メタプラネット(3350)の 2025年12月期第1四半期決算を解説|売上943%増も評価損が重荷に。今後の株価はどうなる?

2024年に「アジアを代表するビットコイン・トレジャリー企業」へと大胆な戦略転換を宣言した株式会社メタプラネット。その戦略の進捗と成果が示される2025年12月期 第1四半期決算が2025年5月14日に発表されました。

売上高は前年同期比で943.9%増と驚異的な成長を遂げた一方で、ビットコイン価格の変動が利益を圧迫する側面も浮き彫りになりました。

本記事では、開示された決算短信および決算説明資料をもとに、メタプラネットの最新の業績と財務状況、そして今後の戦略と株価の展望について、詳細に解説していきます。

目次

メタプラネットの2025年12月期第1四半期における連結決算の振り返り

2025年12月期第1四半期の連結経営成績は、売上高が前年同期比943.9%増の8億7,700万円と、事業戦略の転換が早速トップラインに絶大なインパクトを与えたことを示しています。

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勘定科目2025年12月期 1Q2024年12月期 1Q前期比
売上高877百万円84百万円+943.9%
営業利益592百万円△50百万円
経常利益△6,852百万円△51百万円
親会社株主に帰属する
四半期純利益
△5,046百万円△51百万円
(出典: 株式会社メタプラネット 2025年12月期 第1四半期決算短信)

営業利益は、前年の5,000万円の損失から5億9,200万円の利益へと黒字転換を達成しました。これは、後述するビットコイン関連事業が大きく貢献した結果です。

しかし、経常利益および最終利益は、それぞれ68億5,200万円、50億4,600万円の赤字となりました。

これは、当四半期末時点における一時的なビットコイン価格の下落に伴い、営業外費用として74億1,300万円の評価損を計上したことが主な要因です。
メタプラネットはこれを「会計上の時点評価に過ぎず、当社の長期的な戦略的判断には何ら影響を与えるものではありません」と説明しています。

メタプラネットの2025年12月期第1四半期セグメント別の業績

2025年12月期第1四半期より、報告セグメントは「ビットコイン・インカム事業」「ホテル事業」「ビットコイン・マガジン ジャパン」「全社及びその他」の4つとなっています。

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セグメント名売上高営業利益/(損失)
ビットコイン・インカム事業770,351千円765,839千円
ホテル事業104,386千円43,926千円
ビットコイン・マガジン ジャパン2,500千円(34,111)千円
全社及びその他(182,878)千円
連結合計877,237千円592,776千円
(出典: 株式会社メタプラネット 2025年12月期 第1四半期決算短信)

ビットコイン・インカム事業

ビットコイン・インカム事業は、売上高7億7,000万円、セグメント利益7億6,500万円を計上し、全体の収益を力強く牽引しています。この売上は主に、オプションプレミアムの収益化を通じて創出されており、同社のビットコイン戦略の中核を担っています。

ホテル事業

ホテル事業は、売上高1億400万円、セグメント利益4,300万円と、安定した収益基盤として機能しています。この事業から生まれるキャッシュフローが、ビットコインへの再投資を支える重要な役割を担っています。

ビットコイン・マガジン ジャパン・その他

2025年1Qから新たに区分された「ビットコイン・マガジン ジャパン」事業は、まだ投資フェーズにあり、3,400万円のセグメント損失を計上しています。これは、日本国内でのビットコイン普及とコミュニティ形成に向けた先行投資と位置づけられます。

メタプラネットの2025年12月期第1四半期財務状況について

当四半期末の財務状況は、ビットコイン戦略の推進により劇的に変化しています。

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勘定科目2025年3月31日時点2024年12月31日時点
総資産55,023百万円30,325百万円
純資産50,436百万円16,965百万円
自己資本50,377百万円16,939百万円
自己資本比率91.6%55.9%
(出典: 株式会社メタプラネット 2025年12月期 第1四半期決算短信)

総資産は前期末から約247億円増加し、550億円を突破しました。これは主に、ビットコインの保有量を積み増したことにより、「投資その他の資産」が264億円から510億円へと急増したためです。

