メガバンク3社の2025年3月期決算比較|収益性、財務状況、株主還元、今期見通しは?

2025年3月期の本決算が出揃った大手メガバンク3社(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)

各社の戦略が業績にどのような影響を与えたのか、そして来期(2026年3月期)はどのような見通しを立てているのでしょうか。

本記事では、各社の決算短信および決算説明資料を基に、収益性、財務状況、株主還元、そして今期の業績見通しを徹底比較します。

目次

メガバンク3社の業績・各指標ランキング形式で比較

まずは、メガバンク3社の業績や株価指標などをランキング形式でまとめました。

どの銀行がどの指標で優れているかが一目でわかるようになっていますので、ぜひ参考にしてください。

※通常の決算比較をすぐに見たい方はこちら(クリックで移動します)

2025年3月期 業績ランキング

経常収益のランキングです。

順位銀行名経常収益(億円)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ136,300
2三井住友フィナンシャルグループ101,749
3みずほフィナンシャルグループ90,304

経常利益のランキングです。

順位銀行名経常利益(億円)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ26,695
2三井住友フィナンシャルグループ17,195
3みずほフィナンシャルグループ11,681

当期純利益のランキングです。

順位銀行名親会社株主に帰属する当期純利益(億円)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ18,629
2三井住友フィナンシャルグループ11,780
3みずほフィナンシャルグループ8,854

財務状況のランキング(2025年3月末)

総資産のランキングです。

順位銀行名総資産(億円)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ4,131,135
2三井住友フィナンシャルグループ3,062,820
3みずほフィナンシャルグループ2,833,204

純資産のランキングです。

順位銀行名純資産(億円)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ217,281
2三井住友フィナンシャルグループ148,415
3みずほフィナンシャルグループ105,238

自己資本比率のランキングです。

順位銀行名自己資本比率(%)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ5.0
2三井住友フィナンシャルグループ4.8
3みずほフィナンシャルグループ3.6
*自己資本比率は各社決算短信記載の定義に基づき、高い順にランキング。

収益性ランキング(2025年3月期)

ROEのランキングです。

順位銀行名ROE(%)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ9.3
2みずほフィナンシャルグループ8.5
3三井住友フィナンシャルグループ8.0

ROAのランキングです。

順位銀行名ROA(%)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ0.7
2三井住友フィナンシャルグループ0.6
3みずほフィナンシャルグループ0.4

EPSのランキングです。

順位銀行名EPS(円)
1みずほフィナンシャルグループ350.20
2三井住友フィナンシャルグループ301.55
3三菱UFJフィナンシャル・グループ160.02

株価の割安性ランキング(2025年5月21日終値基準)

*PER、PBRは数値が低いほど割安と判断されるため、低い順にランキングしています。

PERのランキングです。

順位銀行名PER(倍)
1みずほフィナンシャルグループ11.11
2三井住友フィナンシャルグループ11.83
3三菱UFJフィナンシャル・グループ12.31

PBRのランキングです。

順位銀行名PBR(倍)
1みずほフィナンシャルグループ0.93
2三井住友フィナンシャルグループ0.94
3三菱UFJフィナンシャル・グループ1.10

株主還元ランキング(2025年3月期実績)

年間配当金のランキングです。

順位銀行名年間配当金(円)
1みずほフィナンシャルグループ140.00
2三井住友フィナンシャルグループ122.00 ※1
3三菱UFJフィナンシャル・グループ64.00
※1 三井住友フィナンシャルグループは株式分割考慮後の金額。

今期(2026年3月期)業績見通しランキング

経常利益見通しのランキングです。

順位銀行名経常利益見通し(億円)前期比増減率(%)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ28,500+6.8
2三井住友フィナンシャルグループ18,000+4.7
3みずほフィナンシャルグループ12,900+10.4

当期純利益見通しのランキングです。

順位銀行名当期純利益見通し(億円)前期比増減率(%)
1三菱UFJフィナンシャル・グループ20,000+7.4
2三井住友フィナンシャルグループ13,000+10.4
3みずほフィナンシャルグループ9,400+6.1

今期(2026年3月期)配当見通しランキング

年間配当金見通しのランキングです。

順位銀行名年間配当金見通し(円)
1みずほフィナンシャルグループ145.00
2三井住友フィナンシャルグループ136.00 ※2
3三菱UFJフィナンシャル・グループ70.00
※2 三井住友フィナンシャルグループの配当金は株式分割考慮後。

配当利回りのランキングです。

順位銀行名配当利回り(%)
1三井住友フィナンシャルグループ3.81
2みずほフィナンシャルグループ3.73
3三菱UFJフィナンシャル・グループ3.55

メガバンク3社の2025年3月期業績を比較

2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績を見ていきましょう。経常収益(売上高に相当)、経常利益、そして親会社株主に帰属する当期純利益を比較します。

