みずほフィナンシャルグループの2025年3月期決算を解説|過去最高益で株価は上がる?

みずほフィナンシャルグループの2025年3月期決算が公開されました。業績としては好調で、最高益を記録しましたが、どのような要因があったのでしょうか?

また、投資家としては株主還元の方針や今後の株価への影響についても気になるポイントです。

本記事では、発表された決算資料をもとに、みずほフィナンシャルグループの現状と今後の戦略を読み解いていきます。

目次

みずほフィナンシャルグループの2025年3月期における連結決算の振り返り

2025年3月期のみずほフィナンシャルグループの連結決算は、経常収益が9兆303億円(前期比3.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が8,854億円(前期比30.4%増)と、増収増益を達成しました。 非金利収益の拡大や政策金利引き上げ効果などが寄与し、連結業務純益、親会社株主純利益ともに過去最高益を更新しています。

勘定科目2025年3月期実績
(百万円)
前期比
(百万円)
前期比 (%)
経常収益9,030,374+285,916+3.2%
連結業務純益1,144,200+138,400+13.8%
経常利益1,168,141+254,094+27.7%
親会社株主に帰属する
当期純利益
885,433+206,440+30.4%
出典:みずほフィナンシャルグループ「2025年3月期 決算短信」「2025年3月期 決算説明資料

決算内容を確認すると、国内の個人・法人向けビジネスや海外ビジネスが堅調に推移したことに加え、市場部門も好調でした。

具体的には、顧客部門の業務純益は864億円増加し9,168億円、市場部門の業務純益は252億円増加し1,535億円となりました。

与信関係費用は、将来の不確実性に備えた予防的な引当を行ったものの、国内外での戻り益もあり、前期比で547億円減少し516億円の費用計上となりました。

コンセンサス予想との比較

事前に公表されていたIFISコンセンサス予想と比較すると、経常利益はコンセンサス予想を下回ったものの、会社計画は上回る着地となりました。

スクロールできます
勘定科目2025年3月期実績
(百万円)
IFISコンセンサス予想
(百万円)
増減率
(%)
経常利益1,168,1411,215,502-3.9%

みずほフィナンシャルグループのセグメント別業績

次に、セグメント(カンパニー)別の業績を見ていきましょう。各セグメントともに増益に貢献しています。

スクロールできます
セグメント業務粗利益
(億円)
経費
(億円)
業務純益
(億円)
前年度比
(億円)
当期純利益
(億円)
前年度比
(億円)
ROE
(%)
リテール・事業法人カンパニー
(RBC)
8,322△7,0221,405+3571,235+7266.3%
コーポレート&
インベストメント
バンキングカンパニー
(CIBC)
6,367△2,3954,061+6104,046+1,17612.0%
グローバルコーポレート&
インベストメント
バンキングカンパニー
(GCIBC)
7,922△4,5303,583△2112,315△2068.7%
アセットマネジメント
カンパニー (AMC)
597△384119+10710+920.9%
グローバルマーケッツ
カンパニー (GMC)
4,991△3,4561,535+2521,052+1994.9%
*注:前年度の計数はFY24管理会計ルールに組み替えて算出

リテール・事業法人カンパニー (RBC)

リテール・事業法人カンパニー(RBC)の業務純益は1,405億円(前年度比+357億円)、当期純利益は1,235億円(前年度比+726億円)となりました。

ソリューションビジネスや個人運用ビジネスが好調に推移しました。具体的には、ソリューション関連収益は1,329億円(前年度比+123億円)、個人運用関連収益は1,406億円(前年度比+132億円)でした。

コーポレート&インベストメントバンキングカンパニー (CIBC)

コーポレート&インベストメントバンキングカンパニー(CIBC)の業務純益は4,061億円(前年度比+610億円)、当期純利益は4,046億円(前年度比+1,176億円)と大幅な増益を達成しました。

国内大企業向けのソリューションビジネスが伸長し、特にIB(投資銀行)ビジネスや不動産関連の収益が貢献しました。

国内法人ソリューション収益は2,666億円となり、そのうちIBビジネスは635億円(前年度比+161億円)、不動産は624億円(前年度比+66億円)でした。

グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー (GCIBC)

グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー(GCIBC)の業務純益は3,583億円(前年度比△211億円)、当期純利益は2,315億円(前年度比△206億円)と減益になりました。

地域別では、米州(Americas)がIBビジネスを中心に好調で業務粗利益を牽引したものの、経費増などが影響したとみられます。米州のIBビジネス収益は937億円(前年度比+267億円)でした。

アセットマネジメントカンパニー (AMC)

アセットマネジメントカンパニー(AMC)の業務純益は119億円(前年度比+107億円)、当期純利益は10億円(前年度比+92億円)となりました。

グローバルマーケッツカンパニー (GMC)

グローバルマーケッツカンパニー(GMC)の業務純益は1,535億円(前年度比+252億円)、当期純利益は1,052億円(前年度比+199億円)と増益でした。

バンキング業務は減益となったものの、セールス&トレーディング業務が好調で全体を押し上げました。

みずほフィナンシャルグループの2025年3月期時点での財務状況は?

