大塚ホールディングスの2024年12月期決算を解説|売上・利益が過去最高に!株価はどうなる?

大塚ホールディングス株式会社が2025年2月14日に発表した2024年12月期(2024年1月1日~12月31日)の連結決算は、売上収益・各利益ともに過去最高を記録する好調な内容となりました。

医療関連事業とニュートラシューティカルズ(NC)関連事業の両輪が力強く成長を牽引しました。

本記事では、同社の2024年12月期の決算内容を詳細に解説するとともに、財務状況や株主還元策、そして2025年12月期の見通しと今後の株価の動向について分析します。

目次

大塚ホールディングスの2024年12月期における連結決算の振り返り

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項目2023年12月期実績2024年12月期実績前期比
売上収益20,186億円23,299億円+15.4%
事業利益3,126億円4,305億円+37.7%
営業利益1,396億円3,236億円+131.8%
当期利益1,216億円3,431億円+182.1%
基本的1株当たり
当期利益
224.10円633.76円+409.66円
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販管費、研究開発費を控除し、持分法投資損益を加えた経常的な収益力を示す指標。
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

2024年12月期の連結決算は、売上収益が前期比15.4%増の2兆3,299億円、親会社の所有者に帰属する当期利益(以下、当期利益)は前期比182.1%増の3,431億円となり、大幅な増収増益を達成しました。

増収の主な要因は、医療関連事業の主力製品である抗精神病薬「レキサルティ」や抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」、V₂-受容体拮抗剤「ジンアーク」などのグローバル4製品が大きく伸長したことです。
また、NC関連事業においても「ポカリスエット」や「ネイチャーメイド」などが海外を中心に好調で、業績を押し上げました。

利益面では、高利益率製品の売上増による売上総利益の増加が大きく貢献し、事業利益は過去最高の4,305億円となりました。
また、米国子会社における一過性の税務調整の影響もあり、当期利益は前期から約2.8倍と大幅に増加しました。

大塚ホールディングスの2024年12月期セグメント別の業績

セグメント別に見ても、主力の医療関連事業とNC関連事業がともに二桁成長を遂げています。

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セグメント売上収益(前期比)事業利益(前期比)事業利益率
医療関連事業16,290億円+17.1%3,906億円+38.5%24.0%
NC関連事業5,570億円+15.2%641億円+6.1%11.5%
消費者関連事業338億円▲9.0%237億円+30.7%70.1%
その他の事業1,137億円+3.1%70億円+121.8%6.1%
全社・消去(36)億円(549)億円
連結合計23,299億円+15.4%4,305億円+37.7%18.5%
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

医療関連事業

売上収益は前期比17.1%増の1兆6,290億円、事業利益は同38.5%増の3,906億円と、大幅な増収増益を達成しました。

【収益】
グローバル製品が好調で、特に以下の製品群が成長を牽引しました。

  • レキサルティ
    米国でのアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションへの処方伸長が寄与し、売上は2,674億円(前期比25.8%増)となりました。
  • ロンサーフ
    日米欧で大腸がんにおける併用療法の処方が拡大し、売上は1,044億円(前期比30.3%増)となりました。
  • ジンアーク/サムスカ
    米国でのADPKD(常染色体優性多発性のう胞腎)治療薬としての処方が伸長し、売上は2,814億円(前期比21.4%増)となりました。
  • エビリファイ メンテナ/アシムトファイ
    持続性注射剤として米欧で堅調に推移し、合計で2,568億円(前期比26.3%増)の売上を記録しました。

【増益要因】
「レキサルティ」や「ジンアーク」といった高利益率製品の売上が伸びたことで、売上原価率が1.9ppt改善しました。これが販管費の増加を上回り、大幅な増益につながりました。

NC(ニュートラシューティカルズ)関連事業

売上収益は前期比15.2%増の5,570億円、事業利益は同6.1%増の641億円と、こちらも増収増益を確保しました。

【収益】
海外売上が好調で、特に北米やアジア地域での伸長が目立ちました。

  • For Women’s Health
    「エクエル」や買収した「ボナファイド」が貢献し、カテゴリー売上は566億円(前期比52.3%増)と大きく成長しました。
  • For Healthier Life
    サプリメント「ネイチャーメイド」が米国でシェアを拡大し、カテゴリー売上は2,193億円(前期比19.3%増)となりました。
  • For Climate & Environmental Risk
    「ポカリスエット」が海外で伸長し、カテゴリー売上は1,986億円(前期比8.2%増)となりました。

【増益要因】
各カテゴリーでの増収に加え、サプリメントの製造内製化や生産効率化を進めたことが増益に寄与しました。
一方で、成長に向けた広告宣伝費などの投資も増加しています。

