宿泊業の自己資本比率はなぜ低いのか?理由を徹底解説

企業の安全性を見る上で重要視されている指標の1つに「自己資本比率」というものがあります。

この数値は何%以上であれば絶対安全というラインはありませんが、高ければ高いほど望ましいというものになっています。

自己資本比率が高く、安全度が高い企業としては「任天堂」が有名でしょう。

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一方で業種柄自己資本比率が低くなる業種もあります。

有名なところでは、ホテルなどを経営する宿泊業の自己資本比率は軒並み低いです。

では、なぜ、宿泊業の自己資本比率は低いのでしょうか?

また、自己資本比率が低いとどう危険なのでしょうか?


今回は、宿泊業の自己資本比率についてと安全性について解説していきます。

目次

宿泊業の自己資本比率はなぜ低いのか?

宿泊業の自己資本比率が低い理由は

莫大な設備投資による借入額が大きいから

です。

借入依存度が高い=自己資本比率が低いということになるのですが、そもそも自己資本比率というものについておさらいしましょう。

自己資本比率が低いとは?

自己資本比率は

純資産÷総資産×100

という比率になっています。

つまり、その企業が持っている全ての資産(総資産)のうち自己所有の資産(純資産)がどのくらいなのかという割合です。

資産とは、現預金、有価証券、固定資産などがあります。お金はもちろん資産ですし、株券や家、車なども資産になります。

この資産のうち、借入によらないものを純資産と呼び、純資産の割合を表したのが自己資本比率になります。

つまり自己資本比率が低い=純資産が少なく、借入依存度が高いということになります。

宿泊業の自己資本比率が低くなる仕組み

宿泊業は、莫大な設備投資をする必要があります。

まず、ホテルや旅館を建てるのに必要な、土地購入、建設費用、内装費などに恐ろしいコストがかかります。

数十億単位の借入になることは間違いありません。

例えば、総工事費が10億円のホテルを開業するのに、1億円の自己資金と9億円の借入で建設したとすると、資産10億円、負債9億円、純資産1億円で自己資本比率は10%になります。

借入は返済と共に減っていきますが、建物などの固定資産も時間とともに資産価値が減っていきます。

つまり、借入が減少しても自己資本比率が増えにくいという理由があります。

毎年利益を出し続けることができれば自己資本比率は増加していきますが、ホテル建設、定期的な改装などで常に設備投資&借入をするようなホテル業においては自己資本比率が上がりにくいです。

宿泊業は不動産賃貸業と似た側面を持っているのですが、売却がしにくいので1つの物件を何度も修繕、改装して営業を続けていく必要があるのが難しいところでしょう。

賃貸不動産なら途中で売却することもできるので、利益が確定したところで手放すことも可能なのです。

つまり、宿泊業は常に設備投資による借入が発生するので自己資本比率が上がりにくいのです。

自己資本比率が低いデメリットとは?

自己資本比率は高い方が安全であると言われています。

では自己資本比率が低いとどのようなデメリットがあるのでしょうか?


危険性が高いと言われている理由の一つに、借入依存度が高いということが挙げられています。

例えば自己資本比率20%の会社は、その会社が所有している資産の80%を他人資本で賄っている状況です。

他人資本ということは、いつかは返済しなければいけません。

自己資本比率が低くなると、負債額が大きいということで、返済の負担が増えるということになります。

この状態で現預金が無くなって払えるお金が用意できないと、倒産という自体になりかねません。


つまり、自己資本比率が低いというのは、借入依存度が高いので、お金が上手く回らなくなったら借入の返済が困難になってしまうということがリスクとなるのです。

会社においては、お金が払えなくなるというのは倒産の危機になります。

宿泊業は設備投資による借入依存度が高く、借りたお金は建設費などに消えるので現預金が手元に残りません。

借りたお金は毎月返済しなければいけないので、毎月一定以上の収益を出し続けないといけませんね。

つまり、宿泊業では、借入が多く、現預金が少ない状況なのでかなり危険な状態であると言えます。


特に、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって宿泊者数は大きく減少しました。

宿泊者数=売上となる宿泊業において、誰も泊まりに来る人がいないと返済が間に合わないという事態が発生するのです。

これによって、宿泊業の倒産件数が増加しているのです。

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宿泊業の資金繰りは相当大変だということがわかりますね。

宿泊業の経営は難しいのか?

宿泊業の自己資本比率や財務状況について簡単に説明しましたが、正直経営する立場からしたら相当難しいと思います。

初期投資はものすごくかかりますし、毎月の資金繰りにも気を配らないといけません。人件費もかなりかかるし、今回のコロナのように外部の影響も受けやすいです。

ですが、そんな宿泊業でも利益を出し続け成功している会社もあります。

アパホテルは経営戦略を工夫して、利益を出しやすいビジネスモデルを作り上げています。

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宿泊業の経営は非常に難しいですが、工夫すれば利益を出せるというのと、日本の観光需要は高いので、コロナ収束後は売上回復が期待できる産業ではあります。もちろん観光に依存しずぎるというデメリットもありますが。

なんにせよ自己資本比率が低くなりがちな宿泊業でも、不測の事態に対応すべくある程度の現預金を確保しておくべきというのがわかりますね。


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