レーザーテックは何の会社?EUV半導体検査装置・強み・世界シェアを解説

レーザーテック(6920)は、AI・半導体関連銘柄として名前を聞く機会が多い一方、「実際には何を作っている会社なのか」「ASMLや半導体メーカーと何が違うのか」が分かりにくい企業でもあります。

結論からいうと、レーザーテックは半導体そのものを作る会社ではありません。光応用技術を使い、半導体製造に欠かせないフォトマスクやマスクブランクス、ウェハなどを検査・計測する装置メーカーです。特に最先端半導体で使われるEUV向けのマスク検査で、世界唯一・高シェアの製品を持つことが大きな強みです。

この記事では、フォトマスクやマスクブランクスの役割、ACTIS・ABICS・MATRICSといった主力製品、世界シェアの見方、ASML・KLAとの違い、AI半導体やHigh-NA EUVとの関係まで整理します。

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目次

レーザーテックは何の会社?

レーザーテックは、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)などの製造工程で使われる検査・計測装置を開発・製造・販売する会社です。なかでも現在の成長を支えているのが、半導体向けのマスクブランクス、フォトマスク、ウェハの検査・計測装置です。

本社は神奈川県横浜市港北区新横浜にあり、1960年に創業しました。証券コードは6920で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。社名に「レーザー」と入っていますが、レーザー機器を幅広く大量生産する会社というより、光学技術を使って「見えにくい微細な欠陥を見つける」ことを得意とする技術企業と捉えると分かりやすいでしょう。

項目内容
会社名レーザーテック株式会社
証券コード6920(東証プライム)
創業1960年7月
本社神奈川県横浜市港北区新横浜2-10-1
資本金9億3,100万円
主な事業半導体関連装置、FPD関連装置、レーザー顕微鏡

半導体そのものではなく「半導体製造装置」を作っている

レーザーテックを理解するうえで最初に押さえたいのは、TSMCやSamsung Electronicsのように半導体チップを製造する会社ではないという点です。レーザーテックは、半導体を作る工場やフォトマスクを作るメーカーなどに検査装置を納入する「半導体製造装置メーカー」の一社です。

半導体製造では、回路を微細化するほど、わずかな異物や欠陥が歩留まり低下につながります。最先端プロセスでは、肉眼ではもちろん一般的な光学機器でも確認が難しいレベルの欠陥管理が必要です。レーザーテックは、こうした高難度の検査・計測に光応用技術で対応しています。

主力はマスク・マスクブランクス・ウェハの検査装置

レーザーテックの半導体関連装置は、主にマスクブランクス、フォトマスク、ウェハを対象にしています。特にフォトマスク関連の欠陥検査装置では、EUVマスクブランクス欠陥検査装置が業界標準として採用され、マスク欠陥検査装置も最先端リソグラフィで高いシェアを持つと会社は説明しています。

一方で、事業はEUVだけに限定されません。ウェハエッジ検査、膜厚全面検査、Si厚さ測定、SiCウェハ欠陥検査なども展開しています。さらにFPD向け検査装置やレーザー顕微鏡も手掛けており、光学・画像処理・計測技術を複数分野へ応用しています。

レーザーテックの検査装置は半導体製造のどこで使われる?

レーザーテックの強みを理解するには、半導体製造における「フォトマスク」の役割を知ることが重要です。フォトマスクは、ウェハ上に微細な回路パターンを形成するための回路原版にあたります。レーザーテックは、この原版やその材料に欠陥がないかを検査します。

フォトマスクは半導体回路を作るための「原版」

半導体は、シリコンウェハの上に極めて細かい回路を何層も形成して作られます。その際、回路パターンをウェハへ転写する露光工程で使う原版がフォトマスクです。写真でいうネガフィルムや、印刷で使う版のような役割をイメージすると分かりやすいでしょう。

フォトマスクのパターンに欠陥があれば、その欠陥までウェハへ転写され、半導体チップの不良につながる可能性があります。高価なウェハを大量に処理する前段階で、マスクの品質を保証することが歩留まり確保に直結するため、検査装置の重要性が高くなります。

マスクブランクスはフォトマスクを作るための材料

マスクブランクスは、フォトマスクを作る前の材料です。ブランクスの表面や多層膜内部に欠陥があると、その後に正しい回路パターンを形成しても品質問題が残る可能性があります。そこで、フォトマスクになる前の段階から欠陥を見つける必要があります。

