5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の決算を比較|収益性、財務状況、株主還元、今期見通しは?

5大商社の2025年3月期決算

2025年5月に発表された5大総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の2025年3月期決算が出揃いました。

資源価格の変動や世界経済の不確実性が高まる中、各社はどのような実績を上げ、今期(2026年3月期)はどのような見通しを立てているのでしょうか。

この記事では、各社の決算短信や説明資料をもとに、業績、財務状況、収益性、株価の割安性、株主還元策などを徹底的に比較・分析します。ランキング形式で各社の強みを分かりやすく解説し、株式投資の観点から注目すべきポイントを明らかにします。

目次

5大商社の業績・各指標をランキング形式で比較

まずは、各社の主要な経営指標をランキング形式で見ていきましょう。詳細な解説は後の章で行いますが、ここでは全体像を素早く把握できます。

2025年3月期 業績ランキング

当期純利益では、三菱商事が9,507億円で首位に立ちました。
僅差で三井物産、伊藤忠商事が続き、3社が9,000億円レベルのハイレベルな争いを繰り広げています。

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順位企業名当期純利益
(親会社株主に帰属)
1位三菱商事9,507億円
2位三井物産9,003億円
3位伊藤忠商事8,803億円
4位住友商事5,619億円
5位丸紅5,030億円

財務状況のランキング(2025年3月31日時点)

財務の健全性を示す自己資本比率では、三井物産が44.9%でトップ。
総資産・純資産ともに三菱商事が圧倒的な規模を誇ります。

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順位企業名自己資本比率総資産純資産(自己資本)
1位三井物産44.9%16兆8,115億円7兆7,626億円
2位三菱商事43.6%21兆4,961億円10兆1,543億円
3位住友商事40.0%11兆6,312億円4兆8,856億円
4位丸紅39.4%9兆2,020億円3兆7,686億円
5位伊藤忠商事38.0%15兆1,343億円6兆2,907億円

収益性ランキング(2025年3月期)

資本効率を示すROE(自己資本利益率)では、伊藤忠商事が約16%と他社をリード。
丸紅も14.2%と高い水準を維持しています。

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順位企業名ROE
1位伊藤忠商事約16%
2位丸紅14.2%
3位住友商事12.4%
4位三井物産11.9%
5位三菱商事10.3%

株価の割安性ランキング(2025年6月12日終値基準)

株価の割安度を示すPER(株価収益率)では、住友商事が7.81倍と最も低く、割安感があると言えます。

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順位企業名PER(倍)PBR(倍)
1位住友商事7.810.94
2位丸紅9.511.32
3位三井物産9.591.12
4位伊藤忠商事12.001.82
5位三菱商事12.061.22

株主還元ランキング(2025年3月期実績)

配当と自社株買いを合わせた総還元額では、三菱商事が1兆円を超える大規模な株主還元を発表し、他を圧倒しています。

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順位企業名総還元額
(億円)
配当金総額
(億円)
自己株式取得額
(億円)
1位三菱商事13,9773,97710,000
2位三井物産6,9192,9194,000
3位伊藤忠商事4,3532,8531,500
4位丸紅2,3761,576800
5位住友商事2,2731,573700
※自己株式取得額は2024年度(2025年3月期)に実施もしくは発表された金額。
三菱商事は2025年度実施予定分。

今期(2026年3月期)業績見通しランキング

今期の当期純利益見通しでは、伊藤忠商事が9,000億円でトップに立つ予想です。

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順位企業名当期純利益
見通し
前期比
1位伊藤忠商事9,000億円+2.2%
2位三井物産7,700億円△14.5%
3位住友商事5,700億円+1.4%
4位丸紅5,100億円+1.4%
5位三菱商事7,000億円△26.4%

今期(2026年3月期)配当利回りランキング

今期の配当利回り(6月12日終値ベース)では、三井物産が3.91%で最も高くなっています。

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順位企業名配当利回り1株当たり配当金
(予想)
1位三井物産3.91%115円
2位住友商事3.87%140円
3位三菱商事3.85%110円
4位丸紅3.47%100円
5位伊藤忠商事2.71%200円

5大商社の2025年3月期の業績を比較

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項目三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
収益18兆6,176億円14兆6,626億円14兆7,242億円7兆2,921億円7兆7,902億円
税引前利益1兆3,934億円1兆1,352億円1兆1,551億円6,956億円6,292億円
当期純利益9,507億円9,003億円8,803億円5,619億円5,030億円

2025年3月期の業績は、首位の三菱商事が純利益9,507億円、2位の三井物産が9,003億円、3位の伊藤忠商事が8,803億円と、3社が9,000億円を超える高いレベルで競い合う結果となりました。
資源価格が前期に比べて落ち着いたものの、非資源分野の好調や円安効果が各社の業績を押し上げました。

