ブルースターバーガーはなぜ閉店した?失敗の理由や撤退までの背景を解説

2020年に創業したハンバーガーショップ「ブルースターバーガー」は、コロナ禍の飲食店不況にも関わらず、当時とてつもない反響を呼びました。

低価格・高品質のハンバーガーが同社の強みであり、マクドナルドやモスバーガーに次ぐ新たなハンバーガー店と期待されていたことも事実です。

過去にこのメディアでも、ブルースターバーガーの戦略について取り上げたことはありました。

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店舗も順調に拡大し、最終的には4店舗まで増えましたが、2022年7月31日までに全店閉店しています。

しかし、創業当初期待を集めていたハンバーガー店が、なぜここまで失敗してしまったのでしょうか。

今回は、ブルースターバーガーが閉店した理由やこれまでの経緯について解説したいと思います。

目次

ブルースターバーガーとは

ブルースターバーガーとは、焼肉レストランである「焼肉ライク」や「しゃぶしゃぶ れたす」を展開するダイニングイノベーションが経営するハンバーガー店です。

当初はテイクアウト専門店として、2020年11月10日に1号店の中目黒店がオープンしました。

オーダーから受け取りまで完全非接触でキャッシュレス決済が可能、売り切れ次第営業終了で、斬新なシステムが評価を受けていました。

創業当時は、ハンバーガーが170円(税抜)で販売されていたこともあり、圧倒的な価格の安さが話題を集めていました。

また、低価格なだけでなく、高品質なハンバーガーを提供するために原価率が6割を超えていたなど、従来の飲食店では考えにくいビジネスモデルとなっています。

ブルースターバーガーの強み・戦略

ブルースターバーガーのコンセプト(強み)は、低価格・高品質のハンバーガーです。

創業当時のハンバーガーの価格は170円(税抜)であり、商品原価率は約68%となっています。

一般的な飲食店の原価は30%程度なので、他の店でこのハンバーガーを売るためには約400円で販売しなければいけません。

ブルースターバーガーがここまで原価率を上げられるのは、徹底的なコストカットを行ったからです。

具体的には、以下のような戦略により、経費を抑えています。

削減した経費具体的な施策
人件費・注文をモバイルオーダーに限定した
・商品の受け渡しは対面せず非接触でできるようにした
・完全キャッシュレスにより会計の手間を省いた
→ハンバーガーを作る人以外に人件費がかからない
家賃など・テイクアウト専門店にした
店舗の面積が最小限で済むため、家賃が抑えられる
店舗が狭い分、光熱費なども安い
テーブルや椅子などの備品もかからない

つまり、商品以外にかかるコストを最大限抑えることで、その分商品の原価率を上げたということです。

これによって、他の店よりも安くて美味しいハンバーガーが食べられるということを強みにしていました。

ブルースターバーガーの歴史

ここで、簡単にブルースターバーガーの歴史について、紹介します。

ブルースターバーガーの歴史
  • 2020年11月10日 1号店の中目黒店がオープン
  • 2021年12月3日  2号店の神戸元町店がオープン(初の関西出店)
  • 2021年12月22日 3号店の立川北口店がオープン
  • 2022年1月  4号店の渋谷宇田川店「Gourmet113」がオープン
  • 2022年5月31日  神戸元町店、立川北口店が閉店
  • 2022年6月30日  渋谷宇田川店「Gourmet113」が閉店
  • 2022年7月31日 中目黒店が閉店(全店舗が閉店した)

2020年の11月に1号店がオープンして、わずか2年足らずで全店舗が閉店しています。

また、4号店の渋谷宇田川店に至っては、オープンから半年以内に閉店しており、撤退が早いことがわかるでしょう。

ブルースターバーガーが失敗した理由

ブルースターバーガーが失敗した理由は、自社の強みや戦略とは真逆の経営を行なったことが挙げられます。

具体的には、今まで削減していた部分のコストを上げて、規模を拡大しようとしたことが原因です。

元々ブルースターバーガーは、「完全キャッシュレス」「テイクアウト専門」によって、人件費や家賃を抑えていました。

しかし、店舗拡大に伴い、イートインや現金会計に対応したため、コストが高くなってしまったのです。

「低価格・高品質」はあくまでも商品以外のコストを削減しなければ成立しません。

これによって自社の強みを活かせず、採算が取れなくなったことが失敗の理由です。

ブルースターバーガー閉店に至るまでの背景

ブルースターバーガーが失敗した原因は、これまで抑えていたコストを上げたことにあります。

しかし、それ以外にも外部的な要因も追い風となって閉店に至りました。

具体的には、以下の流れによって、撤退を余儀なくされています。

ブルースターバーガー閉店に至るまでの背景
  • 4号店・1号店に店内飲食のスペースを設ける
  • 牛肉の価格が高騰した
  • 他社がハンバーガー事業に参入した
  • ハンバーガー店の競合激化で閉店が相次ぐ

