セガサミーホールディングスが2025年3月期の連結決算を発表しました。
本記事では、同社の最新の業績を詳細に分析し、セグメント別の動向、財務状況、株主還元策、そして今後の成長戦略について解説します。
セガサミーホールディングスの2025年3月期における連結決算の振り返り
2025年3月期の連結決算は、売上高4,289億円(前期比8.5%減)、営業利益481億円(前期比16.8%減)、経常利益531億円(前期比11.1%減)と減収減益となりました。
一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は、フェニックスリゾートの株式譲渡益等の特別利益計上などにより、450億円(前期比36.3%増)と大幅な増益を達成しました。
連結決算の概要
項目 | 2024年3月期実績 | 2025年3月期実績 | 前期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 4,689億円 | 4,289億円 | -8.5% |
営業利益 | 578億円 | 481億円 | -16.8% |
経常利益 | 597億円 | 531億円 | -11.1% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 330億円 | 450億円 | +36.3% |
調整後EBITDA | 547億円 | 622億円 | +13.8% |
エンタテインメントコンテンツ事業においては、コンシューマ分野や映像分野が好調に推移しました。一方で、遊技機事業は前期好調だった『スマスロ北斗の拳』の反動減などにより減収減益となりました。ゲーミング事業は増収を達成し、経常利益段階で黒字化しました。
セガサミーホールディングスの2025年3月期のセグメント別業績
セガサミーグループの事業は、「エンタテインメントコンテンツ事業」「遊技機事業」「ゲーミング事業」の3つのセグメントで構成されています。
セグメント | 売上高(2025年3月期) | 経常利益(2025年3月期) |
---|---|---|
エンタテインメントコンテンツ事業 | 3,215億円 | 418億円 |
遊技機事業 | 971億円 | 209億円 |
ゲーミング事業 | 54億円 | 21億円 |
エンタテインメントコンテンツ事業
エンタテインメントコンテンツ事業の売上高は3,215億円(前期比0.6%増)、経常利益は418億円(前期比35.9%増)と増収増益を達成しました。
コンシューマ分野では、リピートタイトルやDLC(ダウンロードコンテンツ)販売、ライセンス収入が好調に推移しました。
特に『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』や『メタファー: リファンタジオ』、『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』などの主力新作タイトルが順調な販売となりました。ソニックIPはゲーム販売に加え、キャラクターライセンス収入も増加しました。
映像分野では、「ソニック」シリーズの映像作品や劇場版「名探偵コナン」のヒットが貢献しました。
AM&TOY分野は、プライズカテゴリを中心に増収増益となりました。
増益の要因としては、利益率の高いリピート販売やDLC販売、ライセンス収入の好調、ソニック映像作品の配分収入増加などが挙げられます。一方で、『Football Manager 25』の開発中止に伴う損失計上がありましたが、コンシューマ分野全体では好調なリピート販売などがこれを補いました。
遊技機事業
遊技機事業の売上高は971億円(前期比27.1%減)、経常利益は209億円(前期比50.0%減)と大幅な減収減益となりました。
これは主に、前期に販売が好調だった『スマスロ北斗の拳』の反動減によるものです。また、製品力向上を図るため、一部主力タイトルの投入を来期以降に延期したことも影響しました。一方で、『e北斗の拳10』が3.5万台を販売するなど、一部タイトルは想定を上回る販売となりました。
ゲーミング事業
ゲーミング事業の売上高は54億円(前期比180.8%増)、経常利益は21億円(前期は4億円の損失)と大幅な増収を達成し、黒字化しました。
ゲーミング機器販売においては、米国向け新筐体「Genesis Atmos®」対応の『Railroad Riches™』が高稼働を記録し、販売が好調に推移しました。また、韓国の統合型リゾート『パラダイスシティ』では、カジノにおける日本人VIP客のドロップ額(チップ購入額)が高水準を維持し、ホテルも韓国国内需要の増加で高い稼働率・宿泊単価を維持するなど好調に推移し、持分法による投資利益が想定を上回る貢献となりました。