特に伊藤忠商事は、非資源分野が利益の大部分を占めており、市況の変動に左右されにくい安定した収益構造の強さを見せつけました。

三菱商事は豪州原料炭事業の売却益などが利益を押し上げた側面もありますが、幅広い分野で安定した収益を上げています。

5大商社の財務状況の比較

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項目
(2025年3月31日時点)
三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
総資産21兆4,961億円16兆8,115億円15兆1,343億円11兆6,312億円9兆2,020億円
純資産10兆1,543億円7兆7,626億円6兆2,907億円4兆8,856億円3兆7,686億円
自己資本比率43.6%44.9%38.0%40.0%39.4%

2025年3月末時点の財務状況を見ると、総資産、純資産ともに三菱商事が他を圧倒しており、その規模の大きさが際立っています。

財務の健全性を示す自己資本比率は、三井物産が44.9%で最も高く、次いで三菱商事が43.6%と続いています。
一般的に自己資本比率が高いほど財務の安定性が高いとされ、この2社は強固な財務基盤を有していると言えます。

5大商社の収益性を比較

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項目
(2025年3月期)
三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
ROE10.3%11.9%約16%12.4%14.2%
ROA
(税引前利益ベース)
6.5%6.8%7.6%6.0%6.8%
EPS
(1株当たり利益)
236.97円306.73円615.65円463.66円302.78円
営業利益率4.6%3.5%
※営業利益率はIFRS任意開示のため、開示のある企業のみ記載。

収益性の高さを示す指標を見ると、ROE(自己資本利益率)では伊藤忠商事が約16%と5社の中で最も高い数値を示しており、効率的な資本活用ができていることが分かります。
丸紅も14.2%と高い水準です。

EPS(1株当たり利益)は、株価水準が異なるため単純比較はできませんが、各社とも高い収益力を背景に堅調な数値を記録しています。

5大商社の株価の割安性を比較

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項目
(2025年6月12日終値)
三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
株価2,857.0円2,940.0円7,381円3,620.0円2,880.0円
PER 12.06倍9.59倍12.00倍7.81倍9.51倍
PBR 1.22倍1.12倍1.82倍0.94倍1.32倍

2025年6月12日の終値を基準に株価の割安性を示す指標を見ると、PER(株価収益率)では住友商事が7.81倍、丸紅が9.51倍と、市場平均と比較して割安な水準にあると考えられます。

また、PBR(株価純資産倍率)では住友商事が0.94倍と1倍を割り込んでおり、株価が企業の解散価値(1株当たり純資産)を下回っている状態を示唆しています。
これは株価が割安であると判断する一つの材料になります。

5大商社の株主還元について比較

各社とも積極的な株主還元を打ち出しています。特に、配当金の増配傾向と大規模な自己株式取得が目立ちます。

配当金の比較

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2025年3月期三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
年間配当金(実績)100円100円200円130円95円

2025年3月期の実績配当金は、伊藤忠商事が1株当たり200円と金額では最も大きいですが、株価水準が異なるため利回りでの比較が重要です。
各社とも累進配当(減配せず、維持または増配)を掲げるなど、安定した株主還元への意識が高いことがうかがえます。

自社株買いの比較

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2025年3月期(2024年度)三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
自己株式取得額(上限)1兆円4,000億円1,500億円700億円800億円
発行済株式総数に対する割合約17%約4.7%約2.0%約1.6%約1.7%
※三菱商事は2025年度の計画。その他4社は2024年度の実績または計画。
割合は各社資料や公表時点の株数に基づく概算。

自己株式取得については、三菱商事が2025年度に1兆円という極めて大規模な取得枠を設定したことが特筆されます。
これは発行済株式総数の約17%に相当する規模であり、1株当たりの価値向上への強いコミットメントを示しています。
三井物産も4,000億円の自社株買いを実施しており、株主還元への積極的な姿勢が見られます。

5大商社の今期(2026年3月期)見通しの業績について比較

今期の業績見通しについては、各社で明暗が分かれています。

業績の比較

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2026年3月期 見通し三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
当期純利益7,000億円7,700億円9,000億円5,700億円5,100億円
前期比増減率△26.4%△14.5%+2.2%+1.4%+1.4%
※収益、税引前利益の見通しは非開示の企業が多いため、当期純利益のみ比較。

2026年3月期の純利益見通しでは、伊藤忠商事が9,000億円でトップに立ち、唯一の増益予想となっています。
三井物産、住友商事、丸紅も前期比では微減益・微増益ながらも高水準の利益を維持する見通しです。

一方で三菱商事は7,000億円と大幅な減益を見込んでいますが、これは前期に計上した豪州原料炭事業の売却益という特殊要因の反動が主な理由であり、基礎的な収益力が落ち込むわけではない点に注意が必要です。

