁気センサや温度・圧力センサが伸びたほか、MEMSセンサが黒字転換しています。これまで採算が安定しにくかったセンサ事業で、利益率が12.7%まで上昇した点は大きな改善です。
HDDヘッド・サスペンションが増収増益
磁気応用製品は、売上高が49.6%増の816億円、営業利益が51.8%増の96億円となりました。AIデータセンター向けHDD需要を背景に、HDDヘッドとHDDサスペンションが増収増益となり、利益率も11.7%へ上昇しています。
ただし、磁気応用製品に含まれるマグネットは増収減益でした。セグメント全体は好調でも、すべての製品が同じ強さではない点には注意が必要です。
二次電池は販売数量減でも増収増益
エナジー応用製品は売上高4,058億円、営業利益694億円となりました。スマートフォンなどICT関連製品の生産台数減少により、小型二次電池の販売数量は減りましたが、パックビジネスの拡大によって増収増益を確保しています。
産業機器向けの中型二次電池や電源も伸びました。TDKの売上高の約55%を占める主力事業が、数量減の環境でも売上と利益を増やした点は評価できます。
円安を除いても営業利益は増加
第1四半期の平均為替レートは1ドル159.43円、1ユーロ185.32円となり、前年同期より大幅な円安でした。為替変動は売上高を約725億円、営業利益を約113億円押し上げています。
一方、営業利益の前年同期からの増加額は299億円です。円安効果を差し引いても約186億円の増益となるため、今回の利益成長は為替だけによるものではありません。販売増、合理化、構造改革効果など本業の改善も寄与しています。
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決算の懸念点
決算数値は強かったものの、二次電池の利益率低下、赤字となったキャッシュフロー、通期予想の据え置きは確認しておきたいポイントです。
エナジー応用製品の利益率が低下
エナジー応用製品は増収増益でしたが、営業利益率は前年同期の19.4%から17.1%へ低下しました。売上高が42.1%増えた一方、営業利益の伸びは25.3%にとどまっています。
小型二次電池の販売数量減少に加え、製品構成の変化やパックビジネスの拡大、研究開発投資などが採算に影響したと考えられます。全社売上の過半を占める事業のため、利益率がさらに低下すると全社業績への影響も大きくなります。
フリー・キャッシュ・フローは794億円の赤字
| キャッシュフロー | 2027年3月期1Q | 前年同期 |
|---|---|---|
| 営業キャッシュ・フロー | 192億円の赤字 | 590億円の黒字 |
| 投資キャッシュ・フロー | 602億円の赤字 | 629億円の赤字 |
| フリー・キャッシュ・フロー | 794億円の赤字 | 39億円の赤字 |
利益が大幅に増えた一方で、営業キャッシュ・フローは192億円の赤字となりました。主な要因は、営業債権が約1,087億円増加したことと、法人税を約437億円支払ったことです。
投資面では、固定資産の取得に約849億円、子会社の取得に約368億円を支出しています。売上増加に伴う一時的な運転資金負担も含まれますが、2Q以降に営業債権を回収し、キャッシュフローが改善するかを確認する必要があります。
通期業績予想は据え置き
第1四半期は市場予想を上回る好決算でしたが、TDKは通期業績予想を変更しませんでした。ICT端末の生産減少、中東情勢、為替変動、メモリ価格の高騰など不透明な要因が残っているため、1Q時点では計画を据え置いたとみられます。
ただし、利益進捗率は高く、市場では上方修正への期待が高まりやすい状況です。次回決算で予想を据え置く場合は、下期の需要やコストについて慎重な説明が出る可能性があります。
円高に戻ると為替の追い風が弱まる
通期会社予想の為替前提は1ドル150円、1ユーロ175円です。第1四半期の平均レートより円高を想定しているため、1Qの為替効果を年間へそのまま延長することはできません。
TDKの試算では、ドルに対して1円の円高が進むと年間売上高を約130億円、営業利益を約20億円押し下げます。今後の為替が会社前提へ近づけば、1Qで得られた円安効果の一部が縮小します。
通期業績予想と進捗率
TDKは2027年3月期に増収増益を予想しています。1Q時点の利益進捗率はいずれも25%を上回り、親会社帰属利益は35.8%まで進みました。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 | 1Q進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,800億円 | 3.0%増 | 28.7% |
| 営業利益 | 2,950億円 | 8.3%増 | 29.3% |
| 税引前利益 | 3,000億円 | 8.4%増 | 31.5% |
| 親会社帰属利益 | 2,250億円 | 15.0%増 | 35.8% |
| 年間配当 | 40円 | 前期36円 | ― |
上方修正の可能性はある?