セガサミーホールディングスの財務状況について
セガサミーホールディングスの財務状況サマリー(2025年3月期末)を以下の表にまとめました。
項目 | 2024年3月期末 | 2025年3月期末 | 増減 |
---|---|---|---|
総資産 | 6,539億円 | 6,447億円 | -92億円 |
純資産 | 3,577億円 | 3,816億円 | +239億円 |
自己資本比率 | 54.6% | 59.1% | +4.5p |
現金及び現金同等物 | 2,198億円 | 1,988億円 | -210億円 |
有利子負債 | 1,570億円 | 1,495億円 | -75億円 |
ネットキャッシュ | 628億円 | 493億円 | -135億円 |
2025年3月期末の総資産は、前期末比で92億円減少し6,447億円となりました。
流動資産は、棚卸資産が増加したものの、現金及び預金や未収還付法人税等が減少したことにより減少しました。固定資産は、投資有価証券や製作出資に伴う出資金が増加した一方で、フェニックスリゾート株式会社の連結除外に伴い有形固定資産が減少したことなどにより減少しました。
負債合計は、長期借入金や契約負債が減少したことなどにより、前期末比で331億円減少し2,631億円となりました。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前期末比で239億円増加し3,816億円となりました。
この結果、自己資本比率は59.1%と、前期末から4.5ポイント上昇しました。
キャッシュフローの状況
連結キャッシュフロー(2025年3月期)について、以下の表にまとめました。
項目 | 金額 |
---|---|
営業活動によるキャッシュフロー | 208億円 |
投資活動によるキャッシュフロー | -125億円 |
財務活動によるキャッシュフロー | -279億円 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 1,988億円 |
営業活動によるキャッシュフローは208億円の収入となりました。これは、税金等調整前当期純利益548億円、減価償却費130億円を計上した一方で、棚卸資産の増加や法人税等の支払いがあったことなどによるものです。投資活動によるキャッシュフローは125億円の支出となりました。子会社株式の売却による収入があったものの、有形・無形固定資産の取得や出資金の払い込みなどによる支出があったためです。財務活動によるキャッシュフローは279億円の支出となりました。長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済、配当金の支払い、自己株式の取得などによる支出があったためです。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末比210億円減の1,988億円となりました。
主要財務指標(ROEなど)
2025年3月期のROE(自己資本当期純利益率)は12.2%となり、前期の9.6%から上昇しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益が増加したことによるものです。エクイティスプレッド(ROE – 株主資本コスト)も前期の+1.4ptから+4.0ptへと拡大し、ポジティブに推移しています。
事業別ROIC(投下資本利益率)については、エンタテインメントコンテンツ事業は開発が進み仕掛が増加したものの、調整後利益が増加しました。遊技機事業は調整後利益の減少に伴いROICが急減しました。ゲーミング事業の投下資本には、関連会社であるパラダイスセガサミーの株式が含まれています。
セガサミーホールディングスの株主還元は?
セガサミーホールディングスは、株主還元方針として総還元性向50%以上またはDOE(株主資本配当率)3%以上のうち、還元額が高い方を基準とし、配当または自己株式の取得を通じて還元することとしています。
この方針に基づき、2025年3月期は年間配当52円(中間25円、期末27円)を実施しました。
加えて、取得価額総額120億円を上限とする自己株式の取得(取得期間:2025年5月13日~2025年12月31日)と、2,000万株の自己株式消却(消却予定日:2025年5月23日)を決定しました。
これにより、2025年3月期の株主還元額は約232億円(配当約112億円、自己株式取得約120億円)となり、総還元性向は約51.5%となる見込みです。
セガサミーホールディングスの来期の見通しと戦略は?