配当見通しの比較

今期の配当見通しでは、全社が増配を予定しており、株主還元への積極的な姿勢が継続しています。

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2026年3月期 見通し三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
年間配当金(予想)110円115円200円140円100円
配当利回り3.85%3.91%2.71%3.87%3.47%

6月12日終値で計算した配当利回りは、三井物産が3.91%、住友商事が3.87%、三菱商事が3.85%と、3社が3%台後半の高い利回りとなっています。
安定したインカムゲインを狙う投資家にとって魅力的な水準と言えるでしょう。

自社株買いの見通し

2025年度(2026年3月期)の自己株式取得計画について、5大商社のうち4社が具体的な金額を発表しています。
三井物産は現時点で2025年度の具体的な取得枠を発表していません。

発表済みの各社の自己株式取得計画は以下の通りです。

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2025年3月期(2024年度)三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅
自己株式取得額(上限)1兆円約1,700億円600億円400億円
発行済株式総数に対する割合約17%約2.0%約1.4%約0.8%
※三菱商事は2025年度の計画。その他4社は2024年度の実績または計画。
割合は各社資料や公表時点の株数に基づく概算。

5大商社に投資をする上でのポイントは?

これまでの比較を踏まえ、どのような投資スタイルの方がどの企業に向いているかを整理します。

  • 業績の安定成長を重視するなら?
    伊藤忠商事が挙げられます。
    非資源分野、特に生活消費関連に強みを持ち、景気変動への耐性が高い収益構造を築いています。
    今期見通しでも唯一の増益予想となっており、安定した成長が期待されます。
  • 配当利回りで選ぶなら?
    三井物産、住友商事、三菱商事の3社が3.8%を超える高い配当利回り予想となっており、魅力的です。
    各社とも累進配当を掲げているため、今後の減配リスクが低く、安定したインカム収入を期待する投資家に向いています。
  • 株価の割安感を重視するなら?
    住友商事がPER、PBRともに最も割安な水準にあります。
    PBRが1倍を割り込んでいる点は、株価の割安さを示す強力なシグナルと捉えられます。
    次いで丸紅もPERが10倍を下回っており、割安感があります。
  • 資本効率を重視するなら?
    伊藤忠商事丸紅がROEで15%前後の高い水準を維持しており、資本を効率的に活用して利益を生み出す経営が評価できます。

決算から分かる5大商社の強みは?

5大商社に投資する上では、各社の強みを明確にしておくことが重要です。

三菱商事:総合力と株主還元の王者

三菱商事は圧倒的な資産規模を誇り、金属資源からローソンを傘下に持つコンシューマー向け事業まで、極めてバランスの取れたポートフォリオが強みです。

また、1兆円規模の自社株買いは、株主価値向上への強い意志の表れです。

三井物産:財務規律と資源の雄

三井物産は高い自己資本比率に代表される強固な財務基盤が魅力です。

金属資源やエネルギーといった資源分野に伝統的な強みを持ちつつ、近年はヘルスケアやウェルネス分野など非資源領域の強化も進めています。

伊藤忠商事:非資源分野のリーダー

非資源分野で圧倒的な収益力を誇り、特に繊維や食料、住生活といった生活消費関連に強固な基盤を持ちます。

高いROEが示すように、資本効率を重視した経営が特徴です。

住友商事:DXと不動産で成長を加速

メディア・デジタル事業や不動産事業に強みを持ちます。

特にSCSKによるネットワンシステムズの買収など、デジタル分野への積極的な投資が目立ち、今後の成長ドライバーとして期待されます。

丸紅:電力・アグリと高効率経営

電力・インフラや食料・アグリ事業といった生活に不可欠な分野で安定した収益基盤を築いています。

ROEも高く、資本効率を意識した経営が浸透しています。

まとめ

5大総合商社の2025年3月期決算は、資源価格の落ち着きという逆風があったものの、各社が推進する非資源分野の強化や円安効果に支えられ、総じて高水準の利益を確保しました。

今期(2026年3月期)は、世界経済の不透明感から慎重な見通しを出す企業が多いものの、各社とも累進配当を掲げ、積極的な株主還元を継続する方針です。

投資先としてどの企業を選ぶかは、投資家のスタイルによって異なります。

  • 安定成長を求めるなら非資源の雄・伊藤忠商事
  • 高配当を狙うなら三井物産、住友商事、三菱商事
  • 割安株投資なら住友商事、丸紅
  • 資本効率を重視するなら伊藤忠商事、丸紅
  • 業界の盟主としての規模と超大型の株主還元に期待するなら三菱商事

各社の強みと弱み、そして将来の成長戦略を本記事で比較検討し、ご自身の投資判断の一助としてください。

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