1Qの進捗だけを見れば、通期予想には上振れ余地があります。とくに税引前利益と親会社帰属利益の進捗率が高く、AIデータセンター向け需要とセンサの収益改善が続けば、2Q以降に上方修正される可能性があります。
一方、TDKは下期にスマートフォン向け新製品の立ち上がりや研究開発費、設備投資、売価値引きなどの影響を受けます。1Qを単純に4倍して年間利益を予測するのではなく、二次電池の利益率とキャッシュフローを同時に見ることが重要です。
上方修正につながる条件
- AIデータセンター向けHDDヘッド・サスペンションの販売が増え続ける
- コンデンサなどAIサーバー向け受動部品の需要が継続する
- スマートフォン向け二次電池で製品ミックスと採算が改善する
- MEMSセンサの黒字化とセンサ事業の高い利益率が続く
- 営業債権の回収が進み、営業キャッシュ・フローが黒字へ戻る
- 為替が会社前提より円安で推移する
決算後の株価はどうなる?
今回の決算は、売上高と全段階利益が過去最高となり、市場予想も上回ったため、基本的には株価の買い材料になり得ます。AIデータセンター向け需要が複数事業へ広がり、受動部品とセンサの利益率が改善した点も好材料です。
TDKは2026年7月31日15時30分に決算を発表しました。東京証券取引所の通常取引終了時刻と同じため、決算内容を本格的に反映する最初の通常取引は8月3日となります。
株価上昇につながる材料
- 売上高とすべての段階利益が過去最高
- 税引前利益が決算前の市場予想を大幅に上回った
- AIデータセンター向けHDD部品と受動部品が好調
- 受動部品とセンサの営業利益が約3倍に増加
- 通期業績の上方修正期待が高まる進捗率
好決算でも株価が下がる可能性
- 通期業績予想を上方修正しなかった
- 決算前から好業績への期待が株価へ織り込まれていた
- 営業利益に円安効果約113億円を含む
- エナジー応用製品の利益率が低下した
- フリー・キャッシュ・フローが794億円の赤字
好決算でも事前の期待が非常に高ければ、材料出尽くしで売られる場合があります。翌営業日の値動きだけでなく、アナリストの通期予想や目標株価が引き上げられるかも確認しましょう。
次回決算はいつ?
次回は2027年3月期第2四半期決算です。2026年7月31日時点で正式な発表日は公表されていません。前年の第2四半期決算は2025年10月31日15時30分に発表されたため、例年どおりであれば2026年10月末から11月初旬が候補になります。
正式な日程はTDKのIRカレンダーで公表されます。決算発表時間は近年15時30分、決算説明会は17時30分に行われるケースが続いています。
次回決算で確認したいポイント
- AIデータセンター向けHDDヘッド・サスペンションの販売動向
- AIサーバー向けコンデンサなど受動部品の利益率
- スマートフォン向け小型二次電池の数量と採算
- MEMSセンサの黒字維持とセンサ事業の利益率
- エナジー応用製品の営業利益率が回復するか
- 営業債権の回収と営業キャッシュ・フローの改善
- 通期業績予想と年間配当予想の上方修正

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まとめ
TDKの2027年3月期第1四半期は、売上高が38.3%増、営業利益が53.0%増となり、売上高とすべての段階利益で過去最高を更新した好決算です。AIデータセンター向けHDD部品や受動部品、二次電池、センサが成長し、円安を除いても営業増益となりました。
一方、エナジー応用製品の利益率低下と794億円の赤字FCFには注意が必要です。通期予想は据え置かれましたが、利益進捗率は高く、今後はAI需要の継続、二次電池の採算改善、キャッシュフローの黒字化、通期上方修正の有無が焦点になります。
出典
TDK株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会」
https://www.tdk.com/ja/ir/ir_events/conference/2027/1q_1.html
TDK株式会社「決算短信」
https://www.tdk.com/ja/ir/ir_library/financial/index.html
TDK株式会社「業績見通し」
https://www.tdk.com/ja/ir/financial_information/projections/index.html
TDK株式会社「IRカレンダー」
https://www.tdk.com/ja/ir/ir_events/calendar/index.html
TDK株式会社「2026年3月期 通期決算説明会 説明要旨」
https://www.tdk.com/ja/ir/ir_events/conference/2026/4q_2.html
IFIS株予報「TDK(6762)業績進ちょくと決算スケジュール」
https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&bcode=6762&sa=report
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