また、新株予約権の行使が積極的に進んだことで、資本金と資本剰余金が合計で約382億円増加しました。これにより純資産が大幅に膨らみ、自己資本比率は55.9%から91.6%へと飛躍的に改善し、財務の健全性が大きく向上しました。

メタプラネットの今後の見通しと戦略について

決算資料からは、同社が今後さらにビットコイン戦略を加速させていく強い意志が読み取れます。

ビットコイン蓄積戦略の指数関数的な加速

同社は、2025年末までに10,000BTC、そして2026年末までには21,000BTCを保有するという極めて野心的な目標を掲げています。

2025年5月12日時点で保有量は既に6,796BTCに達しており、目標達成に向けて順調に進捗していることが示されています。

この保有量は、上場企業の中で世界第11位、アジアでは第1位の規模です。

巧妙な資本市場戦略とグローバル展開

この急激なビットコイン蓄積を支えているのが、巧みな資金調達戦略です。
「ムービング・ストライク型新株予約権」といった革新的な手法を駆使し、年初来で861億円もの資金を調達しました。

さらに、グローバルな展開も加速させています。
米国フロリダ州に子会社「Metaplanet Treasury Corporation」を設立し、機関投資家からの資金調達や24時間体制でのトレジャリー業務を強化する方針です。

決算内容や今期の見通しで、株価はどうなる?

今回の決算と今後の戦略を踏まえ、株価に与える影響をポジティブな要因とネガティブな要因に分けて分析します。

株価にポジティブな影響を与える要因

株価にポジティブな影響を与える要因として考えられるのは、以下の3点です。

  • 圧倒的なBTCイールドと株価プレミアム
    同社は、株式の希薄化を上回るペースで1株あたりのビットコイン保有価値(BTCイールド)を高める戦略を最重要視しています。
    年初来で170.0%という高いBTCイールドを達成しており、これが将来の価値向上への期待を生み、純資産価値(NAV)に対して株価がプレミアムで取引される大きな要因となっています。
  • 税制上の優位性と「日本唯一のBTCプロキシ」
    日本の個人投資家が現物ビットコインに投資した場合の税率は最大55%ですが、メタプラネット株式を通じて間接的に投資すれば、株式譲渡益として約20%の税率で済みます。
    この税制上の優位性により、同社は「日本で唯一・最大のビットコイントレジャリー企業」として、規制や税務上の理由で直接BTCを保有しにくい投資家にとって非常に魅力的な投資対象(プロキシ)となっています。
  • パッシブ資金の流入とグローバルな注目度
    同社株式は国内外の複数のETFに組み入れられているほか、日本・米国・ドイツの3市場で取引されており、グローバルな投資家からの資金流入(パッシブファンドなど)が期待されます。

株価にネガティブな影響を与える要因

株価にネガティブな影響を与える要因な影響を与える要因として考えられるのは、以下の2点です。

  • ビットコイン価格の変動リスク
    最大のリスク要因です。今回の決算でも74億円の評価損を計上したように、ビットコイン価格が下落すれば、同社の純資産価値は直接的に減少し、株価にも強い下落圧力がかかります。
  • 株式の希薄化(ダイリューション)懸念
    ビットコイン購入の原資は、主に新株予約権の発行・行使によって賄われています。
    これは発行済株式数を増加させるため、1株あたりの価値の希薄化に繋がる可能性があります。
    同社はこの希薄化を上回る「BTCイールド」の実現を目指していますが、市場がこれをどう評価し続けるかが鍵となります。

まとめ

メタプラネットの2025年12月期第1四半期決算は、同社のビットコイントレジャリー戦略がトップラインの急成長と財務基盤の強化という形で、早くも大きな成果を上げていることを示しました。

その一方で、ビットコイン価格の変動に業績が大きく左右されるという、この戦略固有のリスクも改めて浮き彫りになりました。

今後の株価の動向は、「ビットコイン価格そのものの推移」と、「株式の希薄化を上回るペースで1株あたりのBTC価値(BTCイールド)を高め続けられるか」という2つの要素に大きく左右されるでしょう。アジアを代表するビットコイントレジャリー企業を目指す同社のユニークな挑戦から、今後も目が離せません。

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