スクロールできます
銀行名経常収益
(億円)
経常利益
(億円)
親会社株主に帰属する
当期純利益(億円)
三菱UFJフィナンシャル・グループ136,30026,69518,629
三井住友フィナンシャルグループ101,74917,19511,780
みずほフィナンシャルグループ90,30411,6818,854
出典:各社の決算短信

2025年3月期においては、三菱UFJフィナンシャル・グループが経常収益、経常利益、当期純利益の全てにおいて3社の中で最も高い数値を記録しました。

特に当期純利益は1.86兆円と、他2社を大きく引き離す結果となりました。三井住友フィナンシャルグループがこれに続き、みずほフィナンシャルグループも堅調な業績を示しています。

三菱UFJは海外大口先の戻入益や債券ポートフォリオの組替え影響などが利益を押し上げました。

メガバンク3社の財務状況を比較

次に、各社の財務の健全性を示す総資産、純資産、自己資本比率を見ていきます。

スクロールできます
銀行名総資産
(億円)
純資産
(億円)
自己資本比率
(%)
三菱UFJフィナンシャル・グループ4,131,135217,2815.0
三井住友フィナンシャルグループ3,062,820148,4154.8
みずほフィナンシャルグループ2,833,204105,2383.6
*自己資本比率の算出方法: (期末純資産の部合計 – 期末新株予約権 – 期末非支配株主持分) ÷ 期末資産の部合計(各社決算短信記載の定義)

総資産、純資産ともに三菱UFJフィナンシャル・グループが最も大きい規模となっています。自己資本比率で見ると、三菱UFJが5.0%、三井住友が4.8% と比較的高い水準を維持しており、財務の安定性を示しています。

みずほは3.6%となっていますが、これは各行の決算短信記載の算出基準に基づくものであり、バーゼル規制に基づく自己資本比率とは異なる点に留意が必要です。例えば、みずほのバーゼルIII最終化ベースのCET1比率は11.1%(25年3月末、その他有価証券評価差額金除く)です。

メガバンク3社の収益性(ROE、ROA、EPS)を比較

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)、ROA(総資産経常利益率)、EPS(1株当たり利益)を比較します。

銀行名ROE(自己資本利益率)
(%)
ROA(総資産経常利益率)
(%)
EPS
(円)
三菱UFJフィナンシャル・グループ9.30.7160.02
三井住友フィナンシャルグループ8.00.6301.55
みずほフィナンシャルグループ8.50.4350.20
*ROE、ROAは各社決算短信記載の数値

ROE(自己資本利益率)では三菱UFJフィナンシャル・グループが9.3%と最も高く、効率的に自己資本を活用して利益を上げていることがうかがえます。みずほフィナンシャルグループも8.5%と堅調です。

ROA(総資産経常利益率)においても三菱UFJが0.7%でトップでした。

EPS(1株当たり利益)ではみずほが350.20円と最も高くなっていますが、これは発行済株式総数の違いも影響します。三井住友は2024年10月1日付で1株を3株とする株式分割を実施しており、EPSはその影響を考慮した数値です。

メガバンク3社の株価の割安性(PER、PBR)を比較

株価の割安度を測る代表的な指標のPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)を比較します。なお、株価は2025年5月21日の終値を使用します。

スクロールできます
銀行名株価(円)
(2025/5/21終値)
EPS(円)
(2025年3月期)
PER(倍)BPS(円)
(2025年3月末)
PBR(倍)
三菱UFJフィナンシャル・グループ1,970.0160.0212.311,783.371.10
三井住友フィナンシャルグループ3,568.0301.5511.833,795.620.94
みずほフィナンシャルグループ3,890.0350.2011.114,161.030.93

PER(株価収益率)は、株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示し、低いほど割安とされます。この比較では、みずほフィナンシャルグループが11.11倍と最も低く、次いで三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループの順となっています。

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株当たり純資産の何倍かを示し、1倍割れは株価が解散価値(※)を下回っていることを意味し、割安と判断されることがあります。

この点では、みずほフィナンシャルグループ(0.93倍)と三井住友フィナンシャルグループ(0.94倍)が1倍を割れており、三菱UFJフィナンシャル・グループ(1.10倍)も1倍に近い水準です。一般的に日本の銀行株はPBRが低い傾向にありましたが、各行ともPBR改善に向けた取り組みを進めています。

メガバンク3社の株主還元について比較

各社とも株主還元には積極的な姿勢を見せており、安定的な増配や機動的な自己株式取得を基本方針としています。2025年3月期においても各社が自己株式取得を発表・実施しており、株主への利益還元を進めています。

配当金の比較

2025年3月期の実績配当金は以下の通りです。

銀行名中間配当(円)期末配当(円)年間配当金(円)
三菱UFJフィナンシャル・グループ25.0039.0064.00
三井住友フィナンシャルグループ60.00
※1
62.00122.00
※1
みずほフィナンシャルグループ65.0075.00140.00
※1 三井住友フィナンシャルグループは2024年10月1日付で1:3の株式分割を実施。中間配当は分割前180.00円を分割後換算で60.00円として計算し、年間配当金は分割後ベースで記載。