2025年3月末の連結総資産は283兆3,204億円となり、前期末から4兆6,482億円増加しました。

これは主に買現先勘定の増加などによるものです。 純資産は10兆5,237億円と、前期末から2,116億円増加しました。

勘定科目2025年3月末
(百万円)
2024年3月末
(百万円)
増減
(百万円)
総資産283,320,404278,672,151+4,648,253
貸出金94,108,75792,778,781+1,329,976
有価証券34,307,57438,245,422-3,937,848
預金
譲渡性預金
173,145,546171,445,200+1,700,346
純資産10,523,75310,312,135+211,618
自己資本比率3.6%3.6%0.0%
注:預金・譲渡性預金は預金と譲渡性預金の合計値。自己資本比率は決算短信記載の算出方法による。

自己資本比率(バーゼルIII最終化ベース、普通株式等Tier1比率)は13.23%(2024年3月末は12.73%)と健全な水準を維持しています。

キャッシュフローの状況

2025年3月期の連結キャッシュ・フローの状況は以下の通りです。

勘定科目2025年3月期
(百万円)
2024年3月期
(百万円)
増減
(百万円)
営業活動による
キャッシュ・フロー
△3,820,8001,884,978-5,705,778
投資活動による
キャッシュ・フロー
3,793,0921,982,207+1,810,885
財務活動による
キャッシュ・フロー
△299,030230,990-530,020
現金及び
現金同等物期末残高
70,723,36171,165,815-442,454

営業活動によるキャッシュ・フローは、コールローン等の増加などにより3兆8,208億円の支出となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得・売却・償還などにより3兆7,930億円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、劣後特約付社債の償還などにより2,990億円の支出となりました。

主要財務指標(ROEなど)

主要な財務指標は以下の通りです。

  • 自己資本当期純利益率 (ROE): 8.5% (前期 7.0%)
  • 連結ROE (その他有価証券評価差額金を除く): 9.4% (前期 7.6%)
  • 東証基準ROE (その他有価証券評価差額金を含む): 8.5% (前期 7.0%)
  • 総資産経常利益率 (ROA): 0.4% (前期 0.3%)
  • PBR (25/4月末時点): 0.75倍

ROEは着実に向上しており、PBR改善に向けた取り組みが進んでいます。

みずほフィナンシャルグループの株主還元方針はどうなる?

みずほフィナンシャルグループは、株主還元の基本方針を「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施」へと変更しました。

2025年3月期の年間配当金は、直近公表予想から10円増配し、1株あたり140円(前期比+35円)となりました。
また、2026年3月期の年間配当金予想は、さらに5円増配し1株あたり145円(中間72.5円、期末72.5円)としています。

さらに、取得総額1,000億円を上限とする自己株式取得を決議し、取得した株式は全株消却予定です。
これにより、2025年度の総還元性向は約50%となる見込みです。

みずほフィナンシャルグループの来期見通しと戦略は?

2026年3月期の連結業績予想は以下の通りです。

スクロールできます
勘定科目2026年3月期見通し
(億円)
前期実績比
(億円)
前期実績比
(%)
IFISコンセンサス予想
(億円)
コンセンサス比
(%)
経常利益12,900+1,218+10.4%13,678-5.7%
親会社株主に帰属する当期純利益9,400+545+6.2%9,674-2.8%

来期は、引き続きビジネスの伸長を土台に、実質ベースでは1兆500億円程度の十分な増益水準を見込んでいますが、足元の不確実性を踏まえ保守的に業績見通しを策定しています。環境好転などの状況に応じて業績見通しは適宜見直す方針のようです。

金融指標の前提として、国内政策金利0.5%、日経平均株価37,000円、ドル円140円を置いています。

中期財務目標としては、2027年度に向けて東証基準ROE10%超、連結業務純益1.4~1.6兆円程度を目指すとしています。

戦略としては、PBR改善に向け、EPS向上(アセット採算性向上、効果的な資本活用、経費率コントロール)、ボラティリティ抑制(与信関係費用の抑制、収益多様化)、期待醸成(相互補完性の向上、サステナビリティへの取り組み、経営への信認向上、日本経済への働きかけ)といった取り組みを継続していく方針です。

みずほフィナンシャルグループの2025年3月期決算で、株価はどうなる?