大塚ホールディングスの2024年12月期末の財務状況について

業績好調を背景に、財務基盤もより強固なものとなっています。

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項目2023年12月末2024年12月末増減
資産合計33,612億円37,393億円+3,780億円
負債合計9,249億円9,611億円+362億円
資本合計24,363億円27,782億円+3,418億円
親会社所有者帰属
持分
23,937億円27,336億円+3,399億円
親会社所有者帰属
持分比率
71.2%73.1%+1.9pt
1株当たり
親会社所有者帰属持分
4,410.80円5,089.58円+678.78円
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

【補足説明】

  • 資産の部
    総資産は前期末比で3,780億円増加し、3兆7,393億円となりました。
    これは、売上増に伴う売上債権や棚卸資産の増加に加え、医薬品の研究開発会社Jnana Therapeutics社の買収 などにより、のれんや無形資産が増加したことが主な要因です。
  • 負債の部
    負債合計は362億円増の9,611億円でした。
    借入金の返済があった一方で、グリーンボンドの発行やJnana社買収に伴う条件付対価の計上などにより微増となりました。
  • 資本の部
    資本合計は3,418億円増加し、2兆7,782億円となりました。
    これは、3,431億円の当期利益計上が主な要因です。
    結果として、自己資本比率にあたる親会社所有者帰属持分比率は73.1%と、前期末から1.9ポイント上昇し、健全な財務体質を維持しています。

キャッシュフローの状況

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項目2023年12月期2024年12月期増減
営業活動によるCF2,832億円3,546億円+714億円
投資活動によるCF△1,905億円△2,658億円△753億円
財務活動によるCF△603億円△1,894億円△1,291億円
現金及び現金同等物
期末残高
5,133億円4,262億円△872億円
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

【キャッシュフローが変化した要因】

  • 営業CF
    好調な業績を反映し、税引前当期利益が増加したことなどから、前期比で714億円増加しました。
  • 投資CF
    将来の成長に向け、Jnana社の買収(△1,156億円)や有形固定資産の取得(△956億円)などを積極的に行ったため、支出が前期より753億円増加しました。
  • 財務CF
    自己株式の取得(△500億円)や配当金の支払い(△668億円)など株主還元を強化したことに加え、借入金の返済も進めたため、支出が前期より1,291億円増加しました。

これらの結果、期末の現金及び現金同等物は872億円減少し、4,262億円となりました。

主要財務指標(ROEなど)

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指標2023年12月期2024年12月期2025年12月期
(予想)
ROE
(自己資本利益率)
5.3%13.4%10%以上
ROA
(総資産税引前利益率)
4.4%9.5%
売上収益営業利益率6.9%13.9%15.8%
ROIC
(投下資本利益率)
4.8%11.9%9%以上
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
  • ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
    自己資本に対してどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。
    2024年期は当期利益の大幅な増加により13.4%と、前期から8.1ポイント改善し、資本効率が大きく向上しました。
  • ROA(資産合計税引前利益率)
    総資産に対してどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。
    こちらも前期の4.4%から9.5%へと大幅に改善しています。
  • 売上収益営業利益率
    売上に対して営業利益がどれだけ残ったかを示す収益性の指標です。
    13.9%と、前期の6.9%から倍増しました。

大塚ホールディングスの株主還元について

大塚ホールディングスは、株主への利益還元を重要な経営課題と位置づけており、2024年12月期は増配と自己株式取得を実施しました。

配当金の状況

2024年12月期の年間配当金は、前期から10円増配し、1株あたり120円(中間60円、期末60円)となりました。
これにより、9期連続の増配または配当維持となります。

2023年12月期2024年12月期(実績)2025年12月期(予想)
年間配当金110円120円120円
配当性向(連結)49.1%18.9%23.4%
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

2024年期の配当性向は、一過性の税務影響で当期利益が大幅に増加したため18.9%と低くなっていますが、2025年12月期も同額の120円の配当を維持する見込みです。

自社株買いの発表はあった?

2024年8月に発表した自己株式の取得を、2024年11月22日までに完了しました。

  • 取得した株式の総数: 5,810,900株
  • 取得価額の総額: 498億8,298万円
  • 発行済株式総数に対する割合: 約1.05% (2024年12月末時点の発行済株式数 552,024,717株で計算)
  • 取得期間: 2024年8月2日~2024年11月22日
  • 消却: 取得した自己株式の全株を消却済みです。

追加の株主還元については、事業状況や現預金の保有状況、株主総還元性向などを多角的に検討するとしています。

大塚ホールディングスの今期(2025年度)の見通しと戦略について

2025年12月期の連結業績は、売上収益こそ増収を確保するものの、主力製品の特許切れの影響などにより減益となる見通しです。

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項目2024年12月期実績2025年12月期予想前期比
売上収益23,299億円23,800億円+2.2%
事業利益4,305億円3,750億円▲12.9%
営業利益3,236億円3,750億円+15.9%
当期利益3,431億円2,750億円▲19.9%
出典:大塚ホールディングス株式会社「2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