流れを簡略化すると、マスクブランクス → 回路パターンを形成してフォトマスク化 → 露光装置でウェハへ回路を転写となります。レーザーテックは、マスクブランクス段階とフォトマスク段階の両方で検査装置を持っている点が特徴です。

微小な欠陥でも多数のチップ不良につながり得る

フォトマスクは一度だけ使って終わるものではなく、同じ回路パターンを多数のウェハへ転写するために使用されます。そのため、マスクに転写性のある欠陥が残っていれば、その影響が複数のウェハ、さらに多数のチップへ広がる可能性があります。

最先端半導体は製造コストが高く、歩留まり悪化の損失も大きくなります。検査装置は半導体そのものを作る装置ではありませんが、不良を未然に防ぎ、量産を安定させるための重要なプロセスコントロール装置です。これが、レーザーテックの装置に高い付加価値が生まれる理由の一つです。

EUVとは?レーザーテックが注目される理由

レーザーテックが世界的に注目されるようになった大きな理由が、EUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)リソグラフィの普及です。EUVは、最先端半導体の微細な回路を形成するために使われる露光技術で、波長13.5nmの非常に短い光を利用します。

EUVは最先端半導体の微細化を支える露光技術

半導体は、トランジスタや配線を細かく作ることで、同じ面積により多くの機能を詰め込みやすくなります。性能向上や省電力化を進めるうえで微細化は重要ですが、回路が細くなるほど従来の露光技術ではパターン形成が難しくなります。

ASMLのEUV露光装置は、13.5nmのEUV光を使って最も微細な層のパターンをウェハへ転写します。AI向けGPUや先端ロジック、先端メモリなどの製造ではEUVの重要性が高まっており、今後はより高い解像度を狙うHigh-NA EUVの導入も進む見通しです。

EUVではマスク検査も従来以上に難しくなる

EUVは光の性質が従来のDUV露光と異なり、EUVマスクには反射型の多層膜構造が使われます。欠陥が表面だけでなく多層膜内部に存在する場合もあり、実際のEUV露光と同じ13.5nmの光を使って検査する「アクティニック検査」の重要性が高まります。

半導体が微細化すればするほど、許容できる欠陥サイズも小さくなります。つまり、EUVの普及は「露光装置の需要が増える」だけではなく、「EUVマスクをより高い精度で検査する装置が必要になる」という需要も生みます。レーザーテックは、この難易度の高い検査領域に早くから投資してきました。

レーザーテックの主力製品は?

レーザーテックには多数の製品がありますが、最先端半導体との関係を理解するうえではACTIS、ABICS、MATRICSの役割を区別すると分かりやすくなります。いずれもマスク関連の検査装置ですが、検査対象や検査方法が異なります。

シリーズ主な検査対象・役割
ACTISEUVパターンマスクをEUV光で検査。High-NA対応機も展開
ABICSEUVマスクブランクスの多層膜内部などの欠陥を検査・レビュー
MATRICSフォトマスク/EUVマスクの異物・パターン欠陥を光学的に検査
その他ウェハエッジ、膜厚、SiCウェハ、マスク裏面、ペリクルなどを検査

ACTIS|EUVパターンマスクの欠陥を検査

ACTISは、EUVパターンマスクの欠陥を検査するシリーズです。2019年に発売されたACTIS A150は、EUV光源を使うEUVパターンマスク欠陥検査装置として世界初とレーザーテックが説明しています。実際のEUV露光と同じ波長の光を使うため、ウェハへ転写される可能性のある欠陥を高感度で評価できる点が重要です。

次世代のACTIS A300シリーズは、現行NAだけでなくHigh-NA EUV用マスクの検査にも対応しています。EUVマスク製造工程での品質保証に加え、ウェハファブでの受入検査や定期的な品質確認にも使われます。High-NA世代でも検査ニーズを先回りして製品化している点は、レーザーテックの開発力を象徴する例です。

ABICS|EUVマスクブランクス内部の欠陥を検査

ABICSは、フォトマスクになる前のEUVマスクブランクスを検査するシリーズです。EUVブランクスはMo/Siの多層膜でEUV光を反射させる構造を持つため、膜内部に生じた微小な位相欠陥を管理する必要があります。