年間配当金では、みずほフィナンシャルグループが140.00円と最も高くなっています。三菱UFJは前年度比23円の増配となる64円を実施しました。三井住友も株式分割を考慮した実質ベースで増配となっています。

自社株買いの比較

各社とも株主還元策として自己株式取得も積極的に行っています。2025年3月期決算発表などに合わせて発表された、今後の自己株式取得(見込み)の状況は以下の通りです。

スクロールできます
銀行名自己株式取得
上限額(億円)
取得しうる株式の総数
(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)
に対する割合(%)
取得期間
(予定)
三菱UFJフィナンシャル・グループ2,500175,000,000株1.522025年5月16日~2025年7月31日
三井住友フィナンシャルグループ1,00040,000,000株1.02025年5月15日~2025年7月31日
みずほフィナンシャルグループ1,00040,000,000株1.62025年5月16日~2025年8月31日

三菱UFJフィナンシャル・グループは、2025年5月15日の取締役会において、取得価額の総額2,500億円を上限とし、175百万株を上限(発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合1.52%)とする自己株式取得を決定しました。取得期間は2025年5月16日から2025年7月31日までとしています。これは、2024年度(2025年3月期)に実施した総額4,000億円の自己株式取得に続くものです。

みずほフィナンシャルグループは、最大で発行済み株式総数の1.6%にあたる40,000,000株、上限1,000億円の自己株式取得を計画しています。これは、株主還元方針を「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施」へと変更したことに伴うものです。

三井住友フィナンシャルグループも、最大で発行済み株式総数の1.0%にあたる40,000,000株、上限1,000億円の取得を計画しており、株主還元の充実と資本効率向上を目指しています。

各社とも積極的な自己株式取得を通じて、資本効率の向上と株主への利益還元を進める方針が明確に示されています。

メガバンク3社の今期(2026年3月期)見通しの業績について比較

各社は株主還元方針の変更や新たな中期財務目標を設定するなど、将来に向けた成長戦略を打ち出しています。みずほフィナンシャルグループは「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施」する方針に変更しました。三菱UFJフィナンシャル・グループも中長期的なROE目標を12%程度(東証定義)に設定しています。

業績の比較

2026年3月期の業績見通しについては、経常収益(売上高)の明確な予想値は各社共通してサマリーには記載されていませんでした。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益の見通しは以下の通りです。

スクロールできます
銀行名経常利益
見通し(億円)
前期比
増減額(億円)
前期比
増減率(%)
親会社株主に帰属する
当期純利益見通し(億円)
前期比
増減額(億円)
前期比
増減率(%)
三菱UFJフィナンシャル・グループ28,500+1,806+6.820,000+1,371+7.4
三井住友フィナンシャルグループ18,000+805+4.713,000+1,220+10.4
みずほフィナンシャルグループ12,900+1,218+10.49,400+545+6.1

親会社株主に帰属する当期純利益の見通しでは、三菱UFJフィナンシャル・グループが2兆円という高い目標を掲げており、3社の中で最も大きな伸びを見込んでいます。三井住友フィナンシャルグループも1.3兆円と10%超の増益を見込んでいます。みずほフィナンシャルグループは9,400億円と、堅実な利益成長を目指しています。

配当見通しの比較

今期の配当見通しと、2025年5月21日の株価を基に算出した配当利回りは以下の通りです。

銀行名年間配当金
見通し(円)
配当利回り
(%)
三菱UFJフィナンシャル・グループ70.003.55
三井住友フィナンシャルグループ136.00
※2
3.81
みずほフィナンシャルグループ145.003.73
※2 三井住友フィナンシャルグループの配当金は株式分割考慮後。

配当利回りでは、三井住友フィナンシャルグループが3.81%と最も高くなっています。次いでみずほフィナンシャルグループが3.73%、三菱UFJフィナンシャル・グループが3.55%と、各社とも魅力的な利回り水準を維持する見込みです。みずほは5期連続の増配となる見込みです。三菱UFJ、三井住友も前年度からの増配を予想しています。

まとめ

2025年3月期決算では、三菱UFJフィナンシャル・グループが収益・利益規模で他社をリードし、ROEでもトップとなりました。財務の健全性を示す自己資本比率も高い水準を維持しています。一方、株価の割安性を示すPER・PBRではみずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループがより低い数値を示しました。

株主還元については、各社とも増配傾向にあり、機動的な自社株買いも実施・計画しています。2026年3月期の業績見通しでは、三菱UFJが2兆円の純利益目標を掲げるなど、各社とも成長への意欲を見せています。配当利回りでは三井住友フィナンシャルグループが現時点では最も高くなっていました。

金利環境の変化や国内外の経済情勢、各社の戦略遂行能力などが今後の業績を左右する重要な要素となります。投資を検討する際には、これらの点を総合的に比較・分析することが重要でしょう。

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