2026年3月期は、遊技機事業が牽引し、前期比で増収増益を見込んでいます。
- 売上高:4,750億円(前期比10.7%増)
- 営業利益:530億円(前期比10.1%増)
- 経常利益:560億円(前期比5.4%増)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:375億円(前期比16.8%減)
- 調整後EBITDA:675億円(前期比8.4%増)
エンタテインメントコンテンツ事業の戦略
エンタテインメントコンテンツ事業の来期の戦略は以下のとおりです。
- 主要Pillarの更なる拡大
「ソニック」「龍が如く」「アトラス(ペルソナ、メガテン等)」「Rovio(アングリーバード等)」といった主要IPの価値向上を目指します。- トランスメディア戦略
ゲームだけでなく、映像化や商品化など多角的な展開を推進します。 - グローバル展開
F2Pタイトルのグローバル市場投入や、Rovioのノウハウを活用したグループシナジー創出を図ります。
- トランスメディア戦略
- 開発力・商品力強化に向けた投資
レガシーIPの復活やSuper Game(大型新作)の開発に注力します。 - 欧州事業の再成長
「Total War」「Football Manager」といった有力ブランドの拡大と新作開発を進めます。 - 計画数値
フルゲーム新作は前期並みの売上、リピート販売は売上増を見込んでいます。F2Pでは主力IPタイトルなどを投入予定です。
遊技機事業の戦略
遊技機事業の来期の戦略は以下のとおりです。
- 複数のパチスロ主力タイトルの投入により、販売台数の大幅増加を見込みます。
- パチスロ新筐体を投入し、業界活性化を目指します。
- 市場動向として、スマートパチスロは堅調な推移が続く一方、パチンコはラッキートリガー搭載機種の登場にも関わらず全体稼働は軟調な推移が続いています。継続的なヒットタイトル創出が課題であり、主力タイトルの投入等を通じて合算稼働シェアの向上に努めます。
ゲーミング事業の戦略
ゲーミング事業の来期の戦略は以下のとおりです。
- 米国ゲーミング調査会社主催の「EKG Slot Awards」で2部門を受賞するなど、ゲーミング機器は市場で高い評価を得ています。引き続き『Railroad Riches™』を中心とした販売台数増加を見込みます。
- オランダのiGamingコンテンツサプライヤーであるStakelogic社の買収を完了し(2025年4月)、今後市場成長が見込まれる米国オンラインゲーミング市場への本格参入を目指します。
- 米国カジノオペレーター向けB2Bプラットフォーム事業を展開するGAN Limited社の買収手続きは2026年3月期第1四半期に完了予定です。
- M&A実施に伴うFAコスト等の費用増加を見込む一方で、パラダイスセガサミーからの持分法取込による利益貢献も見込んでいます。なお、StakelogicおよびGANの業績は2026年3月期の期初計画には織り込まれていません。
セガサミーホールディングスの株価は今後どうなる?決算から良い点と悪い点を分析
セガサミーホールディングスの2025年3月期決算内容から分かる、株式投資の観点からポジティブな点とネガティブな点を分析します。
ポジティブな点
- エンタテインメントコンテンツ事業の好調と成長性
- コンシューマ分野(家庭用ゲーム)において、リピートタイトル販売やDLC(ダウンロードコンテンツ)、ライセンス収入が好調に推移しており、収益性の高いビジネスモデルが機能していることが示されています。
- 「ソニック」や「龍が如く」、「ペルソナ」といった有力IP(知的財産)のグローバル展開やトランスメディア戦略(ゲーム以外の映像作品や商品化など)が奏功しており、IP価値の最大化が進んでいます。特にソニックIPはキャラクターライセンス収入も増加しており、IPの多角的な活用が収益に貢献しています。
- 映像分野も「ソニック」シリーズや「名探偵コナン」のヒットにより好調で、エンタメ事業全体の収益を押し上げています。
- 来期もF2P(基本プレイ無料)タイトルの投入や主力IPの新作展開が予定されており、継続的な成長が期待できます。
- ゲーミング事業の成長と将来性
- 売上高が大幅に増加し、経常利益段階で黒字化を達成しました。
- 米国市場向けゲーミング機器の販売が好調で、市場からの評価も高いことが示されています。