2024年に発表されたABICS E320は、13.5nmのEUV光源を使い、High-NA EUV世代で求められるより微小な位相欠陥を高感度で検出し、欠陥座標を高精度で測定する装置です。マスクが完成する前の材料段階で不良要因を管理するという点で、ACTISとは役割が異なります。

MATRICS|EUV・DUVマスクの異物や欠陥を検査

MATRICSはフォトマスク検査装置の代表的なシリーズです。例えばX9ULTRAシリーズは、3nm以降のペリクル非装着EUVマスクに特化し、微小異物を検出します。EUV光を直接使うACTISとは異なり、193nmレーザーなどを用いた高速な光学検査でマスク品質を確認します。

レーザーテックは最先端ノードだけでなく、2026年には90nm以上の成熟ノードまで幅広く対応するMATRICS X712シリーズも発表しています。AI向け最先端半導体だけではなく、ロジック、アナログ、ディスクリート、パワー半導体など幅広い製造現場の検査ニーズを取り込む製品群を持っています。

ウェハ検査やSiC、ペリクルなどにも製品を展開

半導体関連ではマスク検査以外にも、ウェハエッジ検査、膜厚全面検査、Si厚さ測定、SiCウェハ欠陥検査などを提供しています。また、EUVマスク裏面の検査・クリーニングや、EUVペリクルの異物検査など、EUVマスク周辺の品質管理にも製品を広げています。

このため、レーザーテックを「EUVの1製品だけで稼ぐ会社」と見るのは正確ではありません。コア技術である光応用技術を使い、マスク周辺を中心に複数の高難度検査ニーズへ横展開している会社と見る方が実態に近いでしょう。

レーザーテックの世界シェアはどのくらい?

レーザーテックは「EUV検査装置で世界シェア100%」と紹介されることがあります。ただし、EUV関連のすべての装置が一律に100%という意味ではありません。現在のレーザーテック公式IRは、半導体マスク・マスクブランクス欠陥検査装置について「世界で唯一の製品や高シェアの製品を提供」と表現しています。

EUV関連装置すべてが「100%」という意味ではない

金融機関や業界解説では、EUVマスクブランクス欠陥検査装置など特定領域を「世界シェア100%」と紹介する例があります。一方、製品世代や検査方式、対象工程が変われば競争環境も変わるため、「世界シェア100%」をEUV関連製品すべてに当てはめるのは正確ではありません。

公式情報から確認できる強みは、世界で唯一の製品を持つこと、最先端マスク検査で高シェアを獲得していること、EUVマスクブランクス欠陥検査装置が業界標準として採用されていることです。投資判断では、固定的なシェア率だけでなく、次世代製品でもこのポジションを維持できるかを見る必要があります。

EUVマスクブランクス検査装置は業界標準の地位

レーザーテックは、主力のフォトマスク関連装置について、EUVマスクブランクス欠陥検査装置が業界標準の検査装置として採用されていると説明しています。半導体メーカーやマスク関連企業は品質基準や検査フローを簡単には変更しにくいため、標準的に使われる装置となることは大きな競争優位につながります。

特に先端半導体では、検査装置の性能不足が歩留まりや量産立ち上げに影響します。顧客側で長い評価や認定を経て導入された装置は、単純な価格差だけで置き換えられにくく、レーザーテックの高シェアと高収益を支える要因になります。

世界初の製品を生み出し、市場を先に作ってきた

レーザーテックは1976年に世界初のLSIフォトマスク欠陥検査装置を開発・発売し、2017年にはEUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置ABICS E120、2019年にはEUVパターンマスク欠陥検査装置ACTIS A150を世界初として製品化しています。

既存市場で価格競争をしてシェアを奪うよりも、顧客がまだ十分な解決策を持っていない新しい検査課題を先に製品化し、ニッチ市場で標準的なポジションを取ることがレーザーテックの基本戦略です。これが「グローバルニッチトップ」と呼ばれる理由です。

レーザーテックの強みは?