投資家目線でみずほフィナンシャルグループの2025年3月期決算内容を分析すると、株価に影響を与えうる要因は以下のように整理できると考えられます。

株価にポジティブな影響を与える要因は?

  1. 過去最高益の更新と堅調な業績
    • 連結業務純益(ETF関係損益等含む)が1兆1,442億円(前期比+1,384億円)、親会社株主に帰属する当期純利益が8,854億円(前期比+2,064億円)と、いずれも過去最高益を更新したことは、収益力の向上を示す明確なシグナルです。
    • 非金利収益の拡大や政策金利引き上げ効果が着実に利益成長に繋がっている点は、今後の収益基盤の安定性と成長期待を高めるでしょう。
    • 現中期経営計画の財務目標を1年前倒しで達成したことも、経営戦略の遂行能力の高さを示唆しています。
  2. 大幅な株主還元の強化:
    • 年間配当金を1株あたり140円(前期比+35円)とし、直近公表からも10円増配したことに加え、今期(2026/3)の年間配当金予想も145円(前期比+5円)と5期連続の増配を見込んでいる点は、株主への利益還元姿勢を強く印象付けます。
    • 1,000億円を上限とする自己株式取得(全株消却予定)の決議は、1株当たり利益(EPS)や株主資本利益率(ROE)の向上に繋がり、株価にプラスに作用すると期待されます。
    • 株主還元方針を「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施」へと変更し、総還元性向50%以上を目安とすることは、今後の株主還元の継続性と規模に対する期待が持てるでしょう。
  3. 将来への成長期待と財務健全性
    • 2027年度に向けた新たな中期財務目標として「東証基準ROE10%超」「連結業務純益1.4-1.6兆円程度」を設定したことは、持続的な成長へのコミットメントを示しています。
    • PBR改善に向けた具体的な取り組みとその進捗(ROEの向上)が示されている点は、バリュエーション改善への期待を高めます。
    • 普通株式等Tier1比率(バーゼルIII最終化ベース)が13.23%と、国際的な規制水準を十分にクリアし、財務基盤の健全性が維持されていることは安心材料です。
  4. リスク管理とポートフォリオ健全化
    • 有価証券ポートフォリオの健全化を進めつつ大幅な増益を達成した点は、リスク管理を行いながら収益を確保するバランスの取れた経営運営を評価できます。

株価にネガティブな影響を与える可能性のある要因は?

  1. 先行きの不透明感と保守的な見通し
    • 会社自身が「不透明な事業環境が見込まれる」「ダウンサイドリスクにも目配せした事業運営を行う方針」と言及している点は、楽観的な見通しを抑制する可能性があります 。
    • 2026/3の業績見通しについて「足元の不確実性を踏まえ保守的に策定」としていることも、市場の一部からは成長の勢いが鈍化するとの懸念に繋がるかもしれません。
    • 2026/3の与信関係費用見通しが1,400億円と、FY24実績(△516億円の費用)から大幅に増加する見込みである点は、信用コスト増への警戒感を呼び起こす可能性があります。
  2. 一部セグメントの業績
    • グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー(GCIBC)が前年度比で減益となっている点は、当該セグメントの成長性に対する懸念材料となる可能性があります。
    • グローバルマーケッツカンパニー(GMC)においても、バンキング業務が減益となっている点は注意が必要です。
  3. PBRの状況
    • ROEは向上しているものの、PBRが依然として1倍を下回っている状況(2025年4月末時点で0.75倍)は、市場からの評価がまだ十分ではないことを示しており、改善への道のりが長いと捉えられる可能性があります。
  4. キャッシュフローの状況
    • 2025年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローが、前期の大幅な収入超過から今期は大幅な支出超過(△3兆8,208億円)に転じている点は、その要因(コールローン等の増加)が理解されるまでは、一部の投資家に懸念を与える可能性があります。

まとめ

みずほフィナンシャルグループの2025年3月期決算は、非金利収益の拡大や金利環境の変化を追い風に、過去最高益を更新する力強い結果となりました。

新たな株主還元方針のもと増配と自己株式取得を発表し、株主への利益還元を強化する姿勢を示しています。来期以降も、不透明な事業環境を見据えつつ、着実な利益成長と資本効率の向上を目指す方針です。

中期財務目標の達成に向けた今後の戦略展開が注目されるでしょう。

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