4号店・1号店に店内飲食のスペースを設ける

ブルースターバーガー4号店である渋谷宇田川店は、従来の店舗とは異なり、イートインスペースを大幅に確保しました。

これが、業態を変えたきっかけであり、コストが大きくなってしまった原因でもあります。

ただし、この業態転換は意図がなかったわけではありません。

経営が軌道に乗ったブルースターバーガーは、当初の目標である「国内2,000店舗」を達成するために、フランチャイズによる急速な展開を目指していました。

フランチャイズで店舗を拡大するためには、オーナーを増やす必要があります。

しかし、テイクアウト専門店という形態では、お客さんの入りが分かりづらく、儲かっているのか分かりにくいということがオーナーを増やす際の障害となっていました。

そこで、店舗の賑わいを見せることがフランチャイズ拡大に必要と考え、渋谷宇田川店では55席ほどのイートインスペースを設置しています。

渋谷宇田川店は内装にもこだわっており、1950年代アメリカンダイナーの雰囲気にしたことで賑わいを見せました。

しかし、イートインで賑わったという成功体験が、他の店舗のイートインスペース設置に繋がります

1号店は当初、立ち食いできる程度のスペースが用意されていましたが、反響を受けて本格的なスペースを設置。

これによって人件費や家賃光熱費が上がり、創業当初以上にコストがかかってしまったのです。

牛肉の価格が高騰した

人件費や家賃だけでなく、商品原価も高騰しました。

特に大きかったのは、ハンバーガーのメインとも言える牛肉です。

コロナが一時的に落ち着いたことで需要が回復し、食糧の供給不足に陥りました。

また、牛を育てる飼料である穀物が高騰し、牛肉が値上がりしたのです。

牛肉が高騰してしまうと、商品の価格を最大限まで抑えていたブルースターバーガーは、値上げ以外の対応ができません。

実際、2022年4月に商品の値上げを実施し、ハンバーガーは210円(税込)となりました。

低価格を強みにしていた企業が値上げしてしまうのは、経営にとっては痛手となります。

他社のハンバーガー事業参入

実は、コロナ直後はブルースターバーガーだけでなく、さまざまな企業がハンバーガー事業に参入しました

その理由は大手バーガーチェーンがコロナ禍に売上や利益を増加させたことにあります

例えば、日本マクドナルドホールディングスの2020年12月期、2021年12月期ともに売上や利益が前年よりも増加しました。

また、モスフードサービス(モスバーガー)は2022年3月期の経常利益が+154.6%と大きな成長となっています。

実際、コロナ禍はテイクアウトに強い外食産業が伸びており、その代表とも言えるのがハンバーガー店だったのです。

これだけ伸びている分野を他の大手企業は見逃すはずもありません。

コロナ後には、以下のような企業がハンバーガー事業に参入しました。

コロナ後に新規参入したハンバーガー店
  • ホットランド(銀だこ)は、群馬県桐生市の「ジューザバーガー」と提携して2020年12月、東京1号店をオープン。
  • 「ロイヤルホスト」のロイヤルホールディングスが2021年5月、チキンバーガーの「Lucky Rocky Chicken」をオープン。
  • ダイニングイノベーションが2021年7月にチキンバーガーの「ドゥーワップ」をオープン
  • 「鳥貴族」が2021年8月にチキンバーガーの「トリキバーガー」をオープン。
  • 2022年2月 ゼンショーホールディングス(すき家など)がロッテリアを買収

鳥貴族や銀だこなど、他の飲食店がこぞって参入していることがわかります。

また、多くの会社で、チキンバーガーを主力としたお店が増えているのがわかるでしょう。

実際、ケンタッキーでもバーガー商品に力を入れ始めたということもあり、多くの企業がハンバーガー事業を争うこととなります。

さらに、すき家やはま寿司などの多くのレストランを手掛けるゼンショーもロッテリアを買収し、本格的にハンバーガー事業への競争に参加するようです。

ハンバーガー店の競合激化で閉店が相次ぐ

多くの企業がハンバーガー事業に参入したことで、競争が激化しました。

競争が激化すると、経営が不調な店舗はどんどん閉店していきます。

実際、2021年のハンバーガー店の倒産は6件あったようです。

2021年度のハンバーガー店の倒産は6件(前年度1件)で、このうち5件はコロナ関連倒産だった。コロナ禍が生んだブームの陰で、好調と不振の2極化が進む。

引用:東京商工リサーチ 「ハンバーガー店の倒産が急増、店舗乱立で競争が激化」

前年に比べて倒産件数が多くなっていることを見ると、競争が激化し経営が不調な企業は淘汰されていることがわかるでしょう。

ブルースターバーガーはこの競争が激化したタイミングで、イートインの設置や会計方法を拡大しました。

これにより、自社の強みであるテイクアウト専門がなくなり、他社と同じ土俵で戦わなくてはいけなくなったのです。

他社も参入し、自社のコストも高くなり、商品の原価も上がったとなれば、閉店したという事実にもうなずけるでしょう。

ブルースターバーガーの閉店は完全な失敗ではない?

ブルースターバーガーは自社の戦略を変更したことで、結果的に全店が閉店しましたが、完全な失敗とはいえません。

撤退が早かったことで大きな失敗を防いだともいえます。

このまま経営を続けてしまうと、損失が拡大し倒産に陥るリスクがあります。

つまり、早めに撤退したことで、損失を抑えたという点では、完全な失敗とはいえないでしょう。

ブルースターバーガーの閉店理由まとめ

今回は、ブルースターバーガーが閉店した理由や失敗した原因を解説しました。

ブルースターバーガーは自社の強みである「低価格・高品質」をコストアップによって失ってしまったことが失敗の原因です。

また、材料費の高騰や他社のハンバーガー事業参入なども追い風となり、全店閉店に至りました。

しかし、飲食店事業を多く手掛ける会社が撤退することは珍しくはありません。

現に、ブルースターバーガーを経営しているダイニングイノベーションは、焼肉ライクやしゃぶしゃぶれたすなど軌道に乗っているものも多いです。

ここまで注目されていたブルースターバーガーが閉店したのは残念ではありますが、また新たなビジネスモデルの企業が革新的なお店を立ち上げる日が来るかもしれませんね。

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