レーザーテックの競争力は、単に一つの装置で高シェアを持っていることだけではありません。光学技術、開発スピード、顧客との距離、ファブライト経営を組み合わせ、新しい検査ニーズへ早く製品を投入できることが構造的な強みです。

光応用技術を軸に高難度の検査ニーズへ対応

会社は、共焦点光学系、DUV/EUV光学系、光干渉計などの光応用技術をコアにしています。半導体の微細化が進むと、従来の検査方法では見つけにくい欠陥が増え、新しい光源や光学系、画像処理技術が必要になります。

レーザーテックは、こうした技術を装置ごとに組み合わせて製品化します。EUV光源「URASHIMA」のように、検査装置の性能を高めるための重要部品まで自社で開発する例もあり、単なる装置組み立て企業ではない点が特徴です。

EUV市場へ早期参入し、次世代High-NAにも先行

EUVは実用化まで長い時間を要した技術ですが、レーザーテックは量産普及前からEUVマスク検査へ開発投資を続けました。EUV露光が量産で普及する段階には、すでにマスクブランクス、パターンマスク、マスク裏面など複数工程をカバーする製品群を持っていました。

現在はHigh-NA EUVに対応するACTIS A300やABICS E320まで展開しています。半導体メーカーが次世代プロセスへ移行する前から検査課題を把握し、顧客の量産立ち上げに間に合うタイミングで装置を用意できるかが、今後もシェアを維持する鍵になります。

約7割がエンジニアの開発型組織とファブライト戦略

レーザーテックは、生産の一部を外部委託するファブライト戦略を採用しています。会社の経営戦略ページによると、約7割の社員がエンジニアで、売上高の5~10%を研究開発費に充てる体制です。製造設備を大量に自社保有するより、開発や顧客対応へ経営資源を集中させています。

また、組織をフラットかつ柔軟に保ち、顧客ニーズへの意思決定と製品開発を速めることを経営戦略として掲げています。市場規模が巨大になるまで待つのではなく、ニッチでも技術的に差別化できる領域へ早く入ることで、高シェアと高収益を狙う仕組みです。

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レーザーテックはなぜ利益率が高い?

レーザーテックは半導体製造装置企業の中でも高い収益性で知られています。背景にあるのは、高付加価値のニッチ製品、高い市場ポジション、ファブライト経営、導入後のサービス収益です。単純な大量生産型メーカーとは収益構造が異なります。

高シェア・高付加価値の検査装置を販売している

EUVマスク検査のような装置は、顧客にとって「安ければよい」製品ではありません。検査性能が不足すれば、高価なマスクやウェハの不良を見逃し、量産歩留まりに大きな影響が出ます。性能、信頼性、過去の導入実績、サポート体制が重視されるため、参入障壁が高くなります。

レーザーテックは、技術的な差別化が可能な市場で高シェアと高収益を狙う方針を明確にしています。顧客にとって装置価格以上に不良防止の経済価値が大きい領域を選ぶことで、高付加価値な価格設定を維持しやすくなります。

ファブライト経営で開発へ資源を集中できる

半導体製造装置は大型で複雑ですが、レーザーテックはすべての製造工程を完全内製するのではなく、外部パートナーを活用しています。需要増に合わせて生産を柔軟に調整しやすく、製造固定費の増加を抑えながら、研究開発・設計・ソフトウェア・顧客対応へ人材を集中できます。

ただし、ファブライトは何もしなくても高利益になる仕組みではありません。外部パートナーの品質管理や部材調達、納期管理は必要です。レーザーテックの場合は、高付加価値領域に社内リソースを寄せる戦略と、ニッチトップ製品の組み合わせが収益性を支えています。

装置納入後のサービス売上も積み上がる

検査装置は納入して終わりではなく、稼働後の保守、調整、部品交換、アップグレードなどのサービスが必要です。累積の装置設置台数が増えるほど、既存顧客からのサービス需要も積み上がりやすくなります。

会社は2030年6月期に向け、サービス売上比率の拡大も重視しています。装置販売は顧客の設備投資サイクルによって変動しやすいため、ストック性のあるサービス収益を増やせれば、業績の安定性を高める効果も期待できます。

ASMLとレーザーテックの違いは?

レーザーテックとASMLは、どちらもEUV関連で名前が出るため競合のように見えますが、基本的な役割は異なります。ASMLは回路パターンをウェハへ転写するEUV露光装置、レーザーテックはその露光で使うマスクなどを検査する装置を提供します。

会社主な役割レーザーテックとの関係
ASMLEUV/DUV露光装置でマスクの回路をウェハへ転写直接競合より、EUV普及を通じた需要連動が大きい
レーザーテックマスク、マスクブランクス、ウェハなどの欠陥を検査・計測EUVマスク品質を保証する側
KLAウェハ・レチクルなど幅広い検査・計測、プロセスコントロール一部のマスク/レチクル検査領域で競合