売上収益は、医療関連事業・NC関連事業ともに成長が続き、過去最高を更新する2兆3,800億円を計画しています。

一方、事業利益は、主力製品の一つである「ジンアーク」が米国で特許期間満了(LOE)を迎えることによる減益影響が大きいものの、「レキサルティ」などの成長ドライバー製品群の増収でカバーし、12.9%の減益に留める計画です。

また、持続的成長のため、研究開発費は前期比12.0%増の3,520億円を計画しており、特に以下の開発品への投資を強化します。

  • シベプレンリマブ: IgA腎症治療薬
  • ウロタロント: 新規抗精神病薬
  • repinatrabit (JNT-517): フェニルケトン尿症治療薬
  • zipalertinib: 非小細胞肺がん治療薬

当期利益は、前期にあった一過性の税務調整影響がなくなるため、19.9%の減益予想となっています。

決算内容や今期の見通しで、大塚ホールディングスの株価はどうなる?

今回の決算内容と今後の見通しから、株価に与えるポジティブ・ネガティブ両面の要因を分析します。

株価にポジティブな影響を与える要因

  • 好調な2024年決算
    売上・利益ともに過去最高を更新した実績は、企業の成長性を示す上で非常にポジティブです。
  • 主力製品の力強い成長
    「レキサルティ」「ロンサーフ」など複数の主力製品が二桁成長を続けており、安定した収益基盤を築いています。
  • 有望な開発パイプライン
    2025年にはIgA腎症治療薬「シベプレンリマブ」の承認申請が予定されるなど、将来の成長ドライバー候補が控えています。
    特に「シベプレンリマブ」や「repinatrabit」は大型化が期待される製品です。
  • NC事業の安定成長と高収益性
    医療事業に並ぶもう一つの柱であるNC事業が、グローバルで安定的に成長しており、事業ポートフォリオのリスク分散に貢献しています。
  • 積極的な株主還元
    安定配当に加え、自社株買いと消却を実施したことは、資本効率と株主価値向上への意識の高さを示しており、投資家に好感されます。

株価にネガティブな影響を与える要因

  • 2025年の減益予想
    ジンアークのLOEを主因とする事業利益・当期利益の減益見通しは、短期的な株価の上値を抑える要因となる可能性があります。
  • ジンアークの特許切れ(LOE)の影響
    2,800億円以上を売り上げた大型製品の売上がジェネリック医薬品の登場で減少することは、業績へのインパクトが大きく、市場の懸念材料です。
  • 研究開発費の増加
    将来の成長に必要な投資ですが、短期的には利益を圧迫する要因となります。
  • 為替変動リスク
    海外売上比率が高いため(2024年NC事業で69.7%)、円高に振れた場合は業績の下押し圧力となります。
    2025年の想定為替レートは1ドル150円、1ユーロ156円と、2024年実績より円高で見込んでいます。

決算から分かる大塚ホールディングスの強みは?

今回の決算からは、同社の以下のような強みが明確に見て取れます。

医療とNCの二本柱による事業ポートフォリオ

同社の最大の強みは、「医療関連事業」と「NC関連事業」という性質の異なる2つの事業を両輪として展開している点です。

医療関連事業は、新薬開発の成功による高い成長性が見込める一方で、特許切れのリスクも伴います。
そのリスクを、景気変動の影響を受けにくく安定した需要が見込めるNC事業が補完しています。

このバランスの取れた事業ポートフォリオが、経営の安定性と持続的成長を支えています。

グローバルでの開発・販売力と市場創造力

「レキサルティ」や「ジンアーク」といった製品をグローバルで大型製品に育て上げた開発力と販売網は大きな強みです。

特に、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(AAD)のような新たな市場を啓発活動を通じて創造していく力は、今後の成長においても重要となります。

NC事業においても、「ポカリスエット」を各国の文化に合わせて展開するなど、高いグローバルマーケティング能力を有しています。

豊富な後期開発パイプラインと積極的な事業開発

ジンアークのLOEという課題に直面する一方で、それを補って余りある将来の成長ドライバー候補を複数有しています。

IgA腎症を対象とする「シベプレンリマブ」や、PKUを対象とする「repinatrabit」など、アンメットメディカルニーズに応える革新的な新薬候補が後期開発段階に控えています。

また、Jnana社のような有望な技術を持つ企業を積極的に買収し、自社の開発力を強化する事業開発戦略も強みの一つです。

まとめ

大塚ホールディングスの2024年12月期決算は、主力製品群が牽引し、売上・利益ともに過去最高を更新する素晴らしい内容でした。
安定した財務基盤と積極的な株主還元も評価できます。

2025年12月期は、主力製品「ジンアーク」の特許切れという大きな課題に直面し、一時的な減益を見込んでいます。
しかし、他の主力製品の力強い成長と、豊富な後期開発パイプラインがその影響を最小限に食い止め、持続的な成長への道筋を示しています。

短期的な減益局面を、将来の大型製品候補の上市と成長で乗り越えることができるか。同社の「トータルヘルスケア企業」としての真価が問われる局面であり、今後の開発動向と戦略の進捗が注目されます。

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