- 韓国の統合型リゾート「パラダイスシティ」も好調を維持しており、安定的な収益貢献が期待されます。
- Stakelogic社の買収完了やGAN Limited社の買収予定など、成長市場であるオンラインゲーミング市場への本格参入に向けた積極的なM&A戦略は、将来の大きな成長ドライバーとなる可能性があります。
- 株主還元の積極的な姿勢
- 総還元性向50%以上またはDOE3%以上という明確な株主還元方針を掲げており、2025年3月期も増配と大規模な自己株式取得・消却を実施しています。
- これは株主重視の経営姿勢を示すものであり、株価の下支えや投資家からの信頼向上に繋がる可能性があります。
- 財務体質の改善
- 自己資本比率が前期末の54.6%から59.1%へ上昇しており、財務の健全性が高まっています。
- 有利子負債が減少し、ネットキャッシュも一定水準を維持しています。
- 親会社株主に帰属する当期純利益の大幅増益
- 特別利益の計上が主な要因ではあるものの、最終利益が大幅に増加したことはポジティブな印象を与えます。
ネガティブな点
- 遊技機事業の不振と先行き不透明感
- 売上高、経常利益ともに大幅な減収減益となっており、グループ全体の業績の足を引っ張る形となっています。
- 前期好調だった『スマスロ北斗の拳』の反動減に加え、製品力向上のための主力タイトル投入延期など、短期的な回復が見込みにくい状況です。
- 市場全体の稼働状況も、パチンコを中心に軟調な推移が続いており、外部環境も厳しいと言えます。
- 来期は主力タイトル投入による回復を見込んでいるものの、市場環境の変化や競争激化のリスクは依然として存在します。
- 連結業績の減収減益(売上高・営業利益・経常利益)
- 親会社株主に帰属する当期純利益は増加したものの、本業の儲けを示す営業利益や経常利益が減少している点は懸念材料です。これは主に遊技機事業の不振が影響しています。
- 親会社株主に帰属する当期純利益は増加したものの、本業の儲けを示す営業利益や経常利益が減少している点は懸念材料です。これは主に遊技機事業の不振が影響しています。
- M&Aに伴うリスクと不確実性:
- ゲーミング事業における積極的なM&Aは成長戦略として期待される一方、買収後のPMI(経営統合プロセス)がスムーズに進むか、期待通りのシナジー効果が発揮されるかといった不確実性も伴います。
- M&Aに伴うのれん償却や一時的な費用増加が、短期的には利益を圧迫する可能性も考慮に入れる必要があります(2026年3月期の計画にはStakelogic、GANの影響は未織り込み)。
- 特定IPへの依存度
- エンタテインメントコンテンツ事業において、「ソニック」などの特定IPへの依存度が高い場合、そのIPの人気や市場動向に業績が左右されるリスクがあります。
ポートフォリオの多様化は進んでいるものの、引き続き注意が必要です。
- エンタテインメントコンテンツ事業において、「ソニック」などの特定IPへの依存度が高い場合、そのIPの人気や市場動向に業績が左右されるリスクがあります。
- 開発中止や遅延のリスク
- 『Football Manager 25』の開発中止など、ゲーム開発においては開発中止や発売延期といったリスクが常に存在します。これらは収益機会の損失や開発費用の増加に繋がる可能性があります。
総括
セガサミーホールディングスの2025年3月期決算は、エンタテインメントコンテンツ事業とゲーミング事業に成長の兆しが見える一方で、主力の遊技機事業が厳しい状況にあることが明確になりました。
株式投資の観点からは、エンタメ・ゲーミング事業の成長性と積極的な株主還元策は魅力的な要素です。
まとめ
セガサミーホールディングスの2025年3月期決算は、エンタテインメントコンテンツ事業の好調な推移や特別利益の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は大幅増益となりましたが、遊技機事業の反動減などにより連結全体では減収減益となりました。
2026年3月期は、遊技機事業の回復や各事業における成長戦略の推進により、増収増益を目指す計画です。特に、エンタテインメントコンテンツ事業におけるIP価値の最大化、ゲーミング事業におけるM&Aを通じたオンライン市場への本格参入など、今後の展開が注目されます。
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