ASMLは回路を「転写」、レーザーテックはマスクを「検査」

ASMLのEUV露光装置は、EUVマスクに形成された回路パターンを光学系で縮小しながらウェハへ転写します。EUV量産ではASMLの露光装置が中核になりますが、その前提として、露光に使うマスクが要求品質を満たしている必要があります。

したがって、ASMLとレーザーテックは「同じEUV装置を売り合うライバル」というより、EUVリソグラフィという同じ技術トレンドの別工程を支える企業です。EUVの利用工程やHigh-NA EUVが拡大すれば、露光装置だけでなくマスク検査の要求も高度化しやすくなります。

レーザーテックの競合企業は?

半導体の検査・計測では米KLAが世界的な大手です。KLAはウェハ検査、欠陥レビュー、計測、レチクル(フォトマスク)検査など幅広いプロセスコントロール製品を持ち、マスク関連の一部領域ではレーザーテックと競合します。

半導体検査・計測ではKLAが世界的大手

KLAはレチクル(フォトマスク)の品質管理向けにTeronシリーズなどの欠陥検査装置を展開しており、EUVレチクルの検査にも対応しています。半導体前工程全体を幅広くカバーする総合プロセスコントロール企業である点が大きな特徴です。

レーザーテックはKLAより企業規模や製品範囲が小さい一方、EUVマスクブランクスやアクティニックEUVパターンマスク検査など、高度な光学技術が必要なニッチ領域で世界初・高シェア製品を作る戦略を取っています。

「総合力のKLA」と「ニッチトップのレーザーテック」

競争構造を単純化すると、KLAは半導体製造工程全体へ多数の検査・計測装置を提供する総合型、レーザーテックは限られた市場でも技術的に差別化しやすい領域を狙うニッチ型です。

ただし、ニッチトップだから競争がないわけではありません。市場が拡大すれば競合企業が開発投資を増やす可能性もあります。レーザーテックが今後も高シェアを維持するには、High-NA EUVなど次世代技術で顧客が必要とする性能を競合より早く実用化することが重要です。

AI半導体とレーザーテックはどう関係する?

レーザーテックはAIサービスやGPUを作る会社ではありませんが、AI半導体の製造設備側から需要を取り込む企業です。AI投資が先端ロジックやHBMなどの需要を押し上げ、半導体メーカーが微細化や設備投資を進めれば、マスク検査・計測の需要にもつながります。

AI向けGPUの高性能化には先端プロセスが重要

生成AI向けGPUやCPUでは、演算性能を高めながら消費電力を抑えることが重要です。そのため、最先端ロジックでは微細なプロセスノードの採用が進み、EUV露光が重要な役割を担います。レーザーテック自身も、AI投資拡大を背景にGPUやHBMなど先端半導体への旺盛な需要が続いていると説明しています。

ただし、「AI需要が増えればレーザーテックの売上が同じタイミングで増える」と単純には言えません。半導体メーカーの設備投資、マスクの採用時期、装置の受注・納入・検収には時間差があるため、AI需要は中長期の追い風として見る必要があります。

微細化が進むほどEUVと検査装置の重要性も高まる

AI向け先端半導体の性能向上が続けば、微細化や新しいトランジスタ構造、複雑な製造工程が増えていきます。回路が細かくなるほど、マスク上で許される欠陥も小さくなり、検査装置にはより高い感度と精度が求められます。

このため、AI投資の恩恵は「GPUが売れる」だけではなく、最先端半導体の製造難易度が上がるほど検査・計測の価値も上がるという形でレーザーテックへ波及します。これは半導体市況の数量成長とは別の、技術高度化による成長要因です。

High-NA EUVは中長期の成長材料

ASMLは次世代EUVとして、開口数(NA)を0.33から0.55へ高めたHigh-NA EUVプラットフォームを開発しています。High-NAではさらに微細な回路形成を狙える一方、マスク側にも新しい検査要求が生まれます。

レーザーテックはすでにACTIS A300とABICS E320でHigh-NA世代を想定した製品を投入しています。High-NAの量産採用時期や導入速度には不確実性がありますが、市場が立ち上がる前から対応製品を用意していること自体がレーザーテックの先行開発戦略を示す材料です。

レーザーテックの今後の成長性とリスク

レーザーテックにはAI、EUV、High-NA、半導体微細化という中長期の成長材料があります。一方で、半導体製造装置は顧客の設備投資サイクルの影響を強く受けます。技術的な強さと、受注が年ごとに変動する事業特性を分けて見ることが重要です。

AI・EUV・High-NAは中長期の成長材料

会社は2025年6月期から2030年6月期までの中期経営計画で、市場成長を上回る年平均成長率10%以上を目指し、2030年6月期の財務目標として売上高4,000~5,000億円、営業利益率35%以上を掲げています。

成長の前提となるのは、最先端半導体の需要拡大と製造技術の高度化です。EUVだけでなく、新材料、新構造、成熟ノード、SiCなど検査対象を広げ、サービス収益も積み上げられれば、特定製品への依存を下げながら成長できる可能性があります。

半導体設備投資の波は業績リスク

最大のリスクの一つは、顧客の設備投資が延期・縮小されることです。レーザーテックは高シェア製品を持っていても、顧客が新しい装置を発注するタイミングが後ろ倒しになれば、受注高は大きく変動します。実際、過去にも一部顧客の投資計画見直しで受注が弱含んだ局面がありました。

また、High-NAなど新技術の普及時期、新製品の顧客認定、競合技術の進展も確認が必要です。中長期では、受注高、受注残高、ACTIS・ABICSなど新世代製品の採用、サービス売上、利益率を追うことで、競争力が実際の業績へつながっているか判断しやすくなります。

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レーザーテックは何の会社?まとめ

レーザーテック(6920)は、半導体そのものを製造する会社ではなく、光応用技術を使ってフォトマスク、マスクブランクス、ウェハなどの欠陥を検査・計測する半導体製造装置メーカーです。

  • 主力分野:半導体用マスク・マスクブランクス・ウェハの検査・計測装置
  • EUVでの強み:世界初・世界唯一・高シェアの製品を持ち、EUVマスクブランクス検査では業界標準の地位
  • 主力製品:ACTIS、ABICS、MATRICSなど
  • 競争力:光応用技術、先行開発、約7割がエンジニアの開発型組織、ファブライト戦略
  • ASMLとの違い:ASMLは露光、レーザーテックはマスクなどの検査
  • 成長材料:AI半導体、EUV、High-NA EUV、サービス収益、新しい検査市場
  • リスク:顧客設備投資の変動、受注の波、新技術の採用時期、競合技術

レーザーテックの価値は、「検査装置を作っている」ことだけではなく、半導体が高度化するほど難しくなる検査課題を、世界に先駆けて製品化してきたことにあります。今後もHigh-NA EUVをはじめとする次世代プロセスで同じ先行ポジションを維持できるかが、中長期の成長性を見るうえで重要です。

出典

レーザーテック株式会社「会社概要」

https://www.lasertec.co.jp/company/profile/index.html

レーザーテック株式会社「事業内容・コア技術」

https://www.lasertec.co.jp/company/business.html

レーザーテック株式会社「個人投資家の皆さまへ」

https://www.lasertec.co.jp/ir/individuals

レーザーテック株式会社「経営戦略」

https://www.lasertec.co.jp/ir/plan/strategy.html

レーザーテック株式会社「業績報告」

https://www.lasertec.co.jp/ir/plan/message.html

レーザーテック株式会社「世界ではじめての装置」

https://www.lasertec.co.jp/ir/individuals/creation.html

レーザーテック株式会社「沿革」

https://www.lasertec.co.jp/company/history.html

レーザーテック株式会社「ACTIS A300シリーズ」

https://www.lasertec.co.jp/products/semiconductor/actis_a300.html

レーザーテック株式会社「ABICSシリーズ E320」

https://www.lasertec.co.jp/products/semiconductor/abics_e320.html

レーザーテック株式会社「MATRICS X9ULTRAシリーズ」

https://www.lasertec.co.jp/products/semiconductor/matrics_x9ultra.html

レーザーテック株式会社「新製品 マスク欠陥検査装置 MATRICS X712シリーズを発表」

https://www.lasertec.co.jp/news/2026/20260331_3927.html

ASML「EUV lithography systems」

https://www.asml.com/en/products/euv-lithography-systems

KLA「Teron SL670e Product Fact Sheet」

https://www.kla.com/documents/pdf/KLA_Teron_SL670e_ProductFactSheet.pdf

マネックス証券「世界トップシェアを誇る安定成長銘柄12選」

https://info.monex.co.jp/news/2024/20